category: 日記
DATE : 2007/11/09 (Fri)
DATE : 2007/11/09 (Fri)
睡眠時間を無理やり朝方に戻してみたら、今度は逆に20時とか21時くらいになると眠くなる罠。結局睡魔に抗えず横になったら、またまた妙な時間に目が覚める始末。
どうやら自分は短時間睡眠のショートスリーパー体質のようです。
で、本日から任天堂でニンテンドーDS用のワンセグアダプターの通販予約受付が始まったわけですが、一向に注文ページへ繋がらない罠。この時間になっても「サーバーが混み合っております」とは何事かと。
まぁ、DS本体の所持率を考えれば、それだけ欲しいと思う人も多いわけでこうなることは目に見えていたんですが。
それでもなあ~、予約ページをいくつかに分散させたりとかはできなかったんでしょうか。そこまで緊急で欲しいわけではないので落ち着くまで待ってもいいのですが、そうなると今度は一年くらい待たなくちゃならなくなりそうでもあります。だって任天堂だもの。
そういうわけで、本日は長篇の続きになります。
どうやら自分は短時間睡眠のショートスリーパー体質のようです。
で、本日から任天堂でニンテンドーDS用のワンセグアダプターの通販予約受付が始まったわけですが、一向に注文ページへ繋がらない罠。この時間になっても「サーバーが混み合っております」とは何事かと。
まぁ、DS本体の所持率を考えれば、それだけ欲しいと思う人も多いわけでこうなることは目に見えていたんですが。
それでもなあ~、予約ページをいくつかに分散させたりとかはできなかったんでしょうか。そこまで緊急で欲しいわけではないので落ち着くまで待ってもいいのですが、そうなると今度は一年くらい待たなくちゃならなくなりそうでもあります。だって任天堂だもの。
そういうわけで、本日は長篇の続きになります。
前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:三章-d
佐々木の周りに集まる妙な連中の会合から、気がつけば森さんと二人きりという妙な状況になっちまっている。あの連中、人を半ば無理やり連れ出しておきながら、言いたいことだけを言って、用事が済めばさっさと帰るとはマイペースにも程がある。こっちの都合を多少なりとも考慮する気遣いはないんだろうか。
「どう思います?」
と、森さんに問いかけたのは、かといって橘以下他の連中の態度についてではない。森さんがやってきてから口を開いた九曜の話のことだ。俺は端っから考えるのを拒否しているから右から左に流しているが、森さんは態度を見れば何か考えているようでもあった。俺に理解できないことでも、森さんには何か思い当たる節があるのかもしれない。
そんなことを期待していたんだが……。
「よく解りません」
森さんでも理解不能だったらしい。やっぱりあいつの言うことは、一貫して無意味なことばかりのようだ。
「いえ、そう決めつけるのは早計だと思います」
「でも、森さんも解らなかったんでしょう? あいつの話」
「それはそうですが、だからといって解らないから無意味だ、と言うわけでもございません。今の話だけでも数通りの仮説が立てられます」
「仮説? 例えば……どんな?」
そう尋ねれば、森さんは曖昧さを隠そうとする笑みを浮かべた。
「根拠のない話は一人歩きして惑わすこともございます。お気になさらずに。ただ……そうですね、彼女が話した言葉は、我々が理解するに容易い言葉を、彼女が知らないだけかもしれません。ミカンとオレンジの味を知らない人に、ふたつの味の違いを口頭だけで正確に伝えられないのと同じです。できますか?」
あー……んー……無理、かな? 無理だな。俺にはそのふたつの味の違いを正確に言い表すだけの語彙がない。つまり、九曜の言葉ってのはそういうものだと、森さんは言いたいのか?
