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DATE : 2017/12/18 (Mon)
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DATE : 2008/11/07 (Fri)
前日、ちょろんと本屋に行ってみたらとある魔術の禁書目録SS 2が出ておりまして。あらやだ、10日発売じゃなかったのかしらと思いつつ購入して読んだわけです。
とりあえずまだ正式な発売日じゃないので感想とか内容についてとかは言いませんけど、それでもひとつだけ言いたい。

ブログでやれば?

いやホントに。内容の批判でも良し悪しでもなく、構成の話として純粋にそう思いました。これはもう、なんていうかAMWが有料の会員制ブログでも作ってそこでUPしたほうが読みやすいと思うんですけど。

ではまた。

前回はこちら
吉村美代子の奔走:6

 姿の見えないミヨキチに少なからず不安を覚えていても、あてもなく捜し続けていたって時間が無駄に過ぎていくだけだ。そもそもミヨキチを一人にするのは危険かもしれないという漠然とした不安だけで離れていられないと思っただけであり、それがミヨキチを是が非でも探し出さなければならない差し迫った理由とするには無理がある。
 それよりも目前に迫った確固たる不安要素は九曜とそれを見た喜緑さん、そんな喜緑さんの提案で呼び出すことになった朝比奈さんであり、そんな三人は俺の家に向かっているはずだった。
 漠然とした不安を感じるミヨキチの行方と、確固たる不安要素のある九曜、喜緑さん、朝比奈さんの組み合わせで、どちらを優先させるかとなれば選ぶまでもない。家には妹と母親がいるとは思うが、それでも俺がいないのに女性三人を、その中の一人は傍目に見れば心神喪失状態と言えなくもない。そんなのを俺がいない状況で家の中に招き入れたんでは、家族に白い目で見られるのがオチだ。ミヨキチにはあとで電話連絡でも入れてみればいいだろう。
 そう考えて急ぎ家に戻れば……思った通りの惨状となっていた。
「あら、お帰りなさいませ」
 喜緑さんが俺の部屋でお茶をすすっている。俺のベッドにはぞんざいに九曜が横たえられていて、マイルームにしてはひどく落ち着かない。
「お、お邪魔してます」
 朝比奈さんが俺を出迎える言葉を口にしてくれるのは嬉しい限りだ。が、浮かべる表情に戸惑いを含んでいる姿はいただけない。そんなことになっているのは、紛れもなく今のこの状況だからこそだろう。
 喜緑さんがいて、ベッドに九曜が横たえられていて、その中にぽつねんと置かれていたからか? もちろんそれもあるだろうが、それだけじゃない。
「あっ、キョンくんおかえり~」
 妹が朝比奈さんにじゃれついていたわけだ。
「何やってんだおまえは」
 朝比奈さんの膝の上で甘えるように寄り添う妹が羨ましいことこの上ない。だから……ってわけでもないが、その首根っこをひっつかまえ、尋ねたところで返ってくる言葉がわかりきっていることを聞いてみる。
「キョンくん、みくるちゃんたちを連れて来て、自分だけいないんだもん」
「そうかそうか。わかったからおまえは出ていけ」
「えーっ」
 えーっ、じゃなくて。
 そもそもどうして俺の客なのに妹が出しゃばって来るのか意味がわからん。何より今は妹の相手をしているような状況でもく、なもんで部屋から追い出すのは自然な流れだろう。
「さてと」
 座布団も用意せずに申し訳ないが、そんな洒落たものはないので勘弁願いたい。俺は並んで座っている朝比奈さんと喜緑さんの前に向き直る形で腰を下ろし、一息吐く意味合いでため息を漏らした。
