category: 日記
DATE : 2008/03/08 (Sat)
DATE : 2008/03/08 (Sat)
昨日からの睡眠時間は2時間ちょっと。めがっさネムイですが、これで綺麗な体に戻れることでしょう。
さすがに眠いです。眠いですが、約一年ぶりにやるお仕事が舞い込んできたために、やり方を思い出すのに手一杯death!
あぁん( ´Д`)
そんなわけで、布団の中に現実逃避してこようと思います(゚д゚)/
さすがに眠いです。眠いですが、約一年ぶりにやるお仕事が舞い込んできたために、やり方を思い出すのに手一杯death!
あぁん( ´Д`)
そんなわけで、布団の中に現実逃避してこようと思います(゚д゚)/
前回はこちら
森園生の変心:二章-a
日も暮れて、学生の本分たる学業の日程をすべて全うした俺は、背後に鶴屋さんを乗せて鶴屋家へ送り届けるために自転車のペダルを漕いでいた。
「キョンくん、せっかくだしどっか寄って腹ごしらえでもしてっかい?」
「え? ああ……それも悪くないですが、もう遅い時間ですからね。寄り道はなしですよ」
「うへっ、意外と真面目さんだっ!」
意外ってのは心外ですね。俺はいつだって真面目で正直に人生を謳歌してるんですよ。
「んじゃー、このまま直帰ってことで、このままでいっかな。でっ! 何かあったかい?」
「何かって何ですか。別に何もありませんよ」
「ほっほぉ~うっ」
俺がそう言えば、自転車の後ろに立ち乗りしていた鶴屋さんは、のしかかるように体重を預けて来た。
「ご主人サマに隠し事はよくないなぁ~っ。これはお仕置きが必要っかな?」
「あのですね……」
お仕置きって、いったい人に何をするつもりですか。
この人のことだから、人を縛り上げた上で毛羽で擽ってくることが、述べられるお仕置きの筆頭に上がってくるに違いない。擽るってのはあれですよ、地味ながらも効果的な拷問じゃないですか。
「キョンくんってさ」
からかうことに満足したのか、俺にのしかかっていた鶴屋さんは体を伸ばしながら、俺の通称を口にする。
この状況だけを客観的に見るのなら、男がカワイイ彼女を乗せて自転車を走らせている微笑ましいワンシーン、なんて嬉しい勘違いをされそうだ。それはそれで「勘違いしてくれ」と願わずにはいられないことかもしれないが、実際には家事手伝いがその家のお嬢さんを送っているだけのものであり、いわば俺にとっちゃ仕事中なわけである。
となれば、業務を真面目にこなしている部下に対して、俗称で呼ぶのは如何なものかと思うわけだが……ま、今さらそんなことを言っても始まらない。
「カワイイ妹くんがいるよねっ? つまりお兄ちゃんってワケだっ!」
カワイイかどうかは別として、妹がいることは間違いないですね。
「だっからかなーっ、ぜーんぶ一人で抱え込んじゃうよねっ」
「そっすか?」
「違うかい?」
さて、どうだろう。俺はそんな、何でもかんでも一人で抱え込むつもりはないのだが、人には言えない厄介で面倒な出来事が勝手に寄ってきているから、結果だけを見るとそう思えるのかもしれない。
「普段ならっ、ガンバるキョンくんをこっそり見守るのが楽しいんだけどねっ! でも今はさっ、あたしの大事な執事くんなわけだっ! お節介なことをしたくなるにょろよ」
そんなことを言われても、それで俺は喜ぶべきか、悲しむべきか、それとも呆れるべきか、いったいどんな態度を取ればいいんですかね。
「素直になるって選択肢もあるじゃーないかっ! んで? 何があったのかホレ、おねーさんに言ってみなって!」
「別に何もないですよ。いや、ホントですって」
鶴屋さんが俺の何を見てそんなことを言い出したのかわからんが、本当に抱え込んでいる悩みなんてのは何もない。昼間に古泉が見せた腹に一物ありそうな態度が気になることと言えばそうだが、あいつがあんな態度を見せるのは今に始まったことでもないし、いちいち気にしていても仕方ないので、あっさりスルーしたのは紛れもない事実だ。
