category: 日記
DATE : 2007/11/03 (Sat)
DATE : 2007/11/03 (Sat)
涼宮ハルヒオンリーイベント「来ないと死刑だから4」の話です。
今回のイベントに参加しようかどうか迷ったんですが、結局参加しませんでした。出せるものが何もないので、参加せずに正解だったなぁ、などと思っております。
ただ、時間はあるのでもしかしたらひょっとして、万が一に一般参加で赴くやもしれません。何事もなかったかのようにフラフラしてみようかなと思っております。
んー。
そんなことを当日に言われても困るということなので、仮に見かけても軽やかにスルーしてください。
んで。
本日から長篇連載の再開デス。
今回のイベントに参加しようかどうか迷ったんですが、結局参加しませんでした。出せるものが何もないので、参加せずに正解だったなぁ、などと思っております。
ただ、時間はあるのでもしかしたらひょっとして、万が一に一般参加で赴くやもしれません。何事もなかったかのようにフラフラしてみようかなと思っております。
んー。
そんなことを当日に言われても困るということなので、仮に見かけても軽やかにスルーしてください。
んで。
本日から長篇連載の再開デス。
前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:三章-a
本能というものは人間のみならず、有機的な物質で構成されている動物や昆虫、魚にもあるものであり、それはつまり思考によって導き出される行動ではなく、肉体的なものに宿る原始的な行動なのかもしれない……なんてことを思いついてみたんだが、これには賛否がありそうなので自分だけの持論ということにして、決して口外しないようにしたいのだがどうだろう。
そのように考えたのにも訳がある。本能というものが知性に宿るのではなく肉体に宿っているものであるのなら、実体がないであろう情報生命体とやらが肉体を得た場合、そこに本能は宿るのであろうか。
宿るんじゃないかなぁ、と俺は思うわけだ。ずっと人の手を握りしめて歩く九曜の姿を見ていると。
こいつの行動は、どうにも理論的ではないような気がする。もしかすると、人間には理解できないロジックに基づいて行動しているのかもしれないが、見た目が人間のそれである以上は人間らしい思考で行動していると考えたい。
「だからいい加減、この手を離してくれ」
一向に手を離そうとしない九曜の態度に、俺は心底辟易していた。
考えてもみてくれ。相手は周防九曜だ。長門以上に表情に変化が見られず、当然ながら周囲の眼差しなんぞ微塵も気にせずに我が道を行く宇宙人謹製アンドロイドだ。幸いにしてその見た目は世間一般の普遍的な人間のそれと違和感のない容姿をしているが、故に無表情で黙々と人の手を取って往来のど真ん中を突き進む姿は、果たしてどのように思われているだろう。しかも、引っ張られている俺がどこかしら嫌そうにしていれば、十人中、最低でも八人は「どんな修羅場が展開中だ?」と思うに違いない。
俺はこれでも、多少なりとも世間の目を気にして生きている。人間社会は他人との摩擦があって形成されているものであり、他人の目をまったく気にしないで生きていけるほど、浮世離れした仙人みたいな心境になれるとは思えないからだ。
「────────」
そんな俺の切実な願いが通じたのか、はたまた俺に対する重度の羞恥プレイに飽きたのか、ようやく九曜はずっと握りしめていた俺の手を離した。それほど強い力で握りしめていたわけじゃないが、まるで磁石のように吸い付いていたからな、妙なことになっていないかと自分の手をマジマジと眺めるが、特にこれといった変化はないようだ。
「……ん?」
どうやら、九曜が俺の手を離したのは、前述したどちらの理由でもないらしい。引っ張られるままに周囲を見ることなく連れられて来ていたから気付かなかったが、どうやら俺は妙な連中のたまり場になりつつある件の喫茶店の前までたどり着いていたようだ。
「ここに入れってのか?」
そんな問いかけに、九曜は「はい」も「いいえ」も、あまつさえ首を縦にも横にも振らずに、そのまま喫茶店の中へ入っていった。
逃げるなら今がラストチャンスかもしれないな、などと思ったが、逃げたところで逃げ切れる保障はなく、それどころか追いつめられて更なるピンチを招きそうなので腹をくくろう。