「それで、なんで朝比奈さんを呼び出したわけですか?」
 まず最初に問いかけたのは喜緑さんの方からだ。湯飲みを両手で包み込むように持っているこの宇宙人は、朗らかな笑顔を浮かべたまま、わずかに小首を傾げる。
「その前に、わたしに言うべきことはございませんか?」
「……はい?」
 はて? 俺が思う本題を差し置いてまで『言わねばならぬこと』とやらに、さっぱり思い当たる節はないのだが。
「あらあら、あの小娘をこちらまで連れてきたのが誰なのか、すっかり忘却の彼方なのですね」
「ああ、そういえば。本当に、」
「先に申しておきますけれど」
 俺が適当に──適切で妥当という意味での適当に──謝辞のひとつでも口にしようとしたら、その直前で静かに割って入ってきた。
「次にどのような言葉を口にするかで、わたしに対する労いが如何ほどのものかを判断させていただきますね」
 ……俺に何を言わせたいんだ、この人は。
「えーっと、それで朝比奈さん」
「あらいやだ、コメントは先延ばしになさいますのね?」
 そんなことを言われても、何を言ったところでお気に召さないって態度をしてるじゃないですか。だったら多くを語らず、話は先に進めるのが懸命な判断ってものでしょう。
 俺は咳払いひとつ、改めて朝比奈さんに問いかけた。
「それで、喜緑さんは九曜のことは朝比奈さんに聞けって言ってたんですが、どういうことですか?」
「え、えっとぉ~……」
 けれど朝比奈さんは、何故か困ったように視線をあちこちに彷徨わせている。そんな言いにくいことを聞いた覚えはないし、朝比奈さんが挙動不審になる理由もわからん。
「どうしたんですか?」
「それが……その」
 朝比奈さんは見ていてつい抱きしめたくなるような衝動に駆られるほどに縮こまり、何をそこまでと思うほどに申し訳なさそうな表情を浮かべて。
「あたしもよくわからないんですけど……」
 と言った。
 さて、どうしよう。これは本当にどうしてくれよう。喜緑さんは「朝比奈さんなら一発解決」と言ってなかったかな? その結果がこれだ。俺でなくとも、この落とし前はどう付けてくれるんだと思うはずだ。
「何をおっしゃっいますやら。物事はもう少しポジティブにお考えになられた方がよろしいですよ?」
「何がですか」
「朝比奈さんが『わからない』とおっしゃったのであれば、つまりそこの小娘に起きている出来事は時間絡みの理由ではない、ということになりますでしょう? 漠然として無数にある選択肢の中から、ひとつが除外されたわけです。つまり物事が進展したじゃありませんか」
「そりゃどういう言い訳ですか」
「物事の証明をするには、多岐にわたるアプローチの仕方があるということですよ。ただし朝比奈さん、今の『わからない』という言葉は少々曖昧すぎですね。それは『まったく思い当たる節がない』という意味ですか? それとも『どうしてこんな症状になっているのか原因不明だ』という意味ですか?」
「え? えっとぉ~……」
 喜緑さんのやんわりとした追求に、朝比奈さんは判断を仰ぐように俺を見つめてくる。そんな眼差しを向けられたところで、俺には塵ほどの決定権さえありゃしない。そもそも朝比奈さんなら、言えないようなことは「禁則事項」という便利な言葉で強制的にシャットアウトされるだろうし、そうでなければ話したところで何の問題もない話だ。違うのか?
「あたし、その……本当によくわかってないんですけど……キョンくんのベッドで寝てる人のこと、ですよね? どうしてその人……浮いてるんですかぁ?」
 浮いてる……? 浮いてるってのは、どういう意味だ? 少なくとも俺の目には九曜が安っぽい3D映像のようにブレて見えているわけでもないんだが、朝比奈さんには何がどう見えているんだ?
