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DATE : 2008/08/06 (Wed)
と、昨日の14時くらいにデカイ雷が落ちまして。
その前からゴロゴロと空は鳴いていたんですが、叩きつけるような雨が降り始めてからは雷も間近で鳴っておりました。

さすがにPC吹っ飛ぶのは勘弁と思って電源落として(((( ;゚Д゚)))ガクブルしてましたけど。や、そこまで雷の音が苦手なわけじゃありませんが。

てなわけで、本日は「策略」の続きをば。次に更新するSSは「策略」じゃなくて90万HIT記念の方かなーどうかなーと思わなくもなく、本日はこれにて。

ではまた。

前回はこちら
喜緑江美里の策略:19

 朝倉も喜緑さんもいない隠れ家で、俺は一人ため息を吐いていた。
 今日は土曜日。どこぞの料亭で鶴屋さんと古泉の仮初めの結納が行われる日であり、朝倉のパーソナルデータ統一のタイムリミットであり、そして俺が何者かに無理やり水曜まで時間遡航された日でもある。
 改めて思い返せば、今日という一日には色々なことが重なりすぎている。これがすべて偶然によることなのか、それとも誰かが謀ったことなのかはわからない。偶然なのは間違いないと思うのだが、それでも心のどこかで「誰かが謀ったことじゃないのか?」と疑っている。
 なにしろ、この世の中には偶然を必然に変えるヤツがいる。そういう規格外なヤツを知っているからこそ、本来なら「偶然」の一言で片付けられるようなことでさえ、いろいろと疑念を抱いちまう。何より、明け方の朝倉の言葉も少なからず心に引っかかっていた。
 ──喜緑さんが何か隠している……ねぇ。
 今の朝倉は、知識はあるが経験がない。経験がないとはつまり思い出がないということで、朝倉は喜緑さんに対してよくも悪くも思ってない。それが何を意味するのかと言えば、喜緑さんの発言に対して妙な色眼鏡で見ずに客観的評価として、その言葉には何かある、と感じているんだ。
 判断に悩むところだな。
 朝倉が相手の言動から本心を見抜くような千里眼の持ち主とは思えないし、客観的判断といっても記憶がないことによる猜疑心があるのかもしれない。故に喜緑さんに対しての疑いを抱かせている可能性だってある。そして何より、喜緑さんが俺たちにまで隠していることの正体がまるで想像できない。
 何かを隠している、ということは、つまり俺たちに言えないことであり、となればそれは俺や朝倉にとって利益にならないこと、もっとわかりやすく言えば知られるとマズいことってわけだろ? 
 朝倉が復活することによるデメリット……だろうか。情報統合思念体のインターフェースではなく、天蓋領域側になるってことか? それがデメリットであるように思えるところだが、けれどそれは聞いている。喜緑さんが話してくれた。
 それ以上のデメリット……?
 わからん。さっぱりわからん。わからなければ、考えたって仕方がない。
 ちらりと時計に目を向ける。そろそろ頃合いか。
 喜緑さんから言われていたんだ。一緒に行動しては万が一のときに困るってな。
 何しろ向かう先には『俺』がいる。その『俺』ってのは、この時間が本来の時間である『俺』のことなのだが、喜緑さんの作戦はその『俺』を朝倉に襲わせて長門を呼び出すことだ。
 今は喜緑さんの妙な小細工のおかげで、俺の居場所は長門の宇宙人パワーを使っても存在に気付けない。なのに『俺』が二人もいるとなれば、長門はそこに何かしらの思惑を感じるだろう。一から十まですべて理解せずとも、何が目的とされているのかくらい見抜きそうだ。
 かといって、俺は今日一日、ここでこうやって閉じこもっているわけでもない。
 最後の秘密兵器、とは喜緑さんの弁。喜緑さんは長門から朝倉の最後のパーソナルデータを何とかして奪うつもりらしいが、それが失敗したときは事情をすべて知っている俺が説得しろ、というわけだ。
 だから秘密兵器、らしい。
 どうにも調子のいい台詞でおだててるようだが、俺を欺そうったってそうはいくもんか。つまりだ、喜緑さんの言葉を噛み砕いて言えば、用意していた手段がすべて潰されたあとの始末を任せる、ってわけだろ? どこで喜べばいいんだ、そんな損な役割で。
 改めてため息を吐く。
 時間的に、『俺』が鶴屋さんと一緒に料亭へ向けて移動中って頃合いか。俺もそろそろ動いた方がいい。移動手段なんて自分の足しかないわけだから、少し早いくらいでもよさそうだ。
 荷物なんて特にはない。ほぼ着の身着のままと言っても過言ではない格好で、隠れ家として使っていたアパートに別れを告げる。思えば、今日が無事に終われば俺はこのまま家に帰れるんだよな?
 うーん……どうなんだろう。結局、今日のこの日この瞬間になっても俺をこの時間まで無理やり連れてきた相手の意図がわからない。意図どころか、それが何者なのかさえわかっちゃいないんだ。今でこそ朝倉を復活させることが主軸になっちまってるが、まさかそれが目的で俺をこの時間に連れてきたのか?
 あり得ない。
 朝倉は属性で言えば宇宙人であって未来人ではない。時間移動は未来人の専売特許であって、朝倉を復活させるために未来人が力を貸すというのは、どうにも腑に落ちない。
 もしかすると朝比奈さんが一枚噛んでいるのかもしれない……なんてことが脳裏をかすめたが、それにしてはふらりふらりと現れたり消えたりを繰り返している朝比奈さん(大)の態度がおかしい。
 気が滅入ってきた。もしかして、問題はまだまだ山積みなんじゃないのか?
「っと」
 そんなことをぼんやり考えながら料亭に向かって歩いていたせいだろうか、危うく人にぶつかりそうになって足が止まる。
「すいません」
