忍者ブログ
[832] [831] [830] [829] [828] [827] [826] [825] [824] [823] [822]

DATE : 2017/07/26 (Wed)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


拍手する

DATE : 2008/11/11 (Tue)
ちょろちょろとSSの続きを書いていたわけですが、これがまた面倒なことに。大雑把なところは決めてるんですけどね、それを文章にして他所に伝わるようにしようとすると、どう表現すれば伝わりやすいか悩むところです。

まー、そんなわけで。

今回の話は、つまりこういうことになってましたということです。ここまで書いて、ようやく前回との繋がりが見えたでしょうという感じですか。それはそれで斬新だよね!

ん~……。

ではまた。

前回はこちら
吉村美代子の奔走:7

 目を覚ました九曜は、けれどベッドから起きあがるわけでもなく、横たわったままで首だけをこちらへ巡らせ、瞬きしているのかどうかさえ疑わしくなるような眼差しを向けてきている。まるで死体がこっちを見ているようで落ち着かず、事実、朝比奈さんなんかは小さな悲鳴を上げて俺の後ろに隠れてしまわれた。実のところを言えば俺もどこかに隠れたい気分ではあるが、そうも言ってられない。
「違うって、どういうことだ? おまえ、いったい何があった」
 ベッドの縁に詰め寄って九曜に問いかければ、眼球だけを動かして俺を見る。そういうのはそこはかとなく怖いからやめてくれと思うのだが、本当にやめて欲しいのはその次にこいつが取った行動だ。
 何の前触れもなく、無動作でいきなり人の手首をがっちり掴んで来やがった。
「え?」
 と、思う暇があったかどうか。九曜が掴んだ手首に電気が走ったような痺れが襲ってきた。そういえば街中でこいつが倒れる直前にも同じような真似をされたが、それにも増して今は──何だこれは?
「やめなさい」
 今度は後ろから喜緑さんに引っ張られ、九曜から引き離された。
「そんな真似をして、一般人に受け入れられるわけがないでしょう」
「え……え? ちょっ、何ですか?」
「何のことはありません。自分が持っている情報をあなたに直接流し込もうとしてたので止めたまでです。ただ、そんな真似をしても一般人には受け入れるだけのキャパシティがございませんから、よくて廃人、最悪死んでしまうかと思いまして。止めない方がよろしかったかしら?」
 止めてくれてありがとうと、声を大にして言いたい。そもそも、そんなことを平然とやらかそうとしていた九曜にはゾッとする。
 いきなりなんて真似しやがるんだ、と憤るのは当たり前だ。けれどその反面、ほんのわずかな一瞬だったが十倍速で流された映像らしきものが見えたのも事実。九曜が俺に渡そうとしていた情報が、今の映像だったってことか?
 そう。今、確かに見えたんだ。俺がいて、喜緑さんがいて、そしてあれは……朝倉、か。朝倉だった。そこに見えたのは確かに朝倉であり、けれど俺の記憶にない映像でもあった。
「おい、今のはなんだ? 何を見せようとしたんだ!?」
「──────歪み────情報を────正し──────創造した────データを定着────させた────……」
 さっぱりわからん。こいつの通訳は誰に頼めば正確に伝えてくれるんだ? 佐々木か、橘か、それとも藤原か。どっちにしろ今ここにはいないので、どうしようもない。
「言語での情報伝達は難しいものですから、だから直接自分が保持していた情報を渡そうとしていたんですね」
 そんな九曜を見て喜緑さんが冷静に分析しているが、じゃあどうするんだ? こいつが持っている情報がなんなのか、俺が垣間見た今の映像が何なのか、とても今の九曜がまともに伝えてくれるとは思えない。
「そうだ、喜緑さんが代わりに受け取ってください。俺じゃ無理でも喜緑さんならできるんでしょう?」
「わたしが、ですか? 嫌ですよ、そんなこと」
 問答無用で即座に却下された。悩む素振りすら見せちゃくれない。
「そんな得体の知れない相手から渡される情報だなんて、触れたくもありません。他所を当たってください」
「他所って」
 喜緑さんがダメで、じゃあ他に誰がいるって言うんだ。長門か? 長門だって喜緑さんと同じだろうし、そもそも九曜が相手じゃ喜緑さん以上に断固とした態度で拒否するに決まってる。
「あのぉ~……もしよかったら、あたしが代わりに受け取りましょうか?」
 嫌がる喜緑さんをどうやって説き伏せようかと悩む俺の耳に届いたのは、遠慮がちな朝比奈さんの声だった……のはいいが、代わりに受け取るって、朝比奈さんが? そんなことができるのか!?
「ええ、その程度のことなら。前に……えっと、朝倉さんにTPDDのバッチファイルを渡したように、ある程度の情報なら直接的な接触でやりとりできると思うんです。ただ、受け取り側になったことがないから、ちゃんとできるかわかりませんけど……」
 ……いや、できる。今の朝比奈さんは知らないだろうが、もっと未来の朝比奈さんは長門が世界を改変したときに、長門自身から指ちょんで改変時間のデータを受け取っていた。
