category: 日記
DATE : 2007/08/09 (Thu)
DATE : 2007/08/09 (Thu)
何か書くことがあったような気がしますが、いざ更新しようとするとすぽーんと忘れてしまう症状ががが。
これが健忘症というヤツか……!
そんなワケで、地味にバタバタしているので今日はSSだけ置いておきますね( ´∀`)つ□
ではまた!
これが健忘症というヤツか……!
そんなワケで、地味にバタバタしているので今日はSSだけ置いておきますね( ´∀`)つ□
ではまた!
前回はこちら
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱
スマキの藤原さんは橘さんにそのまま担がれているわけですが、男の人としてその姿はまったくもって情けないの一言に尽きると思います。仮にわたしが男の人だったら、そのまま海に捨ててくれと言いたくなっちゃうような、男のプライドをズタボロにするようなお姿でした。
そんな藤原さんを引き連れて橘さんが向かったのは、わたしたちが借りているお部屋だったわけで、がらりと開いた襖の奥には、旅館にあるような座敷用の黒長いテーブルに鍋のセッティングをしている佐々木さんの姿と、窓辺の椅子に腰掛けてボーッとしている周防さんの姿が。朝倉さんと喜緑さんはいないっぽいです。
「あの二人はただいま料理中なのです。先にこちらができたので、それじゃ食べてましょうとなりまして」
大声で文句を怒鳴り散らす藤原さんを軽やかにスルーしながら、何事もなかったかのように説明してくれる橘さんはさすがだと思います。
「でも橘さん、味付けした僕が言うのも何だが……本当に食べるの、これ?」
「食べるために作ったんじゃありませんか。そういうわけで藤原さん」
鍋の前にスマキの藤原さんをどすんと置いて、ニッコリ爽やか笑顔の橘さん。くるくる巻きのロープをほどいて、ようやく開放されたわけですが、少なくともわたしの目には開放されているように見えないんですけど。
「ご賞味あれ」
「………………」
ありゃ、藤原さんったら固まってますよ。その気持ちはわからなくもないんですが、せめて何かおっしゃった方が後々の身の安全を確保できるのではないかと……僭越ながら心の内で思います。思うだけで口に出したりしませんが。
「先に聞いておこう。……これはいったい何の真似だ?」
「あら、いやだ。見たまま、感じたままで正解だと思うのです」
それはつまり、何も悪いことをしてないのに罰ゲームを受けるってことなんでしょうか? いえ、それはわたしの主観での意見ですので、藤原さんもそう感じているのかどうかは解りませんけど。
「鍋があるな」
「その通りですね」
「この位置だと、僕が食べることになりそうだ」
「いぐざくとりぃ」
「……で?」
「いいから喰え」
藤原さん、それはそれはこの世の終わりみたいな表情になっちゃってます。同じことを言われたら、わたしだってそういう顔をしちゃうかもしれませんね。
「喰えるんだろうな、これは」
「ご安心ください、味付けは佐々木さんにお任せしております」
それなら確かに安心です。佐々木さんなら、少なくとも本能の部分で拒否反応を示しそうな味付けにはしないはずですから。何より、漂う匂いはそんなに悪くありません。むしろ、食欲をそそるような匂いですね。
匂いだけは、と改めて強調させてください。
「味付けと言っても、調味料が味噌くらいしかなかったからね。オーソドックスな味にしかなっていないはずさ」
「それはいいんだが」
ぐつぐつと音を立てている鍋を前に、箸を手に取る藤原さんはついに観念したんでしょう。鍋の中に箸を入れて、キノコらしきものを持ち上げました。
「この……イタリア系の名前を持つヒゲおやじが食べると、巨大化しそうな色合いのキノコは本当に喰えるんだろうな?」
「食材の選出はすべて橘さんだよ。僕は味付けしかしてないので……さて、どうだろうね。あいにくサバイバル的な知識の引き出しが少ないもので、自生しているキノコや山菜が果たして本当に食用なのか非食用なのか、その判断は棚上げさせてもらおう。わかっているのは橘さんだけだと思うけれど、実際のところはどうなんだい?」
「ご安心ください。ばっちりです」
あー……すみません、わたしだったら、食べることは丁重にお断りさせていただきたく思います。自信満々の橘さんほど、信用できないものはありません。
「……この肉は、何の肉だ?」
「熊肉だね」
「熊……」
うーん、メジャーな食材ではありませんから、藤原さんの目つきがゲテモノ料理を見るようになるのも致し方ないかと。
「そうそう、僕のかじった知識で申し訳ないが、熊の筋肉の中には旋毛虫と言う、それはそれは人体に悪影響を及ぼす寄生虫がいることもあるそうだよ。生食は控えた方がいいと思うのだが、ちゃんと火は通ってるかな?」
それを今、言いますか。何気に佐々木さんもブラックストマックな方なんですか?
