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DATE : 2024/03/29 (Fri)
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DATE : 2007/08/01 (Wed)
最近、23時を過ぎると猛烈な眠気に襲われて困りもの。逆に朝は7時とかに目が覚めちゃうので、なんて言うんでしょうか、これがサマータイム? みたいな気分です。

そして今日から八月ですね。もう八月です。結局、関東地方は梅雨明けしておりません。まぁ、暑い日は確かにあるのですが、その分、例年より雨が多い気がしますので梅雨は明けてないのかもしれません。
もっとも、もし梅雨が明けていても、気象庁には「梅雨明け(てました)宣言」があるので大丈夫だと思います。


そんな感じで、今日のSSでまったりした気分を満喫していただければコレ幸い。

前回はこちら
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱


 命からがら、ようやく戻ってきた宿を前に「ボロ宿よ、わたしは帰ってきたーっ」と叫びたい衝動に駆られましたがそこまでの元気はなく、代わりに叫んだ橘さんの姿を見て、やらなくてよかったと心底思いました。
 それにしても、わずかな時間ではありましたが、なかなかサバイバルしてたと思います。そもそもわたしは橘さんに「温泉に行く」と言われて無理やり連れて来られているはずなのに、どうして食材探しもしなければならないのか意味不明です。
 おまけに目の前で朝倉さんが熊を捌くその姿は、ちょっとしたスペクタクルでした。ええ、半年は動物性タンパク質を摂取するのが躊躇われるような見せ物でした。あぁ~……思い出すだけで胃がむかむかしてくるんですけど……他のみなさんはケロッとしてます。この人たちは、次元の違う別生物と考えた方がいいかもしれません。
 そんなわけで。
 バラバラに出発したけれど、結局みんな一緒になって宿に戻ってきたわけですが、台所は一カ所だけです。そうなると三組同時に調理するには狭すぎるので、くじ引きで料理を作る順番が決められちゃいました。
 結果、一番手が佐々木・橘ペア。二番手に朝倉・喜緑ペア。わたしと周防さんは最後らしいです。
 なので──。
「周防さん、いつも髪の毛をそのまま湯船に浸けてるんですか?」
「──────」
 せっかく温泉宿に来てるわけですから、そういう時くらいは誰でも、無意味に何度もお風呂に入っちゃったりするじゃないですか。特に今は山中を練り歩かされたわけで疲れちゃいましたから、のんびり湯船に浸かりたいもんなんです。
 そう思ってお風呂場に向かってたら、周防さんまで付いてきちゃいました。まぁ、大浴場ですからね、一緒に入るのが嫌だとは言いませんけど……その長い髪はまとめ上げておきましょうよ。
 仕方ないので、脱衣所で服を脱いだ周防さんを呼び止めてわたしが四苦八苦しながらまとめあげたんですけど……なんだか頭の上に頭が乗ってるようなボリュームになっちゃいました。いくらなんでも多すぎですよ、これ。もしや髪を切らないのは、何かの宗教的理由でもあるんでしょうか?
 ともあれ、ようやくのんびりとお風呂に入れているような気がします。食材探し前に入ったときは先客で佐々木さんが入っていましたし、そこに橘さんや朝倉さんまでいましたもの。賑やかなのは嫌いじゃありませんが、疲れたときくらいは静かに浸かっていたいですよ。その点、周防さんなら置物みたいに静かにしているから問題なしです。
 体を流して浴槽に浸かり、ようやく一息。
「ふぅ……」
 極楽ですねぇ~……あ、周防さん。そんな水面を漂う海藻みたいに浮かぶのはやめましょうね。お風呂は浸かるところで浮かぶところじゃないですよー。
「あら」
「あなたたちも来ていたんですね」
 静かな一時を満喫していると、浴場の扉を開いてやってきた人影が一組。朝倉さんと喜緑さんのご登場です。
「あ、どうも」
「──────」
 ぺこりとお辞儀するわたしと違って、温泉の湯船でぷかぷか浮かんでいた周防さんはちらりと二人の姿を一瞥しただけで、またぷいっと顔を背けました。
 何でしょう、物凄く嫌な予感がします。この空気は、安心して湯船に浸かっていられる時間を少しでも引き延ばすために変えなければいけない気がします。
「ええーっと、お二人は何でしたっけ? 猪を仕留めてきたんですよねー」
 おおよそ現代社会で生活を送っている健全な十代の女子しらからぬ話題を提供している気がしないでもありませんが、話せるネタがそれしかないのだから仕方ありません。
「そうなの。ちょっと大きな猪だったかな? 警戒心も強くて、近付くのに苦労しちゃった。あ、ねぇ知ってる? 猪って走ってる最中も曲がることできるのよ。猪突猛進って嘘なのかしら?」
 ちゃぷん、と湯船に浸かりながら話をする朝倉さんは、本当に楽しそうです。どうやらこの人は、産まれる時代と場所を間違えちゃったみたいですね。少し昔の狩猟民族で産まれていれば、女性ながらも勇猛果敢な狩人として名を残していたかもしれません。
