category: 日記
DATE : 2007/11/07 (Wed)
DATE : 2007/11/07 (Wed)
どうやら一端崩れた睡眠時間は、一日やそこらで治せるほど容易なものじゃないらしいです。別に忙しいわけでも何かすることがあるわけでもないのに、一日の睡眠時間が三~四時間というのは少なすぎのような気がしてなりません。
ともかく、もうしばらくは早寝早起きを頑張ろうと思います(゚д゚)/ まぁ、忙しくなればそんなことも言ってられないんですけどね。
そういうわけで、本日は長篇SSの続きになるます。
ともかく、もうしばらくは早寝早起きを頑張ろうと思います(゚д゚)/ まぁ、忙しくなればそんなことも言ってられないんですけどね。
そういうわけで、本日は長篇SSの続きになるます。
前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:三章-c
「ホントに困ったものですね、あの態度」
藤原が立ち去り、俺が鉛のように重いため息を吐いていると、まるで他人事のような声音で、橘が空惚けたことを言いやがる。
「何とかしろよ、あれ」
「苦情は他所に回してください。あたしでは対処しきれないのです」
諦めの境地と言うか、達観の極みと言うべきか、橘も藤原には最初から何も期待していないらしい。
「だが、あいつが何か知ってることだけは確かだぞ。締め上げて聞き出した方が手っ取り早いんじゃないのか?」
「そういう乱暴な真似はよくないと思うのです」
じゃあ何か? 朝比奈さんの誘拐未遂は乱暴なやり方じゃなかったと、コイツはそう言いたいわけか。
「それを言われると照れますね」
照れるところじゃないだろ。えへへ、とか笑ってごまかそうったってそうはいくか。
「それに、未来人さんたちの口の堅さはあなたもご存じでしょう? 仮にどれほど強力な自白剤を使ったところで、口を裂いて出てくる言葉が真実かどうかも怪しいわ」
物騒な話を振ったのは確かに俺の方だが、自白剤だなんだと非合法この上ない言葉をさらりと口にして、橘は溜息混じりに頬杖を突いた。
「そもそも、今の状況がどれほどひっ迫したものなのかも解らないのです。藤原さん、あんな思わせぶりな態度を取ってますけど、実際はたいしたことじゃないのかもしれません。いいように弄ばれるのはゴメンです」
そんな風に呟く橘を見て、どうやら藤原は仲間内からも信用されてないのがよく解る。あんな態度じゃ仕方ない、とは思うが、こいつらの間で未だに協力関係が築けていないってのも、いささか問題ありなんじゃないかね?
「今日はこれで引き上げます。もし何か解ったら、ご連絡いただけると嬉しいわ。あたしへの連絡先は……送ったメールに返信してください」
そう言うと、橘は伝票を手に立ち上がった。
「今日、佐々木は?」
「もうすぐ、こちらにいらっしゃると思います。ああ、そうそう。ひとつだけ、お願いしていいです?」
おまえのお願いなんぞ即断即決で大却下だ、と言いたいところだが、閉鎖空間で見たことや、あの場の空気にあてられたのか、今日の俺はいつも以上に寛大だったらしい。
「……聞くだけ、聞いてやろう」
苦虫を噛み潰す思いでそう言えば、橘はくすくすと笑い声をこぼした。
「佐々木さん、表層的にはいつもと変わりないと思いますけど、もしできれば……少し、優しくしてあげてください」
優しくしろも何も、俺は常日頃から佐々木を相手に素っ気ない態度も乱暴な態度も取ってないぞ。もし仮に、日頃の態度では物足りないと言って、いつも以上に気を遣ったような態度で接しろと橘は言いたいのか? それで物事が好転するんだろうか。あの佐々木を相手に?
