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DATE : 2024/04/20 (Sat)
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DATE : 2008/10/22 (Wed)
あれですね、一昨日くらいに「あれあれ」言ってて、禁書にするかハルヒにするか迷ったのはここだけの話。結局手に慣れているハルヒSSにしましたけど。

ンマー。なのであれです。あれあれ。今日はカタカナじゃありません、ひらがなです。あれあれ。

や、ちょっと昨日UPしたオムニバスの佐々木さんみたいな状況なので何を言ってるのかよくわかっておりません。そんな中で書き殴ったので、誤字脱字は勘弁な! ここから次の展開どうするとかも考えてないけどいつものことだしな!

(ρw-).。o○

ではまた。

吉村美代子の奔走:1

 どうしたもんかなぁ……と、俺は両腕を組みながら天井を眺め、一人心の中でため息を吐いた。
 今日は土曜日。普通に何もない一日のはずだった。そりゃ、ハルヒから「市内不思議探索をやるわよ!」というお達しがあったものの、それすらももはや慣れ親しんだ日常の風景だし、今では『市内お散歩探索』と名称変えをしてもいいような代物となっている。
 つつがなく終了する……予定だったんだんだがなぁ……。
 それがおかしくなったのは、午前の部で古泉とペアになり、時間を潰すつもりで立ち寄った本屋でのこと。鶴屋さんと遭遇したが、あの人との邂逅で狂うような予定があろうはずもなく、それなら何が問題だったのかというと、その後に掛かってきた電話の内容以外にあり得ない。
 どうも要領を得ない話だった。電話口では埒が明かないからということで午後の市内探索をキャンセルし、駆けつけた今、こうやって喫茶店で向かい合っている。
「本当に……あの、覚えがありませんか?」
 俺の前で萎縮しまくっている妹の親友、吉村美代子ことミヨキチは、それでも一縷の望みにすがるような眼差しで尋ねてくるが、返す俺の言葉は変わらない。
「まったくない」
「ですか……」
 はぁ~っ、と深いため息を吐く彼女を前に、俺は何も悪くないし欺そうとしているわけでもなく、故に罪悪感を覚える必要などまったくないのだが、それでも申し訳なく思ってしまう。
「そもそも、その話って……ええと、土曜日だっけ? 土曜日って今日じゃないか。その時点でおかしいだろ」
「そうなんです。そうなんですけど……それならこれって誰のですか?」
 向かい合っているテーブルの中央にぽつんと置かれた携帯電話。それが問題だった。
 俺の、らしい。
 らしい、というのは、つまり件の携帯電話が俺のものだと主張しているのはミヨキチの方で、俺自身にはまったく身に覚えがないわけだ。そもそも自分の携帯電話はちゃんと持っているし、複数の携帯電話を使い分けなくちゃならないわけでもない。
 そう説明しても、けれどミヨキチは理解してくれなかった。いや、理解しているのかもしれないが、ただそれだとどうしても説明できないことが出てくるため、理解できても納得できないのかもしれない。
「ちゃんとお店で確かめたんですけど……」
 そう、それが一番の問題だった。
 ミヨキチが差し出した携帯電話の契約者氏名は俺になっている。
 どうしてミヨキチがそんなことを知ってるのかというと、これがまた面倒な話になってくるのだが……どうやらその携帯電話、ミヨキチの家にあったらしいんだな。それも玄関先とかではなく、居間のインテリアとして飾ってる壷の中に。
 もちろん俺はそんなところに携帯電話を隠した覚えはないし、そもそもミヨキチの家に行ったこともない。そりゃそうだ。どうして俺が妹の親友の家に遊びに行くんだよ。
 けれどミヨキチが言うには、それは両親のものでもないし自分のものでもないようで、誰も見覚えがないと言い張った。かくいう親はこの週末に旅行に出かけており、家にはミヨキチが一人で留守番をしているから、親は現物を見て確認したわけじゃなかったらしいけどな。小学生の娘を残して旅行に行く親ってのもどうかと思うが、そこは他所の家庭の事情であり、ミヨキチもそれでいいようなのであえて何も言うまい。