それでももし、俺が何か悩んでいると思うのであれば、それはたぶん……。
「有希っこが? ほぇ~っ、そんなに変かい?」
「いや、そこまでじゃないんですが」
あの様子は、いつも同じ部室にいる俺たちの中でも、朝比奈さんや古泉では気付くことはないだろう。勘のいいハルヒでさえ「なんか違う気がする」と思う程度で、具体的な変化を言い当てられないに違いない。
と言って、長門の表情分析の第一人者を気取る俺ですら、ここ最近でようやく気付いたくらいだ。まったく同じに見える花畑の写真を二枚並べられ、その中に一輪だけ色の違う花があるからそれを見つけろ、と言われるくらい難易度の高い間違い探しかもしれない。
「本を閉じるタイミングが、ここ最近ズレてるんですよ」
読み終えた本なら話は別だが、何もない平穏な日々の中で長門が読んでいる最中の本を閉じるのは、下校時間が訪れた時だ。その正確さは言うに及ばず、SOS団では長門が読みかけの本を閉じることが、下校時間の時報になっているのは暗黙のお約束とさえなっていた。
それだけ長門の体内時計は正確無比であり、もし仮に電波時計と長門の体内時計がズレていたとすれば、俺は間違いなく長門の体内時計を信用する……のだが、その信頼性が揺らぐ事態になっている。
いったい何が原因なのか、そればっかりは俺にもわからない。部室にいる長門はやはり長門であり、その佇まいに変化はなく、話しかけても返ってくる言葉は一単語で事足りる様子も、やはり長門有希だった。
なのに……ああ、そうか。そうだな、本を閉じるタイミングがズレているのもそうだが、こうやって鶴屋さんに話ながら思い返してみると、本を読むスピードも遅かったかもしれん。
あの様子は……そうだなぁ、一般的に喩えると……。
「有希っこ、なんか悩みでもあるんかなっ?」
俺の話を聞いただけで鶴屋さんがそう感じるように、やはり俺にも長門が何かを考え込んでいるように思える。しかも、長門にとっては呼吸するに等しい読書さえもおろそかになるような悩み事だ。
「んん~……っと、つまりキョンくんはそんな有希っこを心配してるわけだっ!」
「心配?」
俺が? 長門を? それは……さすがにないな。
別に長門のことなんか心配する必要がない、と言ってるわけではなく、もしあいつが読書さえもおぼつかない深刻な悩みを抱えているのだとしても、その悩みを俺や、俺じゃなくてもSOS団の誰かに打ち明けないことはない。出会った頃のあいつならいざ知らず、十二月のあの日を過ぎて、ここ最近に起きた出来事も乗り越え、一年以上もともに過ごした今、自分一人で悩みを抱え込むようなことはしないと確信している。
もし、あいつが抱えている悩みが俺たちにも言えないような、ひどくプライベートなことであったとしても、心配することはない。あいつのことだ、自分一人でちゃんと解決すると信じている。
故に、長門が何か悩みを抱えているのだとしても、俺が心配したって余計なお世話にさえなりゃしない。
「わっかんないよ~っ? 有希っこだって女の子だかんねっ! 恋の悩みだったら、そりゃ誰にも言えないもんさっ」
「恋? 長門が!?」
じゃあ何か、鶴屋さんは長門の悩みが恋の悩みだとでも言いたいのか? つまり、恋煩い?
あの長門がねぇ~……どうなんだそれは? 長門がハルヒと同じように恋愛感情は精神病だと思っているかどうかは横に置いておくとして、あいつが俺の知らない相手に恋心を抱いたりするもんだろうか。
そもそも、あいつの趣味がわからん。どんな相手に恋い焦がれるってんだ? むしろ、長門が夢中になるのはどこぞの馬の骨とも知れない男じゃなくて、今はまだやっぱり本そのものが恋人みたいなもんじゃないっすかね?