「もちろん、彼女の言葉が我々を誑かすだけのもの、ということも否定できません。それこそ、こちらの混乱を狙っているかもしれないのですから。わたしが彼女の言葉に何かしらの意味を見出そうとしているのも、前回のことを経て、彼女にも何らかの変化があって欲しいという……楽観的な希望です」
前回……前回ね。妙な小道具を使って俺たちの立場をそっくり入れ替えようとしたあいつが、あの出来事を経て何かを学んでいるんだろうか。これまで通り、ボーッとしていて何を考えているのか解らんヤツだけども、過去にも騒ぎの規模を拡大して今はいない朝倉や四年前の森さんまで巻き込み……ああ、そうだ。
「森さん、今のとはまったく関係ない話なんですが……」
「何でしょう」
「森さんは、四年前から朝倉のことを知ってたんですよね?」
「ええ、そういうことになります」
「ウイルスを預けられたりしているってことは、七月七日以降にも会ったことがあるんですか?」
「そうですね。今さら隠し立てする必要もありませんので白状いたしますが、幾度となく言葉も交わしてもおります。ただ、それでも親しい友人関係を築いていたわけではございません。どちらかと言えば、相互監視という関係でしょうか」
「相互監視?」
「朝倉さんは、未来をわずかにでも知っているわたしが迂闊な行動を取らないようにするために。わたしは、朝倉さんから地球上に現存するTFEIの動向を探るために、です」
「じゃあ、森さんは朝倉のことも監視していた……?」
「そうです。一年前、あなたが朝倉さんに襲われたときも把握しておりましたが、あれは既定事項だろうとの判断で介入はいたしませんでした」
それはいい。今はもう、それが仕方のないことだということは解っている。あいつが俺を殺そうとした理由は、あいつ自身の口から聞いている。四年前の七月に。
だからそうではなくて……。
「ええと、それならあいつの三年間の行動を、ある程度は把握していたんですよね?」
「はい」
「あの事件の後、あいつはどうでした?」
「どう、とは?」
「妙な行動を取ってたりとかは、なかったですか?」
「何を指して妙と言うのか解りませんが、特に変わった様子はございませんでした」
「そうですか」
俺がこんなことを森さんに尋ねたのにもワケがある。喜緑さんから朝倉が時間遡航しているという話をされていたことを、ふと思い出したんだ。それで、四年前から去年までの間、おそらく誰よりも朝倉の近くにいたであろう森さんなら、何か知ってるんじゃないかと思って聞いてみたんだが……やっぱり何もないみたいだな。
「……ああでも、行動ではございませんが、妙なことをおっしゃってましたね」
「何て言ってたんですか?」
「人が他人を信じるときに、どうすればあそこまで信じ合えるのか解らない」
……何なんだ、それは?
「ひどくご立腹の様子でした。反面、納得していたような、満足していた風でもありました。理解はできないけれど、受け入れられる……と、わたしはそうお見受けいたしましたが、何を指しているのかまでは存じません。印象に残っている『妙なこと』と言えば、そのくらいでしょうか」
「それはその……急に、ですか」
「そうですね。少なくともわたしが監視の目を光らせている間、朝倉さんにそう思わせる出来事があったことは確かでしょう。ただ、その前日に何かあったようには思えませんでした」
つまり、その日か。その日に朝倉は時間遡航している……のかもしれない。
確証はない。ただ、喜緑さんが言うように朝倉がTPDDの技術を得ていたとして、考えられる仮説でしかない。そもそもあいつが本当に時間遡航している証拠は、どこにもないんだ。喜緑さんの言葉でしかそれは言われてないわけだし、現状では俺の前にも俺の周囲にも、朝倉が現れているって話は聞こえてこない。
だいたい、朝倉が時間遡航できるとして、そして本当に俺の前に現れるとしても、それが今日や明日に起こることってわけでもないだろう。一ヶ月後かもしれないし、一年後なのかもしれないじゃないか。
「さて」
俺があれこれ考えていると、森さんが席から立ち上がった。
「ご無事のようですので、わたしはそろそろ戻らせていただきます。よろしければ自宅までお送りいたしますが、いかがなさいますか?」
「ああ、俺はもう少しここに……佐々木が来るらしいんで」
「佐々木さんが?」
「中学のときの同窓会で、無理やり幹事を押しつけられたんですよ。その打ち合わせってわけです」
「そうですか……様々なことがございましたのに、今もまだ親しい関係を続けていらっしゃるのですね」
「あいつは俺の親友らしいですからね。親友なら、困ってるときに手を差し伸べるのが健全ってもんじゃないですか」
「おっしゃるとおりです。ではいずれ、またどこかで」
柔和な笑みを浮かべ、男装の麗人みたいに男前の会釈をして、森さんは現れた時と同様、颯爽とした佇まいで喫茶店から出て行った。