何か違うような気もするんだけどな。
「────────」
「うわっ」
って九曜、まだいたのか。存在感が希薄なだけに、一言も喋らずにいられると、ついついその存在そのものを忘れそうになる。つーか、こいつも何でここにいるんだ? そろそろ帰ればいいだろう。どこに帰るのか知らんけども。
「……なんだよ」
その九曜は、けれど一向に立ち上がる気配すら見せず、人の顔を鏡か何かと勘違いしているような眼差しで凝視している。もしかすると、何かしらの宇宙電波を俺に向かって送信してるのかもしれん。が、あいにくだが、俺にはそんなケッタイなもんを受信する能力はミトコンドリアサイズでもありゃしない。
さすがに居心地が悪くなってきた……その頃合いで、ようやく視線をはずして俺の背後に目を向けた。他に興味を注がれるものでも見つけたようだ。
やれやれ、もう少し長く見つめられていたら石になっていたかもな。今でさえ、妙な汗が背中を濡らしてるんだ。真夏とは言え、冷房の効いた喫茶店で、ここまで流れないだろうって汗の量だった。
「ご無事ですか?」
そんな汗でびっしょりな俺の背後から、ポンッと置かれる白くて長い指。橘はここに佐々木が来ると言っていたが、俺の肩に手を置いたのは佐々木ではなく──。
「森さん!?」
振り返れば、そこには普段着に身を包んだ年齢不詳の本式メイドが佇んでいた。
「ご無沙汰しております。それに」
俺に向かって優美に微笑む森さんだが、ご無沙汰と言っても、前に会ったのは先月のオーパーツ事件のときだ。一ヶ月も経ってないので俺的には「久しぶり」って気分じゃない。そんな森さんは、表情を無くして九曜に目を向けた。
「そちらの方も、お元気そうで」
「ああ、いや」
にわかに張りつめ始めた空気に不穏なものを感じ、俺は慌てて口を挟んだ。一触即発ってのは、もしかすると今のこの状況を言うのかもしれない。
「俺がここにいるのはこいつに引っ張ってこられたからであって……って、そもそも森さん、どうしてここにいるんですか」
「ご連絡を受けまして。あなたが……ええと、個性的な女性に連行されたけれど大丈夫なのか、と」
九曜を指して『個性的』とは、随分とまたオブラートに包んだ例え方だな。
「誰からそんな連絡が?」
「鶴屋さんからです」
だからどうして鶴屋さんからそんな連絡が……って、俺が九曜に連行される姿を見られているからか。けれど、そこでどうして森さんに連絡が行くんだ?
「さて……何故でしょう。わたしはただ、迎えに行ってくれと頼まれただけです。それで……どうしてまた、彼女があなたを?」
「ああ、ええっと……」
森さんも古泉と同じ『機関』に属する人間だ。実際に閉鎖空間に入って赤玉になり、《神人》とドンパチするのか知らないが、少なくとも俺よりは、これまで発生した閉鎖空間の内部でどのような事態が起きていたのかを知っているに違いない。そもそもこの状況で隠すことなど何もないわけで、俺は橘から聞いた話と、あいつに連れられて行った佐々木の閉鎖空間内で見た黒い塊についてを話すことにした。
その間、九曜は口を挟んで来ることはなかった。もっとも、こいつが口を開くのは稀であり、開いたところで無意味な台詞を言うに決まっている。もしかして精密に作られた人形が代わりに置いてあるんじゃないかと思えるほど、視認できる動きは微塵もなかった。
「黒い塊……ですか」
「ハルヒの閉鎖空間で、それらしいものが出現したとか、似たことはないんですか?」
「そういう報告は受けておりません。それに、似たような事例があったとしても、それが参考になるかどうかも解りません。具体的には、どういったものだったのでしょう?」
「どうって……それこそまさに黒い塊としか言えないですね。穴が空いてるみたいでしたが、本当に真っ暗で何も見えやしません」
「何も?」
「何も、です」
「そうですか」
森さんは細い指を顎に当てて考える素振りを見せたが、すぐに肩をすくめた。
「見当も付きません。そもそも、わたしに聞くよりもそちらの方にお聞きした方がよろしいのでは?」
ともすれば、考えるような仕草こそ見せたものの、事が佐々木や橘が関わることだから深く考えなかったんじゃないだろうか。そう思えなくもないほど早く考えることをやめて、森さんは事もあろうに九曜に話を振った。
