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DATE : 2007/04/07 (Sat)
今日の喜緑さんのお話ではまだですが、そろそろ自分が書いているSSにも分裂のネタを盛り込むことになるかもしれません。

続き物で新刊ネタを入れるのはどうかとも思うんですが、その方が話の流れに不自然さが出なさそうなので。

なので、その際はこのスペースで【分裂ネタあり】とでも書いておきますので、各自の判断でお楽しみいただければと思います。


ま、先の話なのでどうなるかわかりませんけど!


とりあえず今日はまだ安全な。
安全でもない人、喜緑さんのお話です。


前回はこちら
【週刊喜緑江美里】

「話がある」
 と、ようやく現実世界に戻ってこられたわたしに向かって、長門さんが淡々と口を開きました。確かにおっしゃりたいことは山のようにあるでしょう。あるでしょうが、少し時間を空けても罰はあたらないと思うんです。
 そもそも、今、長門さんの膝の上ではわたしに張り飛ばされてノビている彼もいますし、少し休まれた方がよろしいんじゃありませんか?
「へいき」
「長門さんが頑丈なのはわかりました。けれど、わたしもそうだというわけではありませんよ。繊細なんですから、そろそろダウン寸前なんです」
「あなたの身体機能に異常はない」
 体の問題ではなくて、気分の問題なんですけれど……でも、助けていただいた手前、今回ばかりは文句も言えませんね。今は……日曜日ですか? そんな休日の学校、それも部室棟の文芸部部室という、万が一にも誰かに目撃されれば多少なりとも問題になりかねない場所というのが問題ですが、長くならないのでしたら聞いて差し上げます。
「それで、何でしょうか」
「朝倉涼子の行動制限の解除を求める」
 ……急に何を言い出してるんですか、長門さん。いえ、急にではないですね。前にも電話でその話をしてきたことがありますし、確かにわたしの方から「また後で」と言ったように覚えています。けど、それを今ここで言うんですか?
「あなたは、学校で、とも言った」
 ええ、そうですね。確かにそうとも言いました。そしてここは、日曜日ですけれど間違いなく学校です。でも、今日は休日じゃないですか。そもそもここには彼もいますし、今はまだ気絶……というか、眠ってるようですけれど、聞かれでもしたらどうするんですか。
「……聞いてますよ」
「あら」
 起きてらしたんですか? それはそうですよね。わたしが軽く頬を撫でて差し上げただけで、気絶するほうがどうかしてるというものです。
「へいき?」
「首の骨が外れて顎が砕かれるかと思った……」
 長門さんの膝枕からのっそり起きあがり、顎をさすりながらそんなことを言います。大袈裟ですね。
「それよりも、朝倉の行動制限とかなんとか、いったい何の話だ?」
 わたしと長門さんに目を向けて……というよりも、睨んでますよね、それ。そんな剣呑な眼差しで聞いてきます。だからその話は、今ここでするべき話題じゃないと……あのですね、長門さん。都合が悪くなると黙ってわたしを見るのをやめていただけませんか? 助けたりしませんからね。
「あなたが思っていることで間違いない」
 わたしの助け船がないと判断して、長門さんったら認めて……あら? 「あなたが思ってること」って、つまり彼は朝倉さんがいらっしゃることをご存じだと、そういうことなんですか?
「やっぱり……朝比奈さんが見かけたってのも、朝倉なのか?」
「それは不明」
「……頼むからあんな危ないヤツの行動くらいは管理してくれ」
 やつれたようなため息を吐く彼の気持ちも、わからなくはありません。まだすべての事象が半信半疑だったころに空間封鎖された教室で命を狙われたり、長門さんの暴走で世界改変されたときは実際に刺されたりしていれば、朝倉さんに対して不信感も募るというものです。
 ええ、そうですよ。そのことは、しっかりわたしの耳にも届いております。隠し事なんて、できるわけがございませんもの。
「あいつがまた現れたことについては、おまえの親玉あたりの思惑か? だから何も聞きはしないが、今話に出ていた行動制限の解除云々ってのそうじゃないよな? あいつを野放しにするのか」
 人食いのサーベルタイガーが檻から逃げ出した、とでもいうニュースを耳にしたような彼の慌て振りを見て、やはり朝倉さんの行動制限解除はまだ早いのではないかと思います。
 インターフェースを再構築され、再びこの惑星表面上に『朝倉涼子』という個体が存在していても、涼宮さんの近くに置くことは……これでは無理じゃないですか。
「そう」
 やっぱり朝倉さんの行動制限の解除は早いと結論づけていたわたしを余所に、長門さんは律儀にも彼の問いかけに素直に頷いています。
「これまでの行動を監視した結果、朝倉涼子の攻撃性は薄れていると判断できる。再度、わたしの監視をはずれて独断専行する可能性は低い」
「ゼロじゃないなら、起こるかもしれないだろ」
「へいき」
「どうして?」
「わたしが守る」
 あらあら、お熱いことですね。でも、長門さんらしい懐柔策でもあります。彼にとって、その言葉は疑うべきところは何もないでしょう。
「それに、喜緑江美里もあなたを守る」
 そうです、わたしも……え?
「わたしも、ですか?」
「あなたは今回、彼の助けあってここにいる。恩を返すのは礼儀」
 そんな長門さん……そう言われて何もしなければ、わたしが礼儀知らずみたいになっちゃうじゃないですか。
「だからってな、」
「だから」
 絶妙のタイミングで、彼の反論を遮って長門さんが口を開きました。
「一度、朝倉涼子に会って欲しい。できれば、今から」
 そう言われて、彼は何か反論のひとつでもしたいのか口を開きかけて、けれど長門さんにジーッと睨まれて気をそがれたのか、何も言わずにただ、苛立つように頭を掻いて言葉を探しています。
「今から、ってのは無理だ。今日はちょっと野暮用がある。それに……仮に俺が朝倉に会ったところで、何もならんだろ。二度も殺されかけてるんだ。二度と会いたくない。なんていうか……仮に長門の蔵書が燃やされたとしよう。そうした相手と、仲よくできるか?」
「無理」
 そこで彼の意見に同意してどうするんですか、長門さん。
「だろ? 俺にとっちゃ、朝倉がそうなんだ。すまん」
「……そう」
 あらあら、あっさり引くんですか? そこはもう少し粘ってもよさそうですけれど。
「だから、すまん。とりあえず、朝倉に会う云々の話を別にすれば、俺にはもう用はないよな? ですよね?」
「え? あ、そうですね。この度は、わたしのせいでご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
「どうせハルヒのしでかしたことでしょう。いいですよ、別に。……ああ、もうこんな時間か……」
 ちらりと時計に目をやって、彼は「着替えるくらいの時間はあるか」とかなんとか言ってます。お出かけの用事でもあったんでしょうか。こんな時間まで引き留めて、ますます申し訳なく思います。
「それじゃ長門、それに喜緑さん。また明日」
 挨拶もそこそこに、彼は部室を飛び出していきました。用事があったこともそうでしょうけれど、これ以上、長門さんに朝倉さんのことで何か言われたくない、とも取れる急ぎ方ですね。
「追いかけないんですか?」
「追う。あなたは朝倉涼子の方へ」
「だから、何故わたしがそこまで……」
「あなたを助けるために朝倉涼子も力を貸している」
 あら、そうなんですか。ああ、でもそうですね。涼宮さんが作り出していた空間への中和干渉プログラムを作り出して実行し、維持するためには長門さん一人では大変でしょうから、朝倉さんの手を借りていてもおかしくはありません。
 あらあら、わたし、朝倉さんにまで借りを作ってしまったんですか。
「彼女にも恩を返すべき」
「何をさせようと言うんですか」
「彼の行き先に、朝倉涼子を連れてくるだけでいい」
「……いいんですか? 彼、絶対に嫌がりますよ」
「問題ない。あなたにも、わかるはず」
「…………」
 確かに、涼宮さんが原因のこととはいえ、わたしのために駆けつけてくれる彼ならば、口で何と言おうとも実際に会えば受け入れるでしょうけれど。
「朝倉涼子の行動制限の解除を求める」
 再度、長門さんがわたしに言ってきます。本当に……頑固というか我が侭といいますか、一度言い出したら聞かないんですね。
「わかりました。ですが、それは今すぐというわけにもいきません。わたしも朝倉さんを見極めてから、でよろしいでしょうか?」
「かまわない」
 本当にもう……なんだか長門さんのペースに巻き込まれていますね、わたしも。

