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DATE : 2008/10/30 (Thu)
持っててよかったPS3。ってわけじゃないですが、リトルビッグプラネットは買ってみようかと思います。なんだろう……何かこう、エキサイトバイクのステージエディットの楽しさが味わえそうです。

でー、これがどんなゲームかというと、用は横スクロールのアクションなんですが、発想次第で何でもできそう。詳しくは公式HPでも見てくださいな。

そんなわけで、ここの更新が途絶えたりした場合は「ああ、遊び呆けてやがるなあのヤロウ」とでも思ってください。そもそも買えるのかどうかが怪しいトコロ……。

ではまた。

前回はこちら
吉村美代子の奔走:4

 よもやハルヒが、ミヨキチからそこまで話を引き出すとは思わなかった。いったいどういう話術を使って問い詰めたのか気になるが、今はそれを気にしていられる状況でもない。
 これはマズいことになった。ハルヒが妙な興味を示す前に、この話題を打ち切らなければならない。余計な知識を与えて妙な事態に話が転がることなんて、俺でなくても望んじゃいない。
 そのためにはどうするべきか。
 ………………。
 やばい、何も思い浮かばない。
 制限時間が残り少ない中で、最適な答えを導き出さなければならないわけか。下手な高校や大学への入試試験より難しい問題だぞ、これは。
「朝倉ってカナダに転校した朝倉のことでしょ? なんで今頃になって、この子からあいつの名前が出てくるのよ」
「あー……いやそれは、」
「転校?」
 口からは曖昧模糊とした言葉を垂れ流しつつ、脳内では詰め寄るハルヒをあしらうに最適な一言を検索する作業に集中したくて脊髄反射ばりに言葉を濁した俺だが、けれどしっかり耳を傾けて強い反応を示したヤツもいる。
 ミヨキチだった。
「朝倉さんて、転校されてたんですか?」
「ああ、まぁ……去年の五月に」
 と、ここまで応えて閃いた。
 最適とも最善とも言えず、下手すれば更なる混迷を招く事になりかねないし、何より打開案にさえなっていない方法だが、ハルヒを遠ざけるという一点においては他に手がないように思える妙案だ。
 それを実行するには俺自身の……なんて言うか、道徳心というか罪悪感というか、とにかくそういう後ろめたい気持ちを押し殺す覚悟が必要になる。おまけに朝比奈さんの助けも期待したいが、そこは賭けだろう。何より判断にあぐねいていても、覚悟を決めるまで状況は待ってくれない。
「そう、そうなんだ。朝倉は去年にカナダへ転校してるんだ。それから戻ってきたっていう話も聞かないし、いるわけがない」
「え、でも……」
「それでな、ハルヒ」
 何かを言いかけたミヨキチをあえて無視して、俺はハルヒの肩をがっちり掴んで有無を言わさず話を先へ進めた。
「おまえさっき、ミヨキチから何をどう聞いたんだ?」
「何って、あんたとその子が今日会ってた理由とかよ」
「ああ、そうかそうか。つまり俺の携帯が何故かミヨキチの家にあって、それを届けに来てくれたって話だろ? 携帯のことならあれだ、たぶん妹が勝手に持ち出したんだ。ほら、うちの妹は携帯なんぞ持ってないから興味本位で勝手に持ち出して、ミヨキチの家に忘れただけだ。わからんが、たぶんそうだ。間違いない」
「曖昧なのか明確なのか、どっちよ」
 いちいち細かいところを突っ込んでくるな。そのことは重要じゃないだろ。だからあえて無視して話を進めることにした。
「とにかく! それで? 朝倉のこと? おいおい、バカ言うなよ。朝倉のことはほら、おまえも知ってるだろ? おまえからもミヨキチに説明してやってくれ」
「説明も何も、今はあたしが聞いてんでしょ?」
「いいからほら」
「何なのよ……。朝倉はあれでしょ? 去年の五月に突然カナダに転校したじゃない。それがなんで日本にいるのよ? しかもあんたが会ってたって、」
「俺は会ってない。そう、会ってないわけだ」
