category: 日記
DATE : 2007/10/25 (Thu)
DATE : 2007/10/25 (Thu)
しまった、今日はSS更新する日でした。すっかり忘れてて、別のことをしておりましたデスよ。
んーと。
今からササっと仕上げて参りますので、しばしお待ちクダサイ。
※03:30ごろ追加
駆け足なので誤字脱字は気にしちゃダメにょろよー、って鶴屋さんが言ってた!
んーと。
今からササっと仕上げて参りますので、しばしお待ちクダサイ。
※03:30ごろ追加
駆け足なので誤字脱字は気にしちゃダメにょろよー、って鶴屋さんが言ってた!
前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:二章-d
思わぬ展開に適時対応したいところではあるが、寝惚けた頭ではままならない。昼に部室で安らかな一時を過ごす目論みは、長門の方から話しかけてくるという思わぬ状況で露と消えた。消えたと言っても、寝たことは寝たんだ。十分……いや、五分くらいかもしれん。机に突っ伏してコンマ何秒で眠れるのは、未来から猫型ロボットがやってくるマンガの世界だけで充分だ。
おかげで放課後になった今も、まだ眠気を引きずっている。自分では真っ直ぐ歩いているつもりだが、もしかして斜行しがちになってるかもしれん。出来ることなら今日はこのまま真っ直ぐ家に帰ってベッドの中に倒れ込みたい気分だが……ああ、そういえば午前中に届いていたメールに目を通していなかった。どうせ佐々木から放課後の待ち合わせ場所についての連絡だろうとタカをくくって、放置しっぱなしだ。さすがにそろそろ目を通した方がいいかもしれん。
「ちょっとキョン」
長かった一日を終えて教室を出ようと席から腰を浮かせたところ、背後からハルヒの鋭い声が飛んできた。
「明日、あたしたちは夕方まで海にいるから。別に期待なんてしてないけど、来るんだったらそれまでに来なさいよ」
「解ってるよ、ちゃんと行くって」
「日が暮れてから来たって、もういないんだからね。そこんとこ、肝に銘じておきなさい」
声音だけで判断すればキツめな口調だが、表情も合わせてみればそこまでカリカリしているわけじゃなさそうだ。
「遅刻はいつものことだろ」
「開き直るな、バカ」
ハルヒの辛辣な言葉に肩をすくめて、俺は教室を後にした。生あくびを噛み殺し、携帯を手にフラフラと歩いて下駄箱まで向かう足取りは、ともすれば危なっかしいものだったかもしれない。
それがやってきたのは、二つ折りの携帯を開いてメールを確認しようとした、その直前だった。
「ちょっとキョンくんっ! なぁ~にそんな、ふらっふらなのさっ!」
「うわっ!」
背中をバシンと叩かれた弾みに、携帯を落っことしそうになった。幸いにしてストラップを手首に引っかけてたからよかったものを、そうでなけりゃ派手に吹っ飛んでたところだったぞ。
「驚かさないでくださいよ」
「ほんっとにフラフラだねぇ。んん~っ? 何を悪さしてんのかなっ!? おねーさんにちょろんと白状しちゃいなよっ!」
前触れもなく人を驚かせておいて、ケタケタ笑いながらそんな人聞きの悪いことを言うのは鶴屋さんを置いて他にない。何もたくらんじゃいませんし、叩いても埃すら出ませんよ。や、出ないですって。
「でもキョンくん、疲れてるみたいだけど本当に大丈夫? 昨日も部室に来なかったし……」
鶴屋さんの心配の仕方が冗談半分であるのなら、表情に浮かべてまで心配してくれるのは、魔窟と化した部室を浄化するスウィートエンジェル朝比奈さんしかいない。
この疲労困憊な我が身を癒してくれるのは、ヒマワリのような笑顔しかありません。不安と困惑混じりの表情なんて見せないでいただきたい──。
「──なんってこと考えちゃってたりしちゃってたりしてねっ! うっわーっ、キョンくん。そりゃヤバイって。イマドキ、ドラマでもそんな台詞を言わせる脚本家はいないって!」
