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DATE : 2007/07/16 (Mon)
なんですが、カレンダーの祝日があまり関係ない仕事をしていると、どうでもいいような気がします。
関東では台風の影響も少なかったみたいで。こういうのが通過すると、一気に梅雨明けになるような気がします。学生さんはもうすぐ夏休みですネ。

えーっと。

そういうわけで、なんだか当初の目的からどんどん話がズレてって収拾がつかなくなってきている今日のSSです。

前回はこちら
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱

 何やらやる気満々の朝倉さんを前に、こういう状況ならば受けて立つのが健全なのかもしれませんが、世の中が予定調和のお約束事ばかりで回ってるわけじゃない、ってことを齢十二歳で理解しているわたしです。やる気に水を差すようで申し訳ないのですが、この卓球勝負の勝敗で何故にお兄さんを賭けて戦わなければならないんでしょう?
 そもそも、肝心なお兄さんの許可は取ってるんですか?
「あら、吉村さん。そうやっていろいろ言い訳をして逃げるつもり? わたしにとってもそうだけど、あなたにとっても敵は目の前にいる相手だけじゃないのよ。彼の周りにはつねに数多の敵が存在するわ。その一人一人を完膚無きまでに叩き潰し、その心臓に愛しのナイフを突き立てられるのは、ただ一人! その第一戦目が今のこの戦いよ!」
 いやあの、心臓にナイフじゃ即死させちゃいます。せめて彼のハートにキューピッドの矢を、とでもしときましょうよ。……それでもかなり恥ずかしい言い回しですけど。
「そんなのよくないわよ! 感触が楽しめないじゃない!」
 感触って何の感触ですか。
「ともかく、行くわよ!」
 えええ、早速試合開始なんですか? わたし、本当に卓球なんてほとんどやったことがなくて……ええとその、せめて練習を……。
「問答無用! 受けてみなさい、某野球マンガをヒントに編み出した魔球! 中国超級リーグボール一号!」
 えええっ? なんで中国? そりゃ確かに卓球の世界大会にそういうリーグ戦はありますけど、他にもヨーロッパチャンピオンズリーグとかスーパーリーグとかあるじゃないですか。
「ていっ!」
「ひゃああ」
 カコン(朝倉、バックサーブ)。
 パコン(ミヨキチ、カット)。
 こーん、こんこんこん……(朝倉側コートの角に弾かれ、ボールが地面に落下)。
「……あれ?」
 なんかあっさり返せちゃったんですけど……どこが魔球?
「朝倉さん」
 観戦していた喜緑さんから、冷ややかな声。
「一号って、必ず当たる魔球じゃありませんでしたか?」
「……あーっ」
 あーっ、ってあなた……だから適当に振っても打ち返せたんですか。卓球じゃ、そのぅ……意味なくないですか?
「やるわね、吉村さん」
 や、わたし何もしてないですし……。
「けど、油断するのは早計だわ。魔球は三号まであるのよ!」
「へ、へぇー……凄いですね……」
「んもう! 今度はもっと凄いの! 消えるんだからね!」
 そ、そうなんですか。そんな勝ち気な子が口喧嘩で言い負かされてるわけじゃないんですから、涙目にならなくていいですよ。
 それよりも、打つ前に種明かししちゃったことを嘆くべきじゃないですかね? どうでもいいですか、そういうことは。
「気を取り直していくわよ! 中国超級リーグボール二号!」
 だからどうして中国……えっと、いいです、はい。もういいです……。
 ギュッとピンポン球を強く握り、今度は何やら真面目な朝倉さんは、高くトスするや否や、渾身の力を込めて振り抜き──。
 ッバアアァァァァン!
 ……へ?
 な、なんかそのぅ……何ですか今の破裂音は? 台の上に粉みじんになって散らばっているセルロイドの欠片は!?
「ふっ……」
 なんでこんな非常識なことしておいて鼻で笑えるんですか、あなたは。
「どう吉村さん? 球が消える以上、打ち返せないでしょう!」
 いやあのちょっと待って。消えるって言うよりも、今のは……ええっと、台の上にボールを叩きつけて炸裂させてませんか? 違いますか? 物理的に消失させて、あなたいったい何やってるんですか。というか、人間ですか? あなたは。
「初めからこっちの魔球を使っておくべきだったわ。さぁ、喜緑さん。新しいボールをちょうだい!」
「渡すのは構いませんが」
 先ほどよりもさらに冷ややかに、ピンポン球を指で弾きながら陰鬱な笑みを浮かべてまして……。
「このボールが最後の一個なので、破裂させたら試合の続行ができなくなるんですけれど」
「……えぇっ! ちょっ、ちょっと~っ、なんでもっと用意してないのよ」
