category: 日記
DATE : 2008/02/23 (Sat)
DATE : 2008/02/23 (Sat)
タイトルも決めました。テーマも固まりました。盛り込むエピソードもまぁ、ざっくりと揃いました(脳内で)。
ってことで、今回の長篇シリーズもなんとか形にできそうです(脳内で)。
かといって、そうザクザク進められるわけでもないので、更新頻度はちまちました感じで一回ずつが若干短めになるかもしれませぬ。
そんなわけで、今回の話をあれこれ語るのは蛇足というものになりそうなので、今日はこれにて! ちょろんと他の原稿してきまっする。ではまた!
ってことで、今回の長篇シリーズもなんとか形にできそうです(脳内で)。
かといって、そうザクザク進められるわけでもないので、更新頻度はちまちました感じで一回ずつが若干短めになるかもしれませぬ。
そんなわけで、今回の話をあれこれ語るのは蛇足というものになりそうなので、今日はこれにて! ちょろんと他の原稿してきまっする。ではまた!
前回はこちら
森園生の変心:一章-a
思わぬ鶴屋さんとの遭遇で、予定していた本屋からの撤退時間をオーバーしてしまった俺と古泉が急いで待ち合わせ場所まで戻ってみると、そこにはふてぶてしいまでに満面の笑みを浮かべたハルヒが、仁王も裸足で逃げ出すような剛胆っぷりな佇まいで左右に朝比奈さんと長門を従えてふんぞり返っていた。
結局、昼も俺の財布はダメージを負うことになった。幸いなのは古泉とペアでの罰金ってことであり、痛手は半分に抑えることができた……とも言えるが、朝のちょっとしたお茶代全員分と、昼食のしっかりしたランチに支払う代金は、たとえ古泉とワリカンにしたとしても同じ程度の額面になることは免れない。
どんよりした気分で訪れた午後の市内不思議探索は、班分けせずに全員でまわることにになった。解散時にまた遅刻されたんじゃたまらないわ、というのがハルヒの言い分であり、そのおかげで解散時の集合に遅刻するかもしれない事態は避けられたものの、それでも今日一日の無駄な出費を考えると胸が痛い。気分的な話ではなく、実際に胃に穴が空いてるんじゃないだろうか。
煩わしい学業から解放されたせっかくの休日に、どうして俺はこんな気分を味わわなければならないんだろうな。本当に、アレを誰か何とかしてくれ。切実にそう思う。
かといって、ハルヒをどうにかして欲しいのはもっともだが、だからと言って他の誰かがカネを出せ、と思うわけでもない。俺はただ、自分の支払いは自分でしとこうぜ、と提案しているのであって、それが今の世の中の真理であり義務でもある。
だからひっ迫したこの財政状況を打開するために、他の誰かに何とかしてくれと頼むのはお門違いだと思うし、となれば自分で何とかするのが筋ってもんだ。
「まさか本当に鶴屋さんのところで働くつもりですか?」
ある種の決意を胸に秘めた俺に向かって、何を察したのか解散直後で古泉がそんなことを言い出しやがった。文句あるのか?
「いえいえ、文句などあろうはずもありません。ただ、前にも少し話したかと思いますが……僕の立場上、あまり鶴屋さんを面倒事に巻き込むのは感心できない、ということですよ」
ああ……そういえば前に少し言ってたな。鶴屋さん……というよりも、鶴屋家は『機関』のスポンサー的な立場にある家柄とかなんとか。
確かに、俺個人としてもあの鶴屋さんを厄介事に巻き込みたいとは思わないし、鶴屋さん自身も、そういうものは見ているのが楽しいのであって当事者になるのは遠慮する、というようなニュアンスのことを言っていた。
だがな、何も今回の話は、妙なことを頼むわけじゃない。俺が個人的にバイトを探していて、そこに鶴屋さんの方から善意でバイト情報を提供してくれたって話だ。それに乗ろうが反ろうがハルヒ中心の面倒事とは関係ないし、ましてや『機関』のことも関係ない。
「それとも、俺がバイトしないで金欠になったときに、おまえや『機関』から援助金でも出してくれるのか?」
「それもまた、難しい相談ですね」
だろ? おまえがそう言うであろうことはわかっていたさ。だからほっといてくれ。
故に俺は今、自転車のペダルを必死になってこいでいた。向かう先は、もちろん一カ所しかない。
「ありゃ~っ、キョンくん。ホントに来ちゃったんだねっ!」
巨大で古風な門の前、半纏を羽織って無造作に髪をひっつめている鶴屋さんは、連絡なしで突然押しかけた俺を前に面白半分、困惑半分といった表情を浮かべて見せた。
「鶴屋さん、言ってたじゃないですか。バイトをさせてくれるんですよね?」
「ほぇっ?」
え……っと、何でそこで驚くんだ?