「ちょっ、ちょっと鶴屋さん……」
なんだか勝手に人の心の声を脚色された気がしないでもないが、さすがの俺でもそこまでのコメントは咄嗟には出てこない。特に今の半眠半起の状態ではなおさらだ。だから朝比奈さん、そんな真っ赤にならなくていいですよ。そんなに真に受けられると、俺が本当にそんなことを言ったみたいで、逆にこっちが照れますよ。
「んん~? もしかしてもしかしなくてもっ! おねーさん、お邪魔っかな? いやーっ、ゴメンゴメン。んじゃ~、あとはキョンくん。みくるのことは任せたよっ! んじゃね~ぃっ!」
んじゃね~……って言われてもな、俺もこのまま今日は学校を出ちまうんだが。
「んもう、鶴屋さんたら……。ごめんね、キョンくん。なんだか疲れてるのに騒がしくして」
「いや、鶴屋さんの元気の良さは周りも元気にしてくれますからね。今の俺には有り難いですよ」
「そうですか? う~ん、それならいいんですけど……あっ、早く部室に行かなくちゃ。キョンくん、疲れてるみたいだから、うんっと美味しいお茶、淹れますね」
「あ~……」
古泉も長門も知らなかったんだから、朝比奈さんも知らなくて当たり前か。朝比奈さんのお茶には心引かれるものがあるが、それで佐々木を放置しとけば、何かと面倒なことになりそうな気もする。
「今日もちょっと、部室には顔を出せないんですよ。昨日のうちにハルヒに伝えておいたんですけどね、あいつ何も言ってなかったみたいで」
「え、そうなんですか?」
これで本日三度目になる、我が身に今起こっている状況説明を、前三人と同じように朝比奈さんにも説明すると、眉が八の字に垂れ下がった。
「そっかぁ~……それで昨日も一昨日も来られなかったんですね」
「そういうことなんですよ。ですから今日もこれから行かなくちゃならなくて」
「約束してるのなら、仕方ないですよね。でも、本当に大丈夫なの? あまり無茶しないでくださいね」
ハルヒとは対極に位置する心遣いに、心の中では大号泣だ。朝比奈さんからそんな言葉を頂ければ、何を置いても気力活力その他もろもろはフルチャージってもんです。あと三日間は不眠不休で戦えるね。
「あ、でも……それだと、明日の海も来られないんですよね。お弁当、一人分あまっちゃうかなぁ……」
「いや、それには顔を出しますよ。ええ、行きますとも。這ってでも行きますから、もしあるんだったら俺の分の弁当は何がなんでも確保しておいてください。特にハルヒと長門には匂いすら嗅がさないようにお願いします」
「ふふ……はい、わかりました。でも本当に無理しないでくださいね」
「大丈夫ですよ、自分の体のことですからね。自分が出来る限界ってのは解ってるつもりです。それじゃ、俺はこれで」
「あ、そうだキョンくん」
名残惜しいがいつまでも朝比奈さんと心休まる一時を過ごしてばかりもいられない。離れたくないという本能を押さえ込み、意を決して下校の途に着こうとしたところ、意外なことに朝比奈さんの方から呼び止めてきた。こうなれば俺の脆弱な自制心なんぞイチコロだ。速乾性の接着剤を塗られたかのように、足がぴたりと止まる。
「はい、何ですか?」
「あの……これ、キョンくんに相談することじゃないかもだけど、でもキョンくんしか話せる相手いなくて……」
「うん?」
なんだろう、このモジモジと今にも愛の告白をして来そうな態度は。そんなことをしてくるのであれば考えることなく首を縦に振るが、相談と前置きした時点でそれはないのも事実。そもそも、俺にしかできない相談ってなんだ?
「あの、五月のゴールデンウィークで……山で会った人のこと、覚えてる?」
山で会った……といえば、橘のことだろうか。
「ううん、その人じゃなくて……」
だよな。橘だったら、ゴールデンウィークのことを持ち出さなくてもその前にも駅前で遭遇しているわけで、そうなると橘ではなく……え?
