category: 日記
DATE : 2007/09/25 (Tue)
DATE : 2007/09/25 (Tue)
タイトルに意味はなし。
オムニバスにも一区切りが付いたので、今日からミヨキチさんSS再開です。
これまでの話はまとめのところにHTMLでUPしてあるので、「話忘れちゃったヨー」と言う方は、是非そちらからどうぞ。
改めてまとめを読み返していると、まったく意味が解らない……というか、意味のない話ですね。そのくせ、今までのSS(長篇シリーズ含む)の中で、最長記録を更新しております。ナンダカナー。
ではまた、明日に!
オムニバスにも一区切りが付いたので、今日からミヨキチさんSS再開です。
これまでの話はまとめのところにHTMLでUPしてあるので、「話忘れちゃったヨー」と言う方は、是非そちらからどうぞ。
改めてまとめを読み返していると、まったく意味が解らない……というか、意味のない話ですね。そのくせ、今までのSS(長篇シリーズ含む)の中で、最長記録を更新しております。ナンダカナー。
ではまた、明日に!
前回まではこちら
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱
降り続く雨は弱まる気配も見せず、かといって強まるわけでもなく、一定間隔で延々と降り続いています。周囲を見渡しても、立ち並ぶ木ばかりが目に入り、そこに見知った人の姿なんてどこにもありません。もちろん、知らない人がいるわけもなく。
そういえば、この森ってあれですよね、人食い熊やら巨大猪やらが闊歩している日本の中の秘境じゃありませんでしたか? そんなところに無力なわたしが一人でぽつーんといるわけでして……これは何かと大ピンチです。
冷静そうに見えますか? そう見えるかもしれないですけど、実はかなりの勢いで心拍数が上昇中なわけでして、人間、理解を超えた極限状態に陥ると、ふとした弾みに冷静になってしまうものなんです。そんなことない、と言われるかもしれませんが、わたしがそうなんですから、そうとしか言えないじゃないですか。
「みなさ~ん、どこですかぁ~……」
呼びかける声も雨音に消され、雨具を伝う水滴の冷たさが体温を奪っているせいなのか、思わず身震いしてしまいます。そんな寒いわけじゃないんですけど。
ええっと、何でしたっけ? これってやっぱり、皆さんが迷子になってるわけじゃなく、どちらかと言えばわたしが迷子になってるわけですよね? 山で迷子になったとしたら、それはいわゆる遭難ということになって、警察や山岳警備隊や山伏……山伏? と、ともかく、そういう人たちがいっぱい出てきて捜索されちゃうわけですよね?
うわー、それはまた一大事だー……って、違うですね。そんな他人様の手を煩わせてしまうことを申し訳なく思うよりも、自分が置かれた状況の方がまずいわけですよね。
ええと、冷静に。冷静になりましょう。もしかしてわたし、なんだか同じことを繰り返してますか? そんなはずありません。ええ、ないはずです。だってわたし、冷静ですから。
そんな冷静な頭であれこれ考えて……ここはひとつ、現実を受け入れてわたしが遭難しているとして、じゃあ遭難者が取るべき行動はどんなのでしたっけ? 確か……そうそう、あまりウロチョロしない方がいいんでしたよね。
となれば、ここでジッとしているのがいい……のかしら? でもこんな雨の中、何をせずともジッとしてるのは辛いものがあるわけでして、そもそもわたしが迷子になっていることに、あの橘さんたちが気付いているんでしょうか?
……ジッとしてられない気がしてきました。
いやでも、そういう風に考えてしまうのが間違いなのかもしれず、それならやっぱりジッとしてるのがいいわけでして……。
「ひっ!」
ああああ、すいませんすいません。妙な声出してすいません。
ただ……そのぅ、何か……ですね、正面奥の生い茂った草木が不自然にがさごそ音を立てて揺れたように思えただけで、それでついつい悲鳴みたにな声を出しただけでして、ええ、大丈夫です。大丈夫ですよー。わたし、至って冷静で……。
がささざささざざざさささっ!
「ひょえええええっ!?」
や、やっぱり何かいますよ! 何か解りませんけど、でも何かがいるのは間違いありませんて!
いったい、今度は何ですか? 熊と猪はもういいですよ! ええっと、じゃあ後に残るのはあれですか。山奥を徘徊するちょっと頭のネジが弛んじゃった妙な人ですか? そんなの、いりませんってば!
