category: 日記
DATE : 2008/03/31 (Mon)
DATE : 2008/03/31 (Mon)
ひとまず書きためていた分はココまでなんです。
またしばらく書きためて、ある程度たまったらUPしてこうかなぁなどと考えていたりいなかったり。
そういえば今日で3月も終わりですネ。明日から新年度の始まりですが、だからと言って何かあるわけでもなく。せいぜい、部屋の模様替えをする程度でしょうか。
ぶっちゃけ、今の作業スペースはあまりよろしくない感じでありまして、なんとか一新したいところ。もう少し机が広くないと、作業しにくくてかなわんのです。
早々となんとかしたいナァ。
なんて思いつつ、今日はこのへんで。
またしばらく書きためて、ある程度たまったらUPしてこうかなぁなどと考えていたりいなかったり。
そういえば今日で3月も終わりですネ。明日から新年度の始まりですが、だからと言って何かあるわけでもなく。せいぜい、部屋の模様替えをする程度でしょうか。
ぶっちゃけ、今の作業スペースはあまりよろしくない感じでありまして、なんとか一新したいところ。もう少し机が広くないと、作業しにくくてかなわんのです。
早々となんとかしたいナァ。
なんて思いつつ、今日はこのへんで。
前回はこちら
森園生の変心:11
さすがに三日目になると、いくら俺でも体が順応してくれるらしい。つい数日前までなら「早い時間だ」と思える時刻に目が覚めて、体も気怠さを感じずに動いてくれる。慣れというものは恐ろしいね。
妹なんかは俺を起こすことがなくなって少しつまらなさそうにしているが、こっちにしてみれば朝っぱらから惨い仕打ちに遭うこともなく、清々した気分だ。
そんな清々しい気分を維持できるかどうかは、すべてハルヒの機嫌次第である。昨日のヘソ曲げから今日までその態度が続いているとは思えないから、まぁ問題ないだろう。
「…………」
教室に足を踏み入れて、考えが甘かったと今になって思い知らされる。自分の席に座ってぼんやり窓の外を眺めているハルヒは、パッと見た感じじゃいつも通りだ。不機嫌さなんて微塵も感じられない……が、俺の姿を目に留めるや否や、眉根に皺を寄せて口をへの字に曲げ、そんな勢いじゃ首がつるんじゃないかと思えるような勢いでそっぽを向いた。
なるほど……と、納得する。
俺を目にするまで、ハルヒの態度はどうやら普通だった。けれど俺を見るや否やであの態度だ。不機嫌の矛先は世界全域に向いているわけではなく、俺個人に向けられているようで、故に世界に対する不満はないのだから世界を作り替えるような閉鎖空間は発生してないらしい。
そうかそうか、それで世界は平和なのか。
冗談じゃない。
世界全域に影響を及ぼすハルヒの不機嫌が、俺個人に集中して向けられているなどと、考えるだけでも恐ろしい。そんなイカレたパワーを俺一人に向けられているのだとすれば、今はまだ平気っぽいが、今後、俺自身の体調にどのような変化が出るのか、わかったもんじゃない。
「おはよう、ハルヒ」
迂闊な事は何も言えやしない。当たり障りのない朝の挨拶で出方をうかがうことにしてみれば、ガン無視された。
「あ〜……そういえば、週末の土曜日には、市内探索をするのか?」
「なんで?」
随分と険のある声で聞き返された。
「いや、もしかすると用事が入るかもしれないような気がするんで確認してみただけなんだが」
「そんな先のことなんて、知ったこっちゃないわよ」
バッサリ切って、ハルヒは再び窓の外に目を向けた。
ダメだこりゃ。今はもう、何も言うまい。幸いにして今はまだ俺自身に大きな変化があるわけもなく、こいつの気持ちがある程度落ち着くまで放っておいた方がよさそうだ。厄介なことは先延ばしするに限るってわけさ。
だがしかし──。
厄介なことかどうかは別として、ハルヒと違い、訳がわからないからと素知らぬ顔をしていられない話もある。
いつの頃からか俺でもわからんが、ここ最近、妙に気もそぞろな長門は、果たして鶴屋さんが言うように恋煩いをしているんだろうか。あの長門が……ねぇ。