「まっさか本当にお金に困ってんのかいっ? もしかして、キョンくんのおやっさんが倒れちゃったりなんだりしちゃって、長男である自分が働かなくちゃ~ってんだったらっ、あたしができる範囲で協力すっけどっ!」
何を言うんですか縁起でもない。うちの親父はそりゃもう嫌になるくらいピンピンしてますよ。
「単純に、自分の小遣いを自分で何とかしようと思ってるだけです」
「はっは~ん、つまりやっぱりハルにゃんのためってわけだねっ!」
だからハルヒのためでもないと……はぁ、やれやれ。いちいち否定するのも面倒になってきた。
「うっはっはっはっ! やだなぁ、キョンくんっ! ちゃんと相手しておくれよっ。まっ、そんな話は横に置いといて……でも、ホントに働くつもりで来たのかい?」
「バイト経験なんてゼロですからね。まったく見ず知らずのところで働くよりは、何であれ、多少なりとも知り合いがいた方がストレスも少なく済むかなと……何か問題でも?」
「いやね」
天衣無縫という言葉が当てはまるこの人らしからぬ空気を感じ取り、もしや俺は洒落を真に受けたマヌケ野郎なんじゃないかと思い始めていると、鶴屋さんはポリポリと頭を掻きながら、まるで関係ない方向に目を向けて、ポツリと呟いた。
「決まっちゃったんだよね、お手伝いさん」
「え、そうなんですか?」
「いやあっ、なんかこう言っちゃうとさっ、イイワケみたいでヤなんだけどっ! でも実際そうなのさ」
そう前置きしてから、鶴屋さんは俺に事の顛末を話してくれた。
「昼にね、キョンくんにウチでのバイトの話を持ちかけたときは、うん、ホントにまだ募集してたんだよっ。でもさっ、それからあたしが家に戻ってみたら、もう決まっちゃっててっ! あたしもビックリしてんだよっ! いやマジで。ホントにホントっ!」
なるほど……それでこの人らしからぬ言い淀みっぷりを見せつけてくれてたわけか。
それならそうと、別に気にすることもない。鶴屋さんだって俺に話した側から新しい家事手伝いが見つかるとは思っていなかっただろうし、俺もタイミングが悪かっただけの話だ。何も鶴屋さんが悪いわけじゃない。
「いやいやいやっ! そーいうこっちゃなくってっ!」
そういうことじゃない……とは?
「ど~してあの人がウチで家政婦さんをやろうと思ったのっかな~ってこと! いやねぇ、そこまで大々的に募集してたわけじゃないのっさ、今回のお手伝いさん募集。なのに、どっからか聞きつけたみたいでさ、ふらりと今日やってきたかと思えばっ! 経験者ってことで即決しちゃったにょろよ」
「あの人……?」
あの人ってどの人だ? 家事手伝いの経験者に思い当たるような知り合いなんぞいないんだが。
そんなプロフィールに該当する人物像を頭の中で照らし合わせ作業に没頭しつつも、鶴屋さんはさらに『あの人』なる人物について説明してくれた。
「タイミング的に、キョンくんか古泉くんあたりから聞いたんのかな~って思ってたんよっ。だからっ! 今になってキョンくんが来たことに、さすがに鶴屋さんでもちょろんっと驚いちゃってるのさ~っ!」
俺か古泉から話を聞く? で、家事手伝いの経験者……? おまけに、鶴屋さんの話っぷりから察するに、鶴屋さん自身とも面識がありそうで……あれ?