「……朝倉?」
「あ、そう朝倉さん。その朝倉さんなんですけど、今どこにいるのか解りますか?」
「はい? えっと……え? 朝倉と会いたいんですか? いやでもあいつは……あー……それはまた、どういうことで?」
「えっとそれは……」
朝比奈さんは、けれど次の言葉が続かずに口を酸欠の魚みたいにぱくぱくさせるだけだった。それはつまり──。
「……ごめんなさい、禁則事項になってるみたい。あれ? でもなんで……?」
どうやら朝比奈さんも、どうして朝倉に会う理由を俺に言えないのか、理由が解らないって素振りだ。その表情から読み取れば、会わなければならない理由は、朝比奈さん自身も他愛もない理由であると自覚しているようだが……だったらなんでそれで禁則事項になってんだ?
「ご、ごめんなさい。変なこと言っちゃって。ごめんね、今のこと忘れてください」
「それはいいんですが……」
「うぉ~い、キョンくーん」
朝比奈さんが朝倉に会いたい理由はどうでもいい。ただ、朝倉のことを喜緑さんがマークしているって言っておくべきか俺が悩んでいると、そこへ先に下校したはずの鶴屋さんが戻ってきた。
「なぁ~んか校門にさっ、キョンくんのこと待ってる女の子いるよっ! でもあの子さっ、んー、なんだろ?」
どうにも鶴屋さんらしくない歯切れの悪さだ。こっちもこっちでいったい何だと考えていると、鶴屋さんはいつもより若干キツイ感じで睨んできた。
「ねぇキョンくんっ、ホントに何か悪さをたくらんでんじゃないだろーねっ!?」
「いや、別に何も……ああ、じゃあ朝比奈さん。ええっと、また明日」
「あ、うん。じゃあまたね」
手を振る朝比奈さんに、別れの挨拶をちゃんと言う暇もない。鶴屋さんは鶴屋さんで、俺が外履きに履き替えることも待ってられないとばかりに手を引っ張り、正門まで連れて行かれたところで……。
「げっ」
鶴屋さんがどうしてそこまで人に疑いの眼差しを向けていたのか、充分に理解できた。俺でも、あんなのと一緒にいるところを見れば、疑いの眼差しを向けていたかもしれん。
周防九曜が、微動だにせず突っ立っていた。
つづく
涼宮ハルヒの信愛:二章-d
思わぬ展開に適時対応したいところではあるが、寝惚けた頭ではままならない。昼に部室で安らかな一時を過ごす目論みは、長門の方から話しかけてくるという思わぬ状況で露と消えた。消えたと言っても、寝たことは寝たんだ。十分……いや、五分くらいかもしれん。机に突っ伏してコンマ何秒で眠れるのは、未来から猫型ロボットがやってくるマンガの世界だけで充分だ。
おかげで放課後になった今も、まだ眠気を引きずっている。自分では真っ直ぐ歩いているつもりだが、もしかして斜行しがちになってるかもしれん。出来ることなら今日はこのまま真っ直ぐ家に帰ってベッドの中に倒れ込みたい気分だが……ああ、そういえば午前中に届いていたメールに目を通していなかった。どうせ佐々木から放課後の待ち合わせ場所についての連絡だろうとタカをくくって、放置しっぱなしだ。さすがにそろそろ目を通した方がいいかもしれん。
「ちょっとキョン」
長かった一日を終えて教室を出ようと席から腰を浮かせたところ、背後からハルヒの鋭い声が飛んできた。
「明日、あたしたちは夕方まで海にいるから。別に期待なんてしてないけど、来るんだったらそれまでに来なさいよ」
「解ってるよ、ちゃんと行くって」
「日が暮れてから来たって、もういないんだからね。そこんとこ、肝に銘じておきなさい」
声音だけで判断すればキツめな口調だが、表情も合わせてみればそこまでカリカリしているわけじゃなさそうだ。
「遅刻はいつものことだろ」
「開き直るな、バカ」
ハルヒの辛辣な言葉に肩をすくめて、俺は教室を後にした。生あくびを噛み殺し、携帯を手にフラフラと歩いて下駄箱まで向かう足取りは、ともすれば危なっかしいものだったかもしれない。