 半ば強引にハルヒに話を打ち切らせて、自分の都合のいいように話を進める。今はとにかく勢いこそが重要なんだ。
「てことは、どういうことが考えられる? 突拍子もないことを考えるなよ? 常識の範囲内でよくある話として考えてみろ。出てくる結論はひとつじゃないか。つまりすべてはミヨキチの勘違いってことだ」
「え? あ、あのわたし、」
 戸惑うミヨキチに今は心の中で謝罪をしておく。だが、場を収めるにはこれしかないんだ。もしかすると別の方法もあったかもしれないが、追いつめられた今の俺ではこの程度しか思いつかなかった。
 つまり、こういうことだ。
「今日ここでミヨキチと会っていたのは、妹が勝手に持ち出した携帯を返してもらうためさ。でもな、届けてもらったわけだから、受け取ってすぐ追い返すのも礼儀知らずじゃないか。なもんでお礼も兼ねて茶でもご馳走していたわけで、そんな話の中で『俺が会っていたのは誰ですか?』ってなって、それがまぁ、どこでどう間違えたのか、話を聞けば俺が思い当たる人相風体のヤツは朝倉くらいで、それが……そう! コミュニケーション不足による認識の齟齬とでも言うのか、ミヨキチは俺が会っていたのは朝倉だったと思い込んでいるらしく~……」
 状況は突き詰めれば二者択一。つまり、ミヨキチを立ててハルヒに俺自身さえも理解できてない話をバカ正直に説明するか、それともミヨキチの勘違いで済ますかってことだ。そしてそのどちらを選ぶかによって『世界が滅亡しかねない』ときている。
 ミヨキチを勘違いするドジっ子さんに仕立て上げることは本意じゃないが……そのことと世界の安定とが天秤に掛けられれば、どちらに傾くかは言うまでもない。
 故に俺はミヨキチを悪者……ってほどでもないが、そこはかとなく『すべての非はミヨキチにある』とばかりの言い訳を並べ立てたわけだが、突き刺すようなハルヒの冷ややかな視線がすべて無駄だったと思わせてくれる。
「……ウソくさ」
 ズバリ言うなよ。わかってるんだって、そのくらい。いくら俺でもわかっちゃいるんだ、今の話が限りなく胡散臭く無理のある話だってことは。
 けれどそのくらいしか思い浮かばなかったんだから仕方がないだろ?
 だからここで朝比奈さんの助けが欲しい。さすがの俺でも限界だ。限界点を軽くをぶっちぎっている。もう勘弁してくれ。ホントに勘弁してください。
「うっ、嘘くさくてもだな、事実ってのは蓋を開ければそんなもんばっかりなんだよ。そんなことより……えー、だから朝比奈さん」
「……ふぇっ? な、ななな、なんですかぁ~!?」
「他の二人と合流する時間もそろそろじゃないですか? いいんですか、ここで時間を潰してて。奢るとなると大変でしょう?」
「へ? い、いえそんなことは、」
 お願いします朝比奈さん、多少でいいから空気を読んでください。頑張れば何でもできる人だということを俺は知ってますから。
「大変ですよね?」
「あ……あーっ、そっ、そうです! そうですよねっ! 二人を待たせちゃったらダメですよね! だ、だからそのぅ、涼宮さん。ほら、早く戻らないと……ね?」
「何言ってんのよ、みくるちゃん! 二人にだったら連絡入れとけば、」
「ほらハルヒ」
 嫌々かもしれないし渋々かもしれないが、それでも朝比奈さんが頑張って気遣ってくれた好機を逃すわけにもいかない。
「朝比奈さんもそう言ってんだ。時間厳守はSOS団の鉄則だろ? それを団長自ら破るのは団員たちに示しが付かないじゃないか。じゃ、朝比奈さん。あとはよろしくお願いします」
「えぇ~っ!? う、ぅぅぅ……が、がんばります……」
「そういうことで、またな!」
「あっ! こらぁっ!」
 後始末のすべてを朝比奈さんに押しつける形になったが、俺にだってすべてを投げ捨てて逃げ出したくなる時がある。凡人であり何の特技も能力もない俺には、もうこれ以上の言い訳は無理だ。
 騒ぐハルヒを後目に、俺はミヨキチを引っ張ってその場から逃げ出した。