店内に足を踏み入れ、それとなく周囲を見渡すと……確かに橘の姿があった。あったのはいいが、そこにいたのは橘だけではなかった。無論、佐々木でもなく、俺をここまで連れてきた九曜がいるのは当たり前だ。
「……ふん」
人の面を拝むなり、鼻を鳴らす藤原にいったいどういう仕打ちをすべきなのか、あれこれ考える。どれも殺伐としたものなので、ここは軽やかにスルーするのが大人の対応ってヤツだろう。
そもそもこれはどういう会合なんだ? 佐々木を取り巻く宇宙人、未来人、超能力者が一同に介し、かといってそこに佐々木の姿はなく、どうして俺がこの面子の中に紛れ込まなければならないのかさっぱり解らない。
そして何より解らないのは──。
「遅いです。何をやってたんですが」
どうして俺が、面を付き合わせて早々に、橘から険のある声を投げつけられねばならないのかってことだ。
「さんっざんメールを送ったのに一通も返してこないだなんて。何なのですかまったく。危機管理がなっちゃいませんよ。反省してください」
「ああ、そうかい」
そんな文句に、いちいち食って掛かるのもバカらしい。ここまで来た以上は何もせずに帰るつもりもないが、佐々木がいないのにまともに相手にしてもいられない。空いてる座席に腰を下ろしはするが、用件は手短に願おうか。
「緊急事態なんです」
「何が? そいつは──」
と、俺は九曜を指さす。
「──佐々木に何かがあったと暗に示していたが、その佐々木はどこにいるんだ?」
「佐々木さんはこちらにはいらっしゃいません。でも、佐々木さんに緊急事態というのは間違いない……と、思うのですけど」
人にスパムまがいの大量メールを送りつけ、九曜なんぞを迎えに寄越し、佐々木に何かあったというので駆けつけてみれば一喝され、それで橘の口から出てきた緊急事態なるものは、ずいぶんと曖昧な表現で表しやがった。
なんとなく、胡散臭い空気が漂ってきたな。
「いったい何がどうしたってんだ? これでも俺は忙しいんだ。用件は手短にしてくれ」
「あたしと一緒に来てください」
「どこへ?」
「佐々木さんの閉鎖空間へ」
「……はぁ?」
突然こいつは何を言い出してるんだ? どうして俺が、またあんなところへノコノコと赴かなければならんと言うんだ。おまえや古泉じゃあるまいし、あんなところへ何度も足を運ぶのは遠慮したい。たとえ佐々木が作り出した、ハルヒとは違う安定した世界であってもだ。
「口で説明するより、実際に見ていただいた方が早いと思うのです」
「何をだよ」
「そこで起きてることを」
「だから、何が起きてるんだ? だいたい、佐々木の作り出している閉鎖空間での話なら、おまえには解るんじゃないのか? 理屈じゃなくても、感覚で解るんだろ?」
「そうですけど、そうじゃないのです。ええっと、何て言えばいいのか……うううっ。もうっ! いいからとっとと目を瞑ってください。行きますよ」
埒の明かない言い争いに業を煮やしたか、橘は俺の手を痛いくらいに握りしめてきた。何があっても言うことを聞くまで離さないという意思の表れを、その眼差しに感じる。感情が表に出ている分、さっきの九曜よりたちが悪い。
仕方なく、言われた通りに目を瞑る。やるなら早くやってくれ……などと思うまでもなく、すぐに橘が「もう大丈夫」と告げる声が聞こえた。
目を開く。瞬間まで耳に届いていた雑音が、一切聞こえなくなる。
以前と同じだ。喫茶店の中、周囲には誰の姿もなく、柔らかい室内灯が照らし出しているのは俺と橘の二人だけ。以前と違うのは、俺もこっちの閉鎖空間が二度目ということで精神的衝撃が少ないということだろうか。
「で」
憮然とした表情を作り、離された手を組んで俺は背もたれに体を預けて橘を冷ややかに見つめた。
「前と変わらないじゃないか。それでいったい、何がどうしたってんだ?」
「着いてきてください」
立ち上がった橘に、俺は渋々着いていく。この場所に入り込んだ以上、こいつがいなければ元の世界に戻れないんじゃないかという不安もあるし、ここまで来てまで意固地になる必要もあるまい。
先を進む橘の後ろに着いて、喫茶店の外にでる。モノトーンの色合いの空には雲一つなく、クリーム色の柔らかな光が世界を包み込んでいる。それでも何故だろう、やっぱりハルヒのであろうと佐々木のであろうと、こういう異質な空間では落ち着かない。