「仕留めるときも暴れて、返り血をいっぱい浴びちゃった。肌に付いた血はこうやってお風呂に入れば流せるけど、服にシミが残るかちょっと心配。大丈夫かしら?」
 ああ、そういえば返り血浴びてましたね。済みません、湯船に浸かる前に体の汚れを流してきてくれませんか?
「そちらはどんな食材を手に入れたんですか?」
 なんて聞いてきた喜緑さんは、湯船に髪が浸からないようにまとめてるのはいいとして……頭の上に折り畳んだタオルを乗せてました。
 わたし、まだ一〇年ちょっとしか生きてませんけど、これまでの人生で初めて、コントみたいに頭の上にタオルを乗せてお風呂に入ってる人を見ちゃいましたよ。
「わたしたちは普通に釣りをして、川魚を少々……」
「あら、そうなんですか。また随分とシンプルな食材を選びましたね」
 選ぶも何も、普通に考えればそれ以外の選択肢がありますか? 他に考えれば、せいぜい山菜を集めるくらいしか普通はできませんて。どこの世界に猪を仕留めたり、熊を素手で倒せる女子高校生がいるだなんて予想できますか。できませんよ。
「この時期だと、釣れる魚わぶっ!」
 ふぇ? っと思う間もなく、ぴゅーっと飛んできた温泉水がジャストミートで喋っていた喜緑さんの口の中に飛び込んじゃったみたいです。もちろんそんな真似をしたのは──。
「なっ、何やってんですか周防さん!?」
「────水──鉄砲────」
 手もみでもするように両手を合わせている周防さんは、ぴゅーっぴゅーっと自慢げに温泉水を飛ばしてますが……何をするにも唐突ですね、あなたは。そもそも喜緑さん相手になんて真似しちゃってるんですか。
「…………」
「ああああああ、何て言うかその、すみませんすみませんすみません」
「いえいえ、構いません。十人十色と申しますし、中には礼儀もへったくれもない方もいるでしょうから」
 ニコニコして寛大なことを言ってくれる喜緑さんですが、実はそのとき、向かい合っているわたしは、その背後で半潜水状態で移動している周防さんの姿が……ですね、そのぅ……見えているわけで。
 いろいろあって皆さん忘れているかもしれませんが、ここで改めてもう一度、できれば今後とも忘れずにいてほしいのは、わたしはまだ小学生だということです。人生経験なんて、人に自慢できるほど積んでいるわけでもありませんし、いざというときの判断を瞬時に下せるような器量よしでもない──と自己判断ですが思っているわけです。
 そのときのことを後々になって考えれば、今のこの瞬間が状況悪化を食い止める最後のボーダーラインだったのかもしれません。
 けれど、そのときのわたしはどうしていいのか考えあぐねていたんでしょうね。どうとも決断が下せず、ただ見守るだけで。
 ぴゅっと、周防さんが水鉄砲で飛ばした大量の水が、喜緑さんを頭からすっぽり濡らしてしまったわけでして……。
「………………」
「あ、あの……喜緑、さん?」
「ときに」
「は、はぃ!?」
「一昔前までは、工業用のカッターの刃に宝飾品には使えないクズダイヤが使われていましたけれど、今はそれよりも切れ味鋭いカッターができたようで、そちらが徐々に主流になっているそうですね。何かご存じですか?」
「さ、さぁ……?」
 ダイヤモンドより固いものなんて、わたしにはサッパリです。そして何より、そんなことを突然言い出した喜緑さんの意図がまったく読めずに不気味です。
「それはですね……お水なんですよ。普通の水に高圧力を掛けて射出すれば、分厚い鉄板だって簡単に切れちゃうんです。ほら、このように」
 喜緑さんが湯船から両手を出して、その手の間にため込んだ水を放出した途端……ばしゅっ、と一直線に伸びる水が周防さんの髪をまとめていた髪留めをかすり、直線上にあった桶を貫き、さらには柵に穴を開け、あまつさえ柵の外にある木を抉っちゃったのか、メキメキっと音を立てて一本ばかり倒壊してしまいました。
 いったい何をしでかしたんですか、この人は!?
「あら、そちらにいらしたんですか? まったく眼中にございませんでしたので。ほほほ」
「──────」
 なんだか喜緑さんの目が据わっちゃってます。対する周防さんも似たようなもんでした。その二人が同時に湯船から手を出した途端、その狭間で水が水とは思えない爆ぜ方をしちゃったりしてるんですけど!
「水遊びがご所望なら、ええ、お相手して差し上げますよ」
 な、何を言い出すんですか喜緑さん。少し落ち着きましょうよ。ここ温泉なんですから、水遊びなんてしちゃダメですよ!
「────上等────」
 売り言葉に買い言葉じゃないんですから、周防さんも受けて立たないでください。
「ふっ、二人とも落ち着いてくだひゃあっ!」
 これは本当に水しか使ってないんですか!? ばしゅんばしゅんと飛び交うニードルレーザーみたいな水が、床やら柵やらに穴を開けたりしちゃってますよ! ああもう、朝倉さんもぼけーっと見てないで、二人を止めてください!
「うーん、喜緑さんも、あの周防って娘も楽しそうだし、いいんじゃない? あの二人、仲がいいのかな? あ、そうだ吉村さん。背中流してあげよっか?」
「ええぇ~っ」
 なんてマイペースな人ですか、あなたは。

