category: 日記
DATE : 2007/07/30 (Mon)
DATE : 2007/07/30 (Mon)
昨日は妙な時間に寝て、それからずーっと起きていたので、かなり眠気のピークが訪れております。
ええっと、とりあえずSSはUPしますが、お昼の12:00ごろになるかもしれませぬ。しばしお待ちくださいませ。
※12:45ごろSS追加。雷が近場でゴロゴロ鳴っていて、家の中がびりびり震えちゃったりしてました。雷が落ちてPCが壊れると困るので、少し落としていたのが遅れた原因……なんて言い訳してみる。
ええっと、とりあえずSSはUPしますが、お昼の12:00ごろになるかもしれませぬ。しばしお待ちくださいませ。
※12:45ごろSS追加。雷が近場でゴロゴロ鳴っていて、家の中がびりびり震えちゃったりしてました。雷が落ちてPCが壊れると困るので、少し落としていたのが遅れた原因……なんて言い訳してみる。
前回はこちら
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱
さぁさぁ、注目したくないのに注目しなければ命がない本日のメインイベント、人食い熊VS周防さんの無制限一本勝負の始まりです。熊が勝てばぴちぴち乙女4人分の新鮮なお肉が、周防さんが勝てば橘さん所望の中国三大珍味のひとつとして名高い熊の手が、商品として与えられることになっちゃってます。
わたしと佐々木さん、おまけに矢面に立ってる周防さんにはなんらメリットのない試合ですが、逃げられない状況である以上、命を捨てずに済む方を応援するしかありません。って、周防さん、あなた本当に熊と素手で殺り合うつもりなんですか? もしやあなたはあれですか、ウイリー・ウイリアムスの血縁者か何かなんですか?
「解説はあたくし、きょこたんこと橘京子が、実況はらぶりーミヨキチこと吉村美代子さんでお送りいたします」
何を勝手なこと言ってるんですか。そんな一世代前の女子レスラーみたいなリングネームは持ってませんよ、わたし。そもそも今のこの状況は、隙あらば逃げ出したいところなんですから。
なんて言ってるうちに、睨み合いが続く両者の間、均衡を崩したのは熊からです。威嚇のような遠吠えひとつ、周防さんの小さな頭がすっぽり隠せるほどの手の平を振り下ろし、黒曜石のように黒光りしている鋭いかぎ爪が襲いかかります。
ぶぅんっ、と爪が風を切る音が聞こえるほどのスピードで振り下ろされる一撃は、けれど遠目に見ていると巨体のせいで緩慢な動きに見えます。かと言って、それを間近で見ていたら、わたしなんか腰を抜かしそうですけど、周防さんは冷静です。ひらりと身を引いて紙一重で交わしました。
「熊はですね、ご覧のように体の大きさに比べて目が小さいでしょう? 北極熊は違うらしいですが、それ以外の熊は視力があまりよろしくないのですよ。特にあの熊は右目を潰されてますから、基本的に耳や鼻で敵を追うようです。緩慢な動きの理由も、そこにあるのかもしれません」
無駄な雑学のせいでちゃんとした解説っぽく聞こえちゃうんですが、本当に無駄としか言いようがない雑学なので、どこで感心すればいいのかわかりません。
ともあれ熊の一撃をひらりと交わした周防さんは、振り抜いた熊の腕を踏み台に、顎を狙っての飛び膝蹴りを食らわせました。熊の足を踏み台にしてますから、俗に言うシャイニング式の蹴り技なんでしょう、見事に熊の顎を蹴りあえげています。人間相手にそんな真似したら、かなりヤバそうな角度で入ってます。
しかし相手は周防さんの倍近い体躯の熊です。一瞬だけ顎を浮かせはしましたが、倒れるようなことはありません。ピンピンしています。
「うーん、さすがに九曜さんの身体能力は卓越したものですが、いかんせん体重が軽すぎるのですね。通常の打撃技では、致命傷に成り得ないのです。かといって、投げや関節技でも、体格差のせいできっちりキメるのは難しいでしょう」
「それはつまり、周防さんに勝ち目がないってことですか?」
そうだとしたら、わたしたち食べられちゃうじゃないですか。
「いえいえ、これはルール無用のデスマッチなのです。生き残るためならなんでもありなのです。周防さんが勝つためには、相手の急所を貪欲に攻めるしかないのです」
「というと?」
「先に述べたように、熊は基本的に音と匂いで獲物を追うのです。そこをまず潰すのがセオリーですね。ほら、よく言うじゃありませんか。熊と格闘することになったら、鼻っ柱を殴ればいいと。そこが熊の急所だからなのですよ」
ほぇ~……そうなんですか。本当に橘さんは、一般生活を送っていればまったく役に立たない、どーでもいいようなことばかり詳しいんですね。いえ、褒めてるんですよ? 褒め言葉なんですってば。
そうこうしているうちに、攻撃の主導権は熊に握られています。相手は熊ですから、あまり何も考えずに両腕をぶんぶん振り回しているだけみたいですけど……それだけでもかなり驚異的です。対する周防さんは攻めあぐねているのか、ひらりひらりとかわすだけで様子をうかがって手を出せないみたいです。
「ふぅ~む、あの熊も伊達にここいらのボス熊ではないのです。自分の弱点をわかってますね」
「と言いますと?」
「闇雲な攻撃をしているように見えますが、しっかり自分の急所に九曜さんを近付けさせないようにしているのです。必ず手の振りが自分の顔の正面を横切るようにしてるでしょう?」
あ~、確かに言われてみればその通りです。両手を顔の前でクロスさせるように交互に振り回してますね。
その攻撃を前に、周防さんは徐々に後退していきます。もしやこれは追いつめられているのかもしれません。
「いや、そうじゃないね。どちらかと言うと、九曜さんが誘い込んでるみたいだ」
と、そう言ったのは観客に徹していた佐々木さんです。どういうことでしょう?