それがやってきたのは、二つ折りの携帯を開いてメールを確認しようとした、その直前だった。
「ちょっとキョンくんっ! なぁ~にそんな、ふらっふらなのさっ!」
「うわっ!」
背中をバシンと叩かれた弾みに、携帯を落っことしそうになった。幸いにしてストラップを手首に引っかけてたからよかったものを、そうでなけりゃ派手に吹っ飛んでたところだったぞ。
「驚かさないでくださいよ」
「ほんっとにフラフラだねぇ。んん~っ? 何を悪さしてんのかなっ!? おねーさんにちょろんと白状しちゃいなよっ!」
前触れもなく人を驚かせておいて、ケタケタ笑いながらそんな人聞きの悪いことを言うのは鶴屋さんを置いて他にない。何もたくらんじゃいませんし、叩いても埃すら出ませんよ。や、出ないですって。
「でもキョンくん、疲れてるみたいだけど本当に大丈夫? 昨日も部室に来なかったし……」
鶴屋さんの心配の仕方が冗談半分であるのなら、表情に浮かべてまで心配してくれるのは、魔窟と化した部室を浄化するスウィートエンジェル朝比奈さんしかいない。
この疲労困憊な我が身を癒してくれるのは、ヒマワリのような笑顔しかありません。不安と困惑混じりの表情なんて見せないでいただきたい──。
「──なんってこと考えちゃってたりしちゃってたりしてねっ! うっわーっ、キョンくん。そりゃヤバイって。イマドキ、ドラマでもそんな台詞を言わせる脚本家はいないって!」
「ちょっ、ちょっと鶴屋さん……」
なんだか勝手に人の心の声を脚色された気がしないでもないが、さすがの俺でもそこまでのコメントは咄嗟には出てこない。特に今の半眠半起の状態ではなおさらだ。だから朝比奈さん、そんな真っ赤にならなくていいですよ。そんなに真に受けられると、俺が本当にそんなことを言ったみたいで、逆にこっちが照れますよ。
「んん~? もしかしてもしかしなくてもっ! おねーさん、お邪魔っかな? いやーっ、ゴメンゴメン。んじゃ~、あとはキョンくん。みくるのことは任せたよっ! んじゃね~ぃっ!」
んじゃね~……って言われてもな、俺もこのまま今日は学校を出ちまうんだが。
「んもう、鶴屋さんたら……。ごめんね、キョンくん。なんだか疲れてるのに騒がしくして」
「いや、鶴屋さんの元気の良さは周りも元気にしてくれますからね。今の俺には有り難いですよ」
「そうですか? う~ん、それならいいんですけど……あっ、早く部室に行かなくちゃ。キョンくん、疲れてるみたいだから、うんっと美味しいお茶、淹れますね」
「あ~……」
古泉も長門も知らなかったんだから、朝比奈さんも知らなくて当たり前か。朝比奈さんのお茶には心引かれるものがあるが、それで佐々木を放置しとけば、何かと面倒なことになりそうな気もする。
「今日もちょっと、部室には顔を出せないんですよ。昨日のうちにハルヒに伝えておいたんですけどね、あいつ何も言ってなかったみたいで」
「え、そうなんですか?」
これで本日三度目になる、我が身に今起こっている状況説明を、前三人と同じように朝比奈さんにも説明すると、眉が八の字に垂れ下がった。
「そっかぁ~……それで昨日も一昨日も来られなかったんですね」
「そういうことなんですよ。ですから今日もこれから行かなくちゃならなくて」
「約束してるのなら、仕方ないですよね。でも、本当に大丈夫なの? あまり無茶しないでくださいね」
ハルヒとは対極に位置する心遣いに、心の中では大号泣だ。朝比奈さんからそんな言葉を頂ければ、何を置いても気力活力その他もろもろはフルチャージってもんです。あと三日間は不眠不休で戦えるね。
「あ、でも……それだと、明日の海も来られないんですよね。お弁当、一人分あまっちゃうかなぁ……」