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★無題
NAME: HILO
>「仮に長門の蔵書が燃やされたと
>しよう。そうした相手と、仲よく
>できるか?」
>「無理」
この下りで吹きました(笑)
うん、そりゃそうだな長門さん、それは和解なんて無理だろう。
URL 2007/04/07(Sat)07:49:49 編集
これで長門さんも、キョンくんの気持ちがちょこっとだけ分かったことでしょうw
【2007/04/08 00:06】
★無題
NAME: かわうそX
【えみりんの恩返し】始まる!
ある朝キョンは鍋で湯をわかしていた。
「乾燥ワカメ、乾燥ワカメっと」
「?」
「キョン君助かりました」
「!!」
そこには湯で息を吹き返したえみりんがいました。
(中略)キョンと朝倉に恩返しするため、えみりんは旅立ちました。この世のどこかにあるという竜玉を求めて…
海を断ち、武道会を制覇し、果ては冥王を…
「っていうepisode00はどう?一大叙事詩よ!」
「却下だ」
2007/04/07(Sat)08:44:41 編集
タイトルは「喜緑江美里の逆襲 episode00」で是非!
【2007/04/08 00:09】
★無題
NAME: ゆんゆん。
ふむむぅここから繋がってくるのかなぁとは思いましたけど…こんな流れが待っていたなんてw長門さんがかなり饒舌なんだけどどこか抜けてるというか正直なとこ可愛いですね(>_<)でも所々での喜緑さんの突っ込みが面白かったですww
2007/04/08(Sun)00:07:11 編集
長門さん、原作でも必要なことに関しては饒舌ですから。
今回の喜緑さんは、まさにツッコミ役でした。適切な役どころですねw
【2007/04/08 00:10】
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