俺には一概に信じられない話だが、そんなことを言ったのは鶴屋さんだからなぁ。直に長門の状態を見てないとは言え、妙なところで鋭いあの人の言葉は無視できない。恋煩いということでなくとも、何かしらの悩みを抱えているんじゃないだろうか。
それも、俺たちの誰にも言えないような悩みだ。
これがもし、いつぞやの世界改変のような大事になる話であれば、今なら事前にきちんと打ち明けてくれるだろう。だがそうしないということは、至極個人的な悩みである可能性は大だ。
水くさい、と言えば水くさい話だが、長門にだって誰にも言えずに抱え込むような悩みがあって当たり前さ。一人悶々としているかもしれない。
だとして……さて、それに気付いた俺はどうするべきか。気付かないふりをするのがいいかもしれないが、そういうことをすれば長門のことだ、悶々としたまま、ため込み続けて、ある時を境に大爆発を起こしそうで不安だ。
そもそも朝倉がいない今、あいつが抱えるであろうストレスの吐き出し口はなくなっていそうだしな。
夏のあの日、ハルヒと佐々木の閉鎖空間が共鳴したあのときに、過去の朝倉と今の長門が邂逅した姿を見て、長門にとって朝倉は本来なら頼るべき相手、朝倉にとって長門は守るべき相手だったんだろうと思った。二人がそう言ったわけじゃないが、二人が協力し合っていた姿を見た俺の感想として、そう思うわけだ。
けれど朝倉はその役目を俺に丸投げしちまった。だからあの茶番の凶行を起こして表舞台から身を引いたんだろう。俺と長門の絆を作るために。
となれば、本来朝倉がやらなければならないことは俺の役目となり、もし長門が悩みを抱えているのなら、その受け口になるのも俺の役目ってことになっちまう。そういうことを、あいつは俺に押しつけたんだ。
やはり、見て見ぬふりはできないか。
放課後になり、俺に対する怒りが未だに収まらないハルヒの殺気から逃げ出すように部室に飛び込んだ俺よりも早く、窓辺の指定席で本を読み続ける長門の姿を見つけて、俺はそんなことを考えた。
「長門」
呼びかければ、本を読んでいた長門はページをめくろうとしていた指を震えるように一瞬だけ止めて、何事もなかったかのように次の一文に目を通したままだった。
ま、いつも通りの反応と言えばその通りだ。一瞬だけとは言え、動きを止めたということはこっちの声も聞こえているんだろう。
だから、長門が顔を俺に向けずとも言葉を続ける。
「何かあったのか? あー……その、悩み、とか」
「……何も」
並ぶ活字に目を落としたまま、素っ気なく答えちゃいるが、その間はなんだと問いたい。
「けっこう深刻な悩みだったりするのか?」
「別に」
とりつく島もない……と、他のヤツがこんな態度をしていればそう思うところだが、何しろ相手は長門だ。機嫌の良し悪しで言えばいつもと変わらない。もしくは、俺との会話よりも本を読む方に集中したいが故の素っ気なさかもな。
「もしかして、恋煩いとかじゃないだろうな?」
遠回しに探りを入れるより、ここはこっちが思うことをストレートに聞いた方がいいような気がした。気を遣えと言われそうだが、長門はそんなことで気を悪くするようなタイプではないし、むしろ遠回しな言葉は通じなさそうでもある。
「…………」
そう問えば、長門はようやく本から視線を上げて俺を見た。揺るぎもしないその眼差しは、果たして何を言いたいのか……こっちが長門のことを気に掛けているのに、むしろ長門の方が俺のことを気遣っているような気がする。
悪い表現を使えば、妙なことを言い出した相手を憐れんでるように見つめることしばしの時間。そろそろ居心地の悪さを感じるくらいに見つめられてから──。
「ない」
──わずか一言、そう答えて再び本に視線を戻した。
「そうかそうか」
その言葉を素直に信じるか否かと問われれば、信じようと思う。普通ならこんなストレートな問いかけに、本当に恋煩いをしているのだとしても正直に答えなさそうだが、長門はそういう真似をしない……むしろ、できなさそうだ。
ということは、やはり長門の様子がおかしいのは、恋煩い云々ではないらしい。が、まったく悩みもなくいつも通りとも思えない。