 相手と激しくぶつかって転ばせたのならいざ知らず、肩が触れるか触れないかというニアミスみたいな接触なら、すれ違い様に軽く頭を下げる程度で済ませようとするのは悪いことじゃない、と思う。相手が世の中すべてに敵対しているような弾け方をしている困ったちゃんなら謝りつつ全力疾走で逃げ出すってもんだが、少なくとも相手は俺の通常目線では顔も見えないほどの小柄な子供……あるいは女の子だった。
 だからその程度……と言えば聞こえは悪いが、会釈にも似た軽い謝罪でやり過ごそうとしたのだが。
 ガシッと、二の腕を掴まれて引き留められた。
「え?」
 俺がマヌケな声を出して驚いたのも無理はない。そんな真似をされるとは露とも思わず、振り向いた先に見つめる瞳と視線が交差して、さらに言葉を失った。
「……………………」
 予め断っておく。この無駄に多い三点リーダは俺のものじゃない。俺の腕を掴む相手のものだ。そしてこんな沈黙で語るヤツを、俺は知っている。
「なっ、ななな……長門!?」
 このときの俺の動揺具合と言ったら、そこいらの不審者よりも不審に思われる動揺っぷりだっただろう。「不審者にご用心ください」とか言われて「どんなヤツが不審者だよ?」と思ったことがあるヤツは、今の俺を見るといい。そのくらいテンプレ通りの不審者っぷりだったに違いない。
「…………」
 この沈黙が怖い。普段と変わらぬ鉄面皮の無表情と続く沈黙は、俺の藁のような自制心をポッキリ折るのに時間は掛からない。
「き、きき、奇遇だなぁ、こんなところで会うなんて。いや、ははは。散歩か? うん、そうだな天気もいいし、散歩もいいんじゃ」
「何をしているの?」
 ニコリともせず……まぁ、元から表情豊かなヤツじゃないから、逆ににっこり笑顔で聞かれた方が怖いのだけれど、それでも今のこの状況、いつもの無表情無感動テイストで聞かれては、どう答えていいのかわからない。
「え、えーと……」
 どうしよう。どうすりゃいいんだ? こんなところで長門と遭遇するなんて予定外だ。予定外どころか、あり得ない。喜緑さんが施してくれたチャフとか言ってた雲隠れ用のナノマシンはどうなっちまってんだ!?
「…………」
 俺の動揺を見て長門は何を思ったのか、ごくごく僅かに、それこそ凝視しても気づけるか否かという程度で眉根を寄せて、俺から視線を外し何処かへ目を向ける。その方角は、偶然か必然か、鶴屋さんと古泉の結納が行われている料亭の方角だった。
「何をしているの?」
 再び俺に視線を固定させる長門は、再度同じ言葉を口にする。まったく同じ台詞なのに、言葉と共に漏れる空気が鉛以上に重たく感じるのは何でだろう。
「そ、そういう長門こそ、こんなところで何してたんだ?」
 聞けば長門は、空いている手を挙げて見せた。その手が握っているのは本。見た目がだいぶくたびれている様子から、もしかして図書館から借りていた本なんだろうか。
「今から返しに行く」
「そ、そうか」
「……つもりだった」
 これは俺の心持ち次第なのかもしれないが、どうにも長門は怒っているようにも見える。
「あなたから、喜緑江美里が施した情報改ざんの痕跡を感じる。そして『彼』もいるのに、あなたもいる。あなたは……誰?」
 まるで猫の目のように、眼光に鋭さを増して長門が問いかけてくる。
 見抜かれた。さすがと言うべきか、やはりと思うべきか、長門は俺を一目見ただけで俺が本来ここにいるはずのない俺だと気付いている。
「いや、これにはいろいろと事情が……」
「朝倉涼子のこと?」
 瞬間、俺の心臓は一瞬だけかもしれないが間違いなく停止したような気がする。正しく血液が循環されず、頭に血がまわらずに貧血みたいな目眩さえ感じた。
「ちょっ、待て。なんでおまえが朝倉のことを、」
「……そう」
 聞けば長門は、わずかに視線をはずして嘆息混じりに頷く。それを見て、俺は引っかけられたと気付いた。何故、そんなことが言えるのかって、そりゃ次に出てきた言葉が決定的だったからだ。
「あれは、やはり彼女……」
「あれは……って? どういうことだ?」
「今週頭に、彼女らしき人物を見た。けれど感じる気配に『らしさ』がなく、彼女と断定する根拠が得られなかったため、判断は保留していた。けれどあなたの言葉で、確証を得た。あれはやはり、朝倉涼子だった」
 一気に捲し立て、長門は鞘から刀を抜き取ったような気配を交えさせて俺を見る。事と次第では叩き斬ると暗に言われているようだ。
「それとも、彼女は朝倉涼子ではないの?」
「その、何というか……」
「何が起きているの? 何を……しようとしているの?」
 もしやこれは、一触即発の危機的状況なのではないだろうか。人生を掛けた究極の選択を迫られているような気がしないでもない。下手な受け答えをしては、我が身にきっとよくないことが起こる。
 正直に、何もかも白状するべきか? しかしそれで長門が納得するとは思えない。今よりもっとひどいことになりそうだ。
 かといって適当な言葉でごまかしたところで、今の長門がにっこり笑顔で許してくれるとも思えない。
 ……どっちにしろ、今ここで死ぬんじゃないか? 俺。
「そ、それは……つまり」
 正直に話してもダメ、適当にごまかしてもアウト。沈黙を守り続けるのは危険極まりなく、しどろもどろに口を開き掛けたそのとき。
 俺の二の腕を痛いくらいに強い力で掴んでいた長門がその手を離し、弾かれたように何処かへ目を向ける。その方角は、料亭がある方向。時計を見る暇もないが、もしかするともう……始まったのか?
 どうやら始まっちまったらしい。長門の様子を見ればわかる。俺を追求するのを中断し、止める間もなく走り出しているんだからな。そうまでして俺のことを心配してくれているのは有り難いが、今の長門のテンションはかなり危険な方向へシフトしている。
「おい、ちょっと待てよ長門!」
 余計に話がこじれている。このままの状況で長門を朝倉と対面させるのは、さらによくないことを引き起こしかねない。
 ゆっくりなんてしてられるものか。弾丸のように料亭へ向かう長門を追って、追いつけないと諦めつつも、それでも俺は走り出した。