 だから相手が九曜でも、できないことはないはずだ。ただ……できるからと言って、それを朝比奈さんにやらせるのには気が引ける。
「相手は九曜です。万が一のことがあったら、」
「あら、朝比奈さんではそうも心配なさるんですね。わたしとは大違いですこと」
 そこはかとなく喜緑さんがチクチクと突っかかってくるが、そりゃ心配する原因をあなたが作ったからでしょう、と言いたい。
 喜緑さんでさえ拒否する九曜が持つ情報とやらを、宇宙人と妙な方法で情報のやりとりができるとは言え、ただ未来から来ているだけの一般人である朝比奈さんに任せるのは、そりゃ気が引けるってもんだ。
「だ、大丈夫ですよ。ええっと……詳しくは禁則ですから言えませんけど……意識下でやりとりするデータに悪性のものがあっても汚染はあり得ないですから。それにその……九曜さんもそこまでして何かを伝えたいとしているんでしょう? それが出来ないのって想像以上に苦しいんです。だから何かお手伝いができるなら、やりたいって思うし」
 なんという献身的な発言だ。こんな台詞は、思っていてもなかなか口にできるもんじゃない。自分もそうだが、喜緑さんにこそ、是非とも見習ってもらいたい。
 が、朝比奈さんの決意がどれほどのものかわかったからと言っても、素直に「お願いします」と言えるわけでもない。わずかでも危険性が残されているのなら、個人的な心情としてやらせたくはない。
「けれど妥当な折衷案です。わたしは嫌ですし、あなたでは無理。なら朝比奈さんにお任せするしかありません」
「そりゃ……」
「大丈夫ですよ、万が一のときはわたしが責任を持ってお救いいたします。多少なりとも信用してくださいな」
「……わかりました」
 普段なら絶対信用ならない人だが、こういうときばかりはまったく逆だ。長門とは違う意味で頼りになるし、信頼もおける。喜緑さんが『責任を持つ』と言うのなら、そこに朝比奈さん自身に及ぶ深刻な『万が一』はあり得ない。
「じゃあ……」
 朝比奈さんがおずおずと九曜に手を差し伸べる。それとは対照的に、九曜は迷いもなく朝比奈さんの手を掴んだ。
 俺にやらかした時のように静電気が走るような音は聞こえず、見た目的には何ら変化はない……のだが。
「え……っ?」
 朝比奈さんはわずかに目を見開き、中腰だった体はよろめくように尻もちをついた。
「そ……んな、ことって……」
「朝比奈さん、どうしたんですか? 大丈夫ですか!?」
 今にも倒れ込みそうな朝比奈さんを支えて声を掛けても、朝比奈さんは茫然自失のままで反応が薄い。いったい、九曜から渡されたデータで何を見たんだ?
「何を見たんですか?」
 朝比奈さんの反応に、さすがの喜緑さんも気になったらしい。問いかけるその声音には、どこかしら探るような慎重さがある。
「どのようなデータを渡されたのか、詳しくお聞かせ願えますか?」
 より丁寧に、朝比奈さんの肩に手を添えて喜緑さんが声を掛ければ、朝比奈さんはようやく我に返ったらしい。
「あ、あの……記憶データなんです。なんですけど……でも、こんなことって……信じられません。それが本当に……でも、だとしたら……今日って」
 何を言ってるのかまるでわからない。それは俺たちに説明しようとしていると言うよりも、自分自身でもよくわからずに情報を整理しようとしているのかもしれない。
「要領を得ませんね。仕方ないですね、朝比奈さん。そのデータとやらをわたしにも渡してください。記憶データなのでしょう?」
「……え? あ、はい。ただの記憶データです。何かしらのプログラムファイルじゃないから改ざんされてるわけじゃないし……だから、ますます本当なのかって、」
「わかりましたから。はい、お願いします」
「え、ええ……」
 その申し出に頷きつつも躊躇いがちな朝比奈さんの手を、喜緑さんの方から積極的に握りしめる。さっきの九曜から朝比奈さんにしたときと同じように俺の目にはこれといった変化はないものの、喜緑さんの表情に僅かながらに陰りが入った。
「これはまた……無茶なことをしたものですね」
 どうやら喜緑さんも九曜から出てきたデータを朝比奈さん経由で把握したらしい。俺だけが蚊帳の外だ。そろそろちゃんと説明してくれたっていいだろ?
「いったい、何がどうなってんですか」
「上書き……ですね、一言で表すなら」
「上書き?」
「先ほど朝比奈さんがおっしゃっていましたけれど、時間というものは堅牢にして強固です。その流れを飛び越えることができるのは言うまでもないですけれど、時間そのものを操ることはできません。時間の流れというのは、誰にでもわかるシンプルで不動の物理法則なんですね。ですから、時間の流れに逆らうことはできますが、時間の流れそのものに干渉することは不可能です」
「……だから?」
「それでも時間の流れを巻き戻すことはできるようです。時間の流れそのものに干渉せず、けれど時間を巻き戻すには……さて、どうすればいいと思いますか?」
 まるで古泉みたいな問いかけ方だ。そんなことを聞かれても、わかるわけがない。
「観測者の感覚を狂わせればいいんです」
「……えーっと……?」
