category: 日記
DATE : 2007/01/04 (Thu)
DATE : 2007/01/04 (Thu)
新年の挨拶ってわけじゃありませんが、ちょろんと昨日は実家になっている兄夫婦のところに挨拶へ行って参りました。
いやもう、なんて言いますかしこたま食い物と酒を振る舞われ、姪っ子二人(四歳と七ヶ月)にオモチャにされてヘロヘロです。
これだから正月は侮れない……そんな一日ではありますが、子供はやっぱり可愛いですなぁ(健全な意味で)
そんなわけで、どんなわけかは知りませんが、半ば酔っぱらい状態で、本日はおまけの更新となります。
いやもう、なんて言いますかしこたま食い物と酒を振る舞われ、姪っ子二人(四歳と七ヶ月)にオモチャにされてヘロヘロです。
これだから正月は侮れない……そんな一日ではありますが、子供はやっぱり可愛いですなぁ(健全な意味で)
そんなわけで、どんなわけかは知りませんが、半ば酔っぱらい状態で、本日はおまけの更新となります。
【Rain such as tears:third】
いつかどこかで聞いた話だが、人というのは目と耳から入る情報で世界を構築しているため、そのふたつの外部入力装置に一定のリズムを与え続けると、いわゆる心神喪失状態に陥るらしい。わかりやすいところで言えば、催眠術の基本的かつ定番のシチュエーションがそれに値する。
万人にそれが通用するかどうかは定かではないが、確かに日本古来の文学や芸能はそれに通じるものがあり、土壌がシャーマン主体の呪術社会であることを鑑みても、あながち間違いじゃないだろう。
必要なのは、薄暗い空間に一定の変化がないリズムだ。催眠術でも、懐中時計を振り子に平坦な声音で声をかけているだろ? それも冒頭に述べたシチュエーションと似たようなもんだと思う。
さて、こんなどうでもいいような前振りにどんな意味があるのかと言えば、それが果たして人間以外にも通じるのか、と疑問に思ったからだ。
その日がどんな意味合いの集まりだったのか、そんなことはどうでもいい。ただ、長門のマンションにSOS団の面子が集まり、何かのパーティが真っ昼間から開催されたと記憶している。あいにくの雨模様であるにもかかわらず、室内は晴天そのものとも言える陽気さを醸しだし、そろいもそろってバカ騒ぎをしたもんだ。
ただ、そういう祭りは準備段階と実行中は楽しいものの、終わったあとの片付けは単なる片付け以上の気怠さを感じる。お祭り女の代名詞とも言うべきハルヒは、準備と実行がメインと言わんばかりにそこまでは張り切るが、終わったあとは次の祭りに向けて即座に頭の中身を切り替える。
当然、後片付けは俺ら団員の役目となり……会場となった長門のマンションの後片付けをする役目は雑用係たる俺が行わなければならず、自分の将来がこういう主夫みたいに食器を洗うような立場になるのかとさえ考えさせられる役割をこなしていた。
「やれやれ」
最後の皿を洗い終わり、水道の蛇口を閉じると部屋の中は降り続く雨の音が大きく聞こえる。ただでさえ薄暗い空は、逢魔が時にさしかかり、蛍光灯の灯りがなければ薄暗い。
「長門、この皿はどこにしまえばいいんだ?」
声をかけたが返事がない。キッチンから居間に目を向ければ、灯りも付けずに薄暗いままだった。
「長門?」
ここは長門のマンションだ。あいつがいないわけがなく、覗いてみれば普段滅多にお目にかかれないものがそこにいた。
壁を背もたれに、投げ出した足の上に読みかけの文庫本がページを開かれたままで落ちており、そのまま静かに眠りこけている長門がいた。
これはまた、珍しいものを見た気がする。長門が寝ないなどとは思っていないが、そもそもこの年で親戚や家族以外の寝姿を見ることなど稀であり、それが──見た目が──同年代の女性であれば、いろいろな意味で感動もひとしおだ。
ふぅ、とため息が漏れる。呆れの吐息というより、安堵のため息だ。こいつが、俺が部屋の中にいることを忘れるはずもなく、ならばこうやって無防備に寝るってことは、それはつまり、俺が側にいて安心する、と自惚れてもいいってことかね?