何か抱え込んでいるのは確実だ。じゃあ、それは何だろう? さっぱり見当も付かない。
「まぁ……なんだ」
どうにも鏡に向かってにらめっこしている気分になってきた。これ以上、下手に食い下がっても答えてくれなさそうだ。
「話せるようなことなら、俺じゃなくても他の奴らに相談してみればいいんじゃないか?」
「…………」
俺のその言葉を、長門はどう受け取ったんだろう。黙して語らず、視線は本のページに落としたままで何も言わなかった。
ならばこれ以上、こっちからあれこれ問い質すのはやめておこう。そうまでして言いたくない、あるいは言えない話なら、無理に聞きだそうとしても長門を困らせるだけになる。よかれとして思ったことが裏目に出るのは、双方にとって勘弁したいところだ。
それならそうで、俺から長門に言うべき言葉は何もない。そろそろ朝比奈さんが来てくれてお茶でも淹れてくれないだろうか。
「悩み……では……が……」
沈黙に包まれて、俺が長門の心配から朝比奈さんのお茶に考えをシフトさせた頃合いに、交通量の多い環状線の草場で儚く鳴く鈴虫の鳴き声よりも聞き取りにくい声で、長門がぽつりと何かを呟いた。
「何だって?」
「……あの姿は……」
「すみませぇ〜ん、遅くなっちゃいましたー」
口の中で転がすような声音がよく聞き取れなくて、俺が改めて聞き直そうとする合いの手を阻むかのように開かれるドア。息を切らせて部室に駆け込んできたのは朝比奈さんであり、思わず俺も長門もドアに目を向けていた。
「あ……えっと……何か、あんた……ん、です……か?」
「いえ、そういうわけでなく……ああ、長門。それで、何だって?」
「別に」
気がつけば、長門はすでに本に視線を戻していた。
「何も」
戻した上で、答える言葉は素っ気ない。もしかして、何か言ったと思ったのは俺の気のせいだったんだろうか? そう思えるほど、その日の長門はそれ以上の言葉を口せず、なのに帰り間際の読書終了時間はわずかにズレていた。
んー……んん〜……ここはひとつ、アプローチの方法を変えてみるべきだろうか。例えば……そうだな、俺よりも近しい存在の喜緑さんにでも相談してみれば、上手く聞き出してくれるかもしれない。
……いや、あの人を巻き込むのは危険か。いろいろな意味で話をややこしくされそうだ。それは勘弁願いたい。心の奥底からそう思う。
つづく
森園生の変心:11
さすがに三日目になると、いくら俺でも体が順応してくれるらしい。つい数日前までなら「早い時間だ」と思える時刻に目が覚めて、体も気怠さを感じずに動いてくれる。慣れというものは恐ろしいね。
妹なんかは俺を起こすことがなくなって少しつまらなさそうにしているが、こっちにしてみれば朝っぱらから惨い仕打ちに遭うこともなく、清々した気分だ。
そんな清々しい気分を維持できるかどうかは、すべてハルヒの機嫌次第である。昨日のヘソ曲げから今日までその態度が続いているとは思えないから、まぁ問題ないだろう。
「…………」
教室に足を踏み入れて、考えが甘かったと今になって思い知らされる。自分の席に座ってぼんやり窓の外を眺めているハルヒは、パッと見た感じじゃいつも通りだ。不機嫌さなんて微塵も感じられない……が、俺の姿を目に留めるや否や、眉根に皺を寄せて口をへの字に曲げ、そんな勢いじゃ首がつるんじゃないかと思えるような勢いでそっぽを向いた。
なるほど……と、納得する。
俺を目にするまで、ハルヒの態度はどうやら普通だった。けれど俺を見るや否やであの態度だ。不機嫌の矛先は世界全域に向いているわけではなく、俺個人に向けられているようで、故に世界に対する不満はないのだから世界を作り替えるような閉鎖空間は発生してないらしい。
そうかそうか、それで世界は平和なのか。
冗談じゃない。
世界全域に影響を及ぼすハルヒの不機嫌が、俺個人に集中して向けられているなどと、考えるだけでも恐ろしい。そんなイカレたパワーを俺一人に向けられているのだとすれば、今はまだ平気っぽいが、今後、俺自身の体調にどのような変化が出るのか、わかったもんじゃない。