何故だろう、たった一人だけ検索条件にヒットする人物がいるんだが……。
「お嬢様」
鶴屋さんが出した条件に当てはまる人物の顔を、脳内モンタージュ写真を制作していた俺だが、それはどうやら徒労で終わりそうだ。
「立ち話よりもお客様を中へお通しされたほうが……あら」
鶴屋さんのことを「お嬢様」などと呼び、屋敷内から姿を現したその人が、鶴屋家の新しい家事手伝いで間違いない。一目見て、それはわかった。そして、どんな顔だったのかを思い出すまでもなく、脳内モンタージュ写真で作りだそうとしていた人物がそこにいる。
「森さん……何してるんですか……」
優美に微笑み頭を垂れる森さんを前に、俺は聞くまでもないことを口にするのが精一杯だった。
つづく
森園生の変心:一章-a
思わぬ鶴屋さんとの遭遇で、予定していた本屋からの撤退時間をオーバーしてしまった俺と古泉が急いで待ち合わせ場所まで戻ってみると、そこにはふてぶてしいまでに満面の笑みを浮かべたハルヒが、仁王も裸足で逃げ出すような剛胆っぷりな佇まいで左右に朝比奈さんと長門を従えてふんぞり返っていた。
結局、昼も俺の財布はダメージを負うことになった。幸いなのは古泉とペアでの罰金ってことであり、痛手は半分に抑えることができた……とも言えるが、朝のちょっとしたお茶代全員分と、昼食のしっかりしたランチに支払う代金は、たとえ古泉とワリカンにしたとしても同じ程度の額面になることは免れない。
どんよりした気分で訪れた午後の市内不思議探索は、班分けせずに全員でまわることにになった。解散時にまた遅刻されたんじゃたまらないわ、というのがハルヒの言い分であり、そのおかげで解散時の集合に遅刻するかもしれない事態は避けられたものの、それでも今日一日の無駄な出費を考えると胸が痛い。気分的な話ではなく、実際に胃に穴が空いてるんじゃないだろうか。
煩わしい学業から解放されたせっかくの休日に、どうして俺はこんな気分を味わわなければならないんだろうな。本当に、アレを誰か何とかしてくれ。切実にそう思う。
かといって、ハルヒをどうにかして欲しいのはもっともだが、だからと言って他の誰かがカネを出せ、と思うわけでもない。俺はただ、自分の支払いは自分でしとこうぜ、と提案しているのであって、それが今の世の中の真理であり義務でもある。
だからひっ迫したこの財政状況を打開するために、他の誰かに何とかしてくれと頼むのはお門違いだと思うし、となれば自分で何とかするのが筋ってもんだ。
「まさか本当に鶴屋さんのところで働くつもりですか?」
ある種の決意を胸に秘めた俺に向かって、何を察したのか解散直後で古泉がそんなことを言い出しやがった。文句あるのか?
「いえいえ、文句などあろうはずもありません。ただ、前にも少し話したかと思いますが……僕の立場上、あまり鶴屋さんを面倒事に巻き込むのは感心できない、ということですよ」
ああ……そういえば前に少し言ってたな。鶴屋さん……というよりも、鶴屋家は『機関』のスポンサー的な立場にある家柄とかなんとか。
確かに、俺個人としてもあの鶴屋さんを厄介事に巻き込みたいとは思わないし、鶴屋さん自身も、そういうものは見ているのが楽しいのであって当事者になるのは遠慮する、というようなニュアンスのことを言っていた。
だがな、何も今回の話は、妙なことを頼むわけじゃない。俺が個人的にバイトを探していて、そこに鶴屋さんの方から善意でバイト情報を提供してくれたって話だ。それに乗ろうが反ろうがハルヒ中心の面倒事とは関係ないし、ましてや『機関』のことも関係ない。
「それとも、俺がバイトしないで金欠になったときに、おまえや『機関』から援助金でも出してくれるのか?」
「それもまた、難しい相談ですね」
だろ? おまえがそう言うであろうことはわかっていたさ。だからほっといてくれ。
故に俺は今、自転車のペダルを必死になってこいでいた。向かう先は、もちろん一カ所しかない。
「ありゃ~っ、キョンくん。ホントに来ちゃったんだねっ!」
巨大で古風な門の前、半纏を羽織って無造作に髪をひっつめている鶴屋さんは、連絡なしで突然押しかけた俺を前に面白半分、困惑半分といった表情を浮かべて見せた。
「鶴屋さん、言ってたじゃないですか。バイトをさせてくれるんですよね?」
「ほぇっ?」
え……っと、何でそこで驚くんだ?