結局、最後まで残っているのは俺のようだ。橘が先に会計を済ませて行ったが、追加注文されたメニューの支払いは俺がしなけりゃならんらしい。そんな持ち合わせがあったかな? いやまぁ、小銭で済ませられるので問題ないのだが、それより佐々木はいつになったら来るんだろう。コーヒーもすっかり冷めている。
「お客様、コーヒーのおかわりはいかがですか?」
温くなったコーヒーを一気に飲み干すや否や、店員がそんな声をかけてきた。もしやそれは、いつまで居座ってんだということを暗に示しているんじゃないか? などと思いつつも、こっちはまだ予定があるので立ち上がるわけにもいかない。神経の図太いところを見せつけるように、せっかくなのでおかわりをもらうことに……って。
「……何やってんですか」
「以前にもおっしゃったじゃありませんか、アルバイトです」
コーヒーを片手に、エプロン着用の喜緑さんがそこにいることに、今さらながらに気付いた。そういやそうだったな、この店は。今日もいるとは思わなかったが。
「生徒会の仕事はちゃんとやってるんでしょうね?」
「もちろんです。でも、アルバイトのことはご内密に。ところで、個性的な方々と入れ替わり立ち替わり、何をなさっておいでだったんでしょう?」
カラのカップに手慣れた動作でコーヒーを注ぎながら、喜緑さんはヤケに平坦な声音で聞いてくる。まるで人が悪巧みをしているみたいな言い方をしないでもらいたい。
「客の詮索をするのは、客商売じゃ御法度じゃないですかね?」
「盗み聞きをするよりはマシじゃありませんか」
そんなもん、五十歩百歩じゃないか。どっちもしないのが当たり前でしょうに。
「店員に話せないとおっしゃいますなら、」
「やあ、キョン。待たせたね」
カップにコーヒーを注ぎながら何かを言いかける喜緑さんの言葉を遮って、俺を呼びかけたのは、ようやくやってきた佐々木だった。随分と待たされたが、タイミングに関して言えば絶妙だ。遅れたことを咎めるよりも、感謝したい気持ちでいっぱいだ。
「すみません、アイスティをひとつ」
「かしこまりました」
メニューも開かずに注文をする佐々木の言葉を受けて、喜緑さんはコーヒーポットを片手に持ちながら、器用に伝票に記載している。その伝票を、ことさらわざとらしくテーブルに置いた俺の手の下に滑り込ませてきた。
『あとでゆっくり話を聞かせていただきます。逃げないでくださいね』
伝票のメモ欄にそんなことが書いてあった。
「ん? アイスティの注文が、そんなに気になるのかい? 安心したまえ、キミに代金を支払ってもらおうとは考えていないよ」
「……いいよ、俺が奢ってやる」
こんなメモを書かれてしまっては、佐々木に渡すわけにもいかない。結局、何があっても奢ることになるのは、俺の人生の仕様らしい。
伝票を二つに折ってソーサーの下に挟み込みながら、自分の不遇さに心の中で溜息を漏らした。
つづく
涼宮ハルヒの信愛:三章-d
佐々木の周りに集まる妙な連中の会合から、気がつけば森さんと二人きりという妙な状況になっちまっている。あの連中、人を半ば無理やり連れ出しておきながら、言いたいことだけを言って、用事が済めばさっさと帰るとはマイペースにも程がある。こっちの都合を多少なりとも考慮する気遣いはないんだろうか。
「どう思います?」
と、森さんに問いかけたのは、かといって橘以下他の連中の態度についてではない。森さんがやってきてから口を開いた九曜の話のことだ。俺は端っから考えるのを拒否しているから右から左に流しているが、森さんは態度を見れば何か考えているようでもあった。俺に理解できないことでも、森さんには何か思い当たる節があるのかもしれない。
そんなことを期待していたんだが……。
「よく解りません」
森さんでも理解不能だったらしい。やっぱりあいつの言うことは、一貫して無意味なことばかりのようだ。
「いえ、そう決めつけるのは早計だと思います」
「でも、森さんも解らなかったんでしょう? あいつの話」
「それはそうですが、だからといって解らないから無意味だ、と言うわけでもございません。今の話だけでも数通りの仮説が立てられます」
「仮説? 例えば……どんな?」
そう尋ねれば、森さんは曖昧さを隠そうとする笑みを浮かべた。
「根拠のない話は一人歩きして惑わすこともございます。お気になさらずに。ただ……そうですね、彼女が話した言葉は、我々が理解するに容易い言葉を、彼女が知らないだけかもしれません。ミカンとオレンジの味を知らない人に、ふたつの味の違いを口頭だけで正確に伝えられないのと同じです。できますか?」
あー……んー……無理、かな? 無理だな。俺にはそのふたつの味の違いを正確に言い表すだけの語彙がない。つまり、九曜の言葉ってのはそういうものだと、森さんは言いたいのか?
