category: 日記
DATE : 2007/03/24 (Sat)
DATE : 2007/03/24 (Sat)
久しぶりに早起きしなければならず、また地味ぃ~に忙しくなってまいりました。
そんなわけですので、手短に……とは言っても、SSの方はいつもとボリュームは変わりませんけれども。
ともかく、一週間の〆……は日曜日ですが。
今日は喜緑さんです。
そんなわけですので、手短に……とは言っても、SSの方はいつもとボリュームは変わりませんけれども。
ともかく、一週間の〆……は日曜日ですが。
今日は喜緑さんです。
前回はこちら
【週刊喜緑江美里】
受話器から聞こえてきた声は、何であれ、今のわたしをホッとさせる声であることに違いはありません。訳も分からない状況をなんとかする一筋の光明なんですから。
「その声……朝倉さんですよね?」
『そ。こうやって連絡するのにも苦労したんだから。そっちの空間とこっちの空間の捻れ具合が複雑すぎて、わたしと長門さんの二人で必死にプログラム解析を行ってるのよ? まったく、涼宮さんの能力はデタラメね』
涼宮さんの能力……ということは、やっぱりここは閉鎖空間になるんでしょうか。
『閉鎖空間っていうのとも、ちょっと違うかも。そこはもっと、メンタルな世界ね』
「メンタル……ですか?」
『時間もないから手短に説明するけど、そこは涼宮さんの深層意識の世界。そうね、今の喜緑さんはベクタデータみたいなものなの。ラスタライズして、現実世界にプリントアウトしないと元に戻れない、ってとこかな』
「え……っと、そういうことならつまり……わたしは今、どうなってるんですか?」
『現実世界では存在してないわ。一日くらい消失してるね。ただ、そこは閉鎖空間との類似性もあるから、古泉くんには見えていたみたい。今、わたしと長門さんで必死にラスタライズ作業の真っ最中。ただ、ちょっと時間的に厳しいのよ』
「厳しいっていうと……どういうことですか」
『喜緑さんをサルベージする前に、涼宮さんの夢が覚める……かも』
「つまり……?」
『夢っていうデータが消えたら、現実世界にデータを引き出せないじゃない? つまり、そういうこと』
そういうことって……それはつまり、涼宮さんの夢が覚めたらそこにいるわたしも消えてしまうと、そういうことなんですか?
それは……さすがに困ります。わたしにも役割がありますし、いつまでこのインターフェースで活動を続けられるかは分かりませんけれど、今この時に消えてしまうというのは……ええと、それはさすがに嫌ですよ。
『ちゃんと聞いてる?』
ああ、何かいろいろ考えていたら、朝倉さんの声が聞こえてなかったみたいです。もう本当に……ここに来てからいつもと調子が違うので、少しボーッとしちゃってました。
「あ、ごめんなさい。ちゃんと聞いてますよ」
『そう? なんかいつもと違うよ。とりあえず、こっちでも頑張ってるから、喜緑さんも頑張ってもらいたいの』
「何をすればいいんですか?」
『夢から目覚めないようにすること。人ってさ、自分に優しい夢とか思い出に弱いでしょ? だから、そこで起こることはある程度受け入れるようにして、優しくすれば醒めないと思うの』
「でも、そうするとずっとこのままで……逆にわたしが戻れなくなるんじゃありません?」
『ラスタライズが完了するまで引き延ばしてくれればいいわ。今はこうやって連絡を取るために無理矢理時間を同期させているけど、電話を切ると時間の流れにまた誤差が生じると思う。だから喜緑さんにはすぐに終わることかもしれないし、ずっと長く感じるかもしれない。とりあえず、もうひとつ引き延ばしのための楔を長門さんと古泉くんで打ち込むらしいから、まずは文芸部の部室に行ってみて』
「そこで何をすればいいんですか?」
『さぁ? そこまでは聞いてないわ。それと、そこはあくまでも涼宮さんの支配空間だから、もしかして喜緑さんにも何かしらの影響が出ているかもしれないの。だから……あ、そろそろ限界みたい』
「え? あの、」
『ごめんね。じゃ、頑張って』
「あっ、ちょっと!」
電話、切れちゃいました。随分とあっさりしたもので……まったく、人ごとだと思って随分と適当ですね、朝倉さんも。
でも、現状では朝倉さんや長門さんに頑張ってもらうしかありません。受話器を置いて、職員室を出たわたしは、その足で部室棟の三階にある文芸部部室へと向かいました。そこに何かしらの楔を打ち込むと朝倉さんは言ってましたけど……やっぱり、不安です。
