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DATE : 2008/12/15 (Mon)
土曜日に、ちょっくら犬居さんを労う感じで小柴の兄さんと我が家のじぇばんにも一緒にプチ忘年会っぽいことをしてきました。
まぁ、一番の大きな目的は、自分が「甘いの食べたい」ってとこもあったんですが、場所が週末でクリスマス目前の東京ミッドタウンだったせいでちと混雑具合がひどかったですな。

それはそれとして、とりあえずSS。このヒロインズシリーズは、ちょっとコミカル路線で攻めていきます。なのでネタもそこまでシリアスな感じにはなりませぬ。ええ、たぶん。

ではまた。

前回はこちら
ワンダフル・デイズ:2

 人のネクタイを犬の首輪に繋がってるリードのように引っ張る朝倉に連行された場所は、人気の失せた旧館──部室棟──の裏側。まるで『これからカツアゲします』と宣言しているようなシチュエーションは、果たしてどんな運命のイタズラだと言うんだ。
「いったい何なんだ、こんなところまで人を連れ出しやがって! 俺が何かしたか!? いったいどういうつもりだ!」
 ようやくネクタイから手を放されて息苦しさから解放された俺はm開口一番に言うべきことを言っておいた。
 もちろんこんな言葉ひとつで満足したわけじゃない。ただ、人をこんなところまで無理やり連行した朝倉は、人に背を向けたままで仁王立ちしている。
「問題です」
「……はぁ?」
「クラスをまとめるクラス委員であるこのわたし、その正体は……さて、何でしょうか」
 唐突に何を言い出してるんだ? そんなもの、今さら改めて口にすることもであるまい。それとも、何かしらの引っかけ問題なんだろうか。
 もしやその問題の正否によって俺の行く末が決まるってわけじゃないよな? もしそうなら……朝倉のことだ、わかりきってるような問題を出してくるとは思えない。
 やはり何か引っかけがありそうだ。
 ──ふむ……。
 俺はしばし考える。真面目に答えれば、朝倉の正体とやらは情報生命体が作り出したアンドロイドということになるんだろう。けれど素直にそれが正解とは思えない。より深く、正確性を求めるとすればそれは──。
「長門のお世話係?」
「ちっがーう! ぜんっぜん違うわよ! あなたまで何言い出してるの!?」
 何やら知らんが全力で否定された。思わず謝りたくなる剣幕だ。
 それはともかくとして、だとすれば朝倉自身が言うところの『自分の正体』とやらは、いったい何だってんだ? さっぱりわからん。そもそもヒントなしで答えろと言うには難易度が高すぎる。
「……わかった。ええ、わかったわ。こうなれば仕方ないものね。ちょっと……その、あなたに話すのも躊躇われるけど、そうも言ってられないから」
「はぁ……」
「昨日のことなんだけど……」
 そう前置きして、朝倉はとつとつと語り出した。それは夜のこと、風呂場での話らしい。当然ながらそこに俺は居合わせていないので、これはすべて朝倉が語った話をイメージしてのことだ。そこに話の正確性がどれほど含まれているのかわからない。もしかすると朝倉にとって都合のいい解釈で語ったのかも、ということも頭の片隅にとどめておいてもらいたい。
 つまり、こういうことだったらしい。
 ……
 …………
 ………………
「んー……」
 と、たっぷりのお湯に入浴剤を混ぜた湯船の中に全身を預け、朝倉涼子は大きく伸びをした。一日の疲れを癒す最高のひとときが今であることは言うまでもない、まさに至福の時間。ともすれば眠気を誘うリラックス空間で、彼女はふと横を見る。
 同じ浴室には、体を洗っている長門有希の姿。ボディソープを含ませたタオルでぞんざいに体の汚れを洗っている彼女は、朝倉涼子にとってサポートするべき相手でもある。それは『涼宮ハルヒの観測』という役割においての話だが、ここ最近は一般生活のフォローもしているような状況だった。
「背中くらい流すよ?」
「いい」
 せっかく申し出てみたものの、長門有希は簡素な一言で断ってきた。長門有希の性格を考慮すればそういう風に断ってくることも予測できたし、となれば続く会話も途切れることもわかっている。
 湯船に浸かってのんびりしていた朝倉は、ただぼんやりと湯船に浸かっているだけになった。それはそれでかまわない。弛みきった気分のまま、話す話題もない、やることもない、となれば、人の体を模したインターフェースの特徴とでも言うべきか、視覚情報を優先させてしまう。
 つまり、自然とその眼差しは長門有希に注がれた。
 二人は、この惑星表面上の知的生命体の女性型のインターフェースで象られている。その体の作りに興味はない。互いに見られたところでどうということもなく。だからこそこうやって一緒に浴槽にいる。それでも個性を作る過程でできた差異というものがある。
「長門さん、体の線が細いわよね」
 弛んだ気分でいたせいか、視覚から飛び込んできた情報をそのまま言葉として口にする。そこに深い意味はまるでない……が、体を洗っていた長門有希の手が、ぴたりと止まったのだが朝倉涼子はそれに気付かない。
「もしかして、何か情報制御でもしてるの? あれだけ食べてれば、もう少し成長してもいいと思うんだけどな」
