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DATE : 2007/04/05 (Thu)
4月だというのに、都心では雪……っていうか、みぞれが降ったみたいで。なんだか一気に冬へ逆戻り。

みなさま、体調管理にはお気をつけくださいませ。


で。
ミヨキチさんの出番であります。

前回はこちら
【週刊吉村美代子】

 なんだかスッキリしない後味を感じつつ、朝倉さんと別れてお兄さんと長門さんが足を休めている売店側に備え付けられているテーブルまで戻ると、そこで待っていたのはお兄さんだけでした。
「どこ行ってたんだ?」
「済みません……あの、長門さんは?」
 お兄さんの質問には、さすがに正直に答えるわけにもいきませんから……あまり深く問い質される前にわたしが質問をし返すと、お兄さんは肩をすくめて見せました。
「帰っちまったよ。あいつはああいうヤツだからあまり多くを語らないが、こっちの言い分をわかってくれたってことかな」
 長門さん、帰っちゃったんですか。わたしが朝倉さんを捜しに行くことで、連れてくると思って帰っちゃったんでしょうか。それとも、わたしに捜しに行かせることが目的だったのかな?
 確かにわたしは朝倉さんに会うことはできましたけれど……ここに連れてくることはできなかった……ううん、しなかったから。
「どちらにしろ、悪かったなミヨキチ」
「え?」
「今、席を外してたのも長門に気を遣ったからだろ?」
「あ、いえそんな。そういうことじゃなくて……ええっと」
 わたし、そんな気の使い方なんて出来ないし、そもそも長門さんからのお願いで朝倉さんを捜す、っていう目的があったから席を外していただけで……長門さんに気を遣って、とかそういうことは、それはもちろん、お兄さんのわたしに対する配慮なのかなぁって思います。
 でも結局わたしは、自分勝手な理由で朝倉さんを連れてこなくて……それが……なんて言えばいいのかな、お兄さんが朝倉さんとケンカしているし、会っても気まずいことになるからって理由を自分に言い聞かせて納得しているような気分なんです。
 それが凄く……心苦しい? じゃないかな。もっとこう……うまく表現できませんけど、お腹のあたりがぐるぐる引っかき回されているような、嫌な気分なんです。
「あの……お兄さん。長門さんからちょっとだけ聞いたんですけど……朝倉さんっていう方と、ケンカしてるんですか?」
「……ケンカ?」
 思い切って聞いてみると、お兄さんはとても……そうですね、困惑したような表情を浮かべました。朝倉さんに同じような質問をしたときに見せた表情と、よく似た感じがします。
「長門がそう言ってたのか?」
「いえ、あー……そう、なんですけど」
「ケンカねぇ……」
 わたしの、肯定とも否定ともつかない曖昧な言葉をどう受け取ったのかわかりませんけれど、お兄さんは深いため息を吐きました。なんだかその背後に「やれやれ」と書き文字が見えてきそうな勢いです。
「あまり多くを語りたくないが、一言で済ませるならケンカなんてレベルの話じゃない」
「そうなんですか?」
「予め言っておくが、俺から何かしたってわけじゃないぞ。物事を被害者と被疑者で分けるなら、俺は十人中十人が『被害者だ』って断言する立場さ」
「それで、もう会いたくない……ってことですか?」
「まぁ、そういうことだな。言ったろ? あまり多くを語りたくない、って」
「あ、済みません……」
 朝倉さん、よっぽどのことをお兄さんにしたんですね。お兄さんがここまで言うってことは、それこそとんでもないことだと思います。
 でも……わたしがさっき会った朝倉さんは、お兄さんをここまで怒らせる人じゃなかった気がします。なんだかちょっと、そこまでやらかした朝倉さんと、自分が会った朝倉さんのイメージ結びつきません。もしかして、自分が会ったのは別の朝倉さんかなって思えるくらい。
「朝倉さんって、どんな人なんですか?」
「どんな……? そうだな、知り合いの言葉を借りれば、AA+ランクの美人でクラスをまとめ上げる優等生……ってことになる。対外的には、だが」
「お兄さんの目から見て、どうなんです?」
「俺からは……ノーコメントだ、と言うよりもコメントしにくい。ま、もういいだろ。あまりあいつのことは話したくないんだ」
「…………」
 お兄さんの口ぶりからは、確かに朝倉さんとは二度と会いたくない、って思いが伝わってきます。事実、そう思ってるんでしょうね。
 でも、そう思っている自分自身に、お兄さんも違和感を覚えてるんじゃないのかしら? いえ、それについては確証なんてありません。ただ、「言いたくない」と言ってるのにもかかわらず、聞けば答えてくれるのは、それだけ気にしてるってことなんじゃないですか?
 そういう気持ち、なんだかとっても苦しいんですよね。自分自身を無理矢理納得させている感じ……なのかなぁ。すごく落ち着かなくて──今のわたしみたいに。
 このお腹の奥でモヤモヤしている気持ちが、凄く嫌なんです。
「さっき」
 だから、言わなくちゃダメだって思いました。
「うん?」
「朝倉さんに、会いました」
「……なんだって?」
 本音で言えば、言いたくありません。でも、やっぱり言っておかなくちゃ、って思う気持ちも本心なんだと思います。
 こういうの、二律背反って言うんですか? どっちも正しいんだけれど、どっちかを選ぶことができません。だからって口を閉ざしたままにするのは、もっと違う気がします。
「朝倉さん、自分からお兄さんに会うわけにはいかない、って言ってました」
「あいつが?」
「でも、会いたいって思ってるみたいでした」
 その言葉に、お兄さんはこれと言った反応もなく……逆を言えば、つとめて無感動に「そうか」と返事をするだけでした。
「あの……わたしがこんなことを言うのもおかしいかもしれませんけれど……朝倉さんに会っていただけませんか?」
「……何故?」
「本当はわたし、さっき長門さんに朝倉さんを連れてきて欲しいって頼まれてたんです。でも、わたしの勝手な理由で連れてくることができなくて……。そうした自分が、今になって凄く嫌なんです。だから、ええっと、なんて言うか……」
「それはつまり、ミヨキチが自分の気持ちを納得させたいから、俺に朝倉と会って来い……ってことか?」
「えっ……と」
 そう言われると、確かにそうかもしれません……けど。
「俺からは、あいつに会うつもりはない。あいつも俺に会うわけにはいかないと言うのなら、会うこともない」
「そう……ですか」
「そうだよ」
 お兄さんの、その気持ちは……決意っていうか、何があっても嫌だって言う揺るぎなさが感じられます。
 だからやっぱり……お兄さんと朝倉さんを会わせることは、わたしには無理そうです。