「あらあら、とても個性的な悲鳴を上げるんですね」
「……へ?」
がさごそと草木をかき分け、どんな凶悪な野生動物が飛び出してくるかと腰を抜かしていたわたしですが……現れたのは、この雨の中、わたしと似たような雨具を着込んだ喜緑さんでした。
「な……何やってるんですかーっ! いったい、どこに行ってたんですか! わたしがどれだけ……もーっ、ばかーっ!」
「まぁ、何ですか。せっかく捜しに来たのに、人をお馬鹿呼ばわりするなんて、あんまりじゃありませんか」
「あっ、あんまりなのはそっちじゃないですか! かっ、勝手にいなくなってっ、わっ、わたし一人でここにいて、みんな捜してくれているのか不安で……んもーっ!」
なんてことを口では言ってますけど、正直ホッとしたのは間違いありません。言葉とは裏腹に、緊張の糸が切れたのか、雨なのか涙なのか知りませんけど、顔がもうぐちゃぐちゃです。
「あらあら、まぁまぁ」
そんなわたしの心情を知ってか知らずか、ちっとも困ったような表情も見せずにわたしの頭を抱え込むように抱きしめて、背中をポンポン叩いてくれるんです。
「一人で心細かったと言うことですね。それはまた、申し訳ないことをしてしまいました」
「……もういいです」
喜緑さんに抱きしめてもらって、ようやく気持ちも落ち着いた感じです。雨具についた水滴がぐちょぐちょで冷たくてあまり気持ちよくないから、そろそろ離してください。
「それで、他の皆さんはどこにいるんですか?」
茂みをかき分けて現れたのは、喜緑さんだけです。橘さんや佐々木さん、周防さんはもちろんのこと、個人的にはもうペアでいることが当たり前に思えてしまっている朝倉さんの姿もありません。
「ええっと……ですね」
何ですか、どうしてそこで口籠もるんですか。まさかとは思いますけどね、できることならこんな風に聞きたくありませんが、状況が状況です。ベタなお約束展開だけは願い下げですので、正直はっきり端的に、イエスかノーで答えてください。
「喜緑さんまで遭難してる……なんてことありませんよね?」
「おほほほほ。何をおっしゃいますやら。おほほ」
だから、イエスかノーで答えてください。
「大丈夫、大丈夫ですよ。わたしがおりますので、万事問題なしです」
「……遭難してるんですか?」
「いえいえいえ、わたしはあれですよ、吉村さんの姿が見えなくなってしまったので、皆様共々手分けして捜していただけです。幸いにして、わたしが真っ先に見つけることができたのですよ」
「それならみんなと合流しましょうよ。雨も本降りになってますし、早く帰りましょう」
「え、か、帰る? あ、ああ、そうですね。早く帰りましょう」
「……もう一度、聞いていいですか?」
「……何でしょう」
「遭難してるんですか?」
「……そうなんです……」
それはもしや、ギャグで言ってるのか……?
「人を助けに来て二次遭難になってるってあなた、本末転倒じゃないですか!」
「そんなこと御座いませんよ。わたしの役目は、吉村さんを見つけることだったんですから。ほら、こうして無事に見つけたじゃありませんか。その時点でわたしは自分の役割を完遂したのですから、褒められこそすれ、貶されることはございません」
この人の頭の中身の理屈は、どうやら凡人では理解し難い世界にぶっ飛んじゃってるみたいです。よもやこんな人だとは思いませんでした。あなたに会えて、ホッとして涙を流したわたしの気持ちを返してください。
「でも大丈夫。こう考えましょう。遭難しているのはわたしたちではなく、他の皆さんだと。そう考えればほら、気持ちがグッと楽になりますでしょう?」
それはどう考えてもダメな考え方で、喜緑さんと出会う前までちょっとパニクってたわたしが、散々繰り返し言い続けていたことと似ていませんか? もしや喜緑さん、あなたも少し、パニクってません?
「わたしは至って冷静です」
冷静な人は自分のことを冷静なんて言わないような気がします。ええ、先ほどの自分を鑑みての発言ですので、ちょっとは言葉に重みがあるでしょう?
「それにほら、わたし、こう見えても方向感覚だけはばっちりなんです。ええとですね、あっちが北で、こっちが南です」
その思いつきで指さした方向が北である根拠を、是非とも提示してください。
「根拠も何も、これです」
……ダウジング・ロッド……。
「大宇宙の神秘のパワー、ここに極まれり。もしこれだけで不安と申しますなら、今ならお得なピラミッド・パワーもお付けいたしますけれど」
そんな抱き合わせ販売みたいな真似はやめてください。ただでさえ有り難みがないのに、胡散臭さ倍増じゃないですか。そもそも、北と南が解ったからと言って、宿がある方向は北なのか南なのか、あなたには解っているんですか?