「いんやぁ~っ、意外といつも側にいる人とかもしんないよっ! しかもっ! 友だちも同じ人を好きになっちゃってたりしてっ! 恋を取るか、友情を取るかの板挟みで悩んでるかもしれないにょろよ」
…………。
「鶴屋さん、ドラマやマンガの見過ぎですよ」
「なぁ~に言ってんのさっ! 現実は小説よりも奇なり、って言うじゃん! まさかがひょっとするのが、今の世の中ってもんさっ!」
そりゃ確かに、あり得ないと思っていたことが次々に降りかかってくるこの一年あまりの生活を考えれば……まぁ、万が一ってことはあるかもしれないが。
「なら、長門が鶴屋さんの言うとおりだとして……鶴屋さんだったら、どっちを取るんですか?」
「へっ、あたし!? んー……そうだねぇ」
背中越しに鶴屋さんが考えているような素振りを漂わせるのを感じて、俺は「おや?」と思った。
てっきり鶴屋さんのことだ、そんな質問をしても「どっちも取るに決まってんじゃんっ!」と即答すると思っていたのだが。
「あたしはそんな経験ないから、よくわかんないやっ! あっははははっ!」
快活に笑う鶴屋さんだが……何故だろう、俺は聞いちゃいけないことを聞いてしまったような、罪悪感にも似た気分を感じていた。
つづく
森園生の変心:二章-a
日も暮れて、学生の本分たる学業の日程をすべて全うした俺は、背後に鶴屋さんを乗せて鶴屋家へ送り届けるために自転車のペダルを漕いでいた。
「キョンくん、せっかくだしどっか寄って腹ごしらえでもしてっかい?」
「え? ああ……それも悪くないですが、もう遅い時間ですからね。寄り道はなしですよ」
「うへっ、意外と真面目さんだっ!」
意外ってのは心外ですね。俺はいつだって真面目で正直に人生を謳歌してるんですよ。
「んじゃー、このまま直帰ってことで、このままでいっかな。でっ! 何かあったかい?」
「何かって何ですか。別に何もありませんよ」
「ほっほぉ~うっ」
俺がそう言えば、自転車の後ろに立ち乗りしていた鶴屋さんは、のしかかるように体重を預けて来た。
「ご主人サマに隠し事はよくないなぁ~っ。これはお仕置きが必要っかな?」
「あのですね……」
お仕置きって、いったい人に何をするつもりですか。
この人のことだから、人を縛り上げた上で毛羽で擽ってくることが、述べられるお仕置きの筆頭に上がってくるに違いない。擽るってのはあれですよ、地味ながらも効果的な拷問じゃないですか。
「キョンくんってさ」
からかうことに満足したのか、俺にのしかかっていた鶴屋さんは体を伸ばしながら、俺の通称を口にする。
この状況だけを客観的に見るのなら、男がカワイイ彼女を乗せて自転車を走らせている微笑ましいワンシーン、なんて嬉しい勘違いをされそうだ。それはそれで「勘違いしてくれ」と願わずにはいられないことかもしれないが、実際には家事手伝いがその家のお嬢さんを送っているだけのものであり、いわば俺にとっちゃ仕事中なわけである。
となれば、業務を真面目にこなしている部下に対して、俗称で呼ぶのは如何なものかと思うわけだが……ま、今さらそんなことを言っても始まらない。
「カワイイ妹くんがいるよねっ? つまりお兄ちゃんってワケだっ!」
カワイイかどうかは別として、妹がいることは間違いないですね。
「だっからかなーっ、ぜーんぶ一人で抱え込んじゃうよねっ」
「そっすか?」
「違うかい?」
さて、どうだろう。俺はそんな、何でもかんでも一人で抱え込むつもりはないのだが、人には言えない厄介で面倒な出来事が勝手に寄ってきているから、結果だけを見るとそう思えるのかもしれない。
「普段ならっ、ガンバるキョンくんをこっそり見守るのが楽しいんだけどねっ! でも今はさっ、あたしの大事な執事くんなわけだっ! お節介なことをしたくなるにょろよ」
そんなことを言われても、それで俺は喜ぶべきか、悲しむべきか、それとも呆れるべきか、いったいどんな態度を取ればいいんですかね。
「素直になるって選択肢もあるじゃーないかっ! んで? 何があったのかホレ、おねーさんに言ってみなって!」
「別に何もないですよ。いや、ホントですって」
鶴屋さんが俺の何を見てそんなことを言い出したのかわからんが、本当に抱え込んでいる悩みなんてのは何もない。昼間に古泉が見せた腹に一物ありそうな態度が気になることと言えばそうだが、あいつがあんな態度を見せるのは今に始まったことでもないし、いちいち気にしていても仕方ないので、あっさりスルーしたのは紛れもない事実だ。
それでももし、俺が何か悩んでいると思うのであれば、それはたぶん……。
「有希っこが? ほぇ~っ、そんなに変かい?」
「いや、そこまでじゃないんですが」
