忍者ブログ
[512] [511] [510] [509] [508] [507] [506] [505] [504] [503] [502]

DATE : 2024/03/19 (Tue)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


拍手する

DATE : 2007/12/11 (Tue)
おかしいな。今日で一通り片が付く計算だったのに!

そういうわけで、信愛の終章はまだ執筆途中だったりします。あれもこれもと詰め込みすぎてるような気がしてきましたが、この辺りははずせないだろうというところを入れてしまうとページ数がどんどん増えていく。これは誰の罠だ!? 俺の罠か! 策士策に溺れるとはまさにこのこと! ウボァ('A`)

そんなわけで、まとめは明日以降に。
とりあえず、その「はずせなくて長くなったとこ」でもUPしときます。

ではまた!

前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:終章-a


「気がついた?」
 耳に届くその声が、朦朧としていた意識をはっきりと覚醒させる。いつ閉じたのか自分でも覚えがない瞼を開けば、そこが病院の待合室らしいところであると気付く。俺を覗いているその顔は……朝倉か。
「何がどうなってんだ……」
「無事に帰還を果たした」
 朝倉とは別の声がやけに耳元から響く……などと思って首を巡らせてみれば、どうやら俺は長門に膝枕をされていたらしい。妙にふかふかとした弾力ある椅子だな、なんて呑気なことを考えていたが、それで納得だ。そんなことをされているとはまったく思い至らなかった。
「気にしなくていい」
 長門はそんなことを言うが、気にするなって方が無理な話であり、さすがにそのままでいるわけにもいかずに俺は体を起こした。どこも痛むところはないし、海の中に落ちたはずだが、衣服はどこも濡れていない。
「すべては肉体的な活動とは別の……世界、で起きた出来事。故に、衣服や身体的に異常が発生することはない」
「つまり、すべては夢の中……ってわけか」
「その方が都合がいいでしょ」
 確かに朝倉が言うように、今回の出来事が事実だと知られるのは……佐々木はともかく、ハルヒにはまずいんだろうな。ま、あえて包み隠さず詳細に説明する必要もないだろうから、ハルヒが夢だと思うならそれでいいし、違うと訝しむのであれば、苦労するのは別のヤツになるだけだ。俺はどっちでもいい。
 それよりも問題なのは──。
「閉鎖空間は?」
「朝倉涼子の計画通りにすべて完了した。今後、二人の閉鎖空間が融合することはない」
 それを聞いて安心した。さすがに今回はかなりキツかった。どっちかならまだなんとか……これまでの経験もあるし、頑張ろうって気になるが、二人いっぺんは勘弁してほしいからな。身が保たない。
「でもね、わたしはいまだに納得できないの」
 妙にカリカリした声音で、朝倉は椅子に座る俺を見下すような眼差しを向けてくる。
「何の話だ」
「あなたが涼宮さんをないがしろにした理由」
「別にないがしろにしてないだろ」
「そう思ってるのはあなただけじゃないかしらね。あなたが佐々木さんを優先させた理由も解ったけど、あんな曖昧な約束を信じられるなんて理解できない。何を考えてるのよ」
 いいじゃないか、すべて丸く収まってるんだからさ。重要なのは結果であって過程はどうでもいいだろ。
「自分の行動に納得できないの、それだと。わたしは何もあなたのために行動してるわけじゃないわ。自分が納得できることをしてるだけ。だからTPDDを使ったし、ここにいるの。これから先のことだってそうよ」
 これから先、ね。そういえばこいつは過去の朝倉か。一年前、俺を殺そうとして長門に消される前の朝倉だった。
「TPDDと言えば」
「ごまかすつもり?」
「じゃない。おまえ、どうやって帰るつもりだ」
「ごまかしてるじゃない。まぁ……あとで朝比奈さんが迎えに来てくれると思うわ。でもそうね、それまではこの時間平面に駐留することになるかしら」
 そう言ってほくそ笑む朝倉だが、その表情は明らかに俺を困らせてやろうという思惑がありありと見て取れる。なにしろ今の時間平面での朝倉は、カナダに転校していることになっている。なのにこいつがフラフラしていれば、ハルヒどころか他のクラスメイトに見つかってもまずい気がする。
「それは推奨しない。あなたはすぐに自分が本来存在している時間軸へ戻るべき」
 長門も俺と同意見のようだ。きっぱりと、朝倉にそう言っている。
「いいじゃない、少しくらい。わたしには今しか時間がないんだから」
「そうなることを決めたのはあなた自身」
「それはそうだけど……」
「それに、このままあなたがここにいると、あなた自身にも筆舌に尽くし難い災厄が降りかかる」
「え?」
 長門がそこまで言うとは珍しい。いったい何が起こるって……考えるまでもないようだ。その災厄とやらは、すぐに姿を現した。
「あ・さ・く・ら・さん」
「え?」
 朝倉の背後、俺の位置からならその『災厄』とやらの姿はしっかり見えている。確かにこれは、朝倉にとって形容し難い災難であることは間違いない。
 ポンッと肩を叩かれた朝倉が振り向けば、よくあるイタズラで振り向いた相手の頬に人差し指で突いたりするじゃないか。そんな古典的な真似を、よどみなくやるところはさすがと言いたい。
 喜緑さんが涼やかな笑みを浮かべて、その表情とは正反対にあらん限りの力を込めて、
朝倉の肩をしっかり掴んでいらっしゃる。
「あ……えっと……お、お久しぶり」
「ご機嫌麗しく。でも朝倉さん、あなたは本来、この時間軸に存在しない方ではございませんか? あなたがここにいらっしゃるのは何かと不都合が生じますことは、重々承知なさってますでしょう? それなのにこんなところで、いったい何をなさっているのかしら。わざわざ有機情報を伴い時間跳躍を行ってまで」
「え? ちょ、ちょっと待って。それはだって、」
「お話は、あとでゆっくりお聞かせください。では、参りましょう」
「えぇ~っ! ちょっ、まっ……いやあぁ~っ」
 まったく、ここは病院だって言うのに騒がしいヤツだな。だがこれで、朝比奈さん(大)が朝倉を迎えに来るまで、あいつが誰かに姿を見られることはなさそうだ。
 俺が安堵とも虚脱ともとれる溜息をこぼしていると、長門が無言で立ち上がり、朝倉を連れ去った喜緑さんの後を追うように歩き出した。
「帰るのか」
「憂うべき事態は終わったから」
 立ち止まることなく長門は答える。おまえがそう言うのなら、そうなんだろうが……。
「朝倉のことは?」
「…………」
 その問いかけに、長門は音もなく振り返る。
 つくづく、日本語ってのは便利なものだと思う。たった一言でこちらの言いたいことを伝えられるからな。たとえそこに言いにくいことが含まれていても、言葉の中にある意味を察してくれと暗に込めることもできる。
 それを、長門ができるのかどうか解らない。曖昧な言語での伝達が苦手と何度も言ってるようなヤツだ。だから俺が知りたい質問に見当違いなことを答えてくれても、それは仕方がない。
「朝倉涼子は喜緑江美里の監視の下、朝比奈みくるの異時間同位体が迎えに来るときまで拘束される」
「拘束ってのは、穏やかじゃないな」
「保護、と言い換えてもいい」
「そうかい」
 そのことは、長門が改めて言うまでもなく解っていることだ。俺が聞きたかったのはそんな話ではないが、聞き方がそう答えられても仕方がないものだから、その返答にこれ以上、何かを言うつもりはない。
「……例え、未来で何が起こるのかを知っていても」
 ぽつりと、長門の方からそう言ってきた。
「それは起こる出来事を見るに過ぎない。そこにある個々人の思惑を知ることは、その人本人にしかできない」
「うん?」
「わたしは知っていた。けれど、何も知らなかった」
 それが、朝倉が何故行動を起こしたのかという本当の理由のことを指しているのは、すぐにわかった。
 長門は四年前の七夕の日、俺が訪ねた時点で、それまで俺と過ごしていた長門自身の記憶はあるはずだ。そして何が起きたのかも解っているに違いない。ただ、どうして朝倉がそんな行動を起こしたのか、その本当の理由までは……長門も知らなかったんだろう。
「朝倉は俺に真実を解らせるために、」
「それもある」
 俺が皆まで言うまでもなく、長門は頷く。
「でも、それだけではない……と、思う」
「どういうことだ?」
「彼女はわたしのバックアップ。本来、わたしと彼女は相互協力の立場にある。わたしに不測の事態が生じた際には、彼女がわたしのサポートを行う。もし、彼女があのときを経ずに存在し続ければ、わたしは自身の不測の事態──これまで起こった雪山の山荘やわたし自身の暴走の際──には、彼女に協力を求めていただろう。彼女もそれに応じてくれる」
「それは……それで別にいいことなんじゃないのか?」
 もしあいつがまともに働いてくれるなら、もっと楽に簡単にことを収められていたんじゃないかと思う。いや、これまでの事件のいくつかは未然に防げていたのかもしれないとさえ思える。
「そうすることが合理的。でも、そうなればわたしはあなたたちを頼ることはない。そこに、これまで培ってきた信頼は存在しなくなる」
「……よくわからん」
「彼女は守る人。わたしは共に歩む人。朝倉涼子は、わたしが頼るべきは誰なのかを教えるために消えなければならないと判断した。そう……思う」
「あいつがねぇ……そうなのか?」
「解らない。聞いても、彼女は何も応えない。なによりこれは、わたしの憶測でしかなく、真実であるとは限らない。でも……言葉ではなくとも信じ合い通じ合う気持ちがあることを、あなたと涼宮ハルヒは示し教えてくれた。それを信じようと思う」
「そうかい」
「そう」
 頷く長門に、俺は何も言うべき言葉はない。そう思う気持ちがあるのなら、それでいいんだと思う。
「また、明日」
 珍しく別れの言葉を残して、長門は喜緑さんと、喜緑さんに連れ去られた朝倉を追うように病院から去っていった。