 問題なのは壷から出てきたっていう携帯電話に誰も覚えがなく、けれど事実として携帯電話があることだった。自分の家の中にあったのだから家族の誰かのものだろうと思っていたのに誰も覚えがない。
 そこでミヨキチは、仕方なくショップに持って行ったらしいんだな。家の中にあるのだからどうせ家族の誰かのもので、もしそのまま契約が生きてたら無駄金を払い続けることになる、だからショップに持っていって、その携帯電話がどういう状況なのかを確かめようとしたらしい。
 それで判明したのが──。
「俺が契約した携帯って言われてもなぁ」
 こっちとしては、そこでどうして俺の名前が出てくるのか、そのことにこそ疑問が残る。これは何かしらのイタズラかドッキリかと思うのは当然であり、けれど目の前のミヨキチを見れば、からかおうとしているわけでも欺そうとしているわけでもないのは明白だ。
 なので俺たちの意見は平行線を辿り、これ以上、ここで顔をつきあわせていても結論が出そうにない。
 ただ、俺としても不思議に思うことはある。携帯電話の正体以前の問題として、だ。
「しかしまた、なんで壷の中を調べたんだ?」
 自分の家でインテリアとして毎日のように飾られている壷だろ? 花を生けて毎日水を交換しているというのならいざしらず、防水加工が施されているわけでもない携帯電話が無傷で出てきたってことは、花を生けてないってことだ。壷なのに花を生けないってことは、それはつまり件の壷は壷それだけで部屋の飾りとして機能するような高級品であり、そういうのは……なんつーのかな、一般家庭に育っている俺が勝手に思い込んでいるだけかもしれないが、水を入れて云々としない代物に思える。水を入れると壷が傷むし、何より水の交換をしているときに滑らせて割ったら大変じゃないか。
 となれば、そんな壷の中を見ようと思うか? 普通は思わない。玄関先に置いてカギとかの隠し場所にしてるなら話は別だが、居間のインテリアとして飾られている壷の中なんて、気にも留めないさ。
「気になったからです」
「気になったって……何故?」
「それは……ええっと、上手く説明できないんですけど、ただ何故かそのぅ……そう、部屋の中がいつもより綺麗だなぁって思って、本当になんかこう……急に『あれ?』って思って……なんですけど」
「はぁ……?」
 ミヨキチはどこまでも自信なさ気だ。自分でも何を言ってるのかわかってないんじゃないか、と思えなくもない。
 部屋の中が綺麗だから壷の中を見た……ねぇ。
 意味がわからん。
 ただ、人間の行動すべてに意味や理由があるとも限らないし、俺だって急に思い立って普段滅多に目を通さない押し入れの中を覗き込んでみたくなるときがある。つまりミヨキチが壷の中を覗いてみたのも、そういうことなのかもしれない。
「まぁ……」
 この際だ、壷の中を覗いた理由は横に置いておこう。それは重要な問題じゃない。本当に重要なのは今ここに現存している俺名義の見知らぬ携帯のことであって、それが何を意味しているのかってことこそ考えなければならない話だ。
 が、こうやってミヨキチと顔をつきあわせていても訳がわからん。
「あの……本当にお兄さんは、わたしの家に来たことがない……んですよね?」
「ないな。うん、ない」
「ですよね……うーん」
 こっちは迷い無く断言しているのに、ミヨキチは眉間に皺を寄せて唸っている。携帯電話のことのみならず、俺の行動にさえ疑いがあるのか。
「う、疑いだなんてそんな! そうじゃなくて、わたしの方がその、お兄さんを家に招いたことがあるようなないような……そんな夢を、」
「夢?」
「あ、いえ! いえその、夢に見たとか見るとかそうじゃなくってあのその……と、とにかくえっと、携帯電話はお返しします」
「お返ししますと言われても身に覚えはないんだが……ま、預かっとくよ」
