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DATE : 2007/11/27 (Tue)
これはヤバイ。かなりヤバイ。どのくらいヤバイかって言うと、マジヤバイ。そんなヤバイくらいに時間がありませぬ。

それでも今日くらいにSSを更新しておかなければ、次にUPできるのがいつになるのか解らないので、無理やり更新しておきます。ああん、もうこんな時間。

そういうわけで、本日はこの辺で。
マジヤバイ。


前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:五章-b

 それが果たして上手く行ってるのか難航しているのか、素人目……もとい、一般人たる俺の目にはまるで解らない。少なくとも、目に見える変化は今のところ何も起きていないのだから、間違い探しをしているわけでもあるまいし、変化は起きていないと見て間違いなさそうだ。
 ただそれでも、長門と朝倉のデュエットは続き、その声音にも変化がないところを鑑みれば、ハルヒと佐々木の閉鎖空間の境界線とやらを探るのに時間が掛かっているのかもしれない。
 何であれ、俺にできることは何もない。ここにいるのだって、ゴネる橘の付き添いで来たのだから、端から役割なんてありゃしないのさ。
「……ん……んん? なんか……うーん、あれ?」
 ハラハラするでもなく、のんびり構えているのでもなく、どちらかと言うとテレビを点けたらたまたま放送されているだけで番組名すらしらないドラマを見ているような気持ちで見守っていた俺の横で、背中の痒いところに手が届かなくて落ち着かないと言わんばかりの声を、傍らの橘が漏らしている。
「何だよ」
「その、今さらこんなことを言うのもあれなんですけど、あの二人がやってること、止めた方が……」
「はぁ?」
 今さらこいつは何を言い出してるんだ? すべて承知の上で俺たちを佐々木の閉鎖空間内に連れてきたのはおまえじゃないか。そもそも、止めると言って今のあいつらに何をしろと言うんだ。
「やっぱり……やっぱりダメです! これ、止めてください。やめさせて!」
「何なんだ急に!? そんなことを言われても俺には、」
 訳がわからん橘の突然の錯乱具合を諭そうと口を開いた俺だが、最後まで言えなかった。言う前に事を起こしたヤツがいたからだ。
 周防九曜が黙して語らずの口から、長門と朝倉のハーモニーに割ってはいるかのように、件の高速言語を口にする。
「うわっ!」
 まるで金属をこすり合わせるような、あるいは黒板に爪を立てるような、空気が爆ぜるような耳障りな音が駆け抜ける。鼓膜を振るわすその音が駆け抜ける一瞬だけ両手で耳を押さえた俺は、不愉快な音が消えた頃合いで顔を上げた。
 閉鎖空間らしい静寂が戻っていた。俺たちが出す衣擦れの音、あるいは息づかいの音だけが妙に大きく聞こえる。長門と朝倉のハーモニーも、それに割って入った九曜の高速言語も止んでいた。空気が凍てつく瞬間とは、まさに今のこのときを指すのかもしれない。
「ちょっと、何するの!? どういうつもりよ!」
 そんな凍結した空気に、怒りという炎で溶かしたのは朝倉だった。事が順調に進んでいたのかそうでないのか不明だが、どちらであっても自分がやろうとしていたことに横から割って入って邪魔をされれば、そりゃあ怒鳴り散らしたくもなるだろう。
「────いる────ふたり──────いえ、一人────わからない────。でも────消える────……」
 朝倉の怒りが解っているのかいないのか、九曜はいつもの調子で完璧なまでに意味が解らないことを口走った。何を言いたいんだ、こいつは?
「何なの、いったい?」
 九曜の無意味な行動と台詞で毒気を抜かれたか、朝倉は俺に九曜の発言意図の通訳を持ちかけてくるが、俺だって何が何やらさっぱりだ。
「そんなことよりも、そっちはどうなんだ? 何をしていたのかさっぱりなんだが、上手く行ったのか?」
「境界部分はなんとか探り当てたけど、TPDDを使う前に邪魔されたもの。まだ終わってないわ。あと一手順ですべて終わるんだから、邪魔しないで」
