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DATE : 2007/02/03 (Sat)
忙しい、忙しいと言いつつも、ぽっかり穴の空く日ができてしまうもので、まさに今日がそんな一日だったわけですが、どうにもこうにも書き進まず。

おかしいなぁ、来週分まで書き終えるつもりだったのに。

おかしいと言えば、今日の週刊喜緑さんもおかしなことに……これは腹黒というよりも、もっと別なもんじゃないかと思えてきた今日この頃。

これからどうしようか、何も考えてないのはここだけのヒミツです。


第一話第二話
【週刊喜緑江美里】
第三話:喜緑さん、唆す

 物事は単純をよしとするという考え方が、大多数の人の中に根付いているのではないでしょうか。数式しかり、作業効率しかり。それが人間の言うところの美しさなのかもしれませんが、かくいうわたしも、その考え方に異論はありません。
 単純。
 いいじゃないですか。物事の本質を探るのに、何も深く考える必要なんてないと思いますよ。思慮深く物事を考えることも時には必要かと思いますが、考えあぐねた結果、何もできずに終わるという方が、情けなく感じます。
 朝倉さんたちと別れ、ゆるゆると続く坂道を下り終えた頃合いに、わたしは携帯電話を取り出して、とある先に連絡を。これから行うことを単純に考えた際、一人よりも二人で行動しておいたほうが、より安全かつ迅速に動けますもの。
「もしもし、会長ですか? お忙しいところ申し訳ありません。何かあったというわけではなく、ひとつお願いがございまして……。いえ、涼宮さんのことではありません。わたし個人のお願いです。……はい……ええ、そうです。わたしの学友に鶴屋さんがおりますでしょう? ええ、その鶴屋さんです。実はパーティへ招待されまして、でもわたし一人で行くのはどうかと……ああ、ご存じでしたか。そこで会長もご一緒に……ええ……はい、そうです。それでは、フォーマルな装いでお願いいたします。はい、では失礼いたします」
 伝えることを伝えて通話を終え、これでなんとか会場に潜り込む算段が整いました。会長自身もそういうパーティがあるという話は耳にしていたようで、場所を説明する手間が省けたのは幸いです。
 もちろん、これも予定通りのことですよ。本当はコンピ研の部長さんでもよかったのですけれど、場所が場所ですからTPOに合わせた人材を選ばないと、浮いてしまいますから。
 それに、何も会長を無理に巻き込んだわけではありません。断ろうと思えば断れた誘い方しかしていませんもの。それでも快く快諾したのは会長であって、彼には彼なりの考え……そうですね、計算というものがあるのでしょう。
 あの人のことですから、鶴屋さんがどういう人なのかご存じのはずです。そしてその家柄やネットワークの広さも承知しており、鶴屋さん本人を取り込むことはできずとも、その親族、あるいは関係者に取り入ろうとしているんじゃないでしょうか。
 それについて、わたしは特にコメントはございません。自分の利益を考えて行動することを侮蔑するつもりもありません。むしろ単純で、いえ、素直で可愛いと思いますよ。
 ええ、本当に。

 わたし、あまり服を持ってないんですよね。主な活動範囲は学校くらいですから、制服があればそれだけで事足りますし、あまり必要性を感じていません。それにもし、普段着や何かしらの正装が必要なときは制服の構造情報を組み替えてますから。
 だから今回も、いつもと同じように制服を組み替えてドレスに仕立て、パーティ会場になっているシティホテルへ向かいました。
 人間のいいところは、その瞬間の世界を視覚情報のみで構築しているところですね。有機生命体で見れば親の保護がまだ必要そうなわたしの外見的年齢でも、装いひとつで高級ホテルに足を踏み入れて不審に思われないのは有り難く思います。
 ホテルのロビーにいる会長も、そういう意味では他人が視覚で取り入れる情報をうまく改ざんしているのではないでしょうか。伊達眼鏡をはずし、黒のスーツ姿は合格です。おまけに急な申し出でも遅れずに到着しているのはさすがと言えるでしょう。ただ、待っている場所が喫煙所というのが減点ですね。
「お待たせいたしました、会長」
「待ってはいない。それで、どういうつもりだね?」
「どう、とは?」
「キミから行動を起こすというのは、どうにも釈然としない。何を考えている?」
「あら……ただ、一人が寂しかっただけです」
「一人……か。なるほど、それなら仕方がない」
 さすがにヒューマンコントロールがお上手な会長です。わたしが言葉の端に忍ばせたヒントにもすぐに気づいて読み解いてしまいました。パーティに誘われたと言ったわたしが、一人なんてことはありませんものね。
 にもかかわらずわたしが一人ということは、このパーティは誘われたものではなく、潜入しようとしていることであり、一人でいる不自然さを紛らわすために自分は呼ばれたのだと……そこまで気づいているのでしょう。
 彼には彼なりに、このパーティに忍び込む価値があり、そのためならば利用されることも厭わない姿勢は立派だと思います。そういう人ほどわたしにとっては扱いやすく、また、とても危険なんですけれど……このくらいのリスクがなければ楽しくありません。
「中に入れば、あとは好きにさせてもらう。キミが気にしているのは、入るまでだろう?」
「ご明察です。では、参りましょう」
 何も正面から入る必要はないんですけどね。従業員になりすまして潜入してもよかったんです。でもやっぱり、せっかくのパーティですから、無粋な真似はしないほうがいいでしょう。それに、従業員になりすますには、いささか関係者が多すぎますから。
 会長のエスコートを受けて会場へ。入り口で招待状の提示とサインを求められましたけれど、その程度ならどうとでもなります。
 簡単な、それこそ素通りと変わりない受付の手続きを済ませて会場内へ。会場内には50人くらいいるでしょうか。警備の人間は……どうやら『機関』関係で占められているようですね。あらあら、会長を連れてきたのは失敗だったかしら? でもそれは、会長自身の問題。わたしには関係ありませんね。
「それでは会長、また後ほど」
「あとで連絡は必要かね?」
「そうですね……お好きなように」
「そうか」
「ああ、それと」
 お手伝いいただいたご褒美くらいは、あげましょうか。
「あの人と……あの人、それと向こうの女性が、会長と気が合うのではないでしょうか」
 わたしの言葉にひとつ頷き、会長はそのまま人の波の中へ。
 かくいうわたしは、ソフトドリンクのグラスを手に取り、さりげなく会場内を見渡して……なるほど、あれのことですね。このことはまだわたししか知らないと思いますけれど……でもそうですね、会場には幸いなことに……そろそろかしら? ああ、来ましたね。
「こんにちは。それともこんばんは、かしら?」
 給仕人の格好でわたしを見つめる漆黒の双眸に、わたしはにこやかに挨拶をしました。

つづく
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★無題
NAME: ron
この人がすべての登場人物をコントロールしているように感じているのは気のせいですか
2007/02/03(Sat)11:16:59 編集
コントロールしようとしているのですが、何せ喜緑さんのことですから……といったところでしょうか( ̄ー ̄)
【2007/02/03 21:31】
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