前は喫茶店を出て近場を目的もなくちょろっと歩いただけで終わったが、どうやら今日は違うらしい。先を進む橘の足取りはしっかりと何か目的があるって感じだ。
「見てください」
ふと立ち止まり、見ろと言うくせに体をどかさない橘の肩越しに、その指さすものを俺は見た。
「……なんだありゃ?」
我知らず、口を裂いて出るのは戸惑いの声。現実世界となんら変わらぬ景色の中、現実の世界にはないであろう黒い塊が、通りの壁に穴を開けているかのように広がっていた。
つづく
涼宮ハルヒの信愛:三章-a
本能というものは人間のみならず、有機的な物質で構成されている動物や昆虫、魚にもあるものであり、それはつまり思考によって導き出される行動ではなく、肉体的なものに宿る原始的な行動なのかもしれない……なんてことを思いついてみたんだが、これには賛否がありそうなので自分だけの持論ということにして、決して口外しないようにしたいのだがどうだろう。
そのように考えたのにも訳がある。本能というものが知性に宿るのではなく肉体に宿っているものであるのなら、実体がないであろう情報生命体とやらが肉体を得た場合、そこに本能は宿るのであろうか。
宿るんじゃないかなぁ、と俺は思うわけだ。ずっと人の手を握りしめて歩く九曜の姿を見ていると。
こいつの行動は、どうにも理論的ではないような気がする。もしかすると、人間には理解できないロジックに基づいて行動しているのかもしれないが、見た目が人間のそれである以上は人間らしい思考で行動していると考えたい。
「だからいい加減、この手を離してくれ」
一向に手を離そうとしない九曜の態度に、俺は心底辟易していた。
考えてもみてくれ。相手は周防九曜だ。長門以上に表情に変化が見られず、当然ながら周囲の眼差しなんぞ微塵も気にせずに我が道を行く宇宙人謹製アンドロイドだ。幸いにしてその見た目は世間一般の普遍的な人間のそれと違和感のない容姿をしているが、故に無表情で黙々と人の手を取って往来のど真ん中を突き進む姿は、果たしてどのように思われているだろう。しかも、引っ張られている俺がどこかしら嫌そうにしていれば、十人中、最低でも八人は「どんな修羅場が展開中だ?」と思うに違いない。
俺はこれでも、多少なりとも世間の目を気にして生きている。人間社会は他人との摩擦があって形成されているものであり、他人の目をまったく気にしないで生きていけるほど、浮世離れした仙人みたいな心境になれるとは思えないからだ。
「────────」
そんな俺の切実な願いが通じたのか、はたまた俺に対する重度の羞恥プレイに飽きたのか、ようやく九曜はずっと握りしめていた俺の手を離した。それほど強い力で握りしめていたわけじゃないが、まるで磁石のように吸い付いていたからな、妙なことになっていないかと自分の手をマジマジと眺めるが、特にこれといった変化はないようだ。
「……ん?」
どうやら、九曜が俺の手を離したのは、前述したどちらの理由でもないらしい。引っ張られるままに周囲を見ることなく連れられて来ていたから気付かなかったが、どうやら俺は妙な連中のたまり場になりつつある件の喫茶店の前までたどり着いていたようだ。
「ここに入れってのか?」
そんな問いかけに、九曜は「はい」も「いいえ」も、あまつさえ首を縦にも横にも振らずに、そのまま喫茶店の中へ入っていった。
逃げるなら今がラストチャンスかもしれないな、などと思ったが、逃げたところで逃げ切れる保障はなく、それどころか追いつめられて更なるピンチを招きそうなので腹をくくろう。
店内に足を踏み入れ、それとなく周囲を見渡すと……確かに橘の姿があった。あったのはいいが、そこにいたのは橘だけではなかった。無論、佐々木でもなく、俺をここまで連れてきた九曜がいるのは当たり前だ。
「……ふん」
人の面を拝むなり、鼻を鳴らす藤原にいったいどういう仕打ちをすべきなのか、あれこれ考える。どれも殺伐としたものなので、ここは軽やかにスルーするのが大人の対応ってヤツだろう。
そもそもこれはどういう会合なんだ? 佐々木を取り巻く宇宙人、未来人、超能力者が一同に介し、かといってそこに佐々木の姿はなく、どうして俺がこの面子の中に紛れ込まなければならないのかさっぱり解らない。