つづく
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★無題
NAME: ながとん
この長門のクールな対応が素敵すぎます♪
そしてこんなカタチで彼女に見つかっちゃうなんてのも、えみりんの計画の内???
2008/08/06(Wed)01:43:22 編集
長門さんをクールにしすぎた感が否めませんがw 怖いと方々から言われております。
【2008/08/07 00:29】
★無題
NAME: 蔵人
ありゃ、これで長門と朝倉の戦闘ってことはここに残るキョンの役割って?
まだ喜緑さんも再登場してないとこを見ればキョンは別のとこで苦労しそうですね。
URL 2008/08/06(Wed)04:57:45 編集
キョンくんの役割は、喜緑さんが散々言ってますねw つまりそういう役目であって、まだまだ苦労は続くのです。
【2008/08/07 00:30】
★無題
NAME: ソウ
ついに事態が大きく動き始めましたね。ホントにキョンはコレが終わったら帰れるのかなあw
そして黒幕の正体は…あの人だと思うんだけどな~。
2008/08/06(Wed)23:41:31 編集
今回の話全体で言えば黒幕は存在しませんが、キョンくん自身の問題に深く関わってるのは、たぶんその人かとw
【2008/08/07 00:32】
★無題
NAME: Miza
これは素晴らしい修羅場w
長門さんに追求されたらとても逆らえません@@
2008/08/07(Thu)09:35:35 編集
それでもなんとか言葉を濁せたキョンくんは、かなりの偉業を達成したと思いますw
【2008/08/07 23:59】
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