「……何の話?」
「へ?」
 温かな浴室の中で冷ややかに響く長門有希の声音に、朝倉は若干驚いた。何も考えずに出た言葉で、そういう反応をされるとは夢にも思っていなかったからだ。
 そんな朝倉涼子を後目に、長門有希は言葉を続ける。
「わたしは摂取した栄養が身体に及ぼすエネルギー変換率の調整は何も行っていない。故に身体の成長に変化がないのは、天然自然の摂理」
「あ……あ、そう……」
「わたしのことより」
 と、長門有希はちらりと朝倉涼子を見る。
「あなたは自分自身の体を心配するべき」
「え……って、どういう意味よ」
「そのままの意味。上腕および下半身全般における脂肪率は、肥満と称される一歩手前の危険水準にある。特に胸部に蓄えた脂肪は目に余る。緊急活動時の行動に支障を来す可能性が高い」
「ちょっ」
 並大抵のことなら素直に聞き入れるか受け流す朝倉だが、今の発言だけは聞き捨てならない。
「それ何? どういうこと? わたしがメタボとか言いたいの?」
「メタボリックシンドロームとは内臓肥満に高血糖、高血圧、高脂血症のいずれふたつの症状が合併した際に指す呼称。あなたのそれは単なる肥満」
「それって結局、わたしのことを肥満だーって言いたいんじゃない!」
「体型について言及したのはあなたの方。あなたがわたしの体型について述べたように、わたしもあなたの体型に対しての意見を口にしただけ」
 しれっと答える長門を前に、朝倉の胸中にはふつふつと黒いものがわき出てくる。だからなのか、ついつい口を割いて出てくるのは余計な台詞。
「ふーん、あっそう。でもあれでしょ? わたしの体型なんて平均的なものじゃない。別に太りすぎなわけでもないし。むしろ長門さんの方がガリガリじゃない。胸だってぺったんこだし」
 そんな言葉を口にした瞬間、桶が高速で顔面側を横切って壁に炸裂し粉砕した。
「ちょっと、危ないじゃない!」
「手が滑った」
「どこでどうすればあんな勢いで桶投げるほど手が滑るのよ!」
「石けんで」
「……もしかして長門さん、胸がぺったんこでそんな怒ってるの?」
 ものは試しに聞いてみたら、案の定、物凄い剣幕で睨まれた。
「何よ、結局ひがみじゃない」
「別にひがんでいるわけではない。わたしにはそこまで余分な脂肪は必要ない」
「身も蓋もない言い方するわね。だいたい、不要な脂肪じゃないわよ。ないよりはあった方がいいものでしょ」
「必要ない。わたしはいらない」
「そんなこと言って、めちゃくちゃ気にしてるじゃない」
「してない。あなたのようにたぷたぷあっても肩が凝るだけ。いらない」
「た、たぷたぷって何よ!」
「なに?」
 和やかだった風呂場での一幕は、一転、殺伐とした空気が漂い始めた。
 ………………
 …………
 ……
 と、まぁそういう話があったようだ。長門と朝倉は二人でいるときはそういうことをしているらしく、そこはかとなく羨ましく思うのは、健全な男子高校生なら当然のことだと思う……のだが。
「ええっと、話をまとめていいか?」
「何よ」
「つまり、おまえと長門はケンカしてるのか?」
「そうよ」
 朝倉は素直に頷いた。
「もう長門さん、許せない。いくらわたしがバックアップだからって、別に長門さんが上でわたしが下ってわけじゃないのよ? あくまでサポート的な役割なんだから。それなのに何よ、人のことメタボ呼ばわりして。言っていいことと悪い事ってあるじゃない!」
「ああ、わかったわかった」
 かなりご立腹らしい。どうやら俺の理解力は正常に働いていると見て間違いない。ってことは……。
「で、そのケンカの原因ってのが……つまりバストサイズのことで?」
「そ、そうよ」
 そこで照れられると、聞いたこっちも恥ずかしくなるからやめてくれ。
 とにかく、つまり長門と朝倉はケンカをしている。その理由は……えー、ぶっちゃけた言い方をすれば、巨乳か貧乳かってことで。
 ………………。
 頭が痛くなってきた。あまりのくだらなさに、正直泣きたくなってきた。そして何より、それでもまだ解明されてないことがある。
「おまえと長門がケンカしてるのはわかった。その理由がバストサイズってのも理解した。で? どうして俺をこんなところまで連れてきたんだ。さっぱり関係ないじゃないか」
「いくら長門さんでも、あんな横暴な真似は許せないでしょ! わたしが怒ったところで効果ないもの。でもあなたがちゃんと叱ってくれれば、長門さんだって改めるはずだわ」
 だから何で俺が。あれか? 俺は長門お父さんか? どうして俺が叱らなくちゃならないんだ。そもそも、俺にとっちゃどっちでもいい話じゃないか。
「とにかく俺を巻き込むな」
「……あなた、貧乳好き?」
 おい長門、このバックアップ壊れてるぞ。
「俺の趣味嗜好がどう関係するってんだ!」
「じゃあ長門さんの暴挙を見過ごせる? 友だちでしょ? ダメなことしたらダメって言ってあげるのが友情であり優しさってものじゃない!」
 何やら朝倉はかなりエキサイトしている。よほど腹に据えかねる出来事だったらしい。
「そういうわけで協力して。してくれるでしょ?」
 ニッコリ微笑んで、朝倉は人に無茶振りをしてくれやがった。その後ろに組んでいる手には、何かが握られていそうな憶測を抱かせるに充分な笑みを浮かべてな。