「森の中に誘い込もうとしているんだよ。熊のリーチを封じ込めるつもりかな?」
ああ、なるほど。周りに木があれば、腕をぶんぶん振り回せないってことですね。なんだか昔っからある方法で、まったく捻りがありません。
「何をおっしゃいますか。王道こそ真理とは偉い人も言ってるじゃありませんか」
誰ですか、その偉い人って言うのは……。
「それに、熊にとっては邪魔な木も、九曜さんにとってはいい足場だね」
そう言った佐々木さんの言葉の意味も、すぐにわかりました。腕を振り回そうにも周りの木が邪魔になっている熊ですが、ボーッとした見た目とは裏腹に俊敏な動きができる周防さんです。とんとんとんっ、と周りの木を足場に駆け上り、巨大熊のさらに上空へジャンプ。熊も熊でかなりの大きさですから、頭上のポジションなんて取られたことがないのか、周防さんの行方を見失っちゃってます。
全体重を乗せた膝蹴りが、熊の真上から鼻っ柱を叩き折る勢いで降ってきてクリティカルヒット。電光石火の一撃に、まるで時間が止まったかのように二人の動きが止まり──大きな音を立てて熊が前のめりに倒れたのは、その直後でした。
「おぉ~っ」
周防さん、本当に熊を倒しちゃいました。思わずわたしも拍手です。いったいこの人は何者ですか。
「さすが九曜さんです。これであたしたちも食材ゲットだっぜ! ってことですね」
いやその、ちょっと待ってください。チーム分けはわたしと周防さん、橘さんと佐々木さんですよね? 熊を倒したのって、周防さんですから。
「あー、これだから。もー、こんなんだから。最近の若い子はあれですね、敵に塩を送る気概もあったもんじゃないですね。あーあ、日本の将来が心配だわー」
拗ねないでくださいよ。別にわたしだって熊肉使った料理なんて作りたくないですし、何も渡さないって言ってるわけじゃないじゃないですか。
「でもこれ、どうやって持ち帰るんだい? さすがに大きすぎじゃないかな?」
そう、佐々木さんが言ったことをわたしも言いたかったんです。いくらなんでも、わたしたちで巨大熊を宿まで運ぶことなんてできないでしょう?
「むぅ……それは盲点でした。うーん……」
「ほーっほっほっほ」
悩む橘さんを前に、聞こえてきたのは高らかな笑い声。今度はいったいなんですか。
「さすがは周防九曜、我が虎の穴が差し向けた刺客を容易く倒すとはさすがです。しかし、倒して終わりと思っていただいては困ります」
「ちょっと喜緑さん、そんな高いところにいたら、ぱんつ見えちゃうわよーっ!」
高い木のてっぺん、風で髪をなびかせて仁王立ちしているのは喜緑さんでした。もしかして、そんなケッタイな場所で登場するタイミングを見計らっていたんですか?
なんという無駄な演出……。その木の下では、朝倉さんがナイフと鉈を両手にぶんぶん手を振っています。
「勝負はあくまでも料理対決。食材を手に入れた段階で満足されては困りもの。料理というのは食べた後の食器の片付けまできちんと済ませてこそ、料理ができると言ってもらいたいものです。あなたにはその熊を持ち帰る手段はございませんでしょう? 手落ちにもほどがあります」
「────────」
これはいったいどういう挑発なのか、聞いているわたしにはさっぱりです。もはや周防さんと喜緑さんの二人だけの世界のようですから、放って置いていいでしょう。
それはそうと朝倉さんたちは、どんな食材を手に入れたんですか?
