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DATE : 2007/10/23 (Tue)
さくっとSSだけUPしておきます。
だって話のネタが何もないんですもの!

ではまた明日。

前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:二章-c

 ただでさえ理解し難い授業の内容は、寝惚けた頭ではさっぱり理解できなかった。無意識に黒板に書かれた文字を自動筆記でノートに写していたが、果たしてそれは後で読み返しても理解できるかどうか疑わしい。何だったかな……音叉がどうの、固有振動数がなんだの、そんな内容だった気がする。共鳴とか共振とか……うん? これは本当に授業の内容か? そんなもん、小学校や中学で習ったような気がするが、教師のつまらん雑学だったかもしれん。ともかく、後で国木田から改めてノートを借りよう。
 そんな感じで話の内容もろくすっぽ覚えてない状況を見ても解るように、俺の眠気はピークを迎えていた。眠りに落ちていなくても、瞼を閉じているだけでだいぶ違うと耳にしたことはあるが、それでも眠りの淵に身を委ねるのとそうでないのとでは天地の差がある。約一時間ばかりの昼休みを有効利用しない手はなく、静かに横になれる場所はどこだろうと、そればかりを考えるのは自然な思考の展開ってもんだろう。
 人気のない屋上も悪くない。が、今の状態では眠りに落ちたが最後、午後の授業が始まる前に起きられるかどうか解らない。携帯の目覚まし機能を活用してもいいが、それで起きられる自信はないな。自慢じゃないが。下手すれば、寝惚けて携帯を投げ飛ばしかねない。
 となると……やはり行くべき場所はあそこしかない。
「……と、言うわけなんだが」
 俺の不躾な頼み事を耳にして、果たして長門は何を思っただろうか。そのコールタールのような漆黒のくりくりまなこで凝視する姿を前にしては、せめて機嫌を損ねないでくれと願わずにはいられない。
 まったく我ながら長門に甘えすぎだと思うが、かといってM78星雲のカップラーメン宇宙人より正確無比なタイマー計測ができる長門以外に、今の俺を頼んだ時間ぴったりに起こせるヤツはいない。おまけに、時間まで静かにしていてくれるのも長門ならではだと思う。ハルヒでは、静かに俺を寝かせてくれるとはとても思えない。
「……わかった」
 了承してくれるまでずいぶんと長い間があった。その間、こいつの頭の中ではどんな自問自答が繰り広げられていたんだろう。世界に存在するどんなスパコンよりも正確かつ短時間であらゆる処理を完了させられるであろうこいつが、俺のささやかな安眠を求める願い事を受理するまでに、そこまで考えねばならんことでもあったんだろうか。
 まぁ……聞き入れてくれたのだから、深く考えるのはやめておこう。あとでちゃんとお礼はしなけりゃなぁ、とは思うが。
「じゃあ、申し訳ないが時間になったら、」
「今日」
 謝意を含んだ言葉を口に、そろそろ横になろうかと長机の上で腕枕を作り顔を伏せようとしたところ、珍しく長門の方から声をかけてきた。
 これは驚きだ。確かに長門は必要なことなら聞かずとも話してくれる時もあるが、それはよほど切迫した事態であるときのことが多い。
 かといって今はそんな有事に等しい出来事なんて何もなく、つまりこれは長門からの初めての世間話なんじゃないかと思える。となれば、眠気がピークに達しているであろう今の俺でも、後にしてくれと、言うに言えない。机に預けようとしていた上半身を起こして、本に視線を落としたままの長門の横顔に目を向けた。
「今日がどうした?」
「来る?」
「何が?」
「部室に……」
 それはつまり、昨日部室に俺が来なかったことで、困った事態でも発生したんだろうか。いやしかし、長門が困る事態っていったい何だ? そんなことが起これば、俺がいてもいなくても、何かしらの事態がよくなるとも悪くなるとも思えないが……いやいや待て待て、喜緑さんから聞かされた話もある。
 朝倉のことで何かあった……いやでもそれは、長門には秘密だったよな? 俺だけの話なら隠し事はできないと思うが、事は喜緑さんが絡んでいる。長門への情報流出は、起こるとすれば俺からであり、それ以外ではあり得なさそうだ。もしや、俺がまだ把握してない厄介事でも発生したのかもしれん。
「何かあったのか?」
 そう聞くと、長門は小首を傾げて、何か理解できない代物でも見るような眼差しを向けてきた。あれ?
「いや、長門がそんなこと聞いてくるからさ」
「二日続けて来なかったから」
「え? ああ、昨日は用事があったんだよ。ハルヒにもその辺りのことは話してあったが、聞いてないのか?」
「ない」
 あいつめ……何のために断りを入れたと思ってるんだ。他の連中にも伝えておいて欲しいからであって、あいつだけが把握してても仕方ないだろ。
「少し佐々木たちの手伝いをしなけりゃならなくなってな、昨日も一昨日も手伝わされてたんだよ。あー……今日もそういうことだから、放課後は来られないが」
「……そう」
 かき消えそうな声で頷いた長門は、目を伏せるように視線を本に戻した。
 う~む、心なしかながとの態度がいつもと違うような気がする。口では何も言わないが、態度を見れば様子が違うのは明らかだ。やはりどこか、いつもの長門と態度が違うような気がする。
 もしやハルヒがまた何かやらかした……いやでも待てよ? あいつの表面的な態度はピリピリしていたが、古泉曰くその内面は安定していたらしい。閉鎖空間も出来ちゃいない。
「なぁ、最近どうなんだ?」
「どう、とは?」
「あー……ハルヒの様子とか」