そして何より解らないのは──。
「遅いです。何をやってたんですが」
どうして俺が、面を付き合わせて早々に、橘から険のある声を投げつけられねばならないのかってことだ。
「さんっざんメールを送ったのに一通も返してこないだなんて。何なのですかまったく。危機管理がなっちゃいませんよ。反省してください」
「ああ、そうかい」
そんな文句に、いちいち食って掛かるのもバカらしい。ここまで来た以上は何もせずに帰るつもりもないが、佐々木がいないのにまともに相手にしてもいられない。空いてる座席に腰を下ろしはするが、用件は手短に願おうか。
「緊急事態なんです」
「何が? そいつは──」
と、俺は九曜を指さす。
「──佐々木に何かがあったと暗に示していたが、その佐々木はどこにいるんだ?」
「佐々木さんはこちらにはいらっしゃいません。でも、佐々木さんに緊急事態というのは間違いない……と、思うのですけど」
人にスパムまがいの大量メールを送りつけ、九曜なんぞを迎えに寄越し、佐々木に何かあったというので駆けつけてみれば一喝され、それで橘の口から出てきた緊急事態なるものは、ずいぶんと曖昧な表現で表しやがった。
なんとなく、胡散臭い空気が漂ってきたな。
「いったい何がどうしたってんだ? これでも俺は忙しいんだ。用件は手短にしてくれ」
「あたしと一緒に来てください」
「どこへ?」
「佐々木さんの閉鎖空間へ」
「……はぁ?」
突然こいつは何を言い出してるんだ? どうして俺が、またあんなところへノコノコと赴かなければならんと言うんだ。おまえや古泉じゃあるまいし、あんなところへ何度も足を運ぶのは遠慮したい。たとえ佐々木が作り出した、ハルヒとは違う安定した世界であってもだ。
「口で説明するより、実際に見ていただいた方が早いと思うのです」
「何をだよ」
「そこで起きてることを」
「だから、何が起きてるんだ? だいたい、佐々木の作り出している閉鎖空間での話なら、おまえには解るんじゃないのか? 理屈じゃなくても、感覚で解るんだろ?」
「そうですけど、そうじゃないのです。ええっと、何て言えばいいのか……うううっ。もうっ! いいからとっとと目を瞑ってください。行きますよ」
埒の明かない言い争いに業を煮やしたか、橘は俺の手を痛いくらいに握りしめてきた。何があっても言うことを聞くまで離さないという意思の表れを、その眼差しに感じる。感情が表に出ている分、さっきの九曜よりたちが悪い。
仕方なく、言われた通りに目を瞑る。やるなら早くやってくれ……などと思うまでもなく、すぐに橘が「もう大丈夫」と告げる声が聞こえた。
目を開く。瞬間まで耳に届いていた雑音が、一切聞こえなくなる。
以前と同じだ。喫茶店の中、周囲には誰の姿もなく、柔らかい室内灯が照らし出しているのは俺と橘の二人だけ。以前と違うのは、俺もこっちの閉鎖空間が二度目ということで精神的衝撃が少ないということだろうか。
「で」
憮然とした表情を作り、離された手を組んで俺は背もたれに体を預けて橘を冷ややかに見つめた。
「前と変わらないじゃないか。それでいったい、何がどうしたってんだ?」
「着いてきてください」
立ち上がった橘に、俺は渋々着いていく。この場所に入り込んだ以上、こいつがいなければ元の世界に戻れないんじゃないかという不安もあるし、ここまで来てまで意固地になる必要もあるまい。
先を進む橘の後ろに着いて、喫茶店の外にでる。モノトーンの色合いの空には雲一つなく、クリーム色の柔らかな光が世界を包み込んでいる。それでも何故だろう、やっぱりハルヒのであろうと佐々木のであろうと、こういう異質な空間では落ち着かない。
前は喫茶店を出て近場を目的もなくちょろっと歩いただけで終わったが、どうやら今日は違うらしい。先を進む橘の足取りはしっかりと何か目的があるって感じだ。
「見てください」
ふと立ち止まり、見ろと言うくせに体をどかさない橘の肩越しに、その指さすものを俺は見た。
「……なんだありゃ?」
我知らず、口を裂いて出るのは戸惑いの声。現実世界となんら変わらぬ景色の中、現実の世界にはないであろう黒い塊が、通りの壁に穴を開けているかのように広がっていた。
つづく
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