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DATE : 2007/10/10 (Wed)
と、きょこたんをきょこたんたらしめる言葉を自分が口にしたところで、ちっとも可愛くないのでやめておきます。

それでも言いたくなるくらいに時間がアレで、コレがソレしちゃってるので、ひとまずSSだけ置いていきますネ。

ではまた明日!

前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:一章-b

 そんな風に朝っぱらからハルヒに罵倒され、その日の授業は四六時中背後から殺気を感じて過ごすハメになった。俺がいったい何をしたと言うのか問い質したいところではあるものの、とてもじゃないが振り返る勇気はない。幸いなのが、休み時間になれば北高にいる中学時代のクラスメイトに同窓会の連絡をするために、ハルヒの気配から逃れられることだ。
「キョンが幹事をするの?」
 中学時代から今に至るまで、ある種の腐れ縁になってきた国木田に真っ先にその旨を伝えると、さも意外そうな顔を見せられた。俺だってこんな真似をするのは意外と思わざるをえない。
「そんなことをしてまで同窓会をしたがってたなんて、知らなかったよ」
「俺じゃない。須藤っていただろ。やりたがってるのはあいつなんだが、盲腸かなんだかで入院してな、代役を押しつけられた」
「ああ、そうなんだ。それでも、よくそんな面倒な役割を引き受けたね」
「俺一人じゃやらなかったさ。実際には須藤じゃなくて、佐々木に欺されたんだよ。俺が男連中のまとめ役、佐々木が女子連中のまとめ役って感じさ」
「ふーん、それでなんだね」
 佐々木の名前を出した途端、幽霊でも見るような眼差しを向けていた国木田が、その正体が柳の木だと判明して納得したかのような目の色に変わる。
「何だよ」
「いや、佐々木さんに頼まれたんなら、キョンが断れない理由も納得だねってこと。何かと大変そうだね。代わってあげようか?」
「いや、それはいい。引き受けたのは俺だし、佐々木も気心知れた俺の方が連絡事項があるときにコンタクトを取りやすいとか言ってたしな」
「だよね」
 まるで端から俺がそういうことを解っていたように、あっさりと引きやがった。妙に引っかかるものを感じるんだが、やっぱり代わってもらおうかね。
「やめておくよ。代わっても代わらなくても、あちこちから非難の眼差しを受けそうだからね。ま、頑張ってよ」
 なんだか釈然としない態度をされたが、こんなやりとりは何も国木田だけじゃない。他の連中にも同じようなニュアンスで言われた。
 まったくもって失礼な連中ばかりだ。俺をなんだと思ってるんだ? 何も佐々木に頼まれたから引き受けたわけじゃない、と言ってやったが、誰一人として聞く耳を持たなかった。重ねて言うが、とんでもない連中ばかりだ。
 溜息も出てこないうんざり気分を味わいつつも、一通り校内の同窓生に連絡事項を伝え終わった頃、俺になんとも言えないアンニュイな気分を味わわせる原因を作ったヤツから、メールが届いた。須藤ではなく、佐々木の方だ。こちらの進行具合を確かめる意味合いも含まれていたが、要約すると次のようになる。
 放課後に、会場についての打ち合わせがしたい。
 そんなもん、どこでもいいだろうと思わなくもないのだが、そういうわけにもいかないようだ。立場的にも呼び出しを受けた以上は断ることもできず、放課後になってすぐに昨日待ち合わせた喫茶店に向かうことになった。
「とまぁ……そんなわけで、俺はこれから用事があるんで」
「朝に聞いたわよ。さっさと行ってくれば?」
 放課後になり、改めてハルヒに報告すれば、けんもほろろな態度で一蹴された。
 何なんだろうね、あれは。いや、ハルヒの態度もそうだが、俺もなんだか落ち着かない気分だ。これをなんと例えようか。しいて言えば……そうだな、人が忙しいときに限ってじゃれついてくるペットが、いざこちらから相手をしてやろうと手を差し伸べると素っ気ない態度を取られた飼い主のような気分だ。
 まぁいい。ぷいっとそっぽを向いて教室から部室へ向かうハルヒを見送り、俺はそそくさと母校を後にした。帰宅部の奴らに混じって、一人下校するのはなかなか新鮮だ。いつもはやることなくても下校時間ぎりぎりまで校内に残り、何があってもなくても無駄に時間を費やしているから、そう思うのも仕方がない。
 急ぐでもなく、かといって行くのを躊躇うわけでもなく、マイペースで駅前の喫茶店に向かうと、すでに佐々木は待ちかまえていた。
 待ちかまえていたのはいいんだが……。
「おい、佐々木」
「何かな?」
「何でこいつまでいるんだ?」
 佐々木が確保していたテーブル席で、ストレートのアイスティを飲んでいるツインテールの後頭部を指さしていた俺は、果たしてどんな表情を浮かべていただろうな。
「何ですか? そんなパスタと思って食べたらうどんだった、みたいな顔をしないでもらいたいです。失礼ですよ」
 どうやらそんな顔をしていたらしい。
 人を指して失礼呼ばわりする橘は、けれど言葉で言うほど憮然とはしておらず、どちらかと言えばニコニコとして、お笑い芸人が十八番のギャグをいつやるのか期待する観客のような表情を浮かべている。
「橘さんにはね、今回の同窓会を行う会場をセッティングしてもらっているんだ。何かといい店を知っているよ。有り難いことじゃないか。だからキミも、感謝こそすれ、不躾な不満顔を見せるものではないな」
 冗談じゃない。二月の誘拐未遂といい、五月の脅迫詐欺未遂といい、同窓会の会場セッティングでチャラにできそうにないことをしでかしてきたコイツを前に、どうやったらいい顔をして見せられると言うんだ。