「さっき、大きな猪と遭遇したから仕留めちゃった。ボタン肉って言うんでしょ? 鍋にしようかなぁって」
顔や衣服に飛び散っているどす黒い点々は返り血ですか……。
「ナイフ一本あれば、魚だろうと猪だろうと、人間だって三枚に下ろせるわよ」
猪とはいえ、頬に返り血を浴びているのに爽やかな笑顔を浮かべないでください。そもそも『人間だって』って何ですか。そんな物騒な真似はやめてください。
「じゃあ、えっと……あの熊もバラせるんですか?」
「うん、まかせて」
うわっ、できるんだ。冗談のつもりで言ったのに、朝倉さんったらやってくれるみたいです。しかもナイフと鉈の二刀流ですか。
「ちょっと朝倉さん、何をなさるおつもりですか? 敵に手を貸しても百害あって一利なしですよ」
ところが喜緑さんは納得いってないみたいです。どうやら勝負事にはとことんこだわるタイプみたいですね。たぶん、好きな言葉は『完全勝利』で嫌いな言葉は『唯々諾々』なんでしょう。
「え、いいでしょ? どうせみんなで食べるんだもの。それにほら、熊肉なんて滅多に食べられないし、わたしたちも少しわけてもらいましょうよ」
「わたしは別に食べたくありませんよ、そんなもの」
「ふーん。じゃあいいわよ、喜緑さんにはあげないから」
「またそんなこと言って……もう、仕方ありませんね」
あら、意外と喜緑さんはあれですか、朝倉さんに甘いんですか? 仲むつまじくていいですね。
「今回ばかりは手を貸して差し上げましょう。その代わりと言っては何ですが……すみません、ここから降りるのに、手を貸していただけないでしょうか?」
ああ……高い木の上に登って降りられなくなっちゃったからこそ、朝倉さんに甘い顔を見せたわけなんですね……。
つづく
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱
さぁさぁ、注目したくないのに注目しなければ命がない本日のメインイベント、人食い熊VS周防さんの無制限一本勝負の始まりです。熊が勝てばぴちぴち乙女4人分の新鮮なお肉が、周防さんが勝てば橘さん所望の中国三大珍味のひとつとして名高い熊の手が、商品として与えられることになっちゃってます。
わたしと佐々木さん、おまけに矢面に立ってる周防さんにはなんらメリットのない試合ですが、逃げられない状況である以上、命を捨てずに済む方を応援するしかありません。って、周防さん、あなた本当に熊と素手で殺り合うつもりなんですか? もしやあなたはあれですか、ウイリー・ウイリアムスの血縁者か何かなんですか?
「解説はあたくし、きょこたんこと橘京子が、実況はらぶりーミヨキチこと吉村美代子さんでお送りいたします」
何を勝手なこと言ってるんですか。そんな一世代前の女子レスラーみたいなリングネームは持ってませんよ、わたし。そもそも今のこの状況は、隙あらば逃げ出したいところなんですから。
なんて言ってるうちに、睨み合いが続く両者の間、均衡を崩したのは熊からです。威嚇のような遠吠えひとつ、周防さんの小さな頭がすっぽり隠せるほどの手の平を振り下ろし、黒曜石のように黒光りしている鋭いかぎ爪が襲いかかります。
ぶぅんっ、と爪が風を切る音が聞こえるほどのスピードで振り下ろされる一撃は、けれど遠目に見ていると巨体のせいで緩慢な動きに見えます。かと言って、それを間近で見ていたら、わたしなんか腰を抜かしそうですけど、周防さんは冷静です。ひらりと身を引いて紙一重で交わしました。
「熊はですね、ご覧のように体の大きさに比べて目が小さいでしょう? 北極熊は違うらしいですが、それ以外の熊は視力があまりよろしくないのですよ。特にあの熊は右目を潰されてますから、基本的に耳や鼻で敵を追うようです。緩慢な動きの理由も、そこにあるのかもしれません」
無駄な雑学のせいでちゃんとした解説っぽく聞こえちゃうんですが、本当に無駄としか言いようがない雑学なので、どこで感心すればいいのかわかりません。
ともあれ熊の一撃をひらりと交わした周防さんは、振り抜いた熊の腕を踏み台に、顎を狙っての飛び膝蹴りを食らわせました。熊の足を踏み台にしてますから、俗に言うシャイニング式の蹴り技なんでしょう、見事に熊の顎を蹴りあえげています。人間相手にそんな真似したら、かなりヤバそうな角度で入ってます。
