category: 日記
DATE : 2007/01/31 (Wed)
DATE : 2007/01/31 (Wed)
これといってここに書くネタもなく、おまけに時間もないのでSSのみの更新で。誤字脱字のチェックもしてないもんで(;´Д`)....
あとで何か追記するかもしれず、しないかもしれず。
あとで何か追記するかもしれず、しないかもしれず。
第一話、第二話
【週刊長門有希】
第三話:長門さん、呆れる
森園生に同行することを申し出たわたしだが、かといって味のバランスが崩れた極上カレーを食べ残したりはしない。
食事とは、言い換えれば他者の命を自分に取り込むことだと言える。この場合、食材となった伊勢エビ、さらに植物をもひとつの生命という定義で捉えるならば、この極上カレーを作り出すために数十の生命が犠牲になっている。その命の上に他の命が成り立つことを忘れてはならず、故に食べ物を残してはならない。
また、食材として犠牲になる命へのせめてもの供養として、できることならばより味わい深く最高の美味さに仕立て上げることが、料理人の役目だろう。
何もこの理屈は、わたしが料理をしない理由でも、他のインターフェースに比べて食事量が多いこととも関係ない。
わたしよりも食べる速度の遅い森園生だが、注文した量はサイドメニューもあるのでわたしよりも多い。にもかからわず先を急ぐというので、料理を残すわけにもいかず、サラダを頂戴し、予定よりも早めに店を出る。彼女は車で来ていたらしく、新川氏が奉仕しているというパーティ会場への移動は、その車を使ってとなった。
「本当によろしいんですか? わたしと一緒で」
「かまわない」
「ですが……」
わたしが同行することに、頑なとも取れる態度で難色を示す彼女だが、行動を共にすることで何か不都合でもあるのだろうか。その真意を確かめたくもあるが、彼女が運転する車の助手席に腰を下ろした以上、今さら何か不都合があったとしても後の祭りに他ならない。
他意があるにしろ、無きにしろ、それを確かめるまでもない。助手席に座った以上はどこへも行けず、わたし自身もそれ以上何も言わず、読みかけの文庫を取り出して、しばし活字の世界へ没頭した。
薄闇が空を覆う逢魔が時、森園生が運転する車が滑り込んだ先は市内でも有数のシティホテルの地下駐車場だった。車から降りて森園生が進む後について行くと、通る道は一般客とは違う、従業員専用の薄暗い通路になっていた。
「長門さんにも来ていただいて、とても助かります」
コツコツと響く足音。静かな通路は音を反響して、ことさら大きく響く。
「わたしも急なヘルプで来たのですけれど、それでもまだ、人手が足りないようで。ああ、そう言えば朝比奈さんもこちらへ来ているようですが、何かご存じでしょうか?」
「なにも」
朝比奈みくるがこの場所にいることにいささかの驚きを覚えたが、かといって今のわたしには彼女の存在がそれほど重要な存在というわけでもない。今ここにわたしがいる理由と、朝比奈みくるがいる理由はまったく別物であり、干渉すべきではないと判断する。
仮に彼女の役割とわたしの目的が交差することがあれば話はまた違ってくるが、現状ではその可能性は低いと判断できる。
「それでは長門さん、こちらで着替えてください」
差しだされた服は、シャツにスラックス、そしてベストの三点セットだった。何故に着替えなければ判断しかねるが、この制服姿で問題があると言うのであれば仕方がない。
与えられたロッカーにこれまで着ていた制服を仕舞い込み、手早く着替える。森園生もまた、わたしと同じような格好になっていた。
「そういえば説明がまだでしたけれど」
と、互いに着替えを済ませた頃合いに、たった今思い出したという素振りで森園生の方から言葉を切り出す。
「今日は、鶴屋さまの分家が主体でのパーティにでのご奉仕なのです。長門さんのことですから我々『機関』と鶴屋家の繋がりもご承知かと思われますが」
その説明は、わたしにとって今さらの話でしかない。このホテルで行われている催しについても、知ろうと思えばすぐに手に入る情報だ。
「わたしは、表向きはウエイトレスとして来賓にご奉仕をしておりますけれど、本来の目的は展示されている展示品の警護にあります。長門さんにご協力願えれば万が一もないかと思いますけれど……お互い、立場というものがございましょう。長門さんがわたしに着いてここまで来た理由を問い質そうとは思いません。けれど、こちらの邪魔だけはしないでいただけると、大変助かります」
その言葉に、わたしは頷く。もとより彼女の目的に興味はない。
訂正しよう。
彼女がわたしや彼、あるいは涼宮ハルヒに害を成す行為に及ばなければ、わたし自身からアクションを起こすことはない。