 最悪な一時だった。どこをどう思い返しても最悪以外の言葉が見つからない。おまけに、今もなお無事に切り抜けたとは言い難い状況が続いていることに辟易する。
 あれはどう見ても、誰が考えても、問題を先延ばしにしただけで解決には至ってない。だがしかし、金輪際もう二度とあんな生き地獄を味わうのは勘弁願いたい。
 そう思うのは当然だ。そう思う俺を『無責任』と言うヤツがいるのなら、あの状況の俺になって考えてみるといい。即座に額を地面にこすりつける勢いで土下座をし、「ごめんなさい」と連呼するはずさ。
 そんなピンチ切り抜けたんだ。少しは安堵のため息を吐きたいところだが──。
「………………」
 ──どうやらそういうわけにもいかないようだ。
 俺の傍らには『釈然としない』という面持ちで頬を膨らませているミヨキチがいる。ハルヒの方はしばらく保たせることができるだろうが、こっちは今すぐにでも解決しなけりゃならん問題だよな。
「なんだかわたしが全部悪いみたいですね」
 ミヨキチにしては珍しい、つっけんどんとした声音が俺を落ち着かない気分にさせる。いかに小学生と言えども、レディのプライドを傷つけた代償はかなりのものになりそうだ。
「あー……いや、そういうことじゃなくて」
「親友の潔白を晴らすために言っておきますけれど、お兄さんの携帯電話を持ってきたことはありませんから」
 どうやらミヨキチは、俺が妹をダシにしたことでも怒っているらしい。我が妹ながら、いい親友を持ったもんだと羨ましくなる。
「だいたい、最初におっしゃってくださればよかったんです。さっきの方に、朝倉さんのこととか知られたくなかったんでしょう? そうすればご迷惑をおかけすることもなかったのに」
 それはそれでミヨキチにウソを言わせることになるから申し訳ないのだが……そもそも、そんなことを言う暇さえなかったじゃないか。
「別にミヨキチが迷惑かけたとかではなく……まぁ、なんだ。さっきの言い訳は下手だったとは自分でも思う。悪かったよ。でもなぁ」
 緊急のその場しのぎのためと言っても、ミヨキチの自尊心に傷を付けるような真似をしてまで切り抜けた俺に非があることは認めよう。それは認めるが、不幸中の幸いとでも言うのか、これでミヨキチにもわかったことがあるはずだ。
「何がですか?」
「朝倉のことだよ。ハルヒも言ってただろ? あいつはカナダに転校してんだ。そんなヤツと俺が、どうやってミヨキチの前で会うんだ?」
 実際、朝倉はカナダにいるわけでもないが、どっちにしろあいつはいない。いないのだから、ミヨキチが俺と朝倉、それに喜緑さんの三人セットでいるところを目撃することはできないんだ。
「俺が契約してる携帯電話がミヨキチの家にあったことはわからんが、少なくとも──」
「あっ!」
 そこはかとなく話を逸らすことが出来たかな、などという不埒な考えを脳裏に過ぎらせつつ、ミヨキチに朝倉の現状を伝えていたというのに、当のミヨキチは急にデカイ声を上げて話を遮ってきた。
「今! お兄さん、今あそこに朝倉さんらしい人がいませんでした!?」
「……え?」
 朝倉が? 今そこに!? そんなバカな。あいつがいるはずが……また過去から来てるとかか? いやしかし、それはもうできないはずだ。そうそう何度も朝比奈さん(大)があいつ自由に時間移動させるとは思えない。
 あいつはいない。いないはずだ。事実、ミヨキチが指さす方向には人の数こそ多いものの、俺が知っている朝倉の姿も朝倉らしき人影も見あたらない。
「どこに?」
「いました、いたんです! 今そこに……ああん、もう! 待っててください、捕まえて来ますから」
「おっ、おい!?」
 そんなことを言い出したかと思えば、ミヨキチは俺を置いて人混みの中に駆け出して行った。
 あの様子から、確かにミヨキチは何かを見たのかもしれない。『何か』と言葉を濁したのも、朝倉がいるはずないと俺は思っているからだ。そもそもミヨキチの言っている『朝倉』と俺が思い描いている『朝倉』は本当にイコールで結ばれているものなのか?
 ミヨキチはいったい何を見てるんだ? まさか本当に……?
 どちらにしろ、事は朝倉が絡んでいるかもしれない話だ。放っておくのも一人にすることもできない。それは……何だろう、正体不明なだけに不気味すぎる。
「おい、待てって!」
 とてもじゃないがミヨキチを一人勝手に先走らせるわけにもいかない。何もかもを知っているわけでもないからこそ、本人も危機感を抱いてさえいないのが危険極まりない。
 そうそう滅多なことが起こるとはさすがに思えないが、それでも俺が一緒に後を追い掛けようとした──そのとき。
「────────」
「……は?」
 俺の前に立ちはだかるように、あまりにも唐突に周防九曜が現れた。

つづく
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★無題
NAME: Miza
頬を膨らませたミヨキチはとても可愛いと思うのです。
2008/10/30(Thu)09:35:04 編集
(`3´)ぷくーっ! って感じですねw
【2008/10/31 08:08】
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