 何やら強引に会話を打ち切られた気分だが深く追求せず、俺は差し出された携帯を素直に受け取ることにした。正体不明の携帯は明かに異常な存在であり、そういう異常なことにミヨキチは慣れておらず、方や俺は日常事のように異変や異常に慣れ親しむ生活を強いられている。
 俺が持っておくのが最善だろう。ミヨキチに持たせておいて、何かが起こってからじゃ遅いしな。
 それに……番号やメールアドレスが違うと言っても、俺の携帯電話が二つあるんだ。そこには何かしらあるんだろう。宇宙的、未来的、超能力的、あるいはハルヒのトンデモパワー的な何かが。
 まったく……こんなことにすぐ思い至る自分の考え方をどうにかしたいもんだ。異常な事態になってもすぐに思い至るアテがある人生は、いずれどこかで修正したい。
 そんなことを今ここで考えていても仕方がないか。
 俺の携帯がふたつあるってことは、まず超能力的な話じゃないとは思う。となると宇宙的か未来的か……どちらであっても驚きが少ない分、可能性は高い。ただ、俺の名義でしっかり登録されていることを考えると、宇宙的な厄介事のような気がする。
 何故、未来的厄介事じゃないのか。理由は簡単だ。今のこの時点で名義登録されているということは、過去にそういうことをやっていなければ辻褄が合わない。けれど俺は過去にそういう真似をした覚えがない。となれば時間移動の線は消えるわけで、残る選択肢はひとつだ。
 ……また長門に頼るのか……。申し訳ない気分になるが、俺一人の手には負えない事態だしな。
「それじゃミヨキチ、今日はこれで……」
「コーヒーのおかわりは如何ですか?」
 席を立とうとしたところ、絶妙のタイミングでウエイトレスがコーポーポットを片手に声を掛けてきた。今まさに帰ろうとしていたところなのに、まったく空気が読めてないとしか言いようがない。
 もっとも、そのウエイトレスを見て、空気が読めてないんじゃなくて、読めてるからこそ席を立とうとしたところに割り込んで来たんだろう、とは思う。
「もしかして、毎日バイトしてるんですか?」
「ナイショです」
 そういう喜緑さんは、まさに接客業をするに相応しい笑顔を浮かべているものの、それで本心を上手く隠している。
「可愛らしい恋人をお連れしてるんですね」
「こっ、恋人なんてそんな!?」
 こっちはすでに呆れているが、ミヨキチは素直に喜緑さんの言葉を受け入れてはわはわしている。こういう真似をしたいからこそ、あのタイミングで割って入ってきたのかこの人は。
 ……ああ、そうか。長門にばかり頼らずとも喜緑さんでも相談くらいなら丁度いいかもしれん。もっとも、今はミヨキチがいるから迂闊なことは言えないが……って。
「どうした?」
 喜緑さんにからかわれてわたわたしていたミヨキチが、何故かその喜緑さんを凝視している。俺と気さくに話している姿に疑問を抱いたからというわけではないらしく、どちらかというと最近テレビに出始めた若手芸能人のそっくりさんを見かけたような表情だ。
「どうかなさいましたか?」
 ともすれば不躾とも取れるミヨキチの視線を受けても、喜緑さんは緩やかな笑みのままで問いかけている。これがこの人のデフォルトだってことを俺はわかっているが、ミヨキチはハッと我に返ったように急に慌て始めた。
「いっ、いえその、すみません……。あ、あのぅ……失礼ついでに……って言っちゃうとあれですけど……以前にもどこかでお会いしたことがありませんか?」
 以前に? この二人が?
「申し訳ございません。わたしには思い当たることがございませんけれど、ここでお会いしたのかしら?」
「い、いえそうじゃなくて……そうですよね。すみません、変なことを聞いちゃって」
「いえいえ、お気になさらず」
 そりゃそうだ。俺のあずかり知らぬところでこの二人に妙な接点があったとなれば、それはそれで問題ありだろ。それより。
「喜緑さん、あとで少し……えーっと、バイト終わるのっていつですか?」
「あら、それはどういう意味でしょう? こんな可愛らしいお嬢さんとご一緒してるのに、他の女性に声をかけるのは関心できませんね」
 なんでそう言う話になるんだ……。
「あ、あのわたし、お邪魔でしたら、」
「それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