「おはよう、ハルヒ」
迂闊な事は何も言えやしない。当たり障りのない朝の挨拶で出方をうかがうことにしてみれば、ガン無視された。
「あ〜……そういえば、週末の土曜日には、市内探索をするのか?」
「なんで?」
随分と険のある声で聞き返された。
「いや、もしかすると用事が入るかもしれないような気がするんで確認してみただけなんだが」
「そんな先のことなんて、知ったこっちゃないわよ」
バッサリ切って、ハルヒは再び窓の外に目を向けた。
ダメだこりゃ。今はもう、何も言うまい。幸いにして今はまだ俺自身に大きな変化があるわけもなく、こいつの気持ちがある程度落ち着くまで放っておいた方がよさそうだ。厄介なことは先延ばしするに限るってわけさ。
だがしかし──。
厄介なことかどうかは別として、ハルヒと違い、訳がわからないからと素知らぬ顔をしていられない話もある。
いつの頃からか俺でもわからんが、ここ最近、妙に気もそぞろな長門は、果たして鶴屋さんが言うように恋煩いをしているんだろうか。あの長門が……ねぇ。
俺には一概に信じられない話だが、そんなことを言ったのは鶴屋さんだからなぁ。直に長門の状態を見てないとは言え、妙なところで鋭いあの人の言葉は無視できない。恋煩いということでなくとも、何かしらの悩みを抱えているんじゃないだろうか。
それも、俺たちの誰にも言えないような悩みだ。
これがもし、いつぞやの世界改変のような大事になる話であれば、今なら事前にきちんと打ち明けてくれるだろう。だがそうしないということは、至極個人的な悩みである可能性は大だ。
水くさい、と言えば水くさい話だが、長門にだって誰にも言えずに抱え込むような悩みがあって当たり前さ。一人悶々としているかもしれない。
だとして……さて、それに気付いた俺はどうするべきか。気付かないふりをするのがいいかもしれないが、そういうことをすれば長門のことだ、悶々としたまま、ため込み続けて、ある時を境に大爆発を起こしそうで不安だ。
そもそも朝倉がいない今、あいつが抱えるであろうストレスの吐き出し口はなくなっていそうだしな。
夏のあの日、ハルヒと佐々木の閉鎖空間が共鳴したあのときに、過去の朝倉と今の長門が邂逅した姿を見て、長門にとって朝倉は本来なら頼るべき相手、朝倉にとって長門は守るべき相手だったんだろうと思った。二人がそう言ったわけじゃないが、二人が協力し合っていた姿を見た俺の感想として、そう思うわけだ。
けれど朝倉はその役目を俺に丸投げしちまった。だからあの茶番の凶行を起こして表舞台から身を引いたんだろう。俺と長門の絆を作るために。
となれば、本来朝倉がやらなければならないことは俺の役目となり、もし長門が悩みを抱えているのなら、その受け口になるのも俺の役目ってことになっちまう。そういうことを、あいつは俺に押しつけたんだ。
やはり、見て見ぬふりはできないか。
放課後になり、俺に対する怒りが未だに収まらないハルヒの殺気から逃げ出すように部室に飛び込んだ俺よりも早く、窓辺の指定席で本を読み続ける長門の姿を見つけて、俺はそんなことを考えた。
「長門」
呼びかければ、本を読んでいた長門はページをめくろうとしていた指を震えるように一瞬だけ止めて、何事もなかったかのように次の一文に目を通したままだった。
ま、いつも通りの反応と言えばその通りだ。一瞬だけとは言え、動きを止めたということはこっちの声も聞こえているんだろう。
だから、長門が顔を俺に向けずとも言葉を続ける。
「何かあったのか? あー……その、悩み、とか」
「……何も」
並ぶ活字に目を落としたまま、素っ気なく答えちゃいるが、その間はなんだと問いたい。
「けっこう深刻な悩みだったりするのか?」
「別に」
とりつく島もない……と、他のヤツがこんな態度をしていればそう思うところだが、何しろ相手は長門だ。機嫌の良し悪しで言えばいつもと変わらない。もしくは、俺との会話よりも本を読む方に集中したいが故の素っ気なさかもな。
「もしかして、恋煩いとかじゃないだろうな?」