そういう意味で『興味がない』のであって、今ここで彼女が話した言葉に無関心なのではない。わたしがここにいる理由は、彼女の真意を探るためであることは、これまで何度も述べてきた通りだ。極上シーフードカレーのリベンジを目論んで着いてきたわけではないのだから。
「会場には、朝比奈さんもいらっしゃるはずです。彼女と合流してもかまいませんが、その格好をしている手前、長門さんにもウエイトレスとして働いていただくことがあるかもしれません。その際は、なにとぞよろしくお願いいたします」
その言葉に、わたしはしばし考える。つまるところ、会場へ出向いたわたしは来場客ではなく従業員という立場で働くこととなり、結局は料理を口に出来ないのではないだろうか。
事ここに至り、森園生の功名な話術に誑かされたような気がする。とはいえ、着替えも済ませた今、謹んで辞退することもできない。
仕方がない、と諦めるべきかもしれないが、まだ状況を改善する術は残されている。状況如何によっては、会場にいる人間の視覚情報を操作し、わたしを認識させないという手を使うことも致し方ない。
「それでは、わたしは新川と話がありますので」
森園生の後に続き、会場へとたどり着くと、彼女はわたしに一礼して大勢の人で賑わうその中へ溶け込んで行った。
逆にわたしは、足を踏み入れた入り口で周囲を見渡す。バーカウンターの側にある人垣の中に、朝比奈みくるとその学友の姿を確認。彼女たちにわたしがここにいると気づかれても構わないが、目的遂行のためには、こちらから接触するのは避けたほうが得策と判断。
それとは別に、会場を見渡す。SPが六名。来賓に紛れたSPが五名。給仕人は、ほぼすべてが『機関』に関係する人間であると思われる。
厳戒態勢と言える。それほどまでの警護で守る展示物とは何かと目を運べば……なるほどと納得せざるを得ない。だが、わたしには関係ないことである。
今のわたしにとって重要なのは、如何に料理を……と考えた矢先、ふと目に付く人影。
いったいどこから入り込んだのか、何故ここにいるのか、その答えを知りたくも思うが、彼女のことだから答えは得られないだろう。
グラスを傾け、微笑む喜緑江美里の姿に、わたしは心の内でため息をついた。
つづく
【週刊長門有希】
第三話:長門さん、呆れる
森園生に同行することを申し出たわたしだが、かといって味のバランスが崩れた極上カレーを食べ残したりはしない。
食事とは、言い換えれば他者の命を自分に取り込むことだと言える。この場合、食材となった伊勢エビ、さらに植物をもひとつの生命という定義で捉えるならば、この極上カレーを作り出すために数十の生命が犠牲になっている。その命の上に他の命が成り立つことを忘れてはならず、故に食べ物を残してはならない。
また、食材として犠牲になる命へのせめてもの供養として、できることならばより味わい深く最高の美味さに仕立て上げることが、料理人の役目だろう。
何もこの理屈は、わたしが料理をしない理由でも、他のインターフェースに比べて食事量が多いこととも関係ない。
わたしよりも食べる速度の遅い森園生だが、注文した量はサイドメニューもあるのでわたしよりも多い。にもかからわず先を急ぐというので、料理を残すわけにもいかず、サラダを頂戴し、予定よりも早めに店を出る。彼女は車で来ていたらしく、新川氏が奉仕しているというパーティ会場への移動は、その車を使ってとなった。
「本当によろしいんですか? わたしと一緒で」
「かまわない」
「ですが……」
わたしが同行することに、頑なとも取れる態度で難色を示す彼女だが、行動を共にすることで何か不都合でもあるのだろうか。その真意を確かめたくもあるが、彼女が運転する車の助手席に腰を下ろした以上、今さら何か不都合があったとしても後の祭りに他ならない。
他意があるにしろ、無きにしろ、それを確かめるまでもない。助手席に座った以上はどこへも行けず、わたし自身もそれ以上何も言わず、読みかけの文庫を取り出して、しばし活字の世界へ没頭した。
薄闇が空を覆う逢魔が時、森園生が運転する車が滑り込んだ先は市内でも有数のシティホテルの地下駐車場だった。車から降りて森園生が進む後について行くと、通る道は一般客とは違う、従業員専用の薄暗い通路になっていた。
「長門さんにも来ていただいて、とても助かります」
コツコツと響く足音。静かな通路は音を反響して、ことさら大きく響く。
「わたしも急なヘルプで来たのですけれど、それでもまだ、人手が足りないようで。ああ、そう言えば朝比奈さんもこちらへ来ているようですが、何かご存じでしょうか?」
「なにも」