 喜緑さんはミヨキチの言葉をそれとなく遮り、笑顔のままで軽く俺を睨むと、そのまましずしずと厨房の方へ去っていった。言ってることはもっともだと思わなくもないのだが、無駄に妙なことを意識させるような発言は本当に控えていただきたい。
「ミヨキチ、喜緑さんと会ったことあるのか?」
 そこはかとなく気まずい空気を感じて、わかりきっていることをあえて振ってみた。そうでもしなけりゃこの空気は拭い去れそうにない。
「い、いえ、わたしの勘違いだったみたいです……あの」
「ん?」
「今の方って、お兄さんのお知り合いなんですよね?」
「まぁ、そうだな」
「お名前は何て言うんですか?
「ん、喜緑さん。フルネームだと喜緑江美里だな」
「喜緑……? もしかして、同年代の肉親の方っていらっしゃいませんか? 女性の人で」
「肉親?」
 喜緑さんに肉親? あの人に肉親なんぞいるわけがないと思うが……強いて言えば、長門が肉親ってことかな? 仲の良し悪しは別として。
「いる……って言えばいることになる……かな? でもそれが、」
「いるんですか!?」
 答えた瞬間、物凄い勢いで食い付いてきた。そんなに喜緑さんに肉親がいることが衝撃的だったのか? そもそも初めて会うんだろ?
「あ、あのその、それにはいろいろ理由があって、えっと、詳しくお話すると長くなるんですが……とにかく今の人ともう一回ちゃんとお話させてください」
「お話っつったって、喜緑さんは今、バイト中じゃないか。邪魔するのも悪いだろ?」
「お時間があるときでかまいませんから」
 ミヨキチはヤケに必死だ。根本のところで頑固なところはありそうだと思っていたが、かといってそれを表に出すのは珍しい。
「どうしたんだ?」
「いえ、あの、自信はないんですけど……やっぱりわたし、あの人とお会いしたことあると思うんです。そのとき、お兄さんも一緒で……その、覚えてませんか?」
「俺と喜緑さんとミヨキチの三人が一緒?」
 どういう状況だ、それは。まったく接点がない組み合わせだぞ、それは。
「それにそのとき……名前は確か……あさか……あさ……そう、朝倉さんも一緒だったと思うんですけど」
「朝倉?」
 朝倉って……朝倉だと? ちょっと待て。その朝倉って言うのは……ええと、どの朝倉だ? それは俺が思い描いているあの朝倉でいいのか?
 ……俺と喜緑さんとミヨキチがいて、そこに朝倉も?
 これは確実にミヨキチが何かと勘違いしているとは思う。そもそも俺たちに接点などない上に、朝倉まで出てくるのはあり得ない。
 あり得ないのだが……当てずっぽうにしてはどうしてドンピシャで朝倉の名前が出てくるんだ?
「ミヨキチ……おまえ、何があったんだ?」
「え?」
 素のままで不思議そうに首を傾げるミヨキチを前に、これはまた面倒なことになりそうだな、と──俺はため息を吐くしかなかった。

つづく
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★無題
NAME: Miza
ついにミヨキチが主役ですね!
そして喜緑さんのことも朝倉のことも覚えている?ワクワクな展開です。
2008/10/22(Wed)10:52:06 編集
ついにミヨキチさんです。公式ビジュアルはいつになったら……と、何度も繰り返しますが呟かずにはいられないミヨキチさんです。
とてもとてもいい娘なので応援してあげてください><
【2008/10/22 23:57】
★無題
NAME: 鳥菅・リー
こんなにミヨキチを題材として取り扱うSS作者を、俺は他に知らない。お好きなんですね。
2008/10/23(Thu)01:20:23 編集
そもそも原作ではちらりとしか出てきてませんから、使おうにも使えない人が多いんではないかと。うちは開き直って俺設定で通してますけどw
今回ばかりはミヨキチさんでなければならないわけでのご登場です。
【2008/10/24 00:01】
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