「もちろん、彼女の言葉が我々を誑かすだけのもの、ということも否定できません。それこそ、こちらの混乱を狙っているかもしれないのですから。わたしが彼女の言葉に何かしらの意味を見出そうとしているのも、前回のことを経て、彼女にも何らかの変化があって欲しいという……楽観的な希望です」
前回……前回ね。妙な小道具を使って俺たちの立場をそっくり入れ替えようとしたあいつが、あの出来事を経て何かを学んでいるんだろうか。これまで通り、ボーッとしていて何を考えているのか解らんヤツだけども、過去にも騒ぎの規模を拡大して今はいない朝倉や四年前の森さんまで巻き込み……ああ、そうだ。
「森さん、今のとはまったく関係ない話なんですが……」
「何でしょう」
「森さんは、四年前から朝倉のことを知ってたんですよね?」
「ええ、そういうことになります」
「ウイルスを預けられたりしているってことは、七月七日以降にも会ったことがあるんですか?」
「そうですね。今さら隠し立てする必要もありませんので白状いたしますが、幾度となく言葉も交わしてもおります。ただ、それでも親しい友人関係を築いていたわけではございません。どちらかと言えば、相互監視という関係でしょうか」
「相互監視?」
「朝倉さんは、未来をわずかにでも知っているわたしが迂闊な行動を取らないようにするために。わたしは、朝倉さんから地球上に現存するTFEIの動向を探るために、です」
「じゃあ、森さんは朝倉のことも監視していた……?」
「そうです。一年前、あなたが朝倉さんに襲われたときも把握しておりましたが、あれは既定事項だろうとの判断で介入はいたしませんでした」
それはいい。今はもう、それが仕方のないことだということは解っている。あいつが俺を殺そうとした理由は、あいつ自身の口から聞いている。四年前の七月に。
だからそうではなくて……。
「ええと、それならあいつの三年間の行動を、ある程度は把握していたんですよね?」
「はい」
「あの事件の後、あいつはどうでした?」
「どう、とは?」
「妙な行動を取ってたりとかは、なかったですか?」
「何を指して妙と言うのか解りませんが、特に変わった様子はございませんでした」
「そうですか」
俺がこんなことを森さんに尋ねたのにもワケがある。喜緑さんから朝倉が時間遡航しているという話をされていたことを、ふと思い出したんだ。それで、四年前から去年までの間、おそらく誰よりも朝倉の近くにいたであろう森さんなら、何か知ってるんじゃないかと思って聞いてみたんだが……やっぱり何もないみたいだな。
「……ああでも、行動ではございませんが、妙なことをおっしゃってましたね」
「何て言ってたんですか?」
「人が他人を信じるときに、どうすればあそこまで信じ合えるのか解らない」
……何なんだ、それは?
「ひどくご立腹の様子でした。反面、納得していたような、満足していた風でもありました。理解はできないけれど、受け入れられる……と、わたしはそうお見受けいたしましたが、何を指しているのかまでは存じません。印象に残っている『妙なこと』と言えば、そのくらいでしょうか」
「それはその……急に、ですか」
「そうですね。少なくともわたしが監視の目を光らせている間、朝倉さんにそう思わせる出来事があったことは確かでしょう。ただ、その前日に何かあったようには思えませんでした」
つまり、その日か。その日に朝倉は時間遡航している……のかもしれない。
確証はない。ただ、喜緑さんが言うように朝倉がTPDDの技術を得ていたとして、考えられる仮説でしかない。そもそもあいつが本当に時間遡航している証拠は、どこにもないんだ。喜緑さんの言葉でしかそれは言われてないわけだし、現状では俺の前にも俺の周囲にも、朝倉が現れているって話は聞こえてこない。
だいたい、朝倉が時間遡航できるとして、そして本当に俺の前に現れるとしても、それが今日や明日に起こることってわけでもないだろう。一ヶ月後かもしれないし、一年後なのかもしれないじゃないか。
「さて」
俺があれこれ考えていると、森さんが席から立ち上がった。
「ご無事のようですので、わたしはそろそろ戻らせていただきます。よろしければ自宅までお送りいたしますが、いかがなさいますか?」
「ああ、俺はもう少しここに……佐々木が来るらしいんで」
「佐々木さんが?」
「中学のときの同窓会で、無理やり幹事を押しつけられたんですよ。その打ち合わせってわけです」