朝比奈みくるがこの場所にいることにいささかの驚きを覚えたが、かといって今のわたしには彼女の存在がそれほど重要な存在というわけでもない。今ここにわたしがいる理由と、朝比奈みくるがいる理由はまったく別物であり、干渉すべきではないと判断する。
仮に彼女の役割とわたしの目的が交差することがあれば話はまた違ってくるが、現状ではその可能性は低いと判断できる。
「それでは長門さん、こちらで着替えてください」
差しだされた服は、シャツにスラックス、そしてベストの三点セットだった。何故に着替えなければ判断しかねるが、この制服姿で問題があると言うのであれば仕方がない。
与えられたロッカーにこれまで着ていた制服を仕舞い込み、手早く着替える。森園生もまた、わたしと同じような格好になっていた。
「そういえば説明がまだでしたけれど」
と、互いに着替えを済ませた頃合いに、たった今思い出したという素振りで森園生の方から言葉を切り出す。
「今日は、鶴屋さまの分家が主体でのパーティにでのご奉仕なのです。長門さんのことですから我々『機関』と鶴屋家の繋がりもご承知かと思われますが」
その説明は、わたしにとって今さらの話でしかない。このホテルで行われている催しについても、知ろうと思えばすぐに手に入る情報だ。
「わたしは、表向きはウエイトレスとして来賓にご奉仕をしておりますけれど、本来の目的は展示されている展示品の警護にあります。長門さんにご協力願えれば万が一もないかと思いますけれど……お互い、立場というものがございましょう。長門さんがわたしに着いてここまで来た理由を問い質そうとは思いません。けれど、こちらの邪魔だけはしないでいただけると、大変助かります」
その言葉に、わたしは頷く。もとより彼女の目的に興味はない。
訂正しよう。
彼女がわたしや彼、あるいは涼宮ハルヒに害を成す行為に及ばなければ、わたし自身からアクションを起こすことはない。
そういう意味で『興味がない』のであって、今ここで彼女が話した言葉に無関心なのではない。わたしがここにいる理由は、彼女の真意を探るためであることは、これまで何度も述べてきた通りだ。極上シーフードカレーのリベンジを目論んで着いてきたわけではないのだから。
「会場には、朝比奈さんもいらっしゃるはずです。彼女と合流してもかまいませんが、その格好をしている手前、長門さんにもウエイトレスとして働いていただくことがあるかもしれません。その際は、なにとぞよろしくお願いいたします」
その言葉に、わたしはしばし考える。つまるところ、会場へ出向いたわたしは来場客ではなく従業員という立場で働くこととなり、結局は料理を口に出来ないのではないだろうか。
事ここに至り、森園生の功名な話術に誑かされたような気がする。とはいえ、着替えも済ませた今、謹んで辞退することもできない。
仕方がない、と諦めるべきかもしれないが、まだ状況を改善する術は残されている。状況如何によっては、会場にいる人間の視覚情報を操作し、わたしを認識させないという手を使うことも致し方ない。
「それでは、わたしは新川と話がありますので」
森園生の後に続き、会場へとたどり着くと、彼女はわたしに一礼して大勢の人で賑わうその中へ溶け込んで行った。
逆にわたしは、足を踏み入れた入り口で周囲を見渡す。バーカウンターの側にある人垣の中に、朝比奈みくるとその学友の姿を確認。彼女たちにわたしがここにいると気づかれても構わないが、目的遂行のためには、こちらから接触するのは避けたほうが得策と判断。
それとは別に、会場を見渡す。SPが六名。来賓に紛れたSPが五名。給仕人は、ほぼすべてが『機関』に関係する人間であると思われる。
厳戒態勢と言える。それほどまでの警護で守る展示物とは何かと目を運べば……なるほどと納得せざるを得ない。だが、わたしには関係ないことである。
今のわたしにとって重要なのは、如何に料理を……と考えた矢先、ふと目に付く人影。
いったいどこから入り込んだのか、何故ここにいるのか、その答えを知りたくも思うが、彼女のことだから答えは得られないだろう。
グラスを傾け、微笑む喜緑江美里の姿に、わたしは心の内でため息をついた。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
毎日喜緑さんを出してたら、週刊じゃなくて日刊えみりんに(;´Д`)...
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
みんな喜緑さん大好きですねぇ( ̄ー ̄)
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