「いや、それには顔を出しますよ。ええ、行きますとも。這ってでも行きますから、もしあるんだったら俺の分の弁当は何がなんでも確保しておいてください。特にハルヒと長門には匂いすら嗅がさないようにお願いします」
「ふふ……はい、わかりました。でも本当に無理しないでくださいね」
「大丈夫ですよ、自分の体のことですからね。自分が出来る限界ってのは解ってるつもりです。それじゃ、俺はこれで」
「あ、そうだキョンくん」
名残惜しいがいつまでも朝比奈さんと心休まる一時を過ごしてばかりもいられない。離れたくないという本能を押さえ込み、意を決して下校の途に着こうとしたところ、意外なことに朝比奈さんの方から呼び止めてきた。こうなれば俺の脆弱な自制心なんぞイチコロだ。速乾性の接着剤を塗られたかのように、足がぴたりと止まる。
「はい、何ですか?」
「あの……これ、キョンくんに相談することじゃないかもだけど、でもキョンくんしか話せる相手いなくて……」
「うん?」
なんだろう、このモジモジと今にも愛の告白をして来そうな態度は。そんなことをしてくるのであれば考えることなく首を縦に振るが、相談と前置きした時点でそれはないのも事実。そもそも、俺にしかできない相談ってなんだ?
「あの、五月のゴールデンウィークで……山で会った人のこと、覚えてる?」
山で会った……といえば、橘のことだろうか。
「ううん、その人じゃなくて……」
だよな。橘だったら、ゴールデンウィークのことを持ち出さなくてもその前にも駅前で遭遇しているわけで、そうなると橘ではなく……え?
「……朝倉?」
「あ、そう朝倉さん。その朝倉さんなんですけど、今どこにいるのか解りますか?」
「はい? えっと……え? 朝倉と会いたいんですか? いやでもあいつは……あー……それはまた、どういうことで?」
「えっとそれは……」
朝比奈さんは、けれど次の言葉が続かずに口を酸欠の魚みたいにぱくぱくさせるだけだった。それはつまり──。
「……ごめんなさい、禁則事項になってるみたい。あれ? でもなんで……?」
どうやら朝比奈さんも、どうして朝倉に会う理由を俺に言えないのか、理由が解らないって素振りだ。その表情から読み取れば、会わなければならない理由は、朝比奈さん自身も他愛もない理由であると自覚しているようだが……だったらなんでそれで禁則事項になってんだ?
「ご、ごめんなさい。変なこと言っちゃって。ごめんね、今のこと忘れてください」
「それはいいんですが……」
「うぉ~い、キョンくーん」
朝比奈さんが朝倉に会いたい理由はどうでもいい。ただ、朝倉のことを喜緑さんがマークしているって言っておくべきか俺が悩んでいると、そこへ先に下校したはずの鶴屋さんが戻ってきた。
「なぁ~んか校門にさっ、キョンくんのこと待ってる女の子いるよっ! でもあの子さっ、んー、なんだろ?」
どうにも鶴屋さんらしくない歯切れの悪さだ。こっちもこっちでいったい何だと考えていると、鶴屋さんはいつもより若干キツイ感じで睨んできた。
「ねぇキョンくんっ、ホントに何か悪さをたくらんでんじゃないだろーねっ!?」
「いや、別に何も……ああ、じゃあ朝比奈さん。ええっと、また明日」
「あ、うん。じゃあまたね」
手を振る朝比奈さんに、別れの挨拶をちゃんと言う暇もない。鶴屋さんは鶴屋さんで、俺が外履きに履き替えることも待ってられないとばかりに手を引っ張り、正門まで連れて行かれたところで……。
「げっ」
鶴屋さんがどうしてそこまで人に疑いの眼差しを向けていたのか、充分に理解できた。俺でも、あんなのと一緒にいるところを見れば、疑いの眼差しを向けていたかもしれん。
周防九曜が、微動だにせず突っ立っていた。
つづく
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