「改めて聞かせてくれ。どうして僕が喰わなければならんのだ」
「これは勝負なのです。勝負というものは、まったく関わりのない第三者の公正な判断の下に決着が付くのですよ。おわかり?」
「ひとつだけわかったのは……何故だろう、自分自身にロクでもない役割が降ってきたということだけなんだが」
その判断は的確すぎて素晴らしいと思います。
「いいからとっとと喰えです」
「………………」
据わった目つきの橘さんに背中を突かれて、ついに観念したのか藤原さんが箸でつまみ上げたのは……うーん、あまりにも生々しい原形をとどめている熊の手でした。わたしにとっては一気に食欲がなくなる見た目です。これ、ビジュアル的にかなりヤバいです。他のみなさんはよく……その、直視できますね。
「ささっ。そのままかぷっと、男らしくダイナミックに!」
そんなことで男らしさを見せられても胸がきゅんきゅんすることは、まずあり得ないと思います。少なくともわたしはときめかないですけど。
でもあれですね、男女関係なく、一度箸をつけたものは最後まで食べなさいと言われて育ったわたしです。藤原さんには申し訳ないんですが、全員の興味津々な周囲の目線は、逃げ出すことなどできそうにありません。
「ええい」
あ、凄い。本当に食べちゃいました。食べたと言うか、かぷっとかぶりついた段階で固まってますけれど……えーっと、大丈夫ですか? 生きてますか?
「あの……藤原さん?」
待つこと一分。さっぱり動かない藤原さんに、さすがの橘さんも不安になったようで声をかけた……んですが、その途端、箸を置いてがばっと立ち上がり、そのまま室内からだだだだだっと走って──。
「逃げたね」
「────逃げ────た────」
「逃げちゃいました」
そりゃ逃げますって。
「みんな、おまたせーっ」
藤原さん逃亡のその直後、襖から顔を出したのは、これまた鍋を手にした朝倉さんでした。鍋を持っているということは、どうやらそちらも料理が完成したみたいです。えーっと、ボタン鍋でしたっけ?
「うん、そう。けっこう美味しくできたと思うけど、どうかな?」
さっき凄まじいものを目の当たりにしたばかりですから、なんと答えていいのか悩むところです。それで、ええっと朝倉さんの後に続いて室内に顔を見せた喜緑さんですが、その手に引っつかんでいるのはもしかして。
「はっ、離せええええっ」
「あらあら、何やら不審者がおりましたので引っ捕らえておりますけれど、そちらのお知り合いですか?」
「会ってるだろう! 喫茶店で!」
「申し訳ございません、そのときに貴方とお会いしたのは、ご自身でお人形だとおっしゃってませんでしたか?」
喜緑さんに襟首を鷲づかみにされてバタバタ暴れる藤原さんですが、喜緑さんったらニッコリ微笑んだままで、ぴくりとも動じません。
もしかして藤原さん、喜緑さんの気に障るようなことでもしたことがあるんでしょうか? だとしたらご愁傷様としか言えないんですが。
「それで、この方にわたし共の料理を食べさせるということでよろしいんでしょうか?」
微笑んだままで問いかけてくる喜緑さんに、おののくような表情を見せる藤原さん。もう、不憫で不憫で仕方ありません。
「ええ、たらふく食べさせてください」
まったく、ひどい人たちばかりです。
つづく
【Respect redo】吉村美代子の憂鬱
スマキの藤原さんは橘さんにそのまま担がれているわけですが、男の人としてその姿はまったくもって情けないの一言に尽きると思います。仮にわたしが男の人だったら、そのまま海に捨ててくれと言いたくなっちゃうような、男のプライドをズタボロにするようなお姿でした。