「知りませんよ、そんなこと。そもそも、あっという間に無くなるような消耗品じゃないんですから、こんなしなびた宿に何百個もボールがあるわけないじゃないですか」
「まったく使えない宿ね!」
 あのー……朝倉さん? 怒る方向性が間違ってませんか? そこで怒るよりも、この勝負の根本にある炊事係という役割を、ですね? 客にやらせるなっていうところで怒りましょうよ……。
「こうなったら最終手段よ。最後の魔球はわたしの体にかかる負担も大きいため、できることなら使いたくなかった……」
 じゃあ使わないでください。
「でも! ここまで来たら後に引けないのよ!」
 自分で自分を追いつめてませんか?
「いくわよっ! 中国超級リーグボール三号!」
 もうね、なんと言いますかね、オチは読めているんですが、やっぱり最後まで付き合うべきなんでしょうか?
 普通にボールをトスして、フォアサービス。打ち出された球は、超スローボールで台の上を滑るように転がり……ええっと、どこをどう突っ込めばいいですかね? 魔球二号のときに言っておくべきだったのかなぁ……って思いますけど、そんな暇がなかったわけで。
「さぁっ! 最後の魔球は絶対に打てないボールよ! あまりの遅さにラケットの風圧でボールが押されて当たらないんだから!」
「あのぉ……その前にですね」
 自信満々な朝倉さんにこんなことを言うのは、とても心苦しいんですけど……あくまで卓球での勝負を挑んできたのはそちらであって、その申し出を受けた以上はあくまで卓球で遊びたいと思うのは……健全ですよね? だから言っちゃいますけど……。
「ボールを……ですね。その、何と言いますか……まず自分のコートでバウンドさせてませんよね?」
 魔球二号も、いきなりこっちのコートに打ち込んでましたし。
「それって、どう考えてもファールだと思うんですけど……」
「……えっ?」
 あのぉ……もしかして朝倉さん、卓球のルール知らないんですか? 喜緑さんみたいに、いきなり相手にボールを直撃させて撃沈させる遊びじゃないんですよ。
「えっと……そうなの? 喜緑さん」
 キョトンとして喜緑さんに確認を取る朝倉さんは、どうやら本当に卓球のルールを知らないみたいです。
「……ふっ」
 聞かれた喜緑さんは、何故か鼻先で笑っちゃってます。
「バレてしまえば仕方ありません。さすが吉村さん、こちらの弱点を見抜くとはさすがとしか言えません」
 まったく褒められた気がしないんですが……。
「朝倉さん、弱点を見抜かれた以上、あなたはひとまず引きましょう。これをしっかり熟読しておいてください。その間は、わたしが何とかいたします」
 何やら小学生低学年向けの『よい子の楽しい卓球~入門編~』なる総ルビっぽい本を朝倉さんに投げ渡し、相手は選手交代です。
 なんと言いますか、「これで負けたわけじゃないんだからね~っ!」と叫ぶ朝倉さんが、とても可愛らしく見えます。
「さて、吉村さん。わたしは朝倉さんとは違いますよ」
 ええ、ラケット片手ににやりとほくそ笑む喜緑さんに比べたら、まだまだカワイイものですよ。あの目はヤッチマエって目です。狩人が牝鹿にライフル銃を構えているときの目とそっくりです。そんな目を見たことありませんが、たぶんそうです。
「ご安心ください、一撃で沈めて差し上げますから」
 いやいやいや、だからですね、そろそろちゃんと卓球やりましょうよ。そもそもあなたも卓球のルールがわかってるんですか?
「大丈夫、動けない選手はその時点で棄権扱いですから」
 ぜんっぜん大丈夫じゃないみたい。吉村美代子、十二年の人生で最大のピンチっぽいです。……まったく危機感を感じないのが困りものですけど。

つづく
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★無題
NAME: BPS
喜緑さん「私の殺人サーブは108式まであります」
2007/07/16(Mon)08:35:20 編集
アッー! そのネタもあったなぁ……と、言われて思い出す始末。
いやしかし、それだと喜緑さんの腕が折れてしまふ……っ!
【2007/07/17 00:17】
★無題
NAME: HILO
あかん、(精神的に)シラフの人間がもはやミヨキチしかいねぇ……
URL 2007/07/16(Mon)08:40:18 編集
ミヨキチさんも、何かこう、世界に染まっちゃってる気がしないでもなく……。
【2007/07/17 00:18】
★無題
NAME: wi
朝倉さんがかわいくなってる・・・
2007/07/17(Tue)12:32:29 編集
うちの朝倉さんは、これがデフォじゃないですか!
……あれ?
【2007/07/18 01:54】
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