「邪魔とかではないです!」
 橘が、どこかしら慌てるような、焦っているような声音で朝倉に食って掛かった。
「今はまだ、閉鎖空間の分離はしないほうがいいです。上手くは言えないけれど……今、それをすると取り返しのつかないことになります」
「何のこと?」
 俺だって解らない。なんで橘はそんなことを急に言い出してるんだ。
「待って」
 どこか落ち着かない素振りを見せている橘と、急に邪魔をした九曜に首を傾げている俺と朝倉だが、長門は違うらしい。待てと言うや否や、黒い煙があふれ出している室内をトレースするかのごとく凝視しはじめた。
「……いる」
「いる?」
 九曜もそう言っていた。いるって、ここは無人の世界だろ。橘の導きあって俺たちはいるわけだが、それ以外には誰もいない……いや、いるって、まさか。
「佐々木……か? いや、ハルヒの方か? 居るのか、ここに」
 俺の脳裏に過ぎったのは、ハルヒが世界を作り替えちまう寸前まで行った、昨年五月末の閉鎖空間でのことだった。あそこには何故か俺と、そして閉鎖空間を作り上げたハルヒ自身もいた。
 前例があるんだ。ハルヒが自分の作り出した閉鎖空間の中に入り込んでいた前例が。そして九曜と長門がそろって「いる」と言っている。
 ここにいる俺たち以外に誰かが居るとすれば、残る可能性はその二人しかいない。
「だが、あいつらは外だろう。ハルヒはベッドで寝ていた。佐々木も、朝比奈さんがどこか横になる場所へ連れて行っている。ここに居るわけがない」
「肉体は外にある。だが、ここにいるのは彼女たちの心。人はそれを魂と呼ぶかもしれないが、それともまた違うもの。彼女たちそれぞれを形作る……記憶、がここに居る。でもそれは曖昧なもの。どちらにでもなれる可能性。この閉鎖空間と同じように、二人はひとつになっている。互いの境界線がはっきりしない」
「正直に言うが、よく解らん。結論だけ言ってくれ。このまま閉鎖空間を切り離したとすれば、二人はどうなるんだ?」
「それでも目覚めない」
 おい……待ってくれ。それじゃここでやろうとしていることは、すべて無駄だってことなのか?
「────言葉────」
 ぽつりと、九曜がそう言った。
「なんだって?」
「彼女が──────わたしに、くれた────言葉、を────わたしは────わたしなのだと──────……」
「ああ、そうか」
 難解な九曜の言葉を理解したのは、朝倉だった。
「今ここにいるであろう涼宮さんと佐々木さんは、自分が誰なのか解っていない状態なのかもしれない。自我の境界線が曖昧になっているなら、たぶんそうだと思うわ。だからそれもはっきりさせなくちゃダメなの。よかったわ、あなたがここにいて」
 朝倉が、俺の気持ちを不安にさせるには充分な笑みを浮かべてみせる。
「何だよ」
「閉鎖空間の切り離しは、いつまでも先延ばしに出来ることじゃないわ。現実世界に影響を及ぼすもの。だから同時進行でしなくちゃならない。わたしと長門さんはこのまま作業を続けるから、あなたは涼宮さんを起こして来てあげて。この闇の中に、たぶんいる」
 つまりこいつは、黒い煙があふれ出している部屋の中へ入れと、俺に言ってるわけか。
「ちょっと、ちょっと待ってください。涼宮さんはそれでいいかもしれないですが、それなら佐々木さんは? 佐々木さんはどうするんですか」
「同時進行で進める以上、どちらかは後回しにするしかない。最悪な事態を想定すれば、確かにこのまま目覚めないことになるかもしれないけど、別に消えて無くなるわけじゃないわ。今は……正直に言うね。起こす方法は何も思いつかない。でも、可能性がゼロになるわけでもない。ゼロでなければ、必ず何か方法はあるの」
「限りなくゼロに近い話をされても困るのです。起こす人が必要なら、わたしが佐々木さんを、」
「それ無理」
「どうして!?」
「あなたはたぶん、佐々木さんとそれほど近い位置にいないんじゃない? ハッキリ言えば、佐々木さんはあなたに彼ほど心を許していない。ここにいるのは、涼宮さんと佐々木さんの心。たぶん、近寄ろうとしても近付けない。拒絶される」