そりゃあまぁ、そうだよな。九曜がどういう存在なのか知っていれば、こいつに話を振るのが自然な流れってヤツさ。長門の親玉とタメを張れるような存在に作り出された九曜は、今の長門と違ってよりデジタルに考えて動きそうだ。藤原や朝比奈さん(大)みたいに、言いたいけど先のことを考えれば何も言えない、と思うまでもなく、打てば響く鐘のように、解っていることを包み隠さず教えてくれるに違いない。まともな言葉で話すか否かは別としてね。
ただそれでも、こいつも解らないって、
「────音、が────」
俺の言葉に被せるように、突如として九曜が喋り出した。
「────重なり────壁、に────震えて、穴……が────」
「何だって?」
「────でも────越えられない──────壁────」
何だ? 何なんだいったい? 妙なスイッチでも押しちまったか? べろべろに伸びたカセットテープのような声音で、まったく無意味なことを喋り出しやがった。こいつがこっちの質問を理解してるのか不明だが、九曜も九曜で、こっちの言葉が本当に解っていないのかもしれない。そう思えてくる。
「壁……震え……」
ですから森さん。こいつの言うことは右から左に流しておいた方がいいですって。こいつとのコミュニケーションは異文化の人間を相手にするよりも難しい。ってか、端からしない方が賢明ですよ。人間が、人間以外の動物と会話できないのと一緒ですよ。
「────────」
森さんはそれでも律儀に九曜の言葉を解読しようと考え込み、俺は考えることを放棄して呆気に取られていると、その無意味な台詞を口走った九曜は、何の前振りもなく指先で目の前のコップを弾いた。
「きゃっ」
と、聞こえた悲鳴は突然だった。そんな声を上げたのはけれど森さんではなく、俺たちの席から少し離れた場所にいる女子高校生だった。店員がおしぼりなんか持って駆け寄るところを見ると、水でもこぼしたらしい。
そんなどうでもいいようなことに気を取られている隙に、九曜は立ち上がっていた。滑るような足取りで、そのまま喫茶店から出て行く。
これは本当になんて言うか……九曜といい藤原といい、佐々木の周りに集まった連中はロクでもない連中ばかりだ。
それでも平然として、自らの閉鎖空間でハルヒのようにストレスを発散させることもしないとはね。今さらだが、佐々木ほど人間が出来ているヤツは、世界中を探しても他に一人いるかいないか、かもしれない。
つづく
涼宮ハルヒの信愛:三章-c
「ホントに困ったものですね、あの態度」
藤原が立ち去り、俺が鉛のように重いため息を吐いていると、まるで他人事のような声音で、橘が空惚けたことを言いやがる。
「何とかしろよ、あれ」
「苦情は他所に回してください。あたしでは対処しきれないのです」
諦めの境地と言うか、達観の極みと言うべきか、橘も藤原には最初から何も期待していないらしい。
「だが、あいつが何か知ってることだけは確かだぞ。締め上げて聞き出した方が手っ取り早いんじゃないのか?」
「そういう乱暴な真似はよくないと思うのです」
じゃあ何か? 朝比奈さんの誘拐未遂は乱暴なやり方じゃなかったと、コイツはそう言いたいわけか。
「それを言われると照れますね」
照れるところじゃないだろ。えへへ、とか笑ってごまかそうったってそうはいくか。
「それに、未来人さんたちの口の堅さはあなたもご存じでしょう? 仮にどれほど強力な自白剤を使ったところで、口を裂いて出てくる言葉が真実かどうかも怪しいわ」
物騒な話を振ったのは確かに俺の方だが、自白剤だなんだと非合法この上ない言葉をさらりと口にして、橘は溜息混じりに頬杖を突いた。
「そもそも、今の状況がどれほどひっ迫したものなのかも解らないのです。藤原さん、あんな思わせぶりな態度を取ってますけど、実際はたいしたことじゃないのかもしれません。いいように弄ばれるのはゴメンです」
そんな風に呟く橘を見て、どうやら藤原は仲間内からも信用されてないのがよく解る。あんな態度じゃ仕方ない、とは思うが、こいつらの間で未だに協力関係が築けていないってのも、いささか問題ありなんじゃないかね?