つづく
PR

拍手する
●この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
★無題
NAME: BPS
朝倉のふくよかな太腿はキョンを膝枕するためにあるというのに…くやしい…ビクビクッ

キョンに長門さんを信用させるためだけではなく長門さんのためでもあったとは青鬼説より深くて面白いですね。
2007/12/11(Tue)08:12:36 編集
朝倉さんが膝枕でもよかったんですけど、そこに長門さんもいたもんですから差し置いてはできないだろうと思って長門さんにw

そんな長門さんの朝倉さんに対する憶測は、どこまで合ってるんでしょうかねぇ……。
【2007/12/12 00:55】
★無題
NAME: Miza
むー、朝倉さん退場w
またの活躍をお待ちしております!
2007/12/12(Wed)10:05:20 編集
今回の朝倉さんは、ホントにゲストって役割でした。いや実は、最初の段階では出番さえなかったはずなんで……( ´Д`)
【2007/12/13 02:35】
●この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ [PR]
カウンター
メールアドレス
管理人に連絡する場合には、下記のアドレスからお願いします。
仕事依頼等も受け付けております。折り返し、本アドレスより返信いたします。
ブログ内検索
twitter
最新CM
[05/02 nothing_glass]
[08/03 前のHM忘れた]
[08/21 nao.]
[07/29 nao.]
[07/16 nao.]
最新TB