しかし相手は周防さんの倍近い体躯の熊です。一瞬だけ顎を浮かせはしましたが、倒れるようなことはありません。ピンピンしています。
「うーん、さすがに九曜さんの身体能力は卓越したものですが、いかんせん体重が軽すぎるのですね。通常の打撃技では、致命傷に成り得ないのです。かといって、投げや関節技でも、体格差のせいできっちりキメるのは難しいでしょう」
「それはつまり、周防さんに勝ち目がないってことですか?」
そうだとしたら、わたしたち食べられちゃうじゃないですか。
「いえいえ、これはルール無用のデスマッチなのです。生き残るためならなんでもありなのです。周防さんが勝つためには、相手の急所を貪欲に攻めるしかないのです」
「というと?」
「先に述べたように、熊は基本的に音と匂いで獲物を追うのです。そこをまず潰すのがセオリーですね。ほら、よく言うじゃありませんか。熊と格闘することになったら、鼻っ柱を殴ればいいと。そこが熊の急所だからなのですよ」
ほぇ~……そうなんですか。本当に橘さんは、一般生活を送っていればまったく役に立たない、どーでもいいようなことばかり詳しいんですね。いえ、褒めてるんですよ? 褒め言葉なんですってば。
そうこうしているうちに、攻撃の主導権は熊に握られています。相手は熊ですから、あまり何も考えずに両腕をぶんぶん振り回しているだけみたいですけど……それだけでもかなり驚異的です。対する周防さんは攻めあぐねているのか、ひらりひらりとかわすだけで様子をうかがって手を出せないみたいです。
「ふぅ~む、あの熊も伊達にここいらのボス熊ではないのです。自分の弱点をわかってますね」
「と言いますと?」
「闇雲な攻撃をしているように見えますが、しっかり自分の急所に九曜さんを近付けさせないようにしているのです。必ず手の振りが自分の顔の正面を横切るようにしてるでしょう?」
あ~、確かに言われてみればその通りです。両手を顔の前でクロスさせるように交互に振り回してますね。
その攻撃を前に、周防さんは徐々に後退していきます。もしやこれは追いつめられているのかもしれません。
「いや、そうじゃないね。どちらかと言うと、九曜さんが誘い込んでるみたいだ」
と、そう言ったのは観客に徹していた佐々木さんです。どういうことでしょう?
「森の中に誘い込もうとしているんだよ。熊のリーチを封じ込めるつもりかな?」
ああ、なるほど。周りに木があれば、腕をぶんぶん振り回せないってことですね。なんだか昔っからある方法で、まったく捻りがありません。
「何をおっしゃいますか。王道こそ真理とは偉い人も言ってるじゃありませんか」
誰ですか、その偉い人って言うのは……。
「それに、熊にとっては邪魔な木も、九曜さんにとってはいい足場だね」
そう言った佐々木さんの言葉の意味も、すぐにわかりました。腕を振り回そうにも周りの木が邪魔になっている熊ですが、ボーッとした見た目とは裏腹に俊敏な動きができる周防さんです。とんとんとんっ、と周りの木を足場に駆け上り、巨大熊のさらに上空へジャンプ。熊も熊でかなりの大きさですから、頭上のポジションなんて取られたことがないのか、周防さんの行方を見失っちゃってます。
全体重を乗せた膝蹴りが、熊の真上から鼻っ柱を叩き折る勢いで降ってきてクリティカルヒット。電光石火の一撃に、まるで時間が止まったかのように二人の動きが止まり──大きな音を立てて熊が前のめりに倒れたのは、その直後でした。
「おぉ~っ」
周防さん、本当に熊を倒しちゃいました。思わずわたしも拍手です。いったいこの人は何者ですか。
「さすが九曜さんです。これであたしたちも食材ゲットだっぜ! ってことですね」
いやその、ちょっと待ってください。チーム分けはわたしと周防さん、橘さんと佐々木さんですよね? 熊を倒したのって、周防さんですから。
「あー、これだから。もー、こんなんだから。最近の若い子はあれですね、敵に塩を送る気概もあったもんじゃないですね。あーあ、日本の将来が心配だわー」
拗ねないでくださいよ。別にわたしだって熊肉使った料理なんて作りたくないですし、何も渡さないって言ってるわけじゃないじゃないですか。
「でもこれ、どうやって持ち帰るんだい? さすがに大きすぎじゃないかな?」
そう、佐々木さんが言ったことをわたしも言いたかったんです。いくらなんでも、わたしたちで巨大熊を宿まで運ぶことなんてできないでしょう?