「そうですか……様々なことがございましたのに、今もまだ親しい関係を続けていらっしゃるのですね」
「あいつは俺の親友らしいですからね。親友なら、困ってるときに手を差し伸べるのが健全ってもんじゃないですか」
「おっしゃるとおりです。ではいずれ、またどこかで」
柔和な笑みを浮かべ、男装の麗人みたいに男前の会釈をして、森さんは現れた時と同様、颯爽とした佇まいで喫茶店から出て行った。
結局、最後まで残っているのは俺のようだ。橘が先に会計を済ませて行ったが、追加注文されたメニューの支払いは俺がしなけりゃならんらしい。そんな持ち合わせがあったかな? いやまぁ、小銭で済ませられるので問題ないのだが、それより佐々木はいつになったら来るんだろう。コーヒーもすっかり冷めている。
「お客様、コーヒーのおかわりはいかがですか?」
温くなったコーヒーを一気に飲み干すや否や、店員がそんな声をかけてきた。もしやそれは、いつまで居座ってんだということを暗に示しているんじゃないか? などと思いつつも、こっちはまだ予定があるので立ち上がるわけにもいかない。神経の図太いところを見せつけるように、せっかくなのでおかわりをもらうことに……って。
「……何やってんですか」
「以前にもおっしゃったじゃありませんか、アルバイトです」
コーヒーを片手に、エプロン着用の喜緑さんがそこにいることに、今さらながらに気付いた。そういやそうだったな、この店は。今日もいるとは思わなかったが。
「生徒会の仕事はちゃんとやってるんでしょうね?」
「もちろんです。でも、アルバイトのことはご内密に。ところで、個性的な方々と入れ替わり立ち替わり、何をなさっておいでだったんでしょう?」
カラのカップに手慣れた動作でコーヒーを注ぎながら、喜緑さんはヤケに平坦な声音で聞いてくる。まるで人が悪巧みをしているみたいな言い方をしないでもらいたい。
「客の詮索をするのは、客商売じゃ御法度じゃないですかね?」
「盗み聞きをするよりはマシじゃありませんか」
そんなもん、五十歩百歩じゃないか。どっちもしないのが当たり前でしょうに。
「店員に話せないとおっしゃいますなら、」
「やあ、キョン。待たせたね」
カップにコーヒーを注ぎながら何かを言いかける喜緑さんの言葉を遮って、俺を呼びかけたのは、ようやくやってきた佐々木だった。随分と待たされたが、タイミングに関して言えば絶妙だ。遅れたことを咎めるよりも、感謝したい気持ちでいっぱいだ。
「すみません、アイスティをひとつ」
「かしこまりました」
メニューも開かずに注文をする佐々木の言葉を受けて、喜緑さんはコーヒーポットを片手に持ちながら、器用に伝票に記載している。その伝票を、ことさらわざとらしくテーブルに置いた俺の手の下に滑り込ませてきた。
『あとでゆっくり話を聞かせていただきます。逃げないでくださいね』
伝票のメモ欄にそんなことが書いてあった。
「ん? アイスティの注文が、そんなに気になるのかい? 安心したまえ、キミに代金を支払ってもらおうとは考えていないよ」
「……いいよ、俺が奢ってやる」
こんなメモを書かれてしまっては、佐々木に渡すわけにもいかない。結局、何があっても奢ることになるのは、俺の人生の仕様らしい。
伝票を二つに折ってソーサーの下に挟み込みながら、自分の不遇さに心の中で溜息を漏らした。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
え? あ、朝倉さん? あ、ああ……朝倉さんですよね。ええ、朝倉さん。そうそう朝倉さん……え、出番ですか? え、ええもちろん。ははは。もちろんありますよ、ええ大丈夫。ちゃんとありますから。えっと、ありますあります。んー……もうちょい先に……いやいやいや、ええ、ちゃんと出てきますよ、はい。
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
いや、別にそんな特にはないデスよ。キョンくんたちにとっては当たり前のことを当たり前に進めるだけの話です、ハイ。
しかしキョンくん、伝票のメモを見ても顔色ひとつ変えないとは、ポーカーフェイスにも程がありますネ。
しかしキョンくん、伝票のメモを見ても顔色ひとつ変えないとは、ポーカーフェイスにも程がありますネ。
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