そんな藤原さんを引き連れて橘さんが向かったのは、わたしたちが借りているお部屋だったわけで、がらりと開いた襖の奥には、旅館にあるような座敷用の黒長いテーブルに鍋のセッティングをしている佐々木さんの姿と、窓辺の椅子に腰掛けてボーッとしている周防さんの姿が。朝倉さんと喜緑さんはいないっぽいです。
「あの二人はただいま料理中なのです。先にこちらができたので、それじゃ食べてましょうとなりまして」
大声で文句を怒鳴り散らす藤原さんを軽やかにスルーしながら、何事もなかったかのように説明してくれる橘さんはさすがだと思います。
「でも橘さん、味付けした僕が言うのも何だが……本当に食べるの、これ?」
「食べるために作ったんじゃありませんか。そういうわけで藤原さん」
鍋の前にスマキの藤原さんをどすんと置いて、ニッコリ爽やか笑顔の橘さん。くるくる巻きのロープをほどいて、ようやく開放されたわけですが、少なくともわたしの目には開放されているように見えないんですけど。
「ご賞味あれ」
「………………」
ありゃ、藤原さんったら固まってますよ。その気持ちはわからなくもないんですが、せめて何かおっしゃった方が後々の身の安全を確保できるのではないかと……僭越ながら心の内で思います。思うだけで口に出したりしませんが。
「先に聞いておこう。……これはいったい何の真似だ?」
「あら、いやだ。見たまま、感じたままで正解だと思うのです」
それはつまり、何も悪いことをしてないのに罰ゲームを受けるってことなんでしょうか? いえ、それはわたしの主観での意見ですので、藤原さんもそう感じているのかどうかは解りませんけど。
「鍋があるな」
「その通りですね」
「この位置だと、僕が食べることになりそうだ」
「いぐざくとりぃ」
「……で?」
「いいから喰え」
藤原さん、それはそれはこの世の終わりみたいな表情になっちゃってます。同じことを言われたら、わたしだってそういう顔をしちゃうかもしれませんね。
「喰えるんだろうな、これは」
「ご安心ください、味付けは佐々木さんにお任せしております」
それなら確かに安心です。佐々木さんなら、少なくとも本能の部分で拒否反応を示しそうな味付けにはしないはずですから。何より、漂う匂いはそんなに悪くありません。むしろ、食欲をそそるような匂いですね。
匂いだけは、と改めて強調させてください。
「味付けと言っても、調味料が味噌くらいしかなかったからね。オーソドックスな味にしかなっていないはずさ」
「それはいいんだが」
ぐつぐつと音を立てている鍋を前に、箸を手に取る藤原さんはついに観念したんでしょう。鍋の中に箸を入れて、キノコらしきものを持ち上げました。
「この……イタリア系の名前を持つヒゲおやじが食べると、巨大化しそうな色合いのキノコは本当に喰えるんだろうな?」
「食材の選出はすべて橘さんだよ。僕は味付けしかしてないので……さて、どうだろうね。あいにくサバイバル的な知識の引き出しが少ないもので、自生しているキノコや山菜が果たして本当に食用なのか非食用なのか、その判断は棚上げさせてもらおう。わかっているのは橘さんだけだと思うけれど、実際のところはどうなんだい?」
「ご安心ください。ばっちりです」
あー……すみません、わたしだったら、食べることは丁重にお断りさせていただきたく思います。自信満々の橘さんほど、信用できないものはありません。
「……この肉は、何の肉だ?」
「熊肉だね」
「熊……」
うーん、メジャーな食材ではありませんから、藤原さんの目つきがゲテモノ料理を見るようになるのも致し方ないかと。
「そうそう、僕のかじった知識で申し訳ないが、熊の筋肉の中には旋毛虫と言う、それはそれは人体に悪影響を及ぼす寄生虫がいることもあるそうだよ。生食は控えた方がいいと思うのだが、ちゃんと火は通ってるかな?」
それを今、言いますか。何気に佐々木さんもブラックストマックな方なんですか?