あの様子は、いつも同じ部室にいる俺たちの中でも、朝比奈さんや古泉では気付くことはないだろう。勘のいいハルヒでさえ「なんか違う気がする」と思う程度で、具体的な変化を言い当てられないに違いない。
と言って、長門の表情分析の第一人者を気取る俺ですら、ここ最近でようやく気付いたくらいだ。まったく同じに見える花畑の写真を二枚並べられ、その中に一輪だけ色の違う花があるからそれを見つけろ、と言われるくらい難易度の高い間違い探しかもしれない。
「本を閉じるタイミングが、ここ最近ズレてるんですよ」
読み終えた本なら話は別だが、何もない平穏な日々の中で長門が読んでいる最中の本を閉じるのは、下校時間が訪れた時だ。その正確さは言うに及ばず、SOS団では長門が読みかけの本を閉じることが、下校時間の時報になっているのは暗黙のお約束とさえなっていた。
それだけ長門の体内時計は正確無比であり、もし仮に電波時計と長門の体内時計がズレていたとすれば、俺は間違いなく長門の体内時計を信用する……のだが、その信頼性が揺らぐ事態になっている。
いったい何が原因なのか、そればっかりは俺にもわからない。部室にいる長門はやはり長門であり、その佇まいに変化はなく、話しかけても返ってくる言葉は一単語で事足りる様子も、やはり長門有希だった。
なのに……ああ、そうか。そうだな、本を閉じるタイミングがズレているのもそうだが、こうやって鶴屋さんに話ながら思い返してみると、本を読むスピードも遅かったかもしれん。
あの様子は……そうだなぁ、一般的に喩えると……。
「有希っこ、なんか悩みでもあるんかなっ?」
俺の話を聞いただけで鶴屋さんがそう感じるように、やはり俺にも長門が何かを考え込んでいるように思える。しかも、長門にとっては呼吸するに等しい読書さえもおろそかになるような悩み事だ。
「んん~……っと、つまりキョンくんはそんな有希っこを心配してるわけだっ!」
「心配?」
俺が? 長門を? それは……さすがにないな。
別に長門のことなんか心配する必要がない、と言ってるわけではなく、もしあいつが読書さえもおぼつかない深刻な悩みを抱えているのだとしても、その悩みを俺や、俺じゃなくてもSOS団の誰かに打ち明けないことはない。出会った頃のあいつならいざ知らず、十二月のあの日を過ぎて、ここ最近に起きた出来事も乗り越え、一年以上もともに過ごした今、自分一人で悩みを抱え込むようなことはしないと確信している。
もし、あいつが抱えている悩みが俺たちにも言えないような、ひどくプライベートなことであったとしても、心配することはない。あいつのことだ、自分一人でちゃんと解決すると信じている。
故に、長門が何か悩みを抱えているのだとしても、俺が心配したって余計なお世話にさえなりゃしない。
「わっかんないよ~っ? 有希っこだって女の子だかんねっ! 恋の悩みだったら、そりゃ誰にも言えないもんさっ」
「恋? 長門が!?」
じゃあ何か、鶴屋さんは長門の悩みが恋の悩みだとでも言いたいのか? つまり、恋煩い?
あの長門がねぇ~……どうなんだそれは? 長門がハルヒと同じように恋愛感情は精神病だと思っているかどうかは横に置いておくとして、あいつが俺の知らない相手に恋心を抱いたりするもんだろうか。
そもそも、あいつの趣味がわからん。どんな相手に恋い焦がれるってんだ? むしろ、長門が夢中になるのはどこぞの馬の骨とも知れない男じゃなくて、今はまだやっぱり本そのものが恋人みたいなもんじゃないっすかね?
「いんやぁ~っ、意外といつも側にいる人とかもしんないよっ! しかもっ! 友だちも同じ人を好きになっちゃってたりしてっ! 恋を取るか、友情を取るかの板挟みで悩んでるかもしれないにょろよ」
…………。
「鶴屋さん、ドラマやマンガの見過ぎですよ」
「なぁ~に言ってんのさっ! 現実は小説よりも奇なり、って言うじゃん! まさかがひょっとするのが、今の世の中ってもんさっ!」
そりゃ確かに、あり得ないと思っていたことが次々に降りかかってくるこの一年あまりの生活を考えれば……まぁ、万が一ってことはあるかもしれないが。
「なら、長門が鶴屋さんの言うとおりだとして……鶴屋さんだったら、どっちを取るんですか?」
「へっ、あたし!? んー……そうだねぇ」
背中越しに鶴屋さんが考えているような素振りを漂わせるのを感じて、俺は「おや?」と思った。
てっきり鶴屋さんのことだ、そんな質問をしても「どっちも取るに決まってんじゃんっ!」と即答すると思っていたのだが。
「あたしはそんな経験ないから、よくわかんないやっ! あっははははっ!」
快活に笑う鶴屋さんだが……何故だろう、俺は聞いちゃいけないことを聞いてしまったような、罪悪感にも似た気分を感じていた。
つづく
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