遠回しに探りを入れるより、ここはこっちが思うことをストレートに聞いた方がいいような気がした。気を遣えと言われそうだが、長門はそんなことで気を悪くするようなタイプではないし、むしろ遠回しな言葉は通じなさそうでもある。
「…………」
そう問えば、長門はようやく本から視線を上げて俺を見た。揺るぎもしないその眼差しは、果たして何を言いたいのか……こっちが長門のことを気に掛けているのに、むしろ長門の方が俺のことを気遣っているような気がする。
悪い表現を使えば、妙なことを言い出した相手を憐れんでるように見つめることしばしの時間。そろそろ居心地の悪さを感じるくらいに見つめられてから──。
「ない」
──わずか一言、そう答えて再び本に視線を戻した。
「そうかそうか」
その言葉を素直に信じるか否かと問われれば、信じようと思う。普通ならこんなストレートな問いかけに、本当に恋煩いをしているのだとしても正直に答えなさそうだが、長門はそういう真似をしない……むしろ、できなさそうだ。
ということは、やはり長門の様子がおかしいのは、恋煩い云々ではないらしい。が、まったく悩みもなくいつも通りとも思えない。
何か抱え込んでいるのは確実だ。じゃあ、それは何だろう? さっぱり見当も付かない。
「まぁ……なんだ」
どうにも鏡に向かってにらめっこしている気分になってきた。これ以上、下手に食い下がっても答えてくれなさそうだ。
「話せるようなことなら、俺じゃなくても他の奴らに相談してみればいいんじゃないか?」
「…………」
俺のその言葉を、長門はどう受け取ったんだろう。黙して語らず、視線は本のページに落としたままで何も言わなかった。
ならばこれ以上、こっちからあれこれ問い質すのはやめておこう。そうまでして言いたくない、あるいは言えない話なら、無理に聞きだそうとしても長門を困らせるだけになる。よかれとして思ったことが裏目に出るのは、双方にとって勘弁したいところだ。
それならそうで、俺から長門に言うべき言葉は何もない。そろそろ朝比奈さんが来てくれてお茶でも淹れてくれないだろうか。
「悩み……では……が……」
沈黙に包まれて、俺が長門の心配から朝比奈さんのお茶に考えをシフトさせた頃合いに、交通量の多い環状線の草場で儚く鳴く鈴虫の鳴き声よりも聞き取りにくい声で、長門がぽつりと何かを呟いた。
「何だって?」
「……あの姿は……」
「すみませぇ〜ん、遅くなっちゃいましたー」
口の中で転がすような声音がよく聞き取れなくて、俺が改めて聞き直そうとする合いの手を阻むかのように開かれるドア。息を切らせて部室に駆け込んできたのは朝比奈さんであり、思わず俺も長門もドアに目を向けていた。
「あ……えっと……何か、あんた……ん、です……か?」
「いえ、そういうわけでなく……ああ、長門。それで、何だって?」
「別に」
気がつけば、長門はすでに本に視線を戻していた。
「何も」
戻した上で、答える言葉は素っ気ない。もしかして、何か言ったと思ったのは俺の気のせいだったんだろうか? そう思えるほど、その日の長門はそれ以上の言葉を口せず、なのに帰り間際の読書終了時間はわずかにズレていた。
んー……んん〜……ここはひとつ、アプローチの方法を変えてみるべきだろうか。例えば……そうだな、俺よりも近しい存在の喜緑さんにでも相談してみれば、上手く聞き出してくれるかもしれない。
……いや、あの人を巻き込むのは危険か。いろいろな意味で話をややこしくされそうだ。それは勘弁願いたい。心の奥底からそう思う。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
喜緑さんは喜緑さんで、きっと今ごろは大変なんですよ。えーっと、たぶん。
自分は20日のSC39はサークルとしては参加しませんが、一般で行く予定ではあります。ま、予定は未定ですが!
自分は20日のSC39はサークルとしては参加しませんが、一般で行く予定ではあります。ま、予定は未定ですが!
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