「今日はこれで引き上げます。もし何か解ったら、ご連絡いただけると嬉しいわ。あたしへの連絡先は……送ったメールに返信してください」
そう言うと、橘は伝票を手に立ち上がった。
「今日、佐々木は?」
「もうすぐ、こちらにいらっしゃると思います。ああ、そうそう。ひとつだけ、お願いしていいです?」
おまえのお願いなんぞ即断即決で大却下だ、と言いたいところだが、閉鎖空間で見たことや、あの場の空気にあてられたのか、今日の俺はいつも以上に寛大だったらしい。
「……聞くだけ、聞いてやろう」
苦虫を噛み潰す思いでそう言えば、橘はくすくすと笑い声をこぼした。
「佐々木さん、表層的にはいつもと変わりないと思いますけど、もしできれば……少し、優しくしてあげてください」
優しくしろも何も、俺は常日頃から佐々木を相手に素っ気ない態度も乱暴な態度も取ってないぞ。もし仮に、日頃の態度では物足りないと言って、いつも以上に気を遣ったような態度で接しろと橘は言いたいのか? それで物事が好転するんだろうか。あの佐々木を相手に?
何か違うような気もするんだけどな。
「────────」
「うわっ」
って九曜、まだいたのか。存在感が希薄なだけに、一言も喋らずにいられると、ついついその存在そのものを忘れそうになる。つーか、こいつも何でここにいるんだ? そろそろ帰ればいいだろう。どこに帰るのか知らんけども。
「……なんだよ」
その九曜は、けれど一向に立ち上がる気配すら見せず、人の顔を鏡か何かと勘違いしているような眼差しで凝視している。もしかすると、何かしらの宇宙電波を俺に向かって送信してるのかもしれん。が、あいにくだが、俺にはそんなケッタイなもんを受信する能力はミトコンドリアサイズでもありゃしない。
さすがに居心地が悪くなってきた……その頃合いで、ようやく視線をはずして俺の背後に目を向けた。他に興味を注がれるものでも見つけたようだ。
やれやれ、もう少し長く見つめられていたら石になっていたかもな。今でさえ、妙な汗が背中を濡らしてるんだ。真夏とは言え、冷房の効いた喫茶店で、ここまで流れないだろうって汗の量だった。
「ご無事ですか?」
そんな汗でびっしょりな俺の背後から、ポンッと置かれる白くて長い指。橘はここに佐々木が来ると言っていたが、俺の肩に手を置いたのは佐々木ではなく──。
「森さん!?」
振り返れば、そこには普段着に身を包んだ年齢不詳の本式メイドが佇んでいた。
「ご無沙汰しております。それに」
俺に向かって優美に微笑む森さんだが、ご無沙汰と言っても、前に会ったのは先月のオーパーツ事件のときだ。一ヶ月も経ってないので俺的には「久しぶり」って気分じゃない。そんな森さんは、表情を無くして九曜に目を向けた。
「そちらの方も、お元気そうで」
「ああ、いや」
にわかに張りつめ始めた空気に不穏なものを感じ、俺は慌てて口を挟んだ。一触即発ってのは、もしかすると今のこの状況を言うのかもしれない。
「俺がここにいるのはこいつに引っ張ってこられたからであって……って、そもそも森さん、どうしてここにいるんですか」
「ご連絡を受けまして。あなたが……ええと、個性的な女性に連行されたけれど大丈夫なのか、と」
九曜を指して『個性的』とは、随分とまたオブラートに包んだ例え方だな。
「誰からそんな連絡が?」
「鶴屋さんからです」
だからどうして鶴屋さんからそんな連絡が……って、俺が九曜に連行される姿を見られているからか。けれど、そこでどうして森さんに連絡が行くんだ?