「むぅ……それは盲点でした。うーん……」
「ほーっほっほっほ」
悩む橘さんを前に、聞こえてきたのは高らかな笑い声。今度はいったいなんですか。
「さすがは周防九曜、我が虎の穴が差し向けた刺客を容易く倒すとはさすがです。しかし、倒して終わりと思っていただいては困ります」
「ちょっと喜緑さん、そんな高いところにいたら、ぱんつ見えちゃうわよーっ!」
高い木のてっぺん、風で髪をなびかせて仁王立ちしているのは喜緑さんでした。もしかして、そんなケッタイな場所で登場するタイミングを見計らっていたんですか?
なんという無駄な演出……。その木の下では、朝倉さんがナイフと鉈を両手にぶんぶん手を振っています。
「勝負はあくまでも料理対決。食材を手に入れた段階で満足されては困りもの。料理というのは食べた後の食器の片付けまできちんと済ませてこそ、料理ができると言ってもらいたいものです。あなたにはその熊を持ち帰る手段はございませんでしょう? 手落ちにもほどがあります」
「────────」
これはいったいどういう挑発なのか、聞いているわたしにはさっぱりです。もはや周防さんと喜緑さんの二人だけの世界のようですから、放って置いていいでしょう。
それはそうと朝倉さんたちは、どんな食材を手に入れたんですか?
「さっき、大きな猪と遭遇したから仕留めちゃった。ボタン肉って言うんでしょ? 鍋にしようかなぁって」
顔や衣服に飛び散っているどす黒い点々は返り血ですか……。
「ナイフ一本あれば、魚だろうと猪だろうと、人間だって三枚に下ろせるわよ」
猪とはいえ、頬に返り血を浴びているのに爽やかな笑顔を浮かべないでください。そもそも『人間だって』って何ですか。そんな物騒な真似はやめてください。
「じゃあ、えっと……あの熊もバラせるんですか?」
「うん、まかせて」
うわっ、できるんだ。冗談のつもりで言ったのに、朝倉さんったらやってくれるみたいです。しかもナイフと鉈の二刀流ですか。
「ちょっと朝倉さん、何をなさるおつもりですか? 敵に手を貸しても百害あって一利なしですよ」
ところが喜緑さんは納得いってないみたいです。どうやら勝負事にはとことんこだわるタイプみたいですね。たぶん、好きな言葉は『完全勝利』で嫌いな言葉は『唯々諾々』なんでしょう。
「え、いいでしょ? どうせみんなで食べるんだもの。それにほら、熊肉なんて滅多に食べられないし、わたしたちも少しわけてもらいましょうよ」
「わたしは別に食べたくありませんよ、そんなもの」
「ふーん。じゃあいいわよ、喜緑さんにはあげないから」
「またそんなこと言って……もう、仕方ありませんね」
あら、意外と喜緑さんはあれですか、朝倉さんに甘いんですか? 仲むつまじくていいですね。
「今回ばかりは手を貸して差し上げましょう。その代わりと言っては何ですが……すみません、ここから降りるのに、手を貸していただけないでしょうか?」
ああ……高い木の上に登って降りられなくなっちゃったからこそ、朝倉さんに甘い顔を見せたわけなんですね……。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
見方が変われば立場も変わります……が、喜緑さんの場合はどうなんだろう(=ω=)
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
喜緑さんの場合はすべて計算尽くですから、欺されてはいけません!
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
恐るべし喜緑江美里...(=ω=)
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
行けるとこまで逝きそうデス!
★やっぱり気になって
NAME: 仮帯
喜緑さんなら平気で飛び降りれるでしょう。
これは、あれですか? 今更女の子ぶっているんですか?
残念ながら、ただの阿呆な娘にしか見えない……けど、そこがいい。
そんな喜緑さんが私は好きなのです。
ちなみに熊肉って、調理を間違うと相当臭いと聞きましたが……。
これは、あれですか? 今更女の子ぶっているんですか?
残念ながら、ただの阿呆な娘にしか見えない……けど、そこがいい。
そんな喜緑さんが私は好きなのです。
ちなみに熊肉って、調理を間違うと相当臭いと聞きましたが……。
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:やっぱり気になって
欺されちゃいけません。喜緑さんですから、すべて計算通りなんですよ!
そもそも熊肉ってどうやって食べればいいのか知らなかったり……。
そもそも熊肉ってどうやって食べればいいのか知らなかったり……。
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
ひらひらしてます。それはもう、ひらひらでちらちらです。
まるで水面に揺れる海藻のy(ry
まるで水面に揺れる海藻のy(ry
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