「改めて聞かせてくれ。どうして僕が喰わなければならんのだ」
「これは勝負なのです。勝負というものは、まったく関わりのない第三者の公正な判断の下に決着が付くのですよ。おわかり?」
「ひとつだけわかったのは……何故だろう、自分自身にロクでもない役割が降ってきたということだけなんだが」
その判断は的確すぎて素晴らしいと思います。
「いいからとっとと喰えです」
「………………」
据わった目つきの橘さんに背中を突かれて、ついに観念したのか藤原さんが箸でつまみ上げたのは……うーん、あまりにも生々しい原形をとどめている熊の手でした。わたしにとっては一気に食欲がなくなる見た目です。これ、ビジュアル的にかなりヤバいです。他のみなさんはよく……その、直視できますね。
「ささっ。そのままかぷっと、男らしくダイナミックに!」
そんなことで男らしさを見せられても胸がきゅんきゅんすることは、まずあり得ないと思います。少なくともわたしはときめかないですけど。
でもあれですね、男女関係なく、一度箸をつけたものは最後まで食べなさいと言われて育ったわたしです。藤原さんには申し訳ないんですが、全員の興味津々な周囲の目線は、逃げ出すことなどできそうにありません。
「ええい」
あ、凄い。本当に食べちゃいました。食べたと言うか、かぷっとかぶりついた段階で固まってますけれど……えーっと、大丈夫ですか? 生きてますか?
「あの……藤原さん?」
待つこと一分。さっぱり動かない藤原さんに、さすがの橘さんも不安になったようで声をかけた……んですが、その途端、箸を置いてがばっと立ち上がり、そのまま室内からだだだだだっと走って──。
「逃げたね」
「────逃げ────た────」
「逃げちゃいました」
そりゃ逃げますって。
「みんな、おまたせーっ」
藤原さん逃亡のその直後、襖から顔を出したのは、これまた鍋を手にした朝倉さんでした。鍋を持っているということは、どうやらそちらも料理が完成したみたいです。えーっと、ボタン鍋でしたっけ?
「うん、そう。けっこう美味しくできたと思うけど、どうかな?」
さっき凄まじいものを目の当たりにしたばかりですから、なんと答えていいのか悩むところです。それで、ええっと朝倉さんの後に続いて室内に顔を見せた喜緑さんですが、その手に引っつかんでいるのはもしかして。
「はっ、離せええええっ」
「あらあら、何やら不審者がおりましたので引っ捕らえておりますけれど、そちらのお知り合いですか?」
「会ってるだろう! 喫茶店で!」
「申し訳ございません、そのときに貴方とお会いしたのは、ご自身でお人形だとおっしゃってませんでしたか?」
喜緑さんに襟首を鷲づかみにされてバタバタ暴れる藤原さんですが、喜緑さんったらニッコリ微笑んだままで、ぴくりとも動じません。
もしかして藤原さん、喜緑さんの気に障るようなことでもしたことがあるんでしょうか? だとしたらご愁傷様としか言えないんですが。
「それで、この方にわたし共の料理を食べさせるということでよろしいんでしょうか?」
微笑んだままで問いかけてくる喜緑さんに、おののくような表情を見せる藤原さん。もう、不憫で不憫で仕方ありません。
「ええ、たらふく食べさせてください」
まったく、ひどい人たちばかりです。
つづく
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[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
傍目に見れば不憫なのに本人は強がってる藤原くん。いつの日か報われることもあるんじゃないでしょーか!
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
大オチキャラは、つねづね主役の役目だと思ってマス! あれ? ということは今回のお話だとミヨキチさんが……。
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
たまには藤原くんも報われたっていいと思いマス!
[にのまえはじめ/にのまえあゆむ] Re:無題
今が人生の絶頂期ってワケですね! わぁ~、あとは下がるだけだーヽ(´▽`)ノ
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