不安? わたしでも不安に思うことってあるんでしょうか。今のこの気持ちが、果たして本当に不安と呼べるものなのかどうかはわかりません。けれど、落ち着かない気分であるのは確かです。
窓の外の青い月を眺めながら部室棟へ向かい、指定された文芸部部室のドアを開けるとそこには……。
「キョン!?」
……え? あれ、今のわたし……ですか? わたしですよね。なんで彼の俗称がつい口をついて出たのかはわかりませんけれど、でも確かにそこにいたのは彼です。
ここは涼宮さんの夢……と言うよりも、深層意識の世界だそうですから、この誰もいない世界に彼だけがいる、というのもありえる話かもしれませんけれど……でも床の上で、どこからどう見ても気絶している風なのは、ちょっとおかしな話です。
と、そんなことを冷静に観察してる場合じゃないですね。
「大丈夫ですか? しっかりしてください」
抱え上げて揺り動かしてみましたけれど、まったく気がつく気配すらないですね。
何でしょう。こう、平和そうに一人で気を失ってる……というよりも、眠ってる姿を見ていると、ふつふつと怒りが沸いて出てくるんですけれど。
「いい加減に起きてくださいっ!」
「ぃでっ!」
そんなに強くではないですけれど、彼の額を平手で叩くと、ようやく目を覚ましてくれました。その程度で目を覚ましてくれてよかった、と言ったところです。もしそれでも起きなかったら、本当にお荷物になるだけじゃないですか。
「ああ……くそっ。ひでぇ目にあった……」
目を覚ましはしましたけれど、その顔色はあまりよろしくありません。月明かりのせいだけではないと思いますけれど、船酔いか車酔いにかかったかのように真っ青になってます。
「大丈夫ですか? どうしてここに……何があったんですか?」
「何があったも……俺はただ、長門と古泉に呼び出されて、訳が分からないままで気がつけばここにいるんですよ。むしろ、何があったのかってことを聞きたいのは俺の方です」
「そうなんですか」
早い話、彼は長門さんに連れられてここにいると、そういうことなんですね。先ほどの電話で朝倉さんが言っていた楔というのは、つまり彼のことなんでしょうか。
「とりあえず、一緒にいてくれと、ただそれだけを言われているんですが……何がどうなってるんですか?」
本来のスペックを引き出せないでいるわたしは、自分で言うのも何ですけれどまったくの無力です。状況があまりよろしくない、ということは朝倉さんからの連絡でわかっていますけれど、それ以外のことはさっぱり。
「残念ですが、わたしもよく事態が飲み込めていないので。ただ……来てくださって、ありがとうございます」
何なんでしょうか。今まで不安……と言っても差し支えない感情を抱いていたわたしですけれど、彼がここにいるというそのことだけで、少しホッとして安心しているみたいなんです。
何か……変ですよね、この気持ち。
〆
【週刊喜緑江美里】
受話器から聞こえてきた声は、何であれ、今のわたしをホッとさせる声であることに違いはありません。訳も分からない状況をなんとかする一筋の光明なんですから。
「その声……朝倉さんですよね?」
『そ。こうやって連絡するのにも苦労したんだから。そっちの空間とこっちの空間の捻れ具合が複雑すぎて、わたしと長門さんの二人で必死にプログラム解析を行ってるのよ? まったく、涼宮さんの能力はデタラメね』
涼宮さんの能力……ということは、やっぱりここは閉鎖空間になるんでしょうか。
『閉鎖空間っていうのとも、ちょっと違うかも。そこはもっと、メンタルな世界ね』
「メンタル……ですか?」
『時間もないから手短に説明するけど、そこは涼宮さんの深層意識の世界。そうね、今の喜緑さんはベクタデータみたいなものなの。ラスタライズして、現実世界にプリントアウトしないと元に戻れない、ってとこかな』
「え……っと、そういうことならつまり……わたしは今、どうなってるんですか?」
『現実世界では存在してないわ。一日くらい消失してるね。ただ、そこは閉鎖空間との類似性もあるから、古泉くんには見えていたみたい。今、わたしと長門さんで必死にラスタライズ作業の真っ最中。ただ、ちょっと時間的に厳しいのよ』
「厳しいっていうと……どういうことですか」
『喜緑さんをサルベージする前に、涼宮さんの夢が覚める……かも』
「つまり……?」
『夢っていうデータが消えたら、現実世界にデータを引き出せないじゃない? つまり、そういうこと』
そういうことって……それはつまり、涼宮さんの夢が覚めたらそこにいるわたしも消えてしまうと、そういうことなんですか?