「今日は土曜日です。わたしもそう認識しております。あなたもそうですよね? おそらく世界中の誰もが──時差はあるとしても──今日は土曜日だと思っているはずです。では何故、今日が土曜日なのかと言うと、時間の流れという目に見えない概念を認識している我々が『土曜日だ』としているからです。けれど本来の時間が日曜日とか月曜日、いいえ土曜日以外の日であったとしたら……それってどういうことになるんでしょう?」
 どういうことって……何だ? 何の話だ? まったく意味がわからないし、どんな喩えだそれは? だからそれで、いったい何がどうなってるってんだ?
「ですから、今日が土曜日だとこの惑星規模で、いえ情報統合思念体ですらだまされてますから最低でもこの惑星がある銀河規模で、約一週間分の曜日感覚情報が改ざんされているんです」
「はぁ?」
 待て。待ってくれ。話が急にでかくなったぞ。何だって? 銀河規模で曜日感覚が改ざんされている!? それじゃ今日は……え? いやでも、曜日感覚が狂わされているからって、その間に起きたことは? それはどうなってんだ。
「おっしゃるとおり、実際に時間が巻き戻されたわけじゃありません。ただ、この一週間に起きた出来事すべての記憶が消され、その間に起きた物理的事象において致命的な差異情報を修正し、今日という日を『土曜日』に設定したんです。まぁ……あまり難しい理屈を抜きにすれば、時間が巻き戻されたと思っていただいて結構ですよ」
 結構ですよ……って、そんなことになってる事態そのものが、ちっとも結構な話じゃない。そもそも、その話は本当なのか? 時間の専門家は朝比奈さんだ。朝比奈さん的に今の話はどうなんだ?
「じ、時間の流れに……直接干渉することってできないんです。時間の流れっていうのは録画されてるものじゃなくて……ええっと、生放送のテレビ番組みたいなものなの。だから巻き戻すことなんて当然できなくて……でも、生放送の番組で同じことを同じ役者さんが同じように演じることは可能でしょう? その理論で言えば、擬似的に時間を巻き戻すことは可能だし……でも、そんなことって普通はできないもの。必ずどこかに差異が現れるはずよ。あり得ないわ。あり得ないけど……できないことじゃないし……」
 どうやら朝比奈さんは、理性でそれを否定したいのに現実問題として喜緑さんの言うとおりのことが起きている、と認めているようだ。認めたくないのに、状況がそれを認めざるを得ない、ってことか。
 なら、そんなことをやらかしたのは誰だ? 宇宙規模で一週間分の時間を巻き戻すような情報改ざんなんてでたらめなことをやらかしたのは……思い当たるところでは一人しかいない。そんなイカレた真似ができるヤツの心当たりはたった一人だ。
「ハルヒがまたそんな……厄介なことを?」
 呆れつつもそんなことを聞いてみれば、喜緑さんはふぅっとため息ひとつ。
「この情報改ざんは、確かに一週間の出来事をなかったことにして、いかにも時間を巻き戻しているようにしています。『存在しない日々を作り出している』と言えますし、つまりそれはゼロから情報を作り出しているに等しいものです。情報創造能力を持つ涼宮さんらしい力です……が、程度はひどく雑なものです。例外がそこにおりますので」
 と言って、九曜を指さす。そういえば、こいつはどうして上書きされた世界で以前の記憶を持ったままなんだ?
「改ざんされる直前にプロテクトを構築したらしく、難を逃れたようです。それでも余波でそんな有り様ですけれど……どっちにしろ、インターフェースに防がれる程度の改ざんを涼宮さんが行うはずがありません。彼女が行う情報創造能力は、そんな抜け穴のある代物ではございませんので」
 ハルヒのことを褒めているのか貶しているのかわからんが、つまり今回の出来事はハルヒがしでかしたわけじゃない、ってことを遠回しで言ってるようだ。
 なら、他にそんなことができるのは……九曜でもなく、喜緑さんでもなく、ハルヒの能力を流用して世界を再構築したヤツは……そんなことができるヤツの心当たりが、俺には一人だけあった。
「──────長門……有希────……」
 俺が思い描いていた人物の名を、九曜が口にした。

つづく
PR

拍手する
●この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
★無題
NAME: Miza
わーお!なんかすごい大事になっていますなぁ。しかもその犯人が長門さんですと!?
しかも今回の朝比奈さんは(って言ったら失礼だけどw)かっこいい!
2008/11/11(Tue)15:41:42 編集
どうにも長篇で「初恋」以降、パッとした出番がなかったもで、今回は朝比奈さんにも頑張ってもらおうかと思っておりますw どこまで朝比奈さん(小)が頑張れるのかわかりませんけども(;´Д`)
【2008/11/12 00:10】
●この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ [PR]
カウンター
メールアドレス
管理人に連絡する場合には、下記のアドレスからお願いします。
仕事依頼等も受け付けております。折り返し、本アドレスより返信いたします。
ブログ内検索
twitter
最新CM
[05/02 nothing_glass]
[08/03 前のHM忘れた]
[08/21 nao.]
[07/29 nao.]
[07/16 nao.]