部屋の主の許可なく室内を物色するのは気が引けるが、和室の押し入れに布団があるのは七夕の一件で確認済みだ。できるだけ音を立てず、押し入れからタオルケットを取り出してかけてやる。
と、ぱちっと長門の目が開いた。ずいぶんと眠りが浅いことで。
水面に落ちた墨汁のように揺れる漆黒の瞳で俺を見て、体にかかるタオルケットを確認し、そこからさらに俺へ視線を戻した長門は、ふとその手を俺の頬に差し伸べてきた。
「長門?」
ぴくっ、と微かに震える。
「……おはよう」
ゆるゆると伸ばそうとしていた手を戻し、長門はそんなことを言った。
「寝惚けてるのか? ま、寝るならこんなとこじゃなくて布団で寝ろよ」
「わかった」
一定リズムで降り続く雨の音だけが、妙に耳に響く。いかん、これじゃ俺まで幽玄の世界に足を踏み入れそうだ。
「んじゃ、あとは食器を棚に片付すだけだ。俺もそろそろ帰る。またな」
妙に催眠状態に陥りかねない状況を打ち破るように、我知らず早口になる。
その言葉にこくりと頷いた長門は、それでもまだ、俺に視点を合わせたまま。
「ありがとう」
と呟いた。
〆
手が届きそうで届かない、長門さんが感じるキョンくんとの距離はそんなもんじゃないかと思います(゚д゚)/
いつかどこかで聞いた話だが、人というのは目と耳から入る情報で世界を構築しているため、そのふたつの外部入力装置に一定のリズムを与え続けると、いわゆる心神喪失状態に陥るらしい。わかりやすいところで言えば、催眠術の基本的かつ定番のシチュエーションがそれに値する。
万人にそれが通用するかどうかは定かではないが、確かに日本古来の文学や芸能はそれに通じるものがあり、土壌がシャーマン主体の呪術社会であることを鑑みても、あながち間違いじゃないだろう。
必要なのは、薄暗い空間に一定の変化がないリズムだ。催眠術でも、懐中時計を振り子に平坦な声音で声をかけているだろ? それも冒頭に述べたシチュエーションと似たようなもんだと思う。
さて、こんなどうでもいいような前振りにどんな意味があるのかと言えば、それが果たして人間以外にも通じるのか、と疑問に思ったからだ。
その日がどんな意味合いの集まりだったのか、そんなことはどうでもいい。ただ、長門のマンションにSOS団の面子が集まり、何かのパーティが真っ昼間から開催されたと記憶している。あいにくの雨模様であるにもかかわらず、室内は晴天そのものとも言える陽気さを醸しだし、そろいもそろってバカ騒ぎをしたもんだ。
ただ、そういう祭りは準備段階と実行中は楽しいものの、終わったあとの片付けは単なる片付け以上の気怠さを感じる。お祭り女の代名詞とも言うべきハルヒは、準備と実行がメインと言わんばかりにそこまでは張り切るが、終わったあとは次の祭りに向けて即座に頭の中身を切り替える。
当然、後片付けは俺ら団員の役目となり……会場となった長門のマンションの後片付けをする役目は雑用係たる俺が行わなければならず、自分の将来がこういう主夫みたいに食器を洗うような立場になるのかとさえ考えさせられる役割をこなしていた。
「やれやれ」
最後の皿を洗い終わり、水道の蛇口を閉じると部屋の中は降り続く雨の音が大きく聞こえる。ただでさえ薄暗い空は、逢魔が時にさしかかり、蛍光灯の灯りがなければ薄暗い。
「長門、この皿はどこにしまえばいいんだ?」
声をかけたが返事がない。キッチンから居間に目を向ければ、灯りも付けずに薄暗いままだった。
「長門?」
ここは長門のマンションだ。あいつがいないわけがなく、覗いてみれば普段滅多にお目にかかれないものがそこにいた。
壁を背もたれに、投げ出した足の上に読みかけの文庫本がページを開かれたままで落ちており、そのまま静かに眠りこけている長門がいた。
これはまた、珍しいものを見た気がする。長門が寝ないなどとは思っていないが、そもそもこの年で親戚や家族以外の寝姿を見ることなど稀であり、それが──見た目が──同年代の女性であれば、いろいろな意味で感動もひとしおだ。
ふぅ、とため息が漏れる。呆れの吐息というより、安堵のため息だ。こいつが、俺が部屋の中にいることを忘れるはずもなく、ならばこうやって無防備に寝るってことは、それはつまり、俺が側にいて安心する、と自惚れてもいいってことかね?
部屋の主の許可なく室内を物色するのは気が引けるが、和室の押し入れに布団があるのは七夕の一件で確認済みだ。できるだけ音を立てず、押し入れからタオルケットを取り出してかけてやる。
と、ぱちっと長門の目が開いた。ずいぶんと眠りが浅いことで。
水面に落ちた墨汁のように揺れる漆黒の瞳で俺を見て、体にかかるタオルケットを確認し、そこからさらに俺へ視線を戻した長門は、ふとその手を俺の頬に差し伸べてきた。
「長門?」
ぴくっ、と微かに震える。
「……おはよう」
ゆるゆると伸ばそうとしていた手を戻し、長門はそんなことを言った。
「寝惚けてるのか? ま、寝るならこんなとこじゃなくて布団で寝ろよ」
「わかった」
一定リズムで降り続く雨の音だけが、妙に耳に響く。いかん、これじゃ俺まで幽玄の世界に足を踏み入れそうだ。
「んじゃ、あとは食器を棚に片付すだけだ。俺もそろそろ帰る。またな」
妙に催眠状態に陥りかねない状況を打ち破るように、我知らず早口になる。
その言葉にこくりと頷いた長門は、それでもまだ、俺に視点を合わせたまま。
「ありがとう」
と呟いた。
〆
手が届きそうで届かない、長門さんが感じるキョンくんとの距離はそんなもんじゃないかと思います(゚д゚)/
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