それは……さすがに困ります。わたしにも役割がありますし、いつまでこのインターフェースで活動を続けられるかは分かりませんけれど、今この時に消えてしまうというのは……ええと、それはさすがに嫌ですよ。
『ちゃんと聞いてる?』
ああ、何かいろいろ考えていたら、朝倉さんの声が聞こえてなかったみたいです。もう本当に……ここに来てからいつもと調子が違うので、少しボーッとしちゃってました。
「あ、ごめんなさい。ちゃんと聞いてますよ」
『そう? なんかいつもと違うよ。とりあえず、こっちでも頑張ってるから、喜緑さんも頑張ってもらいたいの』
「何をすればいいんですか?」
『夢から目覚めないようにすること。人ってさ、自分に優しい夢とか思い出に弱いでしょ? だから、そこで起こることはある程度受け入れるようにして、優しくすれば醒めないと思うの』
「でも、そうするとずっとこのままで……逆にわたしが戻れなくなるんじゃありません?」
『ラスタライズが完了するまで引き延ばしてくれればいいわ。今はこうやって連絡を取るために無理矢理時間を同期させているけど、電話を切ると時間の流れにまた誤差が生じると思う。だから喜緑さんにはすぐに終わることかもしれないし、ずっと長く感じるかもしれない。とりあえず、もうひとつ引き延ばしのための楔を長門さんと古泉くんで打ち込むらしいから、まずは文芸部の部室に行ってみて』
「そこで何をすればいいんですか?」
『さぁ? そこまでは聞いてないわ。それと、そこはあくまでも涼宮さんの支配空間だから、もしかして喜緑さんにも何かしらの影響が出ているかもしれないの。だから……あ、そろそろ限界みたい』
「え? あの、」
『ごめんね。じゃ、頑張って』
「あっ、ちょっと!」
電話、切れちゃいました。随分とあっさりしたもので……まったく、人ごとだと思って随分と適当ですね、朝倉さんも。
でも、現状では朝倉さんや長門さんに頑張ってもらうしかありません。受話器を置いて、職員室を出たわたしは、その足で部室棟の三階にある文芸部部室へと向かいました。そこに何かしらの楔を打ち込むと朝倉さんは言ってましたけど……やっぱり、不安です。
不安? わたしでも不安に思うことってあるんでしょうか。今のこの気持ちが、果たして本当に不安と呼べるものなのかどうかはわかりません。けれど、落ち着かない気分であるのは確かです。
窓の外の青い月を眺めながら部室棟へ向かい、指定された文芸部部室のドアを開けるとそこには……。
「キョン!?」
……え? あれ、今のわたし……ですか? わたしですよね。なんで彼の俗称がつい口をついて出たのかはわかりませんけれど、でも確かにそこにいたのは彼です。
ここは涼宮さんの夢……と言うよりも、深層意識の世界だそうですから、この誰もいない世界に彼だけがいる、というのもありえる話かもしれませんけれど……でも床の上で、どこからどう見ても気絶している風なのは、ちょっとおかしな話です。
と、そんなことを冷静に観察してる場合じゃないですね。
「大丈夫ですか? しっかりしてください」
抱え上げて揺り動かしてみましたけれど、まったく気がつく気配すらないですね。
何でしょう。こう、平和そうに一人で気を失ってる……というよりも、眠ってる姿を見ていると、ふつふつと怒りが沸いて出てくるんですけれど。
「いい加減に起きてくださいっ!」
「ぃでっ!」
そんなに強くではないですけれど、彼の額を平手で叩くと、ようやく目を覚ましてくれました。その程度で目を覚ましてくれてよかった、と言ったところです。もしそれでも起きなかったら、本当にお荷物になるだけじゃないですか。
「ああ……くそっ。ひでぇ目にあった……」
目を覚ましはしましたけれど、その顔色はあまりよろしくありません。月明かりのせいだけではないと思いますけれど、船酔いか車酔いにかかったかのように真っ青になってます。
「大丈夫ですか? どうしてここに……何があったんですか?」
「何があったも……俺はただ、長門と古泉に呼び出されて、訳が分からないままで気がつけばここにいるんですよ。むしろ、何があったのかってことを聞きたいのは俺の方です」
「そうなんですか」
早い話、彼は長門さんに連れられてここにいると、そういうことなんですね。先ほどの電話で朝倉さんが言っていた楔というのは、つまり彼のことなんでしょうか。
「とりあえず、一緒にいてくれと、ただそれだけを言われているんですが……何がどうなってるんですか?」
本来のスペックを引き出せないでいるわたしは、自分で言うのも何ですけれどまったくの無力です。状況があまりよろしくない、ということは朝倉さんからの連絡でわかっていますけれど、それ以外のことはさっぱり。
「残念ですが、わたしもよく事態が飲み込めていないので。ただ……来てくださって、ありがとうございます」
何なんでしょうか。今まで不安……と言っても差し支えない感情を抱いていたわたしですけれど、彼がここにいるというそのことだけで、少しホッとして安心しているみたいなんです。
何か……変ですよね、この気持ち。
〆
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
この話の流れだと、どうにもチュウでオチつけるしかないなぁ、なんて思っていたりします。どうしたもんでしょう(;´Д`)
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
いつもと違うような喜緑さんにして、果たしてどこまで喜緑さんらしさが出るか……けっこう、悩むところであります。
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