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DATE : 2007/10/17 (Wed)
すっかり秋めいた季節になりまして、鍋料理が美味しい季節になりました。
本年度、我が家初のお鍋はおでんではなくキノコ鍋でしたが、これに具材を日々追加して、3~4日くらい引っ張ったりします。

あれですよ、肝心なのは具ではなくスープの方ですよ。
キノコや肉でダシを取ってるようなもんです。最終日には雑炊にするんですが、数日掛けてダシを取っているので、味わいは抜群です。

〆はうどんでもいいんですけど、うちではもっぱら雑炊なのでしたー。

で。

今日の更新で、一章はおしまい。次回から二章になります。

ではまた明日。

前回はこちら
涼宮ハルヒの信愛:一章-e

 この究極の二択の中、どちらが肉体的にも精神的にも楽かと言えば……まぁ、いつ現れるのか解らない朝倉を捕まえる方だろう。
 喜緑さんの監視はとにかく厳しそうだ。心の平定を保てるかどうかも怪しい。逆に朝倉を捕まえることで言えば、少なくともあいつが現れるまでは何もすることがない。そもそも、本当に現れるかどうかも解らない。何しろ、朝倉が会う相手が俺だって話は、すべて喜緑さんの憶測だからな。
「で、実際に朝倉が現れたらどうすればいいんですか」
 それでも万が一ということがある。憶測であろうが何であろうが、可能性はゼロじゃない。ゼロでなければ、備えをしておくに越したことはないだろう。
「雑談でもしててください。逃げ出さないように時間を稼いでくだされば、すぐに駆けつけますので」
 雑談て……あいつと何をどう日常の話をしろと言うんだ。こっちから振る話題なんて、何もないぞ。
「そうですね……例えば『会いたかった』とか『おまえがいないとダメなんだ』など、母性本能を擽るうような甘い言葉でも耳元で囁けばよろしいのではないでしょうか」
「…………」
「あのこれ、真面目な話なんですけど」
 そりゃあ、喜緑さんのことだ。言うことはつねに真面目でしょうが、根本的なところで世間とのズレがある。どんなに本人が真面目でも、言葉を受け取る側としては不真面目な台詞にしか聞こえないんですけどね。
「いえいえ、ですからほら、朝倉さんって何かと世話好きじゃありませんか。誰かに頼られるのが好きな方なんですよ」
 朝倉が世話好き? ああ……確かに朝倉は、クラス委員なんて面倒なことをやるような一面を持ってたな。おまけに長門が改変した世界では、わざわざおでんの差し入れなんて持ってきてたくらいだし……なるほど、喜緑さんが言うことも、あながち見当はずれってわけではなさそうだ。
 だからってなぁ……喜緑さんが例に出したような台詞を口にするほど、俺はトチ狂っちゃいないぜ。
「さて、わたしからのお話は以上です」
 勉強机の椅子に腰掛けていた喜緑さんは、慎ましやかに頭を下げて見せた。
「最初に確認もせずに問い詰めたりして、申し訳ございません」
 こりゃビックリだ。確かに怒鳴られ損だったわけだが、喜緑さんにこうやって頭を下げられると、なんだか背中がくすぐったいような居心地の悪さを感じる。
「あー……ところで、この話は長門には?」
「まだ何も」
「内緒の話なんですか?」
「そういうわけではございませんけれど、涼宮さんに関わりのない雑務の処理ですし。長門さんには長門さんの役目がありますので」
「なら、俺からも何も言わない方がよさそうですね」
「その判断はお任せします」
 その口調は文字通り丸投げしているようだが……ふむ、確かに長門にはあれこれ面倒なことを押しつけることが多い。どうやら喜緑さん自身も、自分だけで何とかしたいと考えているようだし、その考えを尊重しよう。
「それでは、わたしはこれで」
「キョンくーん、ご飯だよー」
 喜緑さんが立ち上がるのとほぼ同時に、階下から妹の呼ぶ声が聞こえる。帰ってきた時間も遅かったし、そろそろ夕飯時であることをすっかり忘れてた。もっとも、すでに軽食とは言え、佐々木や橘たちと食べてきた俺はそこまで腹は空いちゃいないんだが。
「喜緑さん、夕飯はうちで食べて行きませんか?」
「えっ?」
 こっちが疑問に思うほどの驚きようだ。俺の申し出は、そこまで意外に思うもんだろうかね。
「でも、お邪魔になりますから」
「邪魔ってことはないですよ。それに、俺は外で佐々木たちと少し喰って来たんで、そんなに入らないですから」
「そう……ですか」
 珍しく逡巡する喜緑さんだが、すぐに表情はいつものような笑みを浮かべた。
「では、お言葉に甘えさせていただきます」