「さて……何故でしょう。わたしはただ、迎えに行ってくれと頼まれただけです。それで……どうしてまた、彼女があなたを?」
「ああ、ええっと……」
森さんも古泉と同じ『機関』に属する人間だ。実際に閉鎖空間に入って赤玉になり、《神人》とドンパチするのか知らないが、少なくとも俺よりは、これまで発生した閉鎖空間の内部でどのような事態が起きていたのかを知っているに違いない。そもそもこの状況で隠すことなど何もないわけで、俺は橘から聞いた話と、あいつに連れられて行った佐々木の閉鎖空間内で見た黒い塊についてを話すことにした。
その間、九曜は口を挟んで来ることはなかった。もっとも、こいつが口を開くのは稀であり、開いたところで無意味な台詞を言うに決まっている。もしかして精密に作られた人形が代わりに置いてあるんじゃないかと思えるほど、視認できる動きは微塵もなかった。
「黒い塊……ですか」
「ハルヒの閉鎖空間で、それらしいものが出現したとか、似たことはないんですか?」
「そういう報告は受けておりません。それに、似たような事例があったとしても、それが参考になるかどうかも解りません。具体的には、どういったものだったのでしょう?」
「どうって……それこそまさに黒い塊としか言えないですね。穴が空いてるみたいでしたが、本当に真っ暗で何も見えやしません」
「何も?」
「何も、です」
「そうですか」
森さんは細い指を顎に当てて考える素振りを見せたが、すぐに肩をすくめた。
「見当も付きません。そもそも、わたしに聞くよりもそちらの方にお聞きした方がよろしいのでは?」
ともすれば、考えるような仕草こそ見せたものの、事が佐々木や橘が関わることだから深く考えなかったんじゃないだろうか。そう思えなくもないほど早く考えることをやめて、森さんは事もあろうに九曜に話を振った。
そりゃあまぁ、そうだよな。九曜がどういう存在なのか知っていれば、こいつに話を振るのが自然な流れってヤツさ。長門の親玉とタメを張れるような存在に作り出された九曜は、今の長門と違ってよりデジタルに考えて動きそうだ。藤原や朝比奈さん(大)みたいに、言いたいけど先のことを考えれば何も言えない、と思うまでもなく、打てば響く鐘のように、解っていることを包み隠さず教えてくれるに違いない。まともな言葉で話すか否かは別としてね。
ただそれでも、こいつも解らないって、
「────音、が────」
俺の言葉に被せるように、突如として九曜が喋り出した。
「────重なり────壁、に────震えて、穴……が────」
「何だって?」
「────でも────越えられない──────壁────」
何だ? 何なんだいったい? 妙なスイッチでも押しちまったか? べろべろに伸びたカセットテープのような声音で、まったく無意味なことを喋り出しやがった。こいつがこっちの質問を理解してるのか不明だが、九曜も九曜で、こっちの言葉が本当に解っていないのかもしれない。そう思えてくる。
「壁……震え……」
ですから森さん。こいつの言うことは右から左に流しておいた方がいいですって。こいつとのコミュニケーションは異文化の人間を相手にするよりも難しい。ってか、端からしない方が賢明ですよ。人間が、人間以外の動物と会話できないのと一緒ですよ。
「────────」
森さんはそれでも律儀に九曜の言葉を解読しようと考え込み、俺は考えることを放棄して呆気に取られていると、その無意味な台詞を口走った九曜は、何の前振りもなく指先で目の前のコップを弾いた。
「きゃっ」
と、聞こえた悲鳴は突然だった。そんな声を上げたのはけれど森さんではなく、俺たちの席から少し離れた場所にいる女子高校生だった。店員がおしぼりなんか持って駆け寄るところを見ると、水でもこぼしたらしい。
そんなどうでもいいようなことに気を取られている隙に、九曜は立ち上がっていた。滑るような足取りで、そのまま喫茶店から出て行く。
これは本当になんて言うか……九曜といい藤原といい、佐々木の周りに集まった連中はロクでもない連中ばかりだ。
それでも平然として、自らの閉鎖空間でハルヒのようにストレスを発散させることもしないとはね。今さらだが、佐々木ほど人間が出来ているヤツは、世界中を探しても他に一人いるかいないか、かもしれない。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
きょこたんはきょこたんであり、吉村美代子の憂鬱とは関係ないですよ。錯覚ですよ!w
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
くーたんは喋ることは喋りますが、ちゃんと通じる話をしてもらいたいと思わなくもなく。
なんとなく、喋らないんじゃなくて言葉での表現方法がわかってないイメージがありますw
なんとなく、喋らないんじゃなくて言葉での表現方法がわかってないイメージがありますw
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