つづく
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★無題
NAME: ながとん
>「そういうわけで協力して。してくれるでしょ?」
よろこんでーっっ! 長門お父さんならここにっ、ここにぃーっ(モチツケ 
…………なんていう天国に一番近い酒池肉林の香りww。
続きがまたまた楽しみです♪
2008/12/15(Mon)08:35:30 編集
逆を言えば、朝倉さんに協力するということは長門さんと敵対するということになってしまうわけで。キョンくんはそういう選択も迫られてしまったというわけですね。なんとも不憫な子!
【2008/12/16 01:01】
★無題
NAME: 筏津
なるほど『ワンダフル・デイズ』
実にワンダフルな展開です
今回は(も?)キョン君の政治能力が問われそうな話になりそうですね
2008/12/15(Mon)21:45:18 編集
どのようにして(主に自分が)無事に事を収められるか。キョンくんにすべてがかかっております。
【2008/12/16 01:02】
★無題
NAME: ソウ
こ、これは!久しぶりにニヤニヤしましたよw 果たしてキョンはどちらのサイズが好みなんでしょうか? ある意味究極の2択ですね~w
2008/12/15(Mon)21:59:19 編集
そもそもサイズの問題なのかどうかってところから考えなければなりませんw どちらを選んでも遺恨が残りそうですヨ。
【2008/12/16 01:03】
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