 別に古泉の話を疑ってるわけじゃない。あいつは(自称)ハルヒの精神的専門家らしいから、それでもし「違ってました」なんてことになれば、ただでさえ活躍の場が少ない超能力者が、ますます役立たずってことになっちまうからな。
「特に、何も」
「閉鎖空間とかもなしか」
「そう」
 どうやら長門もそう感じているらしい。古泉だけならいざ知らず、長門まで太鼓判を押したとなれば、どうやら本当に安定しているようだ。あんな不機嫌な態度を醸しだしてたってのにな。安定した……ってことなんだろうか。もしそうなら、これから先はだいぶ楽ができそうだ。
「涼宮ハルヒの能力は安定している。物理法則を反故にする情報の流出はなく、この惑星表面にあるまじき異変が形成された痕跡はどこにもない。故に、情報統合思念体は危惧している」
「何を?」
「このまま涼宮ハルヒの能力が消滅すること」
 それならそれでいいじゃないか……と俺なんかは思うわけだが、長門の立場で言えば、それは確かに困ったことになるのか。本来はハルヒのトンデモパワーを観測し、そこから自律進化の可能性を見いだすのが目的……だったんだっけ?
「各派閥の思惑は、細部に至れば多岐にわたるが、大別すれば二つに分けられる。強制的に能力を発現させることと、現状を維持すること」
「強制的って……何をするつもりだ」
「涼宮ハルヒの能力発現は、感情のブレによるところが大きい。そこを刺激することで、意図的に情報改ざん、あるいは改変を行わせる。この思想は強硬派の理念に等しい」
 長門の親玉が直接ハルヒにちょっかいをだす……? しかもそれが強硬派の理念に……強硬派? 確か朝倉がそうだったよな?
「そう。でも」
 長門は、本に視線を落としたまま、書かれている文字を読み上げるような声音で断言した。
「わたしが、させない」
 さらりと頼もしいことこの上ないことを言ってくれるが、しかし長門の親玉連中がモメていることだろう。もしハルヒを刺激して云々って案が決行されたとしたら……まぁ、それでも長門は俺たちを守ってくれると思うが、長門は生みの親に敵対することになっちまうんだよな。それは……いいんだろうか。
「心配しなくていい」
「いや、でもな」
「涼宮ハルヒに強制的な介入は、現状では起こる可能性は極めて低い」
「何故?」
「危険だから」
 そりゃ、ハルヒに直接ちょっかいをかけるなんて危険極まりないことではあるが、そんなことは今さらじゃないのか。
「かつて、わたしは涼宮ハルヒの能力を流用して世界を改変させた」
「……ああ」
 あの、十二月の三日間。そのことを長門の方から口にするのは、初めてのような気がする。もっとも、普段から長門から話しをすることなんて滅多にないけどさ。
「その世界で、わたしは情報統合思念体が存在しない世界を創造した」
「そうだったな」
「涼宮ハルヒを刺激し、意図的に情報改ざん能力を発現させれば、同じことが起こり得る可能性は極めて高いと、わたしは進言している」
「ああ……なるほど」
 長門の親玉連中の目論みは、ハルヒの能力を観測してそこから自分たちの自律進化の可能性を探ることだ。自分たちが消されちまっちゃ、本末転倒ってわけか。なるほど、あの一件は長門の親玉連中に対しても、いい抑止効果になってるのか。
「それなら、しばらくは安心ってわけだな」
「そう」
「ならハルヒのことじゃなくてもいいが……何かあったのか?」
 なんだか話は別方向にシフトしちまってたが、俺は何も長門の親玉がハルヒに対してどう考えているのか聞きたかったわけじゃない。長門の様子に妙な違和感を覚えたから、ハルヒのことで長門が思い悩むことがあったんじゃないかと思ってあいつを話のネタにしたのであって……うーむ、やはりストレートに聞くべきか。
 でもなぁ。
「長門、何か悩んでるのか?」
「……別に、何も」
 思った通り、長門なら何かあってもそう言うと思ったよ。だから遠回しにハルヒをダシに聞いたのさ。
「眠らない?」
 どうやって長門の悩みを聞きだそうかと目論んでいたら、長門の方からそんなことを言ってきた。
「あなたは眠るためにここに来た、と言っていた」
 そりゃ確かにその通りだが、今は長門の悩みの方が極めて重要な懸案な気がする。俺に話したところで解決しない話かもしれないが……うーん、それとも無理に聞き出さない方がいいんだろうか。
「あなたがわたしを見て、何かしらの憂いを感じていると言うのであれば、今ここで休むべき。それで」
 長門はほんの一瞬だけ、本から俺に視線を流して来た。
「わたしは充分」

つづく
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★無題
NAME: BPS
ただキョンと一緒に過ごしたい長門さん超健気。

確かに統合思念体だけハルヒの力に対するスタンスが違うような気がしますね。「情報爆発?いいぞ、もっとやれ」みたいな。自律進化の可能性的な意味で。
2007/10/23(Tue)08:01:22 編集
細かく分けると、三者三様でスタンスが違う感じな気がします。
機関は能力の抑止、未来人は解析、宇宙人は誘発って感じでしょーか。細かく考えると、それぞれの上役は牽制しあってそうです( ̄ー ̄)
【2007/10/24 01:19】
★無題
NAME: Miza
そして眠っているキョンにカーディガンをかけてあげるのであった。

ってどんなサムデイインザレイン!
って今は夏だからそれはないかw
2007/10/23(Tue)09:34:43 編集
一年前よりは、長門さんも積極性が出てきたかもしれませんヨ( ´∀`)
【2007/10/24 01:21】
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