つづく
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★無題
NAME: ゆんけるん♪
うわぁ本当にまったり~とした雰囲気で(笑)殺伐とした中にいながらもマイペースを崩さないミヨキチさんと朝倉さんはなんともいえないですね^^それにしても橘さん叫んじゃったのですかwキャラの動かし方がもう楽しくてノホホンとしちゃいますね☆
2007/08/01(Wed)01:22:09 編集
もう各キャラともに好き勝手雨後かしちゃってますので、原作のイメージぶち壊しになってないかと……。
でもお話は、基本まったりペースで行きますヨ!
【2007/08/01 23:58】
★無題
NAME: BPS
>わたしはまだ小学生だということです
はっはっはソロモンの悪夢がわかる人が何をおっしゃる子猫さん。

しかし、ライバル宣言をした相手になにくれとなく世話を焼く朝倉さんは流石ですね。
2007/08/01(Wed)02:57:04 編集
優等生の委員長である朝倉さんですから「それとこれとは話は別でしょ?」なんて言うと思って、こんな感じに。さすが朝倉さんだネ!
【2007/08/01 23:59】
★無題
NAME: ron
また風呂場であることを妄想している自分は本当にダメ人間
2007/08/01(Wed)14:59:09 編集
せっかくの温泉宿ですから、話の合間は温泉かなと。やっぱり裸の付き合いは大事ですよ。
【2007/08/02 00:00】
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