「まっさか本当にお金に困ってんのかいっ? もしかして、キョンくんのおやっさんが倒れちゃったりなんだりしちゃって、長男である自分が働かなくちゃ~ってんだったらっ、あたしができる範囲で協力すっけどっ!」
何を言うんですか縁起でもない。うちの親父はそりゃもう嫌になるくらいピンピンしてますよ。
「単純に、自分の小遣いを自分で何とかしようと思ってるだけです」
「はっは~ん、つまりやっぱりハルにゃんのためってわけだねっ!」
だからハルヒのためでもないと……はぁ、やれやれ。いちいち否定するのも面倒になってきた。
「うっはっはっはっ! やだなぁ、キョンくんっ! ちゃんと相手しておくれよっ。まっ、そんな話は横に置いといて……でも、ホントに働くつもりで来たのかい?」
「バイト経験なんてゼロですからね。まったく見ず知らずのところで働くよりは、何であれ、多少なりとも知り合いがいた方がストレスも少なく済むかなと……何か問題でも?」
「いやね」
天衣無縫という言葉が当てはまるこの人らしからぬ空気を感じ取り、もしや俺は洒落を真に受けたマヌケ野郎なんじゃないかと思い始めていると、鶴屋さんはポリポリと頭を掻きながら、まるで関係ない方向に目を向けて、ポツリと呟いた。
「決まっちゃったんだよね、お手伝いさん」
「え、そうなんですか?」
「いやあっ、なんかこう言っちゃうとさっ、イイワケみたいでヤなんだけどっ! でも実際そうなのさ」
そう前置きしてから、鶴屋さんは俺に事の顛末を話してくれた。
「昼にね、キョンくんにウチでのバイトの話を持ちかけたときは、うん、ホントにまだ募集してたんだよっ。でもさっ、それからあたしが家に戻ってみたら、もう決まっちゃっててっ! あたしもビックリしてんだよっ! いやマジで。ホントにホントっ!」
なるほど……それでこの人らしからぬ言い淀みっぷりを見せつけてくれてたわけか。
それならそうと、別に気にすることもない。鶴屋さんだって俺に話した側から新しい家事手伝いが見つかるとは思っていなかっただろうし、俺もタイミングが悪かっただけの話だ。何も鶴屋さんが悪いわけじゃない。
「いやいやいやっ! そーいうこっちゃなくってっ!」
そういうことじゃない……とは?
「ど~してあの人がウチで家政婦さんをやろうと思ったのっかな~ってこと! いやねぇ、そこまで大々的に募集してたわけじゃないのっさ、今回のお手伝いさん募集。なのに、どっからか聞きつけたみたいでさ、ふらりと今日やってきたかと思えばっ! 経験者ってことで即決しちゃったにょろよ」
「あの人……?」
あの人ってどの人だ? 家事手伝いの経験者に思い当たるような知り合いなんぞいないんだが。
そんなプロフィールに該当する人物像を頭の中で照らし合わせ作業に没頭しつつも、鶴屋さんはさらに『あの人』なる人物について説明してくれた。
「タイミング的に、キョンくんか古泉くんあたりから聞いたんのかな~って思ってたんよっ。だからっ! 今になってキョンくんが来たことに、さすがに鶴屋さんでもちょろんっと驚いちゃってるのさ~っ!」
俺か古泉から話を聞く? で、家事手伝いの経験者……? おまけに、鶴屋さんの話っぷりから察するに、鶴屋さん自身とも面識がありそうで……あれ?
何故だろう、たった一人だけ検索条件にヒットする人物がいるんだが……。
「お嬢様」
鶴屋さんが出した条件に当てはまる人物の顔を、脳内モンタージュ写真を制作していた俺だが、それはどうやら徒労で終わりそうだ。
「立ち話よりもお客様を中へお通しされたほうが……あら」
鶴屋さんのことを「お嬢様」などと呼び、屋敷内から姿を現したその人が、鶴屋家の新しい家事手伝いで間違いない。一目見て、それはわかった。そして、どんな顔だったのかを思い出すまでもなく、脳内モンタージュ写真で作りだそうとしていた人物がそこにいる。
「森さん……何してるんですか……」
優美に微笑み頭を垂れる森さんを前に、俺は聞くまでもないことを口にするのが精一杯だった。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
今回は森さんがメインヒロインなのです!
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
対決ものという形にはなりそうな、ならなさそうな感じではありますが、まだ始まったばかりですのでどうなるかは……ってところです。
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
森さんのフラグを立てようだなんて、そりゃ無茶ってもんですよ!
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