「そんな……」
 橘は、この世の終わりを告げられたように蒼白になって俺を見る。
 佐々木が橘に心を許してないと朝倉は言うが……それはどうだろう。俺には何とも言えないな。佐々木が何をどう思っているのか、それを正確に知るのはやはり佐々木自身だから、俺がどう思っていても確証はない。
「それじゃいい? 閉鎖空間の境界領域を涼宮さんの閉鎖空間寄りで切り離してからTPDDを使うから……ま、いいわ。あなたはとにかく、その部屋の中に入って」
「待て、朝倉」
「心配しなくても大丈夫よ」
「そうじゃない。たたき起こすなら、まずは佐々木からだ」
「えっ?」
 え、って何だ。どちらかを優先させるというのであれば、誰がどう考えても佐々木からに決まってるじゃないか。
「ねぇ、わたしの話、ちゃんと聞いてた? 確かにどちらを先にしてもいいけれど、でもよく考えて。あなたは涼宮さんが大切なんじゃないの? なのにどうして佐々木さんを優先させるのよ」
「俺は人を天秤に掛けるつもりはない。そもそもあの二人をどうして天秤に掛けなくちゃならないんだ。何度も言うが、俺は二人とも助けたいんだ。それが同時に出来ないなら、だったらハルヒは後回しだ」
「だからどうしてよ!」
 埒が明かない。そもそも、そんなことをわざわざ口に出してまで説明しなけりゃならない理由はない。ちょっと考えれば解ることだ。
「何よそれ。意味が解らない。長門さんだってそうでしょう?」
 問われた長門は、黒水晶よりも深い闇色の瞳で俺をジッと見つめ、すぐに顔を背けた。
「あなたがそうと決めたのであれば、そうすればいい」
「ちょっと、長門さん!」
「時間がない。続けて」
「でも」
「続けて」
 無表情の長門に迫られて、朝倉は喉を鳴らすように言葉をつまらせた。そりゃあ長門に睨まれればそうなる。
「解ったわよ。わたしはわたしがやることをするわ。あとは好きにすればいいじゃない!」
 なかばヤケクソ気味な朝倉は、再び高速呪文を唱え始めた。合わせるように、長門も歌い始める。これで俺が黒い煙吹き出す部屋の中に入ればいいのか?
「あの」
 そうしなければならないのは解っているが、それでもどうも躊躇う俺に、橘が珍しく不安げな表情を見せていた。
「何だよ」
「佐々木さんのこと、お願いします」
「解ってる。いいからちょっと待ってくれ。さすがに、」
「本当にお願いします」
 重ねてそういう橘は、いつにも増して真面目だ。ちらりと九曜に目を向ければ、あいつも突き刺すような視線を向けている。
「できることはするさ」
 任せておけ、と言えない自分が情けないが、そう言える根拠もないってのが正直なところなんだ。俺も男だから少しくらいは格好を付けたいが、どうもそうはさせてくれないらしい。
 溜息と一緒に肺の空気を一気に吐き出して、新鮮な空気を目一杯吸い込んでから、俺は黒い煙吹き出す部屋の中に飛び込んだ。

つづく
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★無題
NAME: Miza
年末は何かと忙しいですよねー。
こっちも入稿が間・に・合・わ・ねぇぇぇ!

ハルヒを後回しにした理由は・・・それだけ繋がりが強いってことなのかな。
むむー。キョンがんばれ!
2007/11/27(Tue)10:42:03 編集
ただ純粋に仕事量が多くて忙しいなら文句もないんですが、そうでないのが困りものなんですぅ('A`)
【2007/11/28 03:50】
★無題
NAME: BPS
そんなヤバイ状況で更新してくれるにのまえさんに惚れた。

やっぱ締めはキョンですね。
2007/11/27(Tue)11:37:49 編集
この日に更新しておかないと、次がいつになるかサッパリだったので。
〆はやっぱりキョンくんですヨ!
【2007/11/28 03:51】
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