「では、参りましょう」
もうすでに、わたしが参っていることは、言うまでもありませんよね……。
つづく
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱
降り続く雨は弱まる気配も見せず、かといって強まるわけでもなく、一定間隔で延々と降り続いています。周囲を見渡しても、立ち並ぶ木ばかりが目に入り、そこに見知った人の姿なんてどこにもありません。もちろん、知らない人がいるわけもなく。
そういえば、この森ってあれですよね、人食い熊やら巨大猪やらが闊歩している日本の中の秘境じゃありませんでしたか? そんなところに無力なわたしが一人でぽつーんといるわけでして……これは何かと大ピンチです。
冷静そうに見えますか? そう見えるかもしれないですけど、実はかなりの勢いで心拍数が上昇中なわけでして、人間、理解を超えた極限状態に陥ると、ふとした弾みに冷静になってしまうものなんです。そんなことない、と言われるかもしれませんが、わたしがそうなんですから、そうとしか言えないじゃないですか。
「みなさ~ん、どこですかぁ~……」
呼びかける声も雨音に消され、雨具を伝う水滴の冷たさが体温を奪っているせいなのか、思わず身震いしてしまいます。そんな寒いわけじゃないんですけど。
ええっと、何でしたっけ? これってやっぱり、皆さんが迷子になってるわけじゃなく、どちらかと言えばわたしが迷子になってるわけですよね? 山で迷子になったとしたら、それはいわゆる遭難ということになって、警察や山岳警備隊や山伏……山伏? と、ともかく、そういう人たちがいっぱい出てきて捜索されちゃうわけですよね?
うわー、それはまた一大事だー……って、違うですね。そんな他人様の手を煩わせてしまうことを申し訳なく思うよりも、自分が置かれた状況の方がまずいわけですよね。
ええと、冷静に。冷静になりましょう。もしかしてわたし、なんだか同じことを繰り返してますか? そんなはずありません。ええ、ないはずです。だってわたし、冷静ですから。
そんな冷静な頭であれこれ考えて……ここはひとつ、現実を受け入れてわたしが遭難しているとして、じゃあ遭難者が取るべき行動はどんなのでしたっけ? 確か……そうそう、あまりウロチョロしない方がいいんでしたよね。
となれば、ここでジッとしているのがいい……のかしら? でもこんな雨の中、何をせずともジッとしてるのは辛いものがあるわけでして、そもそもわたしが迷子になっていることに、あの橘さんたちが気付いているんでしょうか?
……ジッとしてられない気がしてきました。
いやでも、そういう風に考えてしまうのが間違いなのかもしれず、それならやっぱりジッとしてるのがいいわけでして……。
「ひっ!」
ああああ、すいませんすいません。妙な声出してすいません。
ただ……そのぅ、何か……ですね、正面奥の生い茂った草木が不自然にがさごそ音を立てて揺れたように思えただけで、それでついつい悲鳴みたにな声を出しただけでして、ええ、大丈夫です。大丈夫ですよー。わたし、至って冷静で……。
がささざささざざざさささっ!
「ひょえええええっ!?」
や、やっぱり何かいますよ! 何か解りませんけど、でも何かがいるのは間違いありませんて!
いったい、今度は何ですか? 熊と猪はもういいですよ! ええっと、じゃあ後に残るのはあれですか。山奥を徘徊するちょっと頭のネジが弛んじゃった妙な人ですか? そんなの、いりませんってば!