「ところでキョン、ちゃんと連絡は回してるんだろうね?」
「そりゃな。やることはちゃんとやってるぜ」
「それは何より。僕の方も同じ高校に進んだ旧友には連絡をしてある。あとは個別に電話連絡を入れるか、手紙でも出すくらいかな」
「それも俺がやるのか」
「キミはなかなか達筆だよ。紙媒体の連絡を行うのであれば、僕よりも適任だ」
 褒められてるのか、おだて上げられてるのか、判断しにくい言い方をされても素直に喜べないんだが。まぁ、手紙を出すにしろ、手書きなんて面倒なことはせずにパソコンで全部済ませちまうんだが。
「そんなことより、こいつがセッティングしてくれた店ってのはどんなところだ?」
「雑誌でも一度か二度、紹介されたこともある場所みたいだよ。僕は行ったことはないが、店の雰囲気だけではなく料理の味も悪くないらしい」
「そうですよ」
 佐々木の言葉尻に乗っかるように、橘も得意げだ。
「人気のお店ですから、普通なら予約を入れるのも大変なのです。もっとも、今はまだ本決まりではないから仮押さえですけど」
 それはあれか、『機関』ではないが、こいつが属する怪しげな組織の力を使ってってことなのか? どちらにしろ、店にとっては良い迷惑だな。
「もしよかったら、この後に行ってみてもいいですよ。値段も学生に優しいお手頃価格ですから、あたしがご馳走しちゃいます」
「遠慮する」
 佐々木だけならいざ知らず、橘まで一緒にいるんじゃ、楽しいお食事なんてできそうにないからな。
「とは言ってもね、キョン。店に行ってみようと言うのは冗談ではないのだよ。何事にも下見というのは大事じゃないか。今日、キミを呼び出したのも、そういう目的あってのことだよ」
「本気で行くのか?」
「何かと忙しいキミを呼び出したんだ、冗談で済ませるのは申し訳ない」
 どんなところなのか知らないが、制服のままで大丈夫なもんなのかね?
「どうなんだい?」
「別に構わないと思いますけど。着替えたいと言うのであれば、待っても構わないし」
 やっぱりこいつも来るんだな。
「あら、それなら遠慮しましょうか? 佐々木さんと二人きりがいいと言うのであれば」
「あのな」
「ふふ、冗談ですよ」
 どこで笑えばいい冗談なのか、是非とも教えてもらいたいところだ。
「何であれ、ここで時間を潰していても仕方がない。どうする、キョン?」
「解ったよ」
 橘の申し出なら有無を言わさず却下するところだが、佐々木まで妙に乗り気ときている。乗り気な女子二人を前に、断る手段を持ち合わせている男はそうそういないだろう。こういう場合、諾々と流れに乗っちまうのが男の悲しい性だね。
「じゃあ、お店に連絡入れておきます。佐々木さん、ごめんなさいですけど、ここの会計してきてもらっちゃっていいですか? 領収書は無記名でお願いします」
「いいよ」
 橘に言われて、佐々木は先に席を立つと、伝票を手に足取り軽くレジへ向かった。コウしてみると、橘はともかくとして、佐々木も年相応な普通の女なんだなと思う。食い物が絡むと、妙に積極的だ。
「あの、ちょっと」
 俺も席を立とうかと腰を上げたそのとき、橘に袖口を掴まれた。
「何だ?」
「どう思います?」
「何が」
「佐々木さんのこと。いつもと違うように感じません?」
「何の話だ?」
 妙に神妙な顔つきだ。佐々木に何かあったとでも言い出すんじゃないだろうな?
「いえ、そうじゃありません。ただ……うーん、上手く言えないけど、佐々木さん、少し落ち込んでませんか?」
「はぁ?」
 何を言ってるんだと思ったが、そういえばこいつは単なる誘拐未遂犯でもなければ、詐欺未遂犯でもない、佐々木が作り出したらしい閉鎖空間に入り込める超能力者だった。SOS団で言うところの、古泉と同じ属性の持ち主だ。
 古泉がハルヒ専門の精神科医であるのなら、同じ属性を持つこいつは佐々木専門の精神科医であってもおかしくない。
 その橘が、佐々木を指して落ち込んでると言う。
「今のあの姿を見て、落ち込んでると言うのかおまえは」
「あっ、今のは言葉のアヤで。本当に落ち込んでるかどうかは別として、安定している佐々木さんの精神状態に、ですね。少し変化があるのですよ。僅かな変化なんですけど、こんなことは初めてだから。あたしもよく解らないのです」
「つまり、佐々木の深層心理が喜怒哀楽のどれかに傾いてるってことか?」
「そう、そうです。それがいいことなのか、それとも悪いことなのか。あたしでも判断できなくて。あなたの目から見て、何か違います?」
 そんなことを言われても、微細な変化っぽい佐々木の感情の変化が、俺に解るわけもない。人相占いすらできないんだからな。
「いつも通りじゃないか?」
 それでも俺のコメントが欲しいなら、そうとしか言えないな。
「うーん……そうかなぁ、そうですか。うん、ごめんです。今の話、忘れてください」
 俺の一言で何を思ったのか知らないが、橘は浮かべていた困惑気味な表情を隠して、先ほどまでと同じような笑顔に戻した。

つづく
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★無題
NAME: Miza
なんだかんだと言いながらハルヒに素っ気無くされるとキョン君は寂しいのですな!
2007/10/10(Wed)10:34:17 編集
その寂しい気持ちがよく解らないのが、キョンくんのキョンくんたる所以ですネ!
【2007/10/11 00:42】
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