「あ、ううん。そういうことじゃなくて……えっと、これは感覚的な話っていうか……その、なんて言えばいいのかな? その人の時間がおかしいの」
「ええっと……だから?」
「うー……んと、その人だけ別の時間にいるっていうか……同じ場所にいるけど違う世界にいるっていうのかな……? こんなことってあり得ないし、あたしも自分で言ってて信じられないことだから……うまく説明できないんだけど」
 朝比奈さんの言葉は、どこまでも自信なさげだ。いや、自信のあるなしとは別に、もしかすると禁則事項に抵触しないように言葉を選んで説明しようとしてくれているのかもしれない。そのせいなのか、結果としてさらに訳がわからなくなっている。
「つまりですね」
 俺の困惑と朝比奈さんの戸惑いを他所に、湯飲みを手の中で弄びながら口を開いたのは喜緑さんだった。
「心霊写真の作り方、なんですよ」
「しっ、しし、心霊写真なんですかぁっ?」
 えー……っと、喩えにしてはますます混乱させるようなことは言わないでもらいたい。言葉だけで朝比奈さんが怯えてるじゃないか。
「いえいえ、ですからトリックアートと申しましょうか、世の中にあるすべてが嘘か誠かは別として、人の体が透けて写っているものがございますでしょう? あれの作り方ってご存じですか?」
「作れるんですか、ああいうのは」
「カメラというのはフィルムに光りを当てて場の映像を焼き付けるものじゃございませんか。では仮に、同じフィルムに別々の映像を焼き付けようとするとどうなると思います?」
「どうなるんですか?」
「一枚のフィルムにふたつの映像が重なります」
 多少の期待を寄せて聞いてみれば、ごくごく当たり前の返答で肩すかしを食らった気分になった。
「ですから、そうなるとひとつの場面にふたつの映像が重なってしまうのですよ。たとえばこの部屋を撮影し、次に外の景色を同じフィルムに収めたとすれば、出力される映像は部屋の中なのに外の景色が映っている映像になるんです」
「はぁ……なるほど」
 その理屈はわかったが、それで今の状況と何がどう関係するんだ?
「つまり朝比奈さんには、そこの小娘が二重写しの写真のように見えているのではありませんか?」
 二重写しの写真みたいに? 実際のところ、どうなんですか朝比奈さん、と聞くまでもなく、朝比奈さんは喜緑さんの憶測を受けてキョトンとした表情を浮かべていた。
「あ、あのぉ~……なんだかよくわからないんですけど……」
 やっぱりこの人はイマイチわかっていなかった。
「あたしが思ったのは、その人が……えっと、正しい絵なのに違う手法で描かれているって言うのかな? だからええっと……キョンくん、初めて会ったころに時間のお話したことは覚えてる?」
「え? ああ、まぁ……パラパラマンガを喩えに出してたあれですか?」
「そう、そうなんです。あたしは、そのぅ……」
 言い淀み、朝比奈さんはちらりと喜緑さんを見る。何事かと思ったが、ふと思い至った。
「喜緑さんなら平気ですよ。えーっと、長門の親戚みたいなもんですから」
「そう言われてしまいますと、まるでわたしが長門さんのおばさんみたいですね」
 なんで親戚という単語でそういう発想になっちまいますかね。
「せめて親戚の優しいお姉さんとでも、」
「とにかく大丈夫です」
「え、えっと……」
 朝比奈さんも物凄く困った表情を浮かべてしまってるじゃないですか。余計なことは言わないでもらいたい。
「それで?」
「あ、はい。えっと、だからね。あたしはこの時代だと関係ない絵柄ってお話したでしょう? でもベッドで横になってるその人は……うーんっと、たとえばこの時代を鉛筆書きのパラパラマンガだとすると、その人は水彩で描かれたように感じるの。場面にもシーンにも合ってるんだけど、鉛筆描きの中に別の道具で描かれたみたいに」
 鉛筆描きの中に水彩の絵? それは確かに違和感があるし、朝比奈さん自身が言った『浮いている』というのも納得できる。鉛筆画の中に水彩画があれば、確かに浮いて見えるだろう。だとしても、だ。
「それって、どういうことになるんですか?」
「さぁ……?」
 朝比奈さんは指先を頬に当て、首を横に捻った。その仕草は大変可愛らしいのだが、今のこの状況では心ゆくまで堪能できそうにない。結局のところ、朝比奈さんでは俺とは違う視点で状況を把握できちゃいるが、根本的な疑問は俺と同じレベルにいるらしい。
 となれば、残る頼みは一人だけ。
「どう思います? 喜緑さん」
「ひとつだけはっきりしたのは、その小娘が過去やら未来から連れてこられたわけではない、ということですね。そうなのでしょう? 朝比奈さん」
「え? え、ええ……それは間違いないです」
 そこだけはさすがに時間絡みが専門なだけあって、朝比奈さんもしっかり断言する。
「でも、そういうことは喜緑さんにもわかるんじゃないですか?」
「ええ、まぁ」
 聞けばあっさり頷いた。
「ですからわたし、おおよそは把握してました。けれど確証が持てなかったものですから、時間関係の専門家からコメントをお聞きしたかっただけです」
「それで、九曜はどうなっちまってんですか?」
「はっきりとはわかりませんけれど……」
 喜緑さんはしばし考え込む素振りを見せて、
「もしかすると、何かしらの情報的な干渉を受けているんじゃないでしょうか」
「情報的な干渉?」
「わたしもそうですが、その小娘も別系統とは言え母体は情報生命体です。情報生命体には時間的概念がありません。けれどインターフェースという物質情報を得てこの惑星表面上に存在する以上、時間というものの束縛を受けることになります。わたしは最初、小娘は時間的な要素による攻撃情報を受けたのではないかと思ったのですが……」
 ちらり、と喜緑さんは朝比奈さんを見る。まさか朝比奈さんを疑ってるのか?