「あらあら、とても個性的な悲鳴を上げるんですね」
「……へ?」
がさごそと草木をかき分け、どんな凶悪な野生動物が飛び出してくるかと腰を抜かしていたわたしですが……現れたのは、この雨の中、わたしと似たような雨具を着込んだ喜緑さんでした。
「な……何やってるんですかーっ! いったい、どこに行ってたんですか! わたしがどれだけ……もーっ、ばかーっ!」
「まぁ、何ですか。せっかく捜しに来たのに、人をお馬鹿呼ばわりするなんて、あんまりじゃありませんか」
「あっ、あんまりなのはそっちじゃないですか! かっ、勝手にいなくなってっ、わっ、わたし一人でここにいて、みんな捜してくれているのか不安で……んもーっ!」
なんてことを口では言ってますけど、正直ホッとしたのは間違いありません。言葉とは裏腹に、緊張の糸が切れたのか、雨なのか涙なのか知りませんけど、顔がもうぐちゃぐちゃです。
「あらあら、まぁまぁ」
そんなわたしの心情を知ってか知らずか、ちっとも困ったような表情も見せずにわたしの頭を抱え込むように抱きしめて、背中をポンポン叩いてくれるんです。
「一人で心細かったと言うことですね。それはまた、申し訳ないことをしてしまいました」
「……もういいです」
喜緑さんに抱きしめてもらって、ようやく気持ちも落ち着いた感じです。雨具についた水滴がぐちょぐちょで冷たくてあまり気持ちよくないから、そろそろ離してください。
「それで、他の皆さんはどこにいるんですか?」
茂みをかき分けて現れたのは、喜緑さんだけです。橘さんや佐々木さん、周防さんはもちろんのこと、個人的にはもうペアでいることが当たり前に思えてしまっている朝倉さんの姿もありません。
「ええっと……ですね」
何ですか、どうしてそこで口籠もるんですか。まさかとは思いますけどね、できることならこんな風に聞きたくありませんが、状況が状況です。ベタなお約束展開だけは願い下げですので、正直はっきり端的に、イエスかノーで答えてください。
「喜緑さんまで遭難してる……なんてことありませんよね?」
「おほほほほ。何をおっしゃいますやら。おほほ」
だから、イエスかノーで答えてください。
「大丈夫、大丈夫ですよ。わたしがおりますので、万事問題なしです」
「……遭難してるんですか?」
「いえいえいえ、わたしはあれですよ、吉村さんの姿が見えなくなってしまったので、皆様共々手分けして捜していただけです。幸いにして、わたしが真っ先に見つけることができたのですよ」
「それならみんなと合流しましょうよ。雨も本降りになってますし、早く帰りましょう」
「え、か、帰る? あ、ああ、そうですね。早く帰りましょう」
「……もう一度、聞いていいですか?」
「……何でしょう」
「遭難してるんですか?」
「……そうなんです……」
それはもしや、ギャグで言ってるのか……?
「人を助けに来て二次遭難になってるってあなた、本末転倒じゃないですか!」
「そんなこと御座いませんよ。わたしの役目は、吉村さんを見つけることだったんですから。ほら、こうして無事に見つけたじゃありませんか。その時点でわたしは自分の役割を完遂したのですから、褒められこそすれ、貶されることはございません」
この人の頭の中身の理屈は、どうやら凡人では理解し難い世界にぶっ飛んじゃってるみたいです。よもやこんな人だとは思いませんでした。あなたに会えて、ホッとして涙を流したわたしの気持ちを返してください。
「でも大丈夫。こう考えましょう。遭難しているのはわたしたちではなく、他の皆さんだと。そう考えればほら、気持ちがグッと楽になりますでしょう?」
それはどう考えてもダメな考え方で、喜緑さんと出会う前までちょっとパニクってたわたしが、散々繰り返し言い続けていたことと似ていませんか? もしや喜緑さん、あなたも少し、パニクってません?
「わたしは至って冷静です」
冷静な人は自分のことを冷静なんて言わないような気がします。ええ、先ほどの自分を鑑みての発言ですので、ちょっとは言葉に重みがあるでしょう?
「それにほら、わたし、こう見えても方向感覚だけはばっちりなんです。ええとですね、あっちが北で、こっちが南です」
その思いつきで指さした方向が北である根拠を、是非とも提示してください。
「根拠も何も、これです」
……ダウジング・ロッド……。
「大宇宙の神秘のパワー、ここに極まれり。もしこれだけで不安と申しますなら、今ならお得なピラミッド・パワーもお付けいたしますけれど」
そんな抱き合わせ販売みたいな真似はやめてください。ただでさえ有り難みがないのに、胡散臭さ倍増じゃないですか。そもそも、北と南が解ったからと言って、宿がある方向は北なのか南なのか、あなたには解っているんですか?
「では、参りましょう」
もうすでに、わたしが参っていることは、言うまでもありませんよね……。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
いえいえ、喜緑さんは至って真面目に策を施しているんですよ。きっとそうに違いありません。
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
雨が降ってるシーンですから、増え放題ですね! ……あれ?
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