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★無題
NAME: BPS
まだ長門さんの策がありそうですね。

ところで「ミヨキチの出番」が「ミヨキチの出産」に見えた自分は情報連結解除されたほうがサラサラ...
2007/04/05(Thu)07:33:35 編集
いろいろと暗躍している長門さんですが、すでに詰みの一手が見えているようです( ̄ー ̄)
【2007/04/06 03:39】
★無題
NAME: ron
こんなキョンは喜緑さんにわかめにされちゃえばいいんだ!
ミヨキチ最高!
2007/04/05(Thu)12:35:41 編集
ミヨキチさん、そろそろ原作でも活躍して欲しいもんです( ´∀`)
【2007/04/06 03:40】
★無題
NAME: kito
ミヨキチが普通に可愛い……
2007/04/05(Thu)23:19:56 編集
原作でも健気で良い子であると願って止まず、こんな子に設定しております。
天然ドジっ子属性もついてますけど!
【2007/04/06 03:44】
★無題
NAME: ゆんゆん。
なんて健気な娘っ子なのでそ…(⊇д<;)ヒッグ キョンくんも色々あったけどミヨちゃんの気持ち汲んであげてもいいのになぁ(>_<)私もこんな可愛い妹欲しいですね~ぜひ(≧∞≦)
2007/04/06(Fri)01:48:56 編集
ミヨキチさんには是非とも幸せになってもらいたいですなぁ。
見守る気分は、妹というよりも父親的な心境であります( ´∀`)
【2007/04/06 03:46】
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