 いつもの我が家での食卓の風景に、喜緑さん一人が混じるだけで空気がだいぶ変わるもんだ。妹は妙にハイテンションだし、親も妙にソワソワした態度を見せている。変わらずは俺と喜緑さんだけ……いや、喜緑さんも借りてきた猫のように大人しいか。突拍子もないことを口走るでもなく、不穏なまでに優しいお姉さん風な態度で妹の相手をしている。
 それが素の喜緑さんなのか、はたまた俺の親や妹を前にしているからこその取り繕った態度なのか知らないが、そんな悪いもんじゃないと思う。少なくとも、平穏な食卓に相応しいもんであり、そっちの方が容姿ともマッチしてていいんじゃないだろうか。
「なにか?」
「いいえ、何でも」
 夕食の一時を終えて、どこなのかまでは知らないが、帰る喜緑さんを玄関先まで見送りに出ると、こちらの考えなんてお見通しとばかりに澄んだ瞳を真っ直ぐ向けて微笑まれた。余計なことは考えない方が身のためだろう。
「それでは、朝倉さんが現れたらよろしくお願いします」
「よろしくと言われてもですね」
「朝倉さんの思惑が何であれ、懐柔されないようにしてくださいね。相変わらず、何が目的なのかさっぱりな方ですから」
「何を考えてるのか解らないってのには同意しますが……そんなヤバイことはしないと思うんですけど」
「あら」
 今の俺の発言に、喜緑さんはカンブリア紀の地層からナウマン象の化石が出てきたような驚きの表情を作って見せた。
「朝倉さんのこと、信用なさってるんですか?」
「さあ……どうでしょう」
 一年前なら間髪入れず、即座に「信用できない」と言い放ってやるんだがなぁ。先月のオーパーツ事件を経た今は、多少なりとも考えを改めざるを得ない。
 あいつが俺を殺そうとした理由、その目的。本人の口からとは言え、果たして真に受けていいものかどうか迷うところであるが、理にかなっているのは確かだ。
「疑いはありませんか」
「信用すると言っちまっいましたから。せめて、自分の発言くらいには責任を持ちたいじゃないですか」
「それなら」
 いつもと変わらぬ態度のまま、いつもと同じような微笑を浮かべて、喜緑さんが俺の顔をしっかりと視線で捉えている。
「わたしのことも、信用してくださいます?」
「そういうのは、確認し合うものじゃなくないですか?」
「あら……手厳しいご意見ですね。少し残念」
 何が残念なんだろう。喜緑さんの考えていることは、よく解らない。
「では、夕飯ご馳走さまでした。おやすみなさい」
 一礼して去っていく喜緑さんに、俺は「気をつけて」と、あの人が何に対して気をつけなければ解らんけども、お決まりの言葉を口に出して見送った。
 その姿が街灯の光の中からも消えて、姿が完全に見えなくなってから溜息を吐く。
 過去の朝倉が、今か未来か知らないが、自由に移動している……ねぇ。
 本当だろうか?
 仮にそんな真似ができるとしても、あいつがフラフラと時間遡航して遊んでいるとは思えない。やるとしても何かしらの目的あって行動してるんだと思うが……それでも、それが朝倉個人の利益になることではないだろう。どうやらあいつは、自分のことは二の次に思っている節がある。
 俺に真実を伝えるために、ナイフを振りかざして襲って来て消えるハメになっちまったりとかな。そういうところは長門と似ている。どっちも自分のことを軽く見過ぎなんだよ。
 だとすれば、あいつが時間移動するのはハルヒに関わる何かがあってのことか。
 何か起こるんだろうか。これから先、朝比奈さん(大)ではなく、朝倉が時間遡航しなければならないような、それほどまでに窮地に陥るような厄介で面倒な出来事が。
 まっ、今ここで考えたって仕方がない。慌てるのは、事が目前に迫ってきてからで充分さ。そういうことが起こらないようにと祈りつつ、今はゆっくり体を休めるときさ。さっさと風呂にでも入って、早く寝よう……あ。
「しまった」
 喜緑さんの突然の来訪と、無理難題な頼み事ですっかり忘れてた。
 北高にも佐々木の高校にもいない、中学の同窓生宛の同窓会開催案内のダイレクトメールを作らなけりゃならないんだった。
 まったく……厄介事には事欠かないな、俺の人生。

つづく
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★無題
NAME: BPS
いつもと少し違う二人のやり取りがあまずっぺぇです。てか、これくらいが喜緑さんの原作準拠なんですかねw
2007/10/17(Wed)01:26:38 編集
いやあ、原作と比べてしまえば、これでも喜緑さんは出張りすぎのような樹がしますw
何でしょう。原作の喜緑さんは「黙して語らず、行動で示す」みたいなタイプのような感じがw
【2007/10/18 03:27】
★無題
NAME: Miza
腹黒くない喜緑さんもいいなぁ。
ホントに優しいお姉さんって感じだ。

い、いや普段だって腹黒くなんてないですよ!ないですって・・・アッー
2007/10/17(Wed)03:26:17 編集
喜緑「あら、わたしのお腹は薄桃色の健康肌ですよ。ご覧になります? うふふ……ふふふ」
と、コメントをいただいております(=人=)合掌
【2007/10/18 03:29】
★無題
NAME: 鳥菅
ホントに朝倉さん好きですねえ(笑)
喜緑さんは相変わらずといった感じですが。
2007/10/17(Wed)09:58:48 編集
朝倉さんスキーは否定しませんが、実はミヨキチスキーでもあり森さんスキーでもありますぜ( ̄ー ̄)ニヤリ
【2007/10/18 03:30】
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