「小娘の立場で言えば、敵勢力の時間担当は朝比奈さんですから」
「あ、あたしそんなことは、」
「存じてます。そもそも朝比奈さんにそういうことができるとも思えませんし」
 まぁ、俺だって朝比奈さんがそこまでできるとは思ってない……が、大人の朝比奈さんだったらどうだろう? 時間の流れとは時に残酷なもので、そういうことも……あってほしくないが『あり得ない』と断言できない。
 だからそれとなく、朝比奈さんの上司の仕業だっていうようなことを、オブラートに包んだ表現で口にしてみたのだが、けれど返ってきた反応は予想とはまるで違うものだった。
「あ、あたしたちは、そのぅ……時間的な移動ができるだけであって、時間の流れに直接干渉できるような真似はできません。現時間平面に未来からの直接干渉はできないんです」
 それは本当にそうなのだろうか、と少し考えたが、できないという理由も以前に朝比奈さんは言っていた。時間の流れがパラパラマンガみたいなものなら、未来人というのはパラパラマンガの一コマに書き足された余計なイラストだと。何百ページもあるパラパラマンガのワンシーンに落書きをしても、ストーリーは変わらない。
 だから九曜が宇宙人であっても『今のこの時間』が存在すべき正しい時間なら、未来から直接的な干渉をすることはできない。せいぜい、言葉で誘導し、長いスパンで今後のストーリーが変わるように誘導するしかできない……って理屈か。
「だから直接的で時間的な……攻撃? みたいなことは、誰であってもできないんです」
「そうなんですか? うぅ~ん……」
 朝比奈さんがそう断言すれば、喜緑さんは何故か納得いかないように考え込んでしまった。
「どうしたんですか?」
「いえ……ふと思っただけです。もしかして、この小娘だけ時間を巻き戻されてるんじゃないかと」
 唐突に突拍子もないことを言い出した。何なんだ、時間を巻き戻すってのは?
「朝比奈さんがおっしゃるには、あの小娘はこの時間軸が正しく存在する場所なのに、時間的に見れば場にそぐわないのでしょう? それを考えると『一度進んだものが巻き戻されてここに在る』ということに近いのでは? なんてことを思いまして。どうでしょうか、朝比奈さん」
「え? あ……そう、そうですね」
 喜緑さんの言葉を吟味するように考えながら、朝比奈さんは自信なさげではあるものの、頷いた。
「今が正しいのに正しくない、ということですから……うぅ~ん、そういうものに近い……のかしら?」
「────────違う────」
 ようやく解決の糸口が見えかけてきたか、と思えたその矢先。喜緑さんと朝比奈さんの合致した憶測を一言で否定する声を飛ばしたのは、ようやく目を覚ました九曜自身だった。

つづく
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★無題
NAME: Miza
はわわわわわ!キョンくんのベッドに九曜さんが!?
喜緑さんの解決編はまだかなぁ。謎だらけだ・・・
2008/11/07(Fri)10:21:09 編集
さすがに床の上に放り出しておくことには、喜緑さんも躊躇いがあったみたいでして。
喜緑さんの解決編……んー、今回は脇役なので特に活躍しないんじゃないでしょうか。たぶん。
【2008/11/08 00:53】
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