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DATE : 2007/04/28 (Sat)
本当は今日で【週刊喜緑江美里】も終わらせる予定でしたが、GW前で何かと忙しいので完結まで持って行くことができませんでした。

んー。

仕方ないので、来週土曜日ではなく、月曜か火曜にまとめをUPしちゃうかもしれません。今回のお話でも、まだ完結してないもので。

そういうわけで、今週の喜緑さんです。


前回はこちら
【週刊喜緑江美里】

 よくよく考えてみれば、わたしが長門さんに頼まれたのは彼の行き先に朝倉さんを連れてくることであって、朝倉さんを彼に会わせることではありません。ですから、この遊園地に朝倉さんと一緒に足を踏み入れた時点で、わたしの役目は終わり。お役ご免というものです。
 なんだか自分自身に言い訳をしているみたいで釈然としませんけれど、事実そうなのですから仕方ありません。この後、朝倉さんがどのような行動に出るのか興味がないと言えば嘘になりますが、その結果を確かめるためだけに一人でぼんやりしているのもつまらないので、帰ることにしましょう。涼宮さんの夢の中から戻って、まだちゃんとした休養を取っていませんし。
 そう考えて入退場のゲートへ向かうその最中……わたしは、視界の隅に見知った顔が同じ方向へ向かって歩く姿を見つけました。
「あら、お帰りになられるんですか?」
 迷いも躊躇いもなく帰ろうとしていたその人──長門さんにわたしは声を掛けました。彼女が帰ろうとしていることに、ちょっと驚きを感じたからです。
 長門さんは、彼と朝倉さんを会わせたいから、わざわざわたしに頼み事をしたと思うのですけれど……でも、その目的を果たす前に帰られてしまうんですか?
 どこか少し……釈然としませんね。まるで、やることは済ませたとばかりの様子は、ちょっとおかしく思えるところです。
「ちょうどわたしも帰ろうと思っていたところなんですよ」
 わたしが話しかけても、長門さんは沈黙を守るばかり。ここで何も聞いてこないのは、やっぱり少し変です。まだ長門さんはご存じないはずじゃないですか。朝倉さんが彼と会ったかどうかなんてことは。
 それを確かめもせずにいるということは……つまり、そういうことなでしょうか?
「ずっと疑問に思っていたんですけれど、質問してもよろしいでしょうか?」
 沈黙を守り、立ち去ろうともしないということは、それが了承の合図と受け取りますよ。
「どうしてそこまで、執拗に朝倉さんの行動制限解除を実行させようとしたんですか?」
 それが少し、わからなかったんです。この現状において、朝倉さんが涼宮さんたちの側にいなければならない理由というのは、すぐに思いつきません。いなくてもいい、とまでは言いませんが、異常動作を起こす前の──涼宮さんや彼と同じクラスにいる──状態に戻す理由がありません。彼と朝倉さんを会わせようとすることは、つまりそういうことですよね?
 でもわたしが見た限り、朝倉さんは彼に会おうとする……なんと言えばいいのか……そうですね、勇気がない、と言ったところでしょうか。そう見えたんです。
 だから、わたしは朝倉さんの行動制限の解除を決断しました。今の朝倉さんなら、例え自由に動ける状態にあっても、自ら積極的なアクションを起こすことはない──彼に会うことも危害を加えることもない──その判断あってのことです。
 長門さんがわたしに求めたのは、朝倉さんの行動制限の解除です。でもわたしは、長門さんの真意が彼と朝倉さんを会わせることにあったと思っていました。でも、その真意をわたしが読み違っていたとしたら? 長門さんの目的が、言葉通り朝倉さんの行動制限の解除だけであったとしたら……?
「そういうことですか」
 長門さんは、何も応えません。どうやら、わたしのこの考えで間違いはないようですね。相手の要求を100パーセント受け入れることはできないけれど、その何割かなら受け入れられる。そういうこちらの打算的な心理を突かれた、ってことですか。
「もうすでに朝倉さんの行動制限は解除しています。まんまとあなたにしてやられた……と、いうことですね。朝倉さんを彼と会わせようとしたのは、フェイク?」
「それは違う」
 そのときになって、長門さんはようやく口を開きました。軽口を叩けとまでは言いませんけれど、そこまで重くしなくてもよろしいじゃないですか。別に怒ったりしませんよ。
「あなたに、わたしの狙いが『彼と朝倉涼子を会わせる』と思わせておくことで、本命の思惑が楽に進むと判断した。わたしが直接関与したのは、あなたが涼宮ハルヒの夢の中に取り込まれた際の救出、及びこの地点に朝倉涼子を連れてくること。それ以外のことは、すべて偶然」
「よくもそこまで、偶発的に起きた出来事すべてを利用したものですね。お見事、としか言葉が見つかりません。でも長門さん……それは経過であって理由にはなってませんよ?」
 そんな首を傾げられても、事実その通りじゃないですか。それは長門さんの狙いを実行するにあたってのトリックであって、目的そのものの理由にはなりません。
 答えたくないのであれば、それは別にかまいませんよ。ただ、わたしの方で思うところがあるので、それを聞いてもらうことになりますけれど……沈黙を貫き通すのでしたら、それは了承の合図と受け取らせていただきますね。
「わたしが思うに、長門さんは朝倉さんへの罪滅ぼしのために行動した……と考えているのですけれど、違いますか?」
「…………」
 そう定義することが相応しいのかどうかはわかりませんが、少なからず長門さんにも何かしらの負い目があるから、朝倉さんのために動いた……わたしはそう考えているんです。いえ、間違いなくそうだと思われます。
 そうでなければ、長門さんが自ら積極的に動く理由なんて思い浮かびませんもの。
 でも。
「本」
「……え?」
 しばしの沈黙の後、長門さんの口から漏れた言葉はその言葉。
「朝倉涼子が戻ってから、わたしには本を読む時間が少なくなっていた。彼女が自由に動ければ、足りなくなった時間を取り戻せると判断した」
「……それが、理由?」
「そう」
 まったく……本当に何て言えばいいのか、これだから長門さんには困ったものです。
「素直じゃありませんね。負けず嫌いもそこまで来れば立派です。わかりました、もう少しだけご協力いたしましょう」
 本を読む時間が欲しかった……それが理由と言うのであれば、そういうことにしておいてあげましょう。真意が別にあったとしても、言葉として口にした以上、わたしはそれを信じます。
 でも長門さん、このわたしが余所様の思惑通りに動くだなんて、あり得ませんよ。ですから、本を読む時間が欲しかった、というのであれば……そうですね、少しくらいの仕返しは許してくださいね。
 それとも、そう思うわたしの考